ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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お久しぶりです。

そして


キリト復活おめでとうぉぉぉおおっっつ!!!


Ep.28 バースデイ

<ノノside>

 

 

「「「ノノちゃん、誕生日おめでとう!」」」

 

シュガーを筆頭とした祝いの合唱に、私は思わず目を丸くした。クラッカーと拍手の嵐で、ようやく今日が人生で19回目の誕生日だったことに気が付く。

 

早朝にフィールドへ向かう時にはなかった様々な飾り付けが本部のあちこちに施されている。会場の中央には豪勢な料理が並べられ、長時間の戦闘で疲れた体がそれらを求める。

 

「びっくりした・・・いつの間に準備してたの」

 

「ふふ、サプライズ大成功ね。気付かれないように準備するの大変だったんだから」

 

アスナさんがグラスを差し出しながら言った。

 

「ありがとうございます。私の誕生日、知ってたんですね」

 

「もちろんよ。ここまでの規模になったのはシュガーくんのおかげだけどね」

 

「僕はただ案を出しただけで、皆さんのご協力があったからこそ実現できたんですよ」

 

「一番頑張ったのはシュガーだろ」

 

サツキが肩をすくめながら言った。その後ろから意外な人物の声が続く。

 

「そのシュガー君に誰よりも助力したのはサツキ君だろう」

 

真紅のローブを身にまとった長身の男、KoB団長ヒースクリフだ。私は反射的に姿勢を正す。

 

「団長!」

 

「そうかしこまらないでくれたまえ。このパーティーの主役は君なのだから、私など気にせず楽しむといい」

 

「しかし・・・」

 

「いいっていいって、団長さんもこう言ってんだし」

 

「あなたはもう少し遠慮しなさい」

 

アスナさんに耳を引っ張られたサツキが子供のように喚く様を見て、会場が笑いに包まれる。

 

現実世界でもこれほど盛大に祝われた経験がなかった私は、最初こそ緊張していたが、たくさんのメンバーと色々な話をするうちにそれも無くなった。顔を合わせる程度で話したことのないメンバーともすぐに打ち解けられた。余興もいくつか用意されていて、会場が静まる暇もなかった。

 

中でも大盛況だったのが、予定になかった団長の飛び入りエピソードだった。

 

「では、せっかくなので私も一つ話そうかな」

 

「「「おおっ!?」」」

 

「団長自らとは珍しいな」

 

「本当ね」

 

「激レアエピソードですね、これは!」

 

「うむ、あれは五十層ボスを倒した翌日のことだった・・・薄暗い迷宮区の奥底で、単身モンスターを屠る剣士がいた。私の目から見てもかなりの実力者であった。私はその剣士に強い興味を持ち、声をかけた。”私のギルドに入らないか?”と」

 

「一目で団長が認めるって、何者なのかしら」

 

「・・・」

 

「剣士の返答は・・・”誰だお前?”だった」

 

「ヒースクリフ団長を知らないなんて、そんな人がいたんですね」

 

「・・・」

 

「私は自分が攻略組であり、私が率いる攻略ギルドに君を迎え入れたいと伝えた。剣士は言った。”決闘(デュエル)であんたが勝てば入ってやる。あんたが負けたら全財産を寄越せ”と」

 

「強欲な上に命知らずね」

 

「・・・」

 

「私はその条件を呑んで剣士と戦った。その最中、私は信じられないものを見た。剣士の主武装は片手剣だが、放たれるソードスキルが()()()()()()()()だったのだ」

 

「「「えっ?」」」

 

聞き入っていたメンバーたちの視線が一斉に一箇所へ集まる。顔を引き攣らせて外を見ているサツキへと。

 

「みなも承知の通り、そんな芸当ができるのはこの世界に一人しかいない・・・これが私と彼の出会いだった」

 

「へぇー!サツキさんの入団経緯は知らなかったです」

 

「まさか団長にボコられてたなんてね」

 

「言うな恥ずかしい」

 

開き直ったサツキが飄々に言う。

 

「俺の話はいいんだよ。それよりシュガー、そろそろメインイベントを見せてやれ」

 

「了解です!」

 

シュガーがウインドウを操作し、その間にアスナさんが私を誘導した。手に小さな小包を持ったシュガーが私の正面に立ち、やや緊張した様子で口を開いた。

 

