ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「広辞苑を用意して……内浦の歴史書を取り出して……ことわざ見て……中学生の時の英語……千歌のお家は旅館で……」
千歌「のわぁぁ〜〜」
うつ伏せになってため息を漏らした千歌ちゃんは、その手を伸ばしてバタバタと振っていました。よく見ると、足も同じように揺れています。
ルビィ「うゆぅ……」
斜め向かいの席に座っていたルビィちゃんも、精魂が尽きたみたいにうなだれています。アイスクリームみたいに溶けそうで、なんだか可愛らしい。曜ちゃんはそんな二人を、応援しながら、そして慰めながら、うちわを使って仰いでいました。「ヨイショー ヨイショー」と言いながら、身体全体で振っているみたい。あぁ、こっちも応援したくなっちゃうな。応援している人を応援する人。不思議な感じで、私は曜ちゃんを応援する人に立候補します。なんて、このひと時を眺めながら思いました。
千歌「全然思いつかないよぉ〜」
さらにグテェと伸びていく千歌ちゃんは、平たいハムになってしまいそうで、対するルビィちゃんも同じように平たく平たくなってしまい、不安がよぎってしまいます。二人は伸ばした手を繋いだり離したり、暇を持て余すような手遊びを始めてしまいました。
千歌「なかゆびー」
ルビィ「こゆびー」
私と花丸ちゃんは文学本が穴あきとなった棚の前で、そんな光景を眺めていました。微笑ましい。本達も踊り出しそうです。
花丸「ルビィちゃん、活字が苦手なんだぁ」
そう言いながら手に取る文庫本の表紙には二人の男性が描かれていて、一人は体格の良い大らかな風体と、もう一人は嫌悪感を覚えるような怖い男性でした。
梨子「それは?」
花丸「"ジキルとハイド"だよ」
梨子「ちょっと怖そうだね」
花丸「そう捉えちゃうのも間違いじゃないかも」
「教えて欲しいな」と聞いてみると、嬉しそうに話し出しました。あらすじはこう。主人公である弁護士が友人のジキル博士の異変とハイドという嫌われ者の存在、そして町で起きた殺人事件といったことに巻き込まれ、全ての因果関係とは、またジキル博士とハイドが何やら交友がある、あるとしたら風貌や性格などが正反対とも言える二人にどんな繋がりがあるのか。それはミステリーのように、読み進めていくと明かされていくようで、花丸ちゃんも熱心に教えてくれています。そしてそこには大事な要素も含まれており、その要素と言ったらこの本くらいに有名であるとのことです。
梨子「借りてみようかな」
花丸「あっ、御免なさい。語りすぎちゃった」
慌てて弁明する花丸ちゃんは、両手をぶんぶんと顔の前で振っています。そしてペコんと頭を下げて「貸し出しはあちらに……」と、顔を背けながら行ってしまいました。私も後を追いかけます。そういえば静かだなぁと思っていたら、曜ちゃんは片手でうちわをしっかりと握りながら、頭を机の上に乗せて眠っていました。ちょこっと口が開いていて、モゴモゴしています。楽しい夢でも見ているのかな、食べ物の夢かな。
花丸「そういえば図書カード作ってなかったよね」
梨子「うん、色々あって図書室へは足を運んでなかったから」
花丸「ここに記入してくれれば……」
私は氏名とクラス、主席番号を図書カードに記入して、花丸ちゃんに渡しました。
花丸「これでいつでも借りに来れるよ」
次に、書名と貸出日などを花丸ちゃんが書き込んでくれました。
花丸「これで完了です〜」
梨子「ありがとう」
善子「私のもいい?」
花丸「あ、うん」
タイミングよく善子ちゃんが本を差し出します。
梨子「どんな本借りたの?」
善子「"人間失格"よ」
梨子「へ〜 難しそう。もう一つは?」
善子「フェヌ・ファイ・フランシーの"つれないエンゼル"」
梨子「あっ、それ私も持ってる」
善子「そうなの? 梨子も読んだりするのね」
花丸「うーん、この本あったかなぁ」
梨子「短編が多くて、ヨーロッパ文学? って言うのかな。自然の描き方が綺麗なの」
善子「素敵ね、今からワクワクする」
花丸「私はまだ読んだことないなぁ、今度借りようかな」
梨子「なら、私のあとちょっとで、読み終わったら持って来るよ」
花丸「わ〜 ありがとう」
太宰治「人間失格」
ロバート・ルイス・スティーヴンソン「ジキルとハイド」