ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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Ep.38 黒の瞬き

<サツキside>

 

 

 

「やっぱお前は面白ぇな、剣豪・・・」

 

狂気に表情を歪めたアニマは、倒れているノノから視線を外すと俺に向き直った。モノクロームの世界でアニマの拳が赤い光を放つ。

 

「──シッ!」

 

「──ッ!」

 

上体を反らして一撃目を躱し、続く二撃目をレーヴァ=テインで斬り飛ばす。反撃の”バーチカル”を振り下ろした瞬間、アニマの両眼の赤い光が輝きを一層増し、確実に捉えたと思った一撃は驚異の反応速度で躱された。

 

「チッ!」

 

即座に腕を修復したアニマは、真正面からの正拳突きを放つ。それをギリギリまで引き付け跳躍し、空中で回転して右肩を斬り捨てる。腕がぼとりと落ち、アニマの眼がわずかに開かれる。着地と同時に振り向くと、横なぎに払われた左手が迫っていた。

 

「───!」

 

頬に触れる直前だった左手は、しかし俺を捉えることは無かった。手応えのない()()()を払ったアニマ、その後ろで俺はレーヴァ=テインを構え直す。同時にアニマの左腕が肩からぼとりと落ちた。

 

全部で15ある<暗黒剣>のソードスキル、その一つである回避と攻撃を併せた”暗香疎影(あんこうそえい)”。発動したのは初めてだが、相棒の言う”気持ち”が込もっているおかげかシステムがソードスキルとして認識しているようだ。相棒のそれには遠く及ばないが使うことが出来た。

 

切り落とされた両腕が消滅し、同時に瞬時に再生してみせたアニマはゆっくりとこちらを見据えた。

 

「相変わらず妙な技だ。それも世界唯一(ユニーク)か?」

 

「だとしたら?」

 

「なら、オレたちは同じじゃねぇか。世界唯一(ユニーク)を複数所持している選ばれし者だ」

 

浮かべるのは不気味な笑みだが、以前とはどこか違うモノが混ざっているように俺には見えた。

 

「一緒にすんな。お前と違って、俺は使い方を間違えない」

 

「へぇ、オレが間違っていると?それは違うな」

 

アニマが構える。その全身を赤い光が包み込み、俺は全神経を集中させた。

 

「間違っているのは、このクソッタレな世界の方だろうが!!」

 

「ッ!」

 

目にも留まらぬ連撃で視界が真っ赤に染まる。それらをギリギリで避けようとするが、時折体を掠めHPが擦り減っていく。だが俺は焦ることなくアニマの連撃に隙が生じる瞬間を探った。嵐のような乱舞を繰り出しながらアニマは怒りと憎しみ、そして悲しげな絶叫を上げた。

 

攻略組(テメェら)にとってはここは天国だろうよ!自分よりも強えヤツらがいない、その気になれば全てを手に入れることも出来る!そうさ!結局はこの世界も弱肉強食!強者は生き、弱者は淘汰されるんだ!何も失ったことの無いお前に分かるか!?剣豪!」

 

「・・・ああ、()()()()()()()()

 

激情の中に生まれた一瞬の隙を、俺は見逃さない。

 

 

<暗黒剣>単発重ソードスキル・”闇夜(やみよ)幻閃(げんせん)

 

漆黒の焔のように揺らめいたレーヴァ=テイン、その刀身をアニマは危険だと察知したのかギリギリで躱す。だが届かないと思われた黒の軌跡は、アニマの首元から胸にかけて斬痕を刻んだ。

 

「面白い技だ!もっとだ、もっと全