ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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「オリ主×アスナ」の需要があると聞いてモチベ高めです。と言いつつそんな展開になってない今作です、はい。


Ep.14 思惑

<キリトside>

 

 

「援軍、感謝します」

 

それが久しぶりに再会した元相棒の第一声だった。

謎のPKとの死闘を終え、駆け付けた四人の中に彼女─KoBサブリーダー<閃光>アスナがいた。俺は、いや俺たちは驚いたと思う。まさかこんな形で再会するとは俺も、彼女ですら思っていなかっただろう。俺は驚きのあとに嬉しくも思った。だがそう思ったのは俺だけのようだ。さきの第一声がそれを証明している。

 

それも当然、俺の自業自得だ。

 

あの時、大切な存在のために攻略組を抜けると決め、かつての同士たちと決別したあの瞬間から、こうなることを決意したはずなのに。実際にその現実を目の当たりにすると、どうしても心が揺さぶられる。

 

みんなに気付かれないように、いつも通りの何気ない感じを取り繕って俺は口を開く。

 

「危なかったけど、何とかなったよ・・・じゃあ、俺はもう行くから」

 

「え、飯は─」

 

「じゃあ」

 

共に死闘をくぐり抜けた彼の声を遮って、俺は街への道を走り出す。アスナから、目を背けた責任から逃げるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト、どうしたの?」

 

逃げ帰ったホームで俺を迎えてくれた彼女に一言だけ返して俺は自室に籠った。

 

 

 

 

♦️

 

 

 

<サツキside>

 

 

「どーゆーこった」

 

走り去って行く黒衣の剣士を見詰めながら俺は思わず呟いた。その背中に、どこか後悔の念を感じるのは過去の出来事のせいか。それに副団長が関係しているのは先程の二人の態度からも分かる。気にはなるが追求はしない。誰にでも触れられたくない過去の一つや二つはあるだろう。

 

「なんでアイツが・・・」

 

ノノはいつもと真逆な態度で嫌悪感丸出しの声をこぼした。

 

「知り合い?」

 

「元ね。二度と会わないと思ってたけど」

 

ふんと鼻を鳴らすノノとは対称的に、シュガーは悲しそうな表情を浮かべていた。彼の背中を見続ける副団長は、今まで見た事のない表情をしていた。そこから彼女の心情を察することはできない。

 

「と、とにかく無事で良かったです、サツキさん」

 

「おう、来てくれて助かったよ。数にビビって相手が逃げてなきゃ殺られてた。シリカもありがとな」

 

「いえ!あたしなんて何にも役に立てなくて・・・間に合って本当に良かったです」

 

「帰ったら何か奢ってよね」

 

「本当はさっきの彼に奢るつもりだったけど・・・アルゲートに隠れた名店を見つけたから、そこ行くか」

 

「いいんですか!ありがとうございます!」

 

「あんな広いとこでよく見つけたわね」

 

「大都市の裏路地に隠れスポットがあるのはRPGの基本だからな・・・副団長も付き合ってくれ、色々と報告したいことがあるから」

 

「・・・ええ」

 

荒れ果てた花畑を後にして俺たちは街へ続く道を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で、どういう冗談なの?」

 

「・・・と、言うと?」

 

「だから・・・」

 

ぷるぷると震えるノノは、俺たちの前に居を構えるお世辞にも綺麗─どころか誰がどう見てもボロッボロの店を指差しながら大声を上げた。

 

「これのどこが名店なのよ!今にも潰れそうじゃない!」

 

「なんて失礼なことを・・・って、まぁその通りなんだけど」

 

「お、落ち着いてくださいノノさん。まずは食べてみましょう、ね?」

 

「そうですよ、意外と美味しいかもしれませんし」

 

シュガーとシリカが諭しつつ店に入ると、中もやはりボロッボロ。外見だけなのでは?と僅かな希望を抱いていたノノは再び不満が爆発しそうになるが、なんとか堪えて壁際の席についた。みんなもそれに続いて着席すると木製の椅子がギシギシと音を立てる。

 

「で、何が美味しいの?ここは」

 

「アルゲートそば。まぁこれしかないんだけど」

 

「とんだ名店ね・・・」

 

