ラブライブサンシャイン 〜if 男子がいたら〜 作:カーテンと手袋
「僕たち蜜柑」
よしみ「ごめんねぇ、手伝ってもらっちゃって」
沼宮「お互い様だから」
クラッチが繋がり、進み出した私道には砂利が散乱していた。年代を感じるコンクリートは乾燥した肌のようにひび割れ、凹み、小さなカスを生み出している。多少荒い運転になってしまうと、沼宮は一言付け加えアクセルを踏んだ。左手をひょいっと上にあげて、よしみもそれに反応する。ガタガタと古いジェットコースターを思わせる揺れが続いた。
傾斜は短く終わり、なだらかな道を進み始めた。しかし沼宮は一抹の不安を拭い去る事はできなかった。いくつもの砂利がタイヤの下敷きになっている。その中に鋭利な石が混ざっていたら、沼宮はその不安を感じながらハンドルを握り締めていた。
よしみ「雨降りそうだよね」
沼宮「天気予報見てなかった」
よしみ「私も、だから勘」
私道から県道に合流し、沼津方面へ車を走らせる。高低差と横へうねる道路はこれからも現れる。その間に海が視界に入った。
よしみ「あ、千歌だ」
そう呟いたよしみに反応して、沼宮は助手席側の窓を覗いた。
沼宮「渡辺もいる」
よしみ「ほんとだ」
すぐに視界から外れる浜辺の二人を思い出しながら会話を続けた。
よしみ「千歌、スクールアイドルを始めたんだって」
沼宮「スクールアイドル?」
よしみ「文字の通りだよ」
そう言われると、沼宮はガムを噛むようにスクールアイドルという言葉を咀嚼した。
よしみ「今回は本気らしいよ」
沼宮「どうだろ」
今までを思い返しながら笑った。取っ掛かりは誰よりも熱い高海千歌のことを、沼宮とよしみは心配も込めながら。
トイレに行くわけでもなく、必要な物を買うわけでもなく軽トラを駐車場に停めたのは、塩並と小木が沼宮の乗った軽トラにアピールをしていたからだった。手をあげたり、振ったり、全身を使って主張する彼らを沼宮は放っておくことが出来なかった。
沼宮「どうしたの」
小木「のしぇてくれ〜」
運転席の窓から応答した沼宮に、小木はいつもの台詞を述べた。沼宮は「無理、ほら」と左手で小木の視線を誘導し、助手席のよしみへとバトンタッチした。
よしみ「やっほ〜 新入生諸君〜」
塩並「乗ってたのか」
よしみ「頼みごと頼んでて」
小木「荷台は荷台!」
沼宮「無理無理」
塩並「蜜柑積んである」
よしみ「ごめんね」
沼宮「蜜柑さ、届けないと行けないんだよ」
小木「役にたたねぇぜ」
沼宮「あはは、殴るぞ」
塩並「これじゃしょうがないな」
沼宮「これ、送り届けた後ならいいけど」
塩並「いや大丈夫」
小木「歩くのが人間なんだよ」
よしみ「いやいや、乗せてって言ってたよ」
塩並「そろそろ行く、悪りぃ止めて」
沼宮「おう、それじゃ」
よしみ「あっそうだ。蜜柑持っていって」
塩並「いいの?」
よしみ「うん」
小木「やった!」