「えっとノノちゃん、改めて誕生日おめでとう!これからもよろしくね!」

 

差し出された小包を受け取って中を確認すると、純白のペンダントが輝いた。

 

「綺麗・・・ありがとう」

 

「見た目だけじゃないぜ、スペック見てみろよ」

 

「なによ・・・って、敏捷力補正+50!?」

 

私の声に周りがざわついた。

 

「こんなのどこで・・・」

 

「NPCに作ってもらったんです。ここまでの出来になったのは、かなりラッキーでしたが」

 

「スゴいじゃない!良かったわねノノちゃん」

 

「は、はい。でもこんな貴重なもの」

 

「誕生日プレゼントなんだから遠慮すんなって」

 

「そうですよ!ぜひ使ってください」

 

「そう、ならありがたく使わせて貰うわね。ありがとう」

 

早速ウインドウを操作して装備してみると、首に掛けられたペンダントが純白の輝きを放った。

 

「綺麗、似合ってるわよ!ね?」

 

「おお、悪くないな」

 

「うむ」

 

「良かった、似合ってますよ!ノノちゃん」

 

「う、うん。自分でもびっくりするぐらい合ってると思う」

 

 

大いな賑わいを見せたプレゼント回を終えてもう一度乾杯した後、私の誕生日パーティーは幕を閉じた。

 

プレゼント─《冥白のラメント》は正直に言って嬉しかった。純粋にシュガーの気持ちと、団員たちの祝いの言葉、その全てが。

 

 

でも、何よりも──

 

 

「はぁっ!」

 

闇に覆われた視界を数多の剣閃が斬り裂いた。一瞬の間を空けて重低音の剣戟音が響く。ギリギリ視認できる訓練用カカシには深く抉れた痕が残されていた。

 

「・・・やっと、ここまで来た」

 

目指していた高みに到達できたことに、私は歓喜した。

 

 

 

♦️

 

 

 

<サツキside>

 

 

 

 

「楽しかったな・・・」

 

本部の天蓋テラスから蒼い月を見上げながら俺は呟いた。

 

辺りはすっかり闇に包まれ、夜風だけが流れる静かな世界だ。つい一時間ほど前の賑わいの余熱が冷めずに眠れなかったので、外の空気でも吸おうかと出てみたら見事な月夜だったわけだ。

 

ここ最近、というか相棒が死んでからの今までで一番楽しかった時間だったと思う。

 

元の世界では独りが好きだったのに、気が付いたらこんな大人数と過ごすのも苦にならなくなっていた。きっかけは間違いなく相棒だ。はじまりの日に彼女に出会わなければ、俺は今ここにいない。

 

「なにしてるの?」

 

背後から遠慮がちにかけられた声に、過去を振り返っていた俺は内心かなり驚いた。顔に出さないように振り向くと、寝起きなのかだいぶ軽装な副団長がいた。

 

「ん、いや寝れなくてな」

 

「そう・・・私もなんだ」

 

そう言って俺と同じように蒼い月を見上げた副団長は、その容姿と月夜が相まって一枚の絵画のように美しかった。しばし見入っていると副団長が口を開いた。

 

「・・・ありがとう」

 

「え」

 

「ノノちゃん、最近元気なかったみたいだから・・・君とシュガーくんのおかげで今日はとても楽しそうだったよ」

 

「・・・そうか、なら良かったよ。でも俺とシュガーだけの力じゃないぞ。団員全員のおかげだ」

 

「君はもう少し自分を評価しても良いと思うなぁ」

 

「いやいや、全然だよ。俺なんて」

 

周りから見ればそれなりの評価にはなると思っている。でも、そんなのでは全然足りないのだ。俺が目指す場所には。

 

「あっ、そうだ」

 

ふと忘れていたことを思い出した。ウインドウを操作してそれを実体化させる。月光に照らされて輝く小さなイヤリングを見た副団長が首を傾げた。

 

「それは?」

 

「あのペンダントを作った時に余りの素材で出来たやつ。男が装備するのは抵抗あるから・・・あげるよ」

 

「えっ」

 

