ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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このペースじゃあ年内完結なんて出来ねぇぞ!

サクサク書けるようになりたい泣


Ep.30 予兆

♦️♦️♦️

 

 

 

 

『・・・なんだ、これ』

 

『んー?どしたの』

 

芝生に寝っ転がって表示したステータス画面を見ていた俺の呟きに、横から相棒が興味津々に食い付いてきた。俺のすぐ近くまで顔を近付けた相棒に可視化モードでスキル欄を見せる。本当はスキルの公開は御法度なのだが、俺は相棒に言われるがままに習得してきたので見せても問題はない。

 

『え!』

 

相棒の驚きはわかる。数時間前のレベル上げで増えたスキルスロット、まだ何も取っておらず空白になっていたはずのそこに新たな名前──《剣豪》があったのだから。

 

『新しいスキルじゃん!私も聞いたことないよそれ!』

 

『んなの?』

 

『うん!』

 

ビーターであり世界最強を自称する相棒でも知らないとなると、いよいよ未知のスキルだ。以前、イベントクエストの謎解きに挑んだ時のわくわく感が蘇る。

 

『ねぇねぇ、どんなスキル?』

 

『えーっと・・・装備している武器のカテゴリに関係なく全てのソードスキルを使用できる、らしい』

 

『へー!すごいね!』

 

『ほんとは?』

 

『全っ然わかんない!』

 

『だろうな』

 

至近距離で笑う相棒はとても満足そうだ。軽快な身のこなしで立ち上がり、俺に手を差し出す。

 

『実際にやってみた方がわかり易いよ』

 

『だな』

 

手を引かれ、新たなスキルを試すべくフィールドへと向かう。前を行く相棒もどこか嬉しそうなのも、気のせいではないだろう。

 

『前にやり残してたクエストあったよね?』

 

『あったな、虐殺(スローター)だった気がする』

 

『よしっ!じゃあそれ行こう!』

 

『ぶっつけ本番だなぁ』

 

『大丈夫大丈夫!』

 

相棒は弾けるような笑顔で言った。

 

『危ない時は、私が君を守るから!』

 

コンビ結成から何度も言われた言葉。

 

 

いつからだろう。

 

──俺も、君を守るよ──

 

その言葉が喉に詰まるようになったのは。

 

 

 

 

♦️♦️♦️

 

 

 

<サツキside>

 

 

 

五十名。

 

これがラフコフ討伐隊に自ら志願した者の数だ。俺の予想よりも多い。毎回ボス戦に参加している者は全員、それに加えてKoB偵察隊や相応の実力がある者が数名といった具合だ。

 

大会議室は定員ギリギリで窮屈であるが、それに反して静まり返っている。部屋を満たしていた重苦しい空気を、副団長の凛とした声が切り裂いた。

 

「みなさん、ご協力に感謝します」

 

全員が無言で頷く。

 

「・・・これから”笑う棺桶(ラフィン・コフィン)”殲滅作戦の会議を始めます。手元の資料をご覧下さい」

 

事前に配布された資料を見ていく。細かい箇所まで正確に描かれたエリアマップに様々な注記がされており、見慣れたその字からアルゴが作ったものだとわかった。

 

「敵のアジトは、かなり広めのドーム型安全圏(セーフティエリア)です。3つある入口から一斉に突入します。敵の数、レベルや装備もこちらの方が優れていますが油断しないでください」

 

「耐毒ポーションを忘れないでください。ヤツらの十八番(おはこ)ですから」

 

シュガーの補足に俺も続く。

 

「アジトってことは、()()()()がいる可能性も十分にある。もし交戦したらすぐ応援を呼ぶように」

 

具体的な名前を出さなかったが、みんな俺の言った意味は分かったようだ。

 

アイツら──《PoH》《赤眼のザザ》《ジョニー・ブラック》の三人はその強さ凶悪さが頭一つ飛び抜けている。危険な存在だが、この三人を捕らえなければラフコフ壊滅とは言えない。

