ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「君が眠る間に、世界が回っているとして」
少しだけ熱が引いた気がした。
首を傾けた先に、あじ出しの香りがする茶碗が置かれていた。小鉢にたくあんが並べられ、冷えていそうなコップもある。
じぃじが用意してくれたのかな。
私は軽い咳をして、上掛けを外した。状態を起こすと骨と関節が軋む。音が体内で響き、鈍ってしまっているなと今日を後悔する。最近、うまくいかないことが増えてきたと、そんな気もする。あぁ、なんだかネガティブだな。きっと熱のせいだ。腕を伸ばして、その理由を明確にするために体温計を掴む。みしみし。体温計がダンベルくらい重たく感じる。頭の辺りは快晴だが身体は正直に辛さを表現する。ベットの中でごそごそと身を捻り、脇で体温計を挟んだ。待つ間、ぼんやりとイルカの写真を見つめていた。ピッピッ。まだ熱はある。微熱。もう少しだけ寝ようかな。
千歌「果南ちゃーん……」
ドアが静かに開くと、千歌が顔を覗かせた。来ちゃったんだ。風邪をひいているというのに。
千歌「げんき?」
私を見つけると、まだ小さな声で質問した。
果南「まぁ……ぼちぼち」
千歌「はいっていーい?」
果南「熱うつっちゃうからだーめ」
千歌は交互に首を動かして、何やら忙しない。もう一人来ちゃっているんだな。
千歌「みかんあるよ」
果南「なら、そこに置いといて」
千歌「了解なのだ」
千歌はドアをそろりそろり開けて、まるで泥棒みたい。ドアが開くと、そこには梨子ちゃんがいて犯行がバレてしまったみたいに驚き、恥ずかしがって会釈した。千歌はそうとも知らずに蜜柑を机の上に置き、後ろ向きのままドアへと戻った。泥濘や積雪についた足跡を辿るように。戻った証拠を残さない努力。まぁ入る足跡が残っている時点で失敗ではあるんだろうけど。私はベットの中で、その光景を柔らかく見ていた。
千歌「では、退散するのだ」
梨子「お大事に」
果南「うん、ありがとう」
二人がゆっくりとドアを閉めた。振動さえも負担が掛かるだろうと思ったのか、テトリスみたいにかっちりとハマった。私はベットの中でもぞもぞと寝返りをうって眠りにつこうと考えた。今度も、深い眠りにつけそうだ。
暗闇の中、遠くで千歌がじぃじと話しているのが聞こえる。お客さんの笑い声も。そろそろ夏が来る。ダイビング目的の観光客も増えてきた。私はゆっくりと潜り始めている。暗い暗い深海の中へ。あぁ、私が寝込んでしまっている間にも世界は回っているんだなぁ。この夢の海はどこまで続いてるのかな。