ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「熱なんて出たことないのに……」
高熱。おでこはあつあつ。ここにお鍋を置いて沸騰させる。ぐつぐつあつあつ。おでんが出来上がり。がんもどきに煮卵にちくわぶ。どれも美味しくてほふほふあつあつ。これを食べよう、あれも食べよう。急いでしまってあちちのち。下唇と舌が熱せられて、慌てて口に逃げ込む。ついでにおでん達も一緒に連れてこなくちゃ。もう、私の空腹は満たされないのに。
何事もない部屋の中で、蜜柑色のベットに収まる。少しだけ鼻をかみたい。上体を動かしたって届かないくらいティッシュ箱が遠い。そもそも手を伸ばすやる気もないのだ。私はμ'sのポスターを睨んだ。自分の不甲斐なさが気に食わない。まぁ、しょうがないところではあるんだけど、納得はできない。私はもう一度μ'sのポスターを見た。
「輝きたいんだよね!?」
「えっ……?」
突然の呼びかけに私は上体を起こしそうになった。部屋に誰かがいる驚きと、何よりそれは千歌自身を示していたからだ。
「驚かしちゃダメだよ、千歌ちゃん、あ、私もチカだったのだ、あれ?」
「あぇ?」
目の前にいる千歌を注意したのは紛れもなく千歌で、右手にネギを持ちながら左手にそろばんを握っていた。
「あごめんね、千歌ちゃん。やっぱり目指す目標の話をすると、どーしても熱くなっちゃって。あーこれからμ'sに近づいていくんだって!」
私が見たことも思いつくこともないだろうピカピカの衣装を纏った千歌ーーつまりは最初に声を掛けたものーーは私に熱を伝染させるかのように燃えたぎる情熱を語った。もうすでに、私は熱を出しているのだけれど。
「千歌ちゃんの言う通りだね。私もこの輝きを目指したい。どこに何があるか分からない。けど、私は私を見つけたい」
ネギそろばんの千歌は、そう言って瞳をきらりとさせた。グータッチをして、ハイタッチをして、お尻をポンと合わせた。そして二人は互いに言葉を交わしていた。私がいなくてもそれは成立していた。でもずっと、私に語りかけているような気もしていた。
「普通星に生まれた普通怪獣ーー私は何十回だって手を伸ばして、何十回だって信じてたんだ」
キラキラした衣装を着た千歌の言葉は、潮騒を聴かせる海のようにシンプルで爽快。春を通り越して夏を気づかせる。
「すごいすごい! 千歌ちゃんはカッコいいよー!」
ネギそろばんの千歌が弾んで見せて、場は埃が舞うわけでもなく、正しく私の部屋なんだけど私を突き放してしまっているような部屋の中で、私は私たちを見ていた。
「こほんっこほん。あの、ちか達は何者なの?」
熱のせいなのか、夢のせいなのか、これが夢なのかどうかもよく分からないほどぼやけてしまっているけど、私は正体を突き止めてやろうと思った。でも、頭ははっきりとしないままこの光景を眺めている。
「それは決まってるよ! 千歌だよ!」
さも当然のようにキラキラした衣装を着た千歌は叫ぶ。
「不思議じゃないよ。そういうことなんだよ」
ネギそろばんの千歌もそれに同意する。そして「ふふっ」と笑い、キラキラした衣装を着た千歌の肩をポンと叩いた。二人はまるで打ち合せ済みのセリフを言うように首で合図を取って言った。
「こんな名前はどう!? ーーー」