ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
お腹すいたなー
お腹すいたなーってお家に帰ったら
カツ丼だった!
かあっつどん!
これでもりもりだね!
「気まずくなくなくない」
沼宮「無理して助手席に乗らなくても良いのに」
そんな事は分かっているのだけど、運転をお願いしたまま私だけは、のんびり時間を過ごすなんて、申し訳ない。
善子「……大丈夫よ。これでも勇敢な方なんだから」
沼宮「性格は関係なさそうだけど」
ばつが悪い気がしてドア窓に首を向けた。淡々と海が広がり、ぽつん、ぽつんと船が浮いている。ピーカン照りね。これでは紛らわす事は出来なさそう。ドア窓の向こうはスローペースに角度が変わっていくだけで、写真を眺めているのと大差はなかった。まぁなんとなく、一度こちらに向いてしまったから、何かをしないといけない気がして、ぼんやりと船を数え始める。
沼宮「コンビニあるけど」
気まずいわね。お互いに、かしら。饗宴や居酒屋の席で話さない二人が意気投合するなんてシチュエーションがあるけど、あれは嘘ね。性格が合っていても、二人じゃね。まぁ、状況もあるし。疎外感。これだわ、これ。二人を包む疎外感。だからこそ恋に発展するのね。
(機械的な前進は感じていたが、こうも舵が切られるとは)
善子「とっ……とりあえずは大丈夫かしら」
つっかえて淀んだ後、静かにドア窓が降りた。ちょうど兎が一羽通るほど。風が私の頭を掠めるくらい。粘液質な人かと思ったけど案外気が利く。したり顔もしないし、厨二病の私を足蹴にもしないし。まぁ、攻撃してくる人の方が稀か。
沼宮「正面のグローブボックスに飴と、ここ(センターコンソール)にーー」
(煌びやかな建造物だが、統制は取れていないのだな。この国は分権されているのか)
私は常に拮抗している。そして抵抗している。このヨハネと名乗る天使の声と、自我と、車酔いのパワーバランスを保つ為に。でも。
善子「やっぱり……次のコンビニで停めてくれる?」
駐車場でスポーツ飲料を飲む。運転手は御手洗いに向かった。太陽が痛い。しかし、これでも午後には雨になるらしい。だったらこの暑さなんとかならないのかしら。
沼宮「うい」
手軽な挨拶で戻った彼は、コンビニで買ったお茶を一口飲んだ。私も手短に手で反応する。
沼宮「アシストグリップ。握ってたでしょ」
善子「?」
沼宮「左手のさ、こうやって、ぎゅって」
善子「確かに」
沼宮「緊張してると握るらしい」
ギクッと効果音が現れるくらい動揺してしまったようで、彼は笑い出した。
沼宮「後ろで横になりなよ。着いたら起こすから。だって、ちょっとキツイでしょ。酔いとか」
善子「でも……」
沼宮「今日は美術館に行くのが目的でしょ。それまでに疲れたら元も子もない。それに、お互いに気まずいのが耐えられなくない?」
善子「一理あるわ」
鋭く簡単に言われると、思わず笑い出しそうになる。良心の呵責が若干和らいだ。
沼宮「運転好きだから。しょっちゅう連中とか沼津まで送り届けてるし」
善子「じゃあ……お言葉に甘えることにする」