 

「アジトまでのルートをいくつか用意しタヨ」

 

アルゴが七層迷宮区のフロアマップをみんなの前に貼り出しながら言った。

 

「討伐隊を3班に分けて一斉に突入するわけダガ、この人数で歩いて行ったらバレるのは目に見えてル」

 

「まぁ、ヤツらもバカじゃないだろうしな」

 

「そこデ、各班毎に時間を空けて違うルートで入口付近まで進んダ。全班の準備が整ったラ突入すル」

 

アルゴの説明に聞き入る者、資料にルート案を書き込む者、装備とアイテムを確認する者。その中の一人が声を上げた。

 

「班の内訳は?」

 

「今日中に決めます。連携が取り易いように同じギルド同士で組むように考えますが、詳細は後ほど連絡します」

 

「了解」

 

他に質問がないことを確認した副団長は、一呼吸置いて言った。

 

「決行は明後日、敵が犯行を終えてアジトに集まると思われる早朝に仕掛けます。それぞれ準備を怠らないように」

 

全員が頷いて会議は終了した。

 

 

 

 

すっかりガラガラになった会議室に一人残った副団長は、討伐隊の名簿を見ながら頭を抱えていた。その姿が、現実世界の数少ない友人と重なる。迷い続けて、自分でも気付かないうちに擦り切れてしまう、そんな未来が見えて俺は思わず声をかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・ええ、ありがとう」

 

その声から全然大丈夫じゃないことは俺でもわかる。俺は副団長から名簿をひったくり一瞥した。

 

「班決めに迷ってるのか?副団長らしくないな」

 

ボス戦の振り分けでも編成迷う素振りを見せたことがない副団長には珍しいことだった。

 

「違うの、だいたいは決まったんだけど・・・」

 

「それじゃ何を悩んでるんだ?」

 

「・・・」

 

しばらく沈黙した副団長は、窓の外を見つめながら静かに言った。出てきたのは意外な名前だった。

 

「・・・キリトくんも、参加してくれないかなって」

 

「黒の剣士?まぁ、戦力的にはかなり助けになると思うけど・・・」

 

最前線から離れたとはいえ、彼のレベルなら今でも俺たちと引けを取らないくらいだろう。聞いた話だと幹部3人とも面識があるようだし、参加してくれるなら心強い。

 

「どこにいるのか知ってんの?」

 

「いえ、でもアルゴさんは知ってるみたい」

 

「そうか、じゃあ話は早いな」

 

「どういうこと?」

 

アルゴ宛のメッセージをたったか打ちながら俺は言う。副団長は驚いて目を見開いた。

 

「直接聞いた方が早いだろ?黒の剣士に」

 

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

 

「そう・・・明後日なのね」

 

込み上げてくる不安を抑え込むように、リズベットは手にしたマグカップを口に運んだ。

 

時刻は昼過ぎ。昼食がてらメンテナンスに来た客はいなくなり、休憩中の看板の提げていたリズベット武具店をノノとシュガーが訪れていた。珍しいタイミングでの来店に驚きながらも歓迎したリズベットだったが、二人の話を聞いて気持ちが曇る。

 

「大丈夫ですよ!僕たちの方がずっと強いですし、アスナさんやサツキさんもいますから」

 

明るく振る舞うシュガーだが、その声がいつもより固いことにリズベットは気付いていた。彼なりに心配をかけないようにしていることも。リズベットもそれに答えるようにいつも通りを装う。

 

「負けるとかそういう心配はしてないけど、お得意様のアンタ達がいなくなったら店の売上に影響出るんだから」

 

「そっちの心配ですか!?」

 

笑い合う声が響く中、ノノだけが思い詰めた顔で沈黙していることに二人は気付かなかった。

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

「おい見ろよ──!ここ大量にあるぜ!」

 

()()に呼ばれて見れば、彼の足下には銀色に輝く鉱石がごろごろと転がっていた。見ただけでわかる良質な素材、俺たちが二時間近く探していたモノに違いない。

 

