ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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お昼ご飯

「タコさんウインナーを基準に前ならえ」

 

果南「梨子ちゃんのお弁当はthe女の子って感じだね」

梨子「えっそうかな」

ガヤガヤとした校庭の端にブルーシートが引き詰められ、大きな絨毯のように、疲れた生徒達を癒していた。皆、お腹がペコペコだった。綱引きの選手達が退場すると、放送でお昼の開始が告げられ、誰もがそれを待ち望んでいたかのように、応援席から歓声が上がった。それぞれがお弁当を取りに行った。プールの下の更衣室、テントの下、少し遠いが校舎の一階の空き教室。何処に荷物を置いても良く、我慢が出来ない運動部の一部は、応援席の自分の席に鞄をそのまま持って来ていた。

曜「どれどれ〜」

前屈みよりも前傾姿勢になって、曜は視点を持ち上げた。

果南「あ、行儀悪いよ」

曜「あと少しで見えそう……むむむ」

梨子「見せてあげるから、ほらっ」

目を細める危なっかしい曜に、梨子は自身のお弁当箱を持ち上げた。

曜「わぁ〜! 宝箱みたい!」

目をキラキラと輝かせる。同時に曜のお腹が鳴った。ぐぅと。

梨子「……たべる?」

曜「いいの!? やったー」

果南「見境ないよ、この子は。曜、ひとつだけだよ、梨子ちゃんの分無くなっちゃうから」

曜「わかってるであります。えっと、えとえとー」

卵焼きとタコさんウインナーとちっちゃなハンバーグにブロッコリーの炒め物。色づくお弁当箱の上で、曜の指は彷徨っていた。

千歌「梨子ちゃんのサンドイッチは、ちかが予約してるんだからね!」

突然、声がした。横槍を入れながら指をさした千歌は、ブルーシートに上がろうと靴を脱いでいた所だった。

曜「えー そうなのー それじゃあ、それじゃあ……」

梨子「……その、急がなくてもいいからね」

曜「うん」

梨子「そういえば善子ちゃんは一緒じゃないの?」

千歌「お誘いしたんだけど、あてがあるからいいのよって言われたのだ」

曜「これに決めた!」

曜は指で卵焼きを掴んだ。高らかに発声し、腕もまるで一等賞であるかのように、腕をピンと空へ突き立てた。その声の大きさが、周りを巻き込むことを知らず、嬉しそうに卵焼きを口に含んだ。とても美味しそうに笑顔を浮かべる。そんな曜を見てブルーシートに座る他の生徒達も、梨子の卵焼きが気になった。ざわざわと周りが囁くと、梨子は恥ずかしくなって耳を真っ赤にした。

ルビィ「果南ちゃん」

そのざわめきの中に、小さいけれどハッキリとした赤が音を立てた。

 

理事長と共に体育祭の応援に駆けつけてくれた自治体関係者や浦の星女学院の同窓会の方々、黒澤家に縁のある後援会の皆様、綱引きに駆けつけてくれた漁師の男達、そしてこれから演舞を行う母の知人達、この内浦に関係のある大人に挨拶回りをしていると、それはお昼休憩にも食い込んで、私の疲れを持続的なものにさせた。しかし、その疲れというものは笑顔で挨拶をしている時には現れない。理事長の「お疲れ様」という言葉を聴いてから途端に姿を表す。まるで魔物のようだった。私は校舎一階の空き教室へと向かい、お弁当を食べようと考えた。母はこれからの演舞に忙しそうにしており、ルビィは花丸ちゃんと楽しく食事をしていた。それは私が挨拶をしている途中で見かけたものだった。誰もいない教室の中で、肩の荷が下りる。こんなこと、してはいけないのだろうけれど、私は誰のものだか分からない机に腰を掛けた。息が出てお腹辺りの体操着が凹んだ。黒澤家の次期当主の仕事は、この時代には余り多く残っていない。ただ体裁を整えて、慣例に従って生きていく。きっと私の代まで続くだろう。それから私は誰かと婚約をしてーー

善子「お忙しいところだった?」

私は頭を上げた。教室の入り口に腕を組んだ彼女がいた。

ダイヤ「ノックの一つくらいしてくれても良くて?」

彼女は軽く、開いたドアにノックした後、教室の中へと進んだ。片手にぶらぶらと巾着をぶら下げていた。

ダイヤ「待っててくれたの?」

善子「まぁね」

ダイヤ「冷めたお米は嫌いだったじゃない」

善子「友達と食べた方が美味しいの」

ダイヤ「なにそれ、ふふ」

善子「……恥ずかしいんだから」

ダイヤ「ありがとう」

善子「早く食べましょう」

ダイヤ「ここがいい、落ち着くから」

善子「あなた、演舞は見なくていいの?」

ダイヤ「音が聞こえれば見なくても分かるの」

善子「そっ。なら食べましょう、冷めてしまわぬようにね」

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