ぶっきらぼうに言った俺に驚きつつも、副団長はイヤリングを大事そうに受け取った。

 

「・・・ありがとう、大切にするね」

 

「そんな使えるスペックじゃないから、無理に装備しなくていいぞ。なんなら質屋に入れてもいいし」

 

「もうっそんなことしないわよ!」

 

言ったあと、副団長は手早くウインドウを操作した。手元のイヤリングが一度消滅し、副団長の小さな両耳に装備された。

 

「・・・どうかな?」

 

「どう・・・って・・・」

 

少し照れた様子の副団長に俺は言葉を詰まらせた。

 

「に、似合ってると思うよ」

 

「そ、そう・・・よかった」

 

何とか返したが微妙な空気になってしまった。しばらくの沈黙を破ったのは、何やら機嫌が良さそうな副団長だった。

 

「じゃあ、私はそろそろ戻るわ。君もあまり夜更かししたらダメよ?」

 

「りょーかい、おやすみ副団長」

 

「ええ、おやすみなさいサツキくん」

 

軽く手を振って副団長は中へ戻って行った。それを見届けて俺は再び蒼い月を見上げた。

 

 

『どう?似合ってるかな?ねぇねぇどうどう?』

 

『あーはいはい、ニアッテマスネー』

 

 

クエスト報酬で貰った耳飾りを身に付けた相棒とのやり取りが鮮明に思い起こされる。先ほどの副団長と相棒の姿が重なって見えたのだ。まぁ、態度と対応が全然違うけど。

 

「・・・寝るか」

 

呟いた俺は静かに自室へと戻った。夢の中で、俺は相棒と会っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

「おりゃぁぁぁっっ!!」

 

気合いの咆哮とともに放たれた()()の高速連打が、イノシシ型モンスターを軽々と吹き飛ばした。地面にバウンドしてポリゴン片となって爆散するのを見て、爽快感からか彼は喜びと興奮の声を上げる。

 

「はぁーっ!たまんねぇぜ!」

 

「ホントに素手で倒してるよ・・・」

 

「そりゃあ、そういうスキルなんだからな」

 

「初期でこんな規格外のスキルがあるなんて大丈夫なのかな・・・」

 

「いやいや、オレなんてまだ可愛い方だって!アレに比べたら」

 

そう言って彼が指差すのは、少し離れたところで同じくイノシシと戦っている小柄な女の子だ。短剣を構えて突進して来るイノシシに一閃──

 

「きゃっ!」

 

──できず、正面から直撃を喰らってしまった。

 

「全く、──はてんでダメだ、な!」

 

尻もちをついた彼女を心配して親友がイノシシを横から蹴り上げた。浮いて隙だらけの胴体に高速の三連打を見舞い、爆散させる。

 

「あ、ありがとう」

 

「派手にやられたな」

 

「大丈夫?」

 

手を引いて彼女を立ち上がらせる。服に着いた汚れを払っている彼女の頭上に表示されたHPバーは黄色に染まっていた。

 

「うーん、なかなか難しいね」

 

「慣れるまで練習するしかないよ。いろんな武器使ってみたら?」

 

「だな。それに──なら何回ド突かれても平気だしな」

 

「数値的に問題なくても怖いもん!」

 

ケラケラと笑う親友に頬を膨らませて言う彼女のHPは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのままバーは全快し緑色に染まる。

 

「しっかし、マジでこのスキルはなんなんだろうな」

 

「すっごい低確率で配布されるものとか?」

 

「こんなチートじみたものを初期に入れるとは考え難いけどなぁ・・・」

 

「まぁ、せっかく貰えたんだから使わないと損だろ」

 

フィールドに出てから一時間ほど、俺たちは与えられたスキルのおかげで初心者ながらかなり安定して戦闘をこなしていた。特に親友の暴れっぷりが凄まじく、ここら一帯の敵はほとんど狩り尽くしただろう。

 

「っし、どーする?もうちょっと周り探してみるか?」

 

「いや、一回街に戻ろう。──の武器も買い替えたいし、何かクエストを受けてみたいから」

 

「うん!」

 

「りょーかい、んじゃ行くか」

 

俺たちは街へ向かって歩き出した。

 

この世界の本当の姿に気付かないまま。




アニメ18話、神回でした。
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