ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「眠るまで」
「梨子」
部屋がノックされた。
「なに?」
私は部屋と廊下の境界線を越える。
「楓ちゃんから」
お母さんが優しい笑顔を滲ませながら、手に持った電話の子機を私に渡した。
「久しぶり〜 元気してた?」
受け取って、お母さんが背中を向いて間も無く、そう大きな声が響いた。
「久しぶり。何とか元気だよ」
びっくりして慌てて、私はお母さんの視線から逃げるように部屋に戻った。
「お疲れの感じ?」
「まぁ、うん。最近目覚めが悪くって」
「えー お肌の天敵ジャーン」
美しい金切り声と言うと変だけど、少し裏返った音程は懐かしさを感じさせる。
「むー そうなんだけどね」
「クラスで一番きめ細かい肌の持ち主がねぇ。たいへんだぁ」
「そっ、そうなんじゃないでしょ!」
「まぁまぁ、そうだ、どう? 最近は。当てたあげよっか? えっとねー どうせねー 美術室で油を売ってるんでしょ〜」
「ぶっぶー」
「、えぇ、」
「違います」
「すぐうちに帰っている」
「残念です」
「勉学は友でしょ?」
「はっ恥ずかしいからやめて……」
「もう絵は描いてないの?」
「たまに描く感じかな」
「もしかして、」
「うん」
「彼氏出来た!?」
「えぇっ、ちっ、ちがう違う!そんなんじゃ無いから!」
「ほんとに?」
「そっそうだよ、うつつを抜かしている場合じゃないの!」
「なんだー お揃いかと思ったのにー」
「うん、お揃い……って、え?」
「そういえば友達できた?」
「ちょっと待って! 楓彼氏出来たの!?」
「出来たよー 脱出ゲームで一目惚れらしくてすぐに」
「へっ、へー……」
「私も良いなって思ってて、あれって知らない人と組む機会があるから、実質合コンだよねー」
「それって危ない人なんじゃないの!?」
「出た。梨子は偏見持ちすぎだよ」
「歳は?」
「高校生のプランだから同い年」
「へっ、へー……」
「そうだそうだ、油打ってたんだっけ?」
「違いますー 絵を描くんですー」
「やっぱりそうじゃん!」
「ちょっと、違う違う! そっそれは、とっとちかくずるい! ずるいです!」
「噛んでて可愛いー」
「もう! もう!」
「あはは。まぁでも、梨子楽しそうで安心した」
「あ、うん」
「不安で地面にめり込みそうだったもんね」
「たけのこじゃありません。まぁ、元気にやってるかな。最初の頃は……確かに美術室にこもってたけど……」
「へー あのりこちが、太陽の下にね、へー」
「私も成長しているんですよ」
「遠く離れたー って感じがするー」
「そうだね」
「これはなかなか」
「二人で地図帳開いた時は、近いねなんて言ってたのにね」
「そうそう。測ったら一センチじゃん。ビューンって行けそうな気しちゃうよ」
「遠かったよ。思ってたよりも」
「……梨子……もしかして泣いてるの」
「泣いてませんよ」
「ええ〜 感動のシーンだったじゃん」
「違います。あっ、そうだ。7月もしかしたら、東京に行くかも」
「そうなの? でもかもなの?」
「うん。だから行けるようにお祈りしてて」
「なにそれ。まぁ友達として千円賽銭箱に入れて来るね」
「止めるべきか迷っちゃう」