ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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短めです。


Ep.18 亡霊王

<アスナside>

 

──はるか昔。

地上は豊潤な魔力に恵まれ、魔法により数多の国が栄えていた。

 

人間族は九つの国家《九王国連合》を築き上げて、深く交流していたという。

 

しかしある日、主要な100の都市とその周辺の地帯が円形に切り抜かれ、柱とパネルにより補強され上空へと浮かび上がり、それらが重なり合って浮遊城アインクラッドとなった。

 

これが《大地切断》

 

巻き込まれて混乱している人間たちの前に現れたのが、この大災害を引き起こした《頂ノ王》だった。

 

──曰く、これは遊戯(ゲーム)である。

 

地上に還りたくば最上層で待つ我を討ち滅ぼしてみよ。さすれば帰還を約束する。王はそう言った。

 

人間たちは層を超えて結束し《頂ノ王》を討たんと準備を進めた。しかし、地上では魔法の力でドラゴンすら圧倒していた人間だったが、この浮遊城では魔力が致命的に枯渇していた。最大の武器であった魔法では戦えないと判断した《九王国連合》は、残された魔力を全て使って三本の神器─《霊剣(レーヴァ=テイン)》《星剣(バルムンク)》《邪剣(ティル・フィング)》を鍛え上げた。

 

強大な力を秘めた剣を授けられた三人の英傑は、多くの仲間とともに《頂ノ王》に戦いを挑んだ。

 

そして──。

 

血みどろの戦いは─人間たちの敗北で決着した。

 

何とか逃げ延びた三人の英傑は、自分たちの遺志を継ぐ者が現れると信じて、剣を三大都市がある層の奥深くに安置した。

 

しかしその願いは叶わず、残された人間たちは英傑たちの敗北に絶望し、地上への帰還を諦め浮遊城でその一生を終えていった。そうして最初の”遊戯”は幕を閉じた。

 

これが《古の決戦》

 

 

 

「・・・なんか、壮大なストーリーだな」

 

「・・・そうね」

 

亡霊王(ザ・ロイヤルゴースト)が語ったアインクラッドの創世記は、二人の想像を遥かに超えるスケールだった。

 

《大地切断》についてアスナは少しだけ聞いたことがあった。キリトとのコンビ時代、初めての大型キャンペーンクエストで出会ったダークエルフのキズメルが、エルフ族の伝承として口にしたのだ。そして、隔てられた階層を一つに繋ぐために、異世界から剣士─プレイヤーが召喚されているとも。

 

アスナの刹那の思考は、続く亡霊王の声に断ち切られた。

 

「──人間たちが全滅した後《頂ノ王》は各階層を守護する下僕を配置し、無人となった街に仮初の命を与えた人形を住まわせ、人間を模した新たな種族《エルフ》を生み出した。そして、再び決戦を目論んだ《頂ノ王》は別の世界から剣士をこの城に召喚した・・・」

 

「下僕ってのがフロアボスのことで、人形はNPC?別世界の剣士ってのは俺たちだな。つまり、第二の遊戯(ゲーム)がSAOって設定か」

 

合点がいったようにサツキが呟く。

 

「アインクラッドの成り立ちなんて、考えたこともなかったわ」

 

「俺も。公式の事前情報ですら、何一つとして明かされてなかったからなぁ。それが、こんな形で知ることになるとは・・・」

 

うんうんと二人で頷き合う。

ふと、アスナはすっかり自分が普段通りの振る舞いになっていることに気付いた。ただ一つ違うのは、右手に感じた自分のものではない温もりだ。無意識のうちに握っていたらしいそれを見て、アスナは顔から火が出るほどの恥ずかしさに見舞われた。放そうと口を開きかけたが、狙っていたかのように亡霊王が声を発したためタイミングを逃してしまった。

 

「──実に長き年月を待った。この御室に辿り着く者が現れるのを・・・」

 

冷たさの増した声色に何も返せない。

 

「──《頂ノ王》を討ち滅ぼすのに神器は大いに役立つだろう。だが同時に、その秘められた強大な力は、使い方を間違えれば破滅を招きかねない」

 

