ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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早くもあの男の登場。


Ep.1 デュエル

<サツキside>

 

俺は今超絶に焦っている。

別に危険な状況でもなければ圏外でもないのだが。

 

朝靄が漂う街を全速力で駆ける。朝っぱらからこんなことをしてると周りの目が気になるが構っていられない。

 

「ったく・・・急過ぎるだろ!」

 

事の発端は5分前、俺がまだ惰眠を貪っていた時だった。

 

フレンドからのメッセージ受信を知らせる音で目を覚まして、その内容を確認した俺は飛び起きた。

 

『おはようございます。

昨日の件ですが、9時にアルゲート北門に集合で』

 

ちなみにその時の時刻は8時50分。

寝起きの頭では一瞬理解が追い付かなかった。が、俺とて最前線をソロで戦ってきたんだ。すぐに思考を切り替えて準備を整えて今に至る。

 

転移門に飛び込んでアルゲートを指定。視界が開けると同時にまた走り出す。

 

北門が近付くと、何やら人集りができていた。

 

「なんだ?」

 

速度を落として集まった人たちの視線を追ってみると、俺は思わずうへぇと顔を顰めた。

 

「・・・時間通りね」

 

そこには、どこかとても不機嫌そうな副団長と、ギルドの隊服を着た男がいた。

 

「・・・おはようございます」

 

とりあえず挨拶をする。

 

「おはようございます。間に合わないかと思っていました・・・朝からご苦労さまです」

 

「ええ、そりゃどうも」

 

非常に腹ただしいがここは堪える。

 

「んで、そっちのおっさんは?」

 

「おっさん、だと?」

 

あ。地雷っぽい。

 

「私はアスナ様の護衛であるクラディールだ!よく覚えておけ三下ァ!」

 

うへぇ、面倒だけど刺激しないようにしないと。

 

「分かったよクラさん。で、なんで付いて来てるの?」

 

「貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様を任せられないからだ!身の程を知れ!」

 

「えぇ・・・誘ったのは副団長だよ」

 

「さっきからこんな調子なのよ」

 

副団長もそれなりの苦労があるようだ。

 

「では行くぞ!くれぐれも私とアスナ様の足を引っ張ることのないようにな!」

 

ズカズカと進み始めたクラディールに、俺は思わず言った。

 

「え?足でまといが勘弁なのはこっちも同じだよ」

 

反射的に発したそれは思ってた以上のボリュームで、ザワついていた人集りもシーンとなった。クラディールもピタッと動きを止め、副団長からは驚いた気配を感じる。

 

「・・・なんだと?」

 

やっちまったと思いつつも、怒りからか軋んだ声のクラディールに、俺はどうにでもなれと続ける。

 

「いや、副団長一人なら万が一の状況でも対処できる自信はあるけど流石に2人はねー・・・ちょっと厳しいかなって」

 

「・・・それは、私とアスナ様より貴様の方が強いという意味か?」

 

「ん?んーまぁそういうことだな」

 

「ふざっ、ふざけるなぁぁぁ!!」

 

怒声を上げて俺との距離を詰めてくるクラディール。どうやら相当興奮しているようだ。

 

「ならそれを証明してみろ!」

 

手早くウインドウ操作を始めたクラディール。すぐに俺の眼前にデュエル申請が出現した。躊躇うことなくYesボタンを押す。

 

「副団長」

 

「・・・なに」

 

カウントダウンを横目にクラディールとの距離を取りながら、事のいきさつを見守る副団長に話しかける。

 

「このデュエルで俺が勝ったら、もう解散で良いですよね?」

 

「・・・良いわ。勝ったらね」

 

「ありがとうございます」

 

「おい!KoB同士のデュエルだってよ!」

 

「アスナさんを賭けた男と男の勝負だ!」

 

「「「うおおおぉぉぉ!!」」」

 

何やら大盛り上がりだし大変な誤解をされているが今は気にしてられない。後で情報屋を買収すれば済む話だ。

 

クラディールが派手な装飾の施された両手剣を引き抜く。

 

「ご覧くださいアスナ様!このガキよりも私の方が強いことを証明します!!」

 

残り10秒。

クラディールが構えを取る。

その様から相手の初動モーションを予測。

今までの膨大な戦闘経験から俺が導き出した最適のソードスキルは─

 

「うぉぉぉぉおらぁぁぁぁ!!!」

 

カウント0と同時に突進してきたクラディール。

 

予測通り。

 

俺は背中から愛剣を鞘ごと下ろし、居合の構えを取る。その動きに、クラディールはもちろん観衆たちからも驚愕した様子が伝わってくる。

 

それもそうだ。

 

俺の愛剣は片手剣。普通は居合の構えなんてしない。片手直剣カテゴリにはここから発動できるソードスキルがないからだ。

 

そう、"普通"なら。

 

「シネェェェッッ!」

 

渾身の一撃であろうそれを振りかぶったクラディールを間合いまで引き付け、俺は愛剣を抜いた。

 

一撃目。

()()()カテゴリソードスキル・辻風

 

力強いシステムアシストに自分の動きをシンクロさせて速度をブースト。手元が霞むほどの速度で抜き払った愛剣を、振り下ろされたクラディールの両手剣に見舞う。耳を劈く大音響と共に両手剣は半ばからへし折れ、その勢いでクラディールは大きく体勢を崩した。

 

二撃目。

()()カテゴリソードスキル・リニアー

 

ガラ空きになったクラディールの急所─ではなく腹部に一発見舞う。

勢いそのまま後ろへ大きく吹っ飛んだクラディールは何度か地面を転がって止まった。

 

観衆も副団長もクラディールも黙ったままだ。

 

シーンとなったその場の静寂を破ったのは、俺の勝利とデュエル終了を告げるBGMだった。

 

「うおおぉ!すげぇ!!」

 

「なんだ今の!どうやったんだ!?」

 

歓声の中わざと派手な音を立てて愛剣を収め副団長に歩み寄る。

 

「んじゃ、解散ってことで。お疲れした!」

 

返事を待たずに俺は走り出す。

目指すは愛しのマイハウス。

頭の中は二度寝のことで一杯だった。




ユニークスキルの詳細は次回にでも。

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