「ホントだ、おーい!──こっちだ!」

 

「待ってよ二人とも!」

 

遅れて来た彼女は息を切らしながらも、鉱石を見た時には目を輝かせて夢中で拾い始めた。俺もそれに続く。

 

 

アインクラッド第一層の西にある沼地で良質な鉱石が採掘できることは、たまたま寄った道具屋に置いてあった攻略本を見て知った。無償提供であるのに書かれている情報量は凄まじく、右も左も分からない俺たち初心者パーティーにとっては大変ありがたい代物だった。まだ誰も来ていないのか手を付けられた様子はなく、俺の片手剣と──の短剣の強化に必要な数は余裕で採掘できそうだ。

 

「おっし、こんなもんか。──、ちゃんとアイテム欄に格納できてるか?またポケットとかに入れて持ってくなよ?」

 

「もうそんなミスしないよ!大丈夫だもん!」

 

親友がケラケラと彼女をからかう。

 

SAOという名のデスゲームが開始してから早くも一ヶ月が経とうとしていた。最初は不慣れだったウインドウ操作や戦闘にも慣れ、すっかりこの世界の住人になっている。それは良いことだが、一ヶ月が経った今でも最初の層すら突破できていないことに、俺は少し焦りと不安を感じていた。積極的にゲームクリアを目指している訳でもない俺が文句を言う資格はないのだが、このまま状況が動かずに終わってしまうのではないかと考えてしまう。

 

「さて、じゃあ帰ろうか」

 

縁起でもない思考を断ち切り、ガーガー言い合う二人に声をかける。やれやれと親のような気分になっていると、二人の頭上の木が揺れた。次いで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺は咄嗟に叫んだ。

 

「上だ!」

 

親友は流石の反応速度で右に跳んだ。しかし俺の声に驚いた彼女は回避が間に合わず、上からの奇襲を喰らってしまった。

 

「きゃっ!」

 

「──!オラッ!」

 

親友がすかさず攻撃者に蹴りを見舞うが軽々と躱されてしまう。攻撃を受けた彼女の前に立ち、距離を取った相手に愛剣を抜き去り構える。攻撃者は、攻略本にも載っていた要注意モンスターだった。レベル7猿型モンスター《ハイロリス》。小型ですばしっこく、何より厄介なのが毒攻撃を使ってくることだ。左端に小さく表示されたパーティーメンバーのHPバーの一つが毒状態を意味する紫色に染まる。

 

「運悪いな、長居しないから大丈夫だと思ったんだけど」

 

「へっ何言ってんだ。運が悪いのはアイツだろ?」

 

不敵な笑みを浮かべる親友は拳を構えた。彼の言いたいことはわかる。

 

「まぁ、どんなに速くても()()()()()()()、この程度の相手だと──なら()()()()、せっかく喰らわせた毒も──には()()()()()。確かに可哀想になる」

 

親友の拳が鮮やかなエフェクトをまとう。

 

「もう、びっくりしたよ!」

 

後ろで言う彼女のHPが減っては急激に回復しているのを確認した俺は、視線を《ハイロリス》に集中させる。ヤツが短く吠えた直後、親友に向かって薄い赤のラインが一直線に伸びた。

 

「真正面から直進!」

 

「あいっよぉ!!」

 

俺の声に合わせて親友は大きく一歩踏み込み、渾身の右ストレートを放った。エフェクトをまとった拳は跳躍して来た《ハイロリス》を的確に捉え、一撃でHPを消し飛ばした。

 

「やりぃ!」

 

「息ぴったりじゃん!」

 

ポリゴンの残片が漂う中、二人とハイタッチを交わして喜びを分かち合う。デスゲームという異常な状況の中でも、こんなに楽しいと感じるのは二人と一緒にいるから、与えられたスキルがあるからだと俺は信じて疑わなかった。




年内に間に合わなくても完結はさせます。
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