おっちゃん店主にアルゲートそば五人分を注文して全員分のコップに水を並々まで注ぐ。

 

「ここの店主はアインクラッドで一番やる気のないNPCだと思う。まぁ現実味があって気に入っているんだけど」

 

「確かに・・・お店の雰囲気といいNPCの人間味といい、本当に現実世界みたいですね」

 

「そうですね、老舗みたいであたしは好きです!」

 

「この際、美味しければなんでも良いわ」

 

「・・・」

 

水を一口飲んで咳払いを一つ。幾分か真剣さを増して、俺はさきの死闘を繰り広げた”不滅”について話し始めた。

 

「ここから真剣な話なんだけど」

 

みんなも真剣な顔で俺の話に耳を傾けた。

 

「襲って来たヤツは、簡単に言えば()()()()()()()()()()P()K()だ」

 

「ユニークスキル!?」

 

「本当ですか!?」

 

「間違いないと思う」

 

「ユニークスキルって・・・神聖剣みたいなやつですよね?」

 

「そうそう」

 

三人は流石に驚いた様子だ。今まで沈黙していた副団長が冷静を保ちつつ口を開く。

 

「どのようなスキルですか?」

 

「回復系だな。それもアホみたいな速度だった。ほぼ不死身と言っていいほどのな」

 

「・・・不死身」

 

戦闘時回復(バトルヒーリング)的な感じだな。ダメージ受けた瞬間から毎秒・・・1000以上は回復してたと思う。連撃を喰らわしてる間なんかは回復量がダメージ量を上回って、減るどころか逆にHP増えてたし」

 

「サツキさんのソードスキルのダメージ量を上回るなら戦闘時回復(バトルヒーリング)のように10秒毎じゃなく・・・常時回復の可能性がありますね」

 

さきの戦闘を振り返ると、シュガーの考察通りに常時回復の説が正しいと思う。十三連撃(ドゥーム・フェイム)を見舞ってる時も、ヤツのHPバーは鬩ぎ合うように動いていた。戦闘時回復(バトルヒーリング)のような回復の仕方なら、HPバーは減少から増加の動きをするはずだ。

 

「部位欠損も数秒で完治してたな」

 

「・・・まさに不死身ですね」

 

「他にわかることは?」

 

「ええと・・・剣士ってよりは武闘家?みたいな格好だった。ボロボロのシャツとズボンで裸足。武器は持ってなくて、攻撃は体術スキルを使ってきたな」

 

「武闘家・・・」

 

「そういうスタイルのプレイヤーも結構いますからね。そこから探すのは難しそうです」

 

「中層でもたまに見かけますよ」

 

「・・・」

 

「名前は?何か言ってませんでしたか?」

 

狂気に満ちたヤツの声を思い出す。

 

「アインクラッドを破壊する者─”不滅”のカグマと名乗ってた」

 

「不滅の・・・」

 

「カグマ・・・」

 

シュガーと副団長の呟きは、白いドンブリを持って来たおっちゃん店主の「お待ち」にかき消された。

 

 

 

 

その後アルゴに情報を提供し、瞬く間に”不滅”の名はアインクラッド中に知れ渡った。攻略組でも倒せなかったPKとして恐れられたが、あの死闘以来カグマが姿を現すことはなかった。

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

 

失わない。喪いたくない。

 

そう思っていても、願っても、縋っても。

 

世界に絶対なんてものはない。

 

この世界での弱者には、守られる存在には、傍観者には、待つだけの者には、何の権利もない。

 

どれだけ自分を憎もうとも、恨もうとも、蔑もうとも。間違えた選択と過去は変わらない、変えられない。

 

 

──それでも。

 

 

これからは、未来は変えられる。

 

命を賭して守ってくれた最愛の人に、自分に意味を持たせるために剣を握った。仮装の体を奮い立たせた。死の淵から何度も這い上がった。

 

全ては醜いエゴイズムのため。

 

”不滅”はいらない。存在してはいけない。

 

 

「・・・やっぱり生きてたんだ」

 

 

沸き立つ怒りと憎しみで復讐の刃を研ぐ。

まだ見ぬ”不滅”との邂逅を夢見て。




しばらくオリジナル展開が続きます。
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