ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜   作:カーテンと手袋

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寝た。起きた。夜遅く。

「並べ始めると身勝手で、放り投げるとそっぽ向く」

 

明日には学校へ行けそう。

背伸び。屈伸。

そして欠伸。

届いておくれ酸素。

私はもう一度、伸びをした。

空に散らばる灯りが海面を借り、絶妙に揺れながらも、我先にと瞳に飛び込んでくる。瞬きはもったいないな。星が羞恥心で逃げ出す前に、そんな情景のまま露台に立ち、木製の手すりを撫でた。背景を家にし、海は世界の背景となる。清澄だ。私は手を伸ばして、上へとやって、そのまま飛び込むイメージをした。空を食い弧を描きながら、マーメイドのふりをして水に包まれる。ぶくぶくと泡が立つ。何時になく水の中でも私は目を瞑らなかった。既往のような潮の流れ。

あっ、と戻ってくる。私はぼやけていた焦点を合わした。過度な退屈が、遊山させてしまったのかな。まごついていた視界が元に戻った後、指で望遠鏡を作った。見えているのは遠くの漁船。指の隙間を小さくする。また奥には貨物船。どんどん小さくすると、いずれ全てが見えなくなるという。そして焼け野原みたいな嫌なイメージが頭を掠める。そういえば、男の人の方が見渡せる範囲が広いらしい。まぁどうでもいいけど。

 

指の開閉を行ったり来たりしながら、私にとっては神々しい夜空を眺めている。ここは世界で一番なんて思った。地球上で星が見える一番綺麗な場所ってここなんじゃないかなと。私はロマンチスト一期生だ。

「冷たい風が吹くみたい」

カーディガンが肩に掛かった。オーデコロンの香りが微かに靡いた。少し前にウッドデッキが足音と軋んでいた。私はその音で鞠莉だなと勘付いた。

「ありがと」

ちゃおと聞き取れた挨拶を、その返事としていた。

「珍しいわね。果南が体調不良だなんて、小学生以来?」

「あんまり覚えてないや」

「果南らしい」

鞠莉は手すりに背中を預けた。軽く、首だけを仰け反って、私と同じものを見始めた。

「あれがデネブ、アルタイル」

見てないだろう指で、ぼんやりと指し示しながら私は言った。

「そんな歌があったわね」

「そんなつもりはないのに」

今度は鞠莉が指を弄び、機会を伺う。

「何事にも意味を付けたくなっちゃうの。年頃のレディはね」

そんなもんかなぁと、私は呟いたまま猫がストレッチをするみたいにお尻を突き出して、手すりに頭を預けた。頬が冷たい。

「珍しい事と言えば、果南。あなたSchool idolになったって」

「まぁ、そうかな」

「珍しい。部活動とか昔からやって来なかったのに」

「えへへ。根負けというか、家の手伝い以外もしてみたいって思って」

鞠莉も私の目の高さに、頭をデッキに預けた。私は意味不明なセンチメンタルを抱き始めた。今、頭と身体が不和になりかけている。

「楽しい?」

「ふふ、それなりにね」

「School idolは好き?」

「どうだろうなぁ。私は千歌に誘われたまま続けてて、全力で頑張るのは当たり前なんだけど、熱を持っているのかどうかは、あんまり自信ないかも」

「果南らしい。 ……真っ直ぐ過ぎるの、かなんは。それに真面目」

「まぁ良いじゃないか〜」

訝しげな眼差しを私に向けた後、鞠莉はぼんやりと呟いた。

「まだ、本調子じゃないのね」

「まぁ、さっき治ったばっかだし」

鞠莉はまた、先程までとは言わない注意深さ、それか微かな愛慕を込めて私を見つめた。

「鞠莉はやる〜?」

可笑しくなったようで、鞠莉は笑い出す。

「果南、あなた酔ったら甘えるタイプね」

そうかな。私は普通だと思うけど。デッキの頬が冷たいし、風も最高だし。うん。

「まだ風邪が残っているのかも」

静かな波に重なり、轣轆が聞こえる。じぃちゃんが帰って来たかな。

「さ。そろそろお休みしましょ。眠くないかもだけど、果南もゆっくり寝て」

私は能筆ではないから、星々の間に挟まる鞠莉を豊かに表現出来ない。景色に収まるとは、この瞬間を写真として手元に残したくなる余韻だ。夜風が吹く。右手が髪を支える。もう片方で王子に手を差し出すような滑らかな所作でデッキを撫でる。なんとなく視線もそこに落とし、階段を降りるために足元に落とす。トントンと木が鳴り、鞠莉は少しずつ下降する。まるで水平線に落ちる太陽みたいに。分かるような気がする。鞠莉が消えた後も、肩に掛かるカーディガンがオーデコロンを知らせる度に、あの木の残響が耳をくすぐる事を。

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