ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「指を畳むような快楽」
信号に堰き止められないまま驀進を続けた車は、ナビの予定時間よりも早く目的地に着いた。こういう時、悪い方向へと世界は傾くのだけど、彼は幸運の持ち主なのかもね。
私達はキップを買ったままの未亡人
何者にも精査されない孤独を抱いた
静かな反発と無惨な竜胆
滑り落ちること
謗る暁の木漏れ日
受付で一枚のチケットを買った。常設展のほう。企画展は江戸の骨董品を行っていて、それ程私の感性を刺激しなかった。西洋や北欧であればな、なんて思ったりもしたけれど、まぁそれもそこまでは感じさせはしないだろう。でも結局は、興味や本意があろうとなかろうと、厄介な同居人の為に人肌脱ぐ羽目になるのは必然に近い。だって、自分で言うのもなんだけど、優しい心の持ち主なんだもの。例え堕天使であってもね。
(すまないな。このようないざこざに)
運転手は私を下ろした後、三保の松原を見に行くとエンジンを吹かせた。そして一人になるはずもなく、私は内側に眼を向ける。
「良いわよ。一週間も一緒に入れば慣れたから」
静物とタイトルが書かれた絵画を通り過ぎる。ナイフやラ・フランス、暗い背景。
(そのことではないが、まぁそれもそうか)
印象派の滲んだ湖。陽。熟女の顔。
「その事を話すとしたら、梨子が動き出すのは今夜……なのね」
並ぶ絵画の大きさは違う。背丈を超える人物画。リュックのような小ささ。
(あぁ、同種同士、元は同じ本を媒体にしたまやかしだから……か。それに、呑み込まれる悦ほど単純に近い)
子供の写真。中世の日焼け。もろぽいど、
「梨子……」
(ロダン……)
奥。それは入口から、それとも展示の心から離れた場所なのか、私は上手くキャッチが出来なくて、祈るようにヨハネを見ていたーーそれはまた特別な現象で、正しく俯瞰に見ているはずだけど、背景や展示に重なる自分の姿を見てしまっているような、写真を眺めているような、でも意識すると途端に消えてしまい露わになった作品が淋しく残るといった、不確定と確定が、幻と実在が両方とも混在してしまっている感覚だったーーが、眩しい太陽の残像が網膜に焼き付いている時みたいに、チカチカと点滅している。
彼女は暫く立っていた。
まるで付随した考える人のように。
地獄の門。ロダン。フランス。
私は後輩の花丸に聞いた話を思い出す。
「フェヌ・ファイ・フランシー……」
私はそっと呟いた。
彼女はその名を知らないはずだから。
そうして、地球が周るまま。
本を開いて、復唱した。
綺麗な一文を。