亡霊王は音もなく反転し、祭壇に突き立った《霊剣》を見つめた。

 

「──かの剣は、()()()()()宿()()()()()()()()を秘めている。決して途切れることのなく繋がれた力により、剣を手にした英傑はさらなる高みへと到達するだろう・・・」

 

「魂と、しんい?」

 

聞き慣れない単語にアスナは困惑した。サツキも同様に首を傾げている。

 

「──世界の理を超越した力だ。《頂ノ王》が最も恐れ、また欲している力でもある」

 

「そんな凄い力が宿っているのか。確かに、使い方を間違えたらヤバそうな剣だな」

 

感心した様子のサツキに、背を向けたままの亡霊王は静かに告げた。

 

「──そうだ。だから過去の英傑たちは、悪しき者の手に神器が渡らぬよう、自らの遺志を継ぐ者を選別する試練を遺した・・・」

 

直後、アスナは自分がぐるぐると回転するのを感じた。次いで固い石床の上を転がる衝撃と何かが砕ける音。顔を上げると、目先四メートルに透けている大振りな直剣─亡霊王が右手に提げていたもの─が突き刺さっていた。

 

アスナの視界の端で赤い断片が舞った。見れば、サツキの頬に一本の鮮やかな剣痕が走っている。彼が亡霊王の攻撃から庇ってくれたのは明らかだった。

 

「サツキくん・・・!」

 

「気にするな」

 

ゆらゆらと移動した亡霊王は、突き刺さった直剣を引き抜いて構え直し、アスナたちを見下ろした。

 

「──試練を始めよう《霊剣》を求める者よ。そなたらが神器を手にするに相応しい英傑であるか、この我が見定めてくれよう」

 

部屋の炎が激しさを増し、亡霊王の頭上に三本のHPバーが表示された。

 

「やるしかなさそうだ」

 

「・・・ええ。でも─」

 

アスナの武器ではアストラル系であろう亡霊王にダメージを与えられない。アスナの言いたいことを察したサツキが言う。

 

「ああ、副団長は下がっててくれ。何か気付いたことがあったら教えてほしい・・・でも大丈夫か?アイツもアストラル系みたいだけど」

 

「・・・もう慣れたわ」

 

「ならよし」

 

愛剣を抜き去り亡霊王と対峙したサツキからアスナは距離を取った。戦いに参加できないのはもどかしいが、足でまといになってサツキまで危険にさらすわけにはいかない。

 

純白の愛剣を構えたサツキをターゲットした亡霊王が直剣を振りかぶった。同時にサツキは亡霊王の右側方に走り出す。それを捉えようと亡霊王が直剣を音もなく水平に振り切ったが、ギリギリで射程外に滑り込んで避けたサツキは亡霊王の背後で跳躍し、空中でソードスキルの構えを取った。純白の刀身がライトエフェクトをまとう。

 

曲刀カテゴリ二連撃技”アドマイアー”

 

亡霊王はすかさず背後への回転斬りを放った。それを予測しての二連撃技だろう。初撃の斜め斬りで亡霊王の攻撃を相殺し、続く回転水平斬りを見舞うつもりだ。双方の刀身が肉薄し、接触して大量の火花を──

 

「ッ!?」

 

──散らさなかった。

 

ぶつかり合うはずだった二本の刀身は、確かに接触した。だが、目を疑うことが起こった。

 

亡霊王の直剣がサツキの愛剣を()()()()()のだ。見た目のまま、まるで実体がない幻かの如く。

 

「な─」

 

さすがのサツキも為す術なく、無防備な胴体に亡霊王の直剣が─こちらはすり抜けることなく─直撃した。

 

回転の勢いそのままに斬り払われた一撃は、サツキを部屋の壁際まで軽々と吹き飛ばした。激しく床に叩きつけられ転がったサツキはそのまま動かない。アスナの視界左上に小さく表示されたパーティーメンバーのHPバー、そのうちの一本が急激な勢いで減少していく。

 

「いやっ・・・サツキくん!」

 

アスナは倒れたままのサツキに駆け寄った。彼のHPは真っ赤に染まっていた。




また近いうちに。
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