ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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失踪なんてしません(めちゃくちゃ遅れてすみません)


Ep.11 襲撃者

<サツキside>

 

片手直剣カテゴリOSS"デッドリーダンス"

 

威力が低い単発技だが、ほぼノーモーションからの発動が可能な緊急対処用OSS。

 

 

シリカに迫った敵の拳を真紅の刀身が的確に捉え、両断する。手首から拳がずれ落ちて敵の動きが止まり、好機と見た俺は追撃を開始する。

 

片手直剣カテゴリ三連撃技"シャープネイル"

片手斧カテゴリ水平三連撃技"アーデント・レンド"

 

六つの斬撃が敵を刻む。そこで止まることなく体を回転させる。

 

片手直剣カテゴリ単発重技"プレダトリー・ガウジ"

 

斬り下ろしたその一撃が敵の右肩から左腹部へ鮮やかな一線を描く。クリティカル判定を意味する派手なエフェクトが宙を舞った。だが──

 

「──ッ!」

 

連撃技を立て続けに喰らったのに、敵は不気味に嗤っていた。視線が交差する。新しい玩具を見つけた時の子供のようなその目に今までにない気味の悪さを感じた俺は、咄嗟に次の技を放った。

 

両手剣カテゴリ二連撃技"リミック・エルプション"

 

下段から敵の顎を斬り上げ、上段から地面に叩き斬る。またしてもクリティカル判定。凄まじい勢いで叩きつけられた敵は、そのまま数メートル地面を吹っ飛んで仰向けに転がった。

 

「サ、サツキさん・・・!」

 

左手でシリカに退るように伝える。

敵は動きを見せないが、まだ油断できない。ディメンションを握り直して敵の様子を見ながら、俺は頭をフル回転させて思考を加速させる。

 

 

蘇生アイテムを狙ってロザリアたちが襲って来ることは昨夜アルゴから聞いていた。タイタンズハンドの犠牲となったギルドの生き残りからの依頼を引き受けた俺は、実力の差を見せつけて諦めさせ、大人しくしてから回廊結晶で収監する予定だった。だが突然現れた謎の敵によって、状況は大きく変わってしまった。

 

(さっきロザリアで九人目と言っていた。なら、タイタンズハンドは全滅か)

 

タイタンズハンドのメンバーが現れなかったのはすでに殺されていたからだろう。俺たちに気付かれないように殺したのか、或いは速すぎて俺たちが気付かなかったのか。確実に言えるのは、この正体不明の敵が只者ではないということだ。俺の連撃技をまともに喰らってHPを全損していないことからそう言える。

 

クリティカルヒットが多発したため総ダメージ量はフル装備の攻略組プレイヤーのHPを黄色に変えるくらいはあるだろう。今の様に決まればタンクでも三割は削れる。なので防具の類を身に付けていない敵はHPを全損してもおかしくないのだ。しかし──

 

「いいなぁ・・・いいなぁ・・・最高の気分だ」

 

敵はゆっくりと立ち上がった。その動きから大ダメージを受けたとは思えない。それは外見からも明らかだった。

 

「お前は・・・何だ?」

 

連撃技による斬撃痕、斬り落としたはずの拳がすでに再生している。これは有り得ないことだった。

 

通常、体についた傷や欠損した部位の回復にはそれなりの時間がかかる。手の切断は最短でも十五分は必要だ。だが敵は俺の連撃技が終わってほんの数秒で完治している。

 

さらに、敵のHPが急激に回復している(・・・・・・・・・・・・・・)のだ。

 

回復アイテムを使ったわけではない。ただ立っているだけだが、頭上に表示されたHPバーは確かな速度で増え続け、黄色から緑色にその色を変える。

 

「教えても良いけどよぉ・・・オレも聞きてぇな」

 

「・・・?」

 

「オレの手を斬った技に、絶え間ない連続攻撃。オマエも何か隠してるんだろぉ?腹割って話そうぜ」

 

それが、ニヤニヤと笑みを浮かべた敵の本心なのか挑発なのか分からなかった。

 

視線を敵に向けたまま、構えを崩さず後方のシリカに指示を出す。

 

「・・・シリカ、今すぐ転移結晶で街に戻れ」

 

正直、このままシリカを守りながら戦闘をする自信がなかった。この敵とは全力を出さなければ勝機がないと直感している。

 

「・・・わかりました」

 

一瞬の迷いを見せたものの、シリカは俺の指示通りに転移結晶を取り出す。転移する直前に絞り出したような声で言った。

 

「・・・昨日の宿屋で、待ってます。ピナの蘇生のお祝い、一緒にやりましょう」

 

俺は力強く頷く。

 

「ああ。すぐ行くから、待ってて」

 

結晶が砕ける音とともにシリカの気配が消える。感じるのは敵の圧迫感と燃え盛る闘気のみ。改めて対峙した正体不明の敵に意識を集中させる。

 

「いいなぁいいなぁ!見ただけで分かるぞ。お前、攻略組だろう?初めて戦うなぁ、興奮するなぁ!」

 

敵が地を蹴り、一直線に俺まで迫る。俺は充分に引き付けてから姿勢を低くし、敵が振り払った裏拳を避けてからカウンターを見舞う。だが──

 

「シャァッッ!!」

 

「!」

 

振り払った反動をそのまま生かし、今度は蹴りを放ってきた。反撃のソードスキルを中断して愛剣でそれを受ける。刀身が悲鳴をあげ、完全に蹴りの威力を殺すことが出来ず後方へ大きく飛ばされる。

 

「ははははっ!もっとだもっと!!」

 

敵は止まることなく俺を追従して拳を振るう。左右から迫る高速の連撃に対して最適なソードスキル──同じく左右へのカタナカテゴリ二連撃技"ダンス・マカブレ"で受ける。この技は特殊効果として幻惑効果がある。回避するのは至難の業だ。

 

「おもしれぇなぁ!オラッ!!」

 

だが敵は回避などするつもりはない。軌道そのままに拳を打ち込み、ディメンションにあっさりと腕を両断される。

 

「無茶苦茶だ・・・!」

 

その戦い方に俺は動揺を隠せなかった。敵はHPが減ること、死に近付くことを恐れていないのだ。それは現実を受け入れられずSAOがただのゲームだと思い込んでいるのか、俺の想像を超える胆力なのか、それとも絶対に死なないという自信があるのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「オラオラオラァ!」

 

「チッ!」

 

接近した敵の胴に右斜めからの斬り下ろしを見舞う。そこから繋げて七連撃技"メテオブレイク"を放つ。斬り上げ、左肩タックル、中段右水平斬り、右肩タックル、上段左水平斬りと、ヒットする毎に敵のHPは大きく減少していく。しかし──

 

(ッ!?なんて回復速度だ・・・!!)

 

減少したと同時に、HPはまた回復を始めた。その速度はハイポーションを上回っている。七連撃目がヒットした瞬間で、すでに総ダメージ量の七割の回復が終わっていて、数秒後には全快してしまう。

 

「はっ・・・ハハハハッッ!!!」

 

その狂った笑いに、俺はこのままでは勝てないと確信した。敵に目を向けたまま最低限の動きでメニューを呼び出し、気づかれないように操作する。

 

「・・・強いな」

 

「そうだろう!だがお前も強い!誇って良いぞ、その強さは」

 

「勘違いするな」

 

ピタッと敵の表情が固まった。スっと笑みが消え、怒気を孕んだ眼光が俺を捉える。

 

「・・・なんだと」

 

「俺が言ったのは、お前のスキルの事だ。尋常じゃない回復力、正直それがある限り勝てる気がしない。逆を言えば、それがないなら勝てる気しかしない。なんの工夫もなく拳を振り回してるだけの脳筋なんだよ、お前は」

 

「・・・」

 

敵は黙ったまま静かに空を見上げる。大きく息を吸い込んで目を閉じると、狂った様に笑い出した。

 

「ハハハハハハハッッ!最高だ、やっぱりお前は最高だよ!!あぁ!確かに俺は脳筋だが、この世界は力が全てだ!弱ければ生きられない中で俺は生きている!何人も殺してきた!勝って生き残ったヤツが正しいんだよ!!!」

 

敵は右脚を前に踏み込み、何らかの構えを取った。無駄のないその動きに俺は警戒を強める。

 

「殺してしまう前に教えてくれ、お前の名を!」

 

「・・・KoBの"剣豪"サツキ」

 

「"剣豪"サツキ!覚えておけ、俺は"不滅"のカグマ!お前を殺し、アインクラッドを破壊する者だ!!」

 

両手を紅いライトエフェクトが包み込む。敵が初めて見せるソードスキル──俺は右手で最後の操作を行った。

 

凄まじい勢いで地を蹴った敵が急接近する。それに合わせて俺も走り出す。同時に左手を背中に伸ばして現れたソレを握り、勢いよく抜き去った。

 

片手直剣カテゴリ単発技"スラント"

 

カタルシスが描く純白の軌跡が敵の右手を斬り飛ばす。逆から迫るもう一撃をディメンションで受け流し、体を回転させて二本の愛剣で敵の頸を狙う。

 

「──シッ!」

 

だがカグマは流石の反応速度で後退してこれを避けた。剣先が掠り、わずかながらにHPが減少する。逃がさまいと俺は愛剣を構え、必殺のOSSで一気に勝負に出た。

 

"擬似二刀流"十三連撃技"ドゥーム・フェイム"

 

フロアボスをも屠った超連撃が"不滅"を名乗るカグマを削る。一撃決まる毎に急激にHPが減少していく。その速度はカグマの超回復も追い付かない。

 

「ガッ・・・!!」

 

反撃も出来ず攻撃を受け続けるカグマも、回復が追い付いていない事に気付いたのだろう。初めて動揺を見せた。

 

十撃目で残り二割になったところで、俺は勝ちを確信した。瞬間、頭に浮かんだのは人を殺すことへの罪の意識だ。

 

いくら相手が大勢の人を殺し、仲間を殺そうとしたPKだとしても、人の命を奪うことに変わりはない。彼だってSAOの被害者なのだから、どんな綺麗事を並べても罪の意識が消えることはない。

 

俺はこれから一生背負って行かなければならない。

 

十二撃目で残り数ドットとなったカグマの命の残量を余さず消すため、俺は十三撃目を振りかぶった。もう覚悟は出来ていた。

 

 

そう。

 

覚悟が出来ていたのは俺だけではなかった。

 

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

 

耳を劈く絶叫。

それは自らの死を恐れているものではなかった。

 

振り下ろされる十三撃目を凝視し、カグマは強引に上体を捻った。現実世界なら背骨が折れるであろうものだ。体を真っ二つにするはずだった十三撃目はわずかに逸れて空を斬る。俺は反撃に備えてもう片方の愛剣(カタルシス)を構えるが──

 

「シャァァァァッッ!!」

 

「!?」

 

カグマはライトエフェクトをまとった右拳を、俺の胴ではなく空振りしたディメンションに向けた。予想外の行動に反応が遅れ、刀身と拳がぶつかり合いそして──

 

 

パキィィィィンッ!!

 

 

愛剣の悲鳴が響き渡り、真紅の刀身が半ばから砕け散った。




更新はめっさ遅いけど失踪はしないのでご安心とこれからもよろしくお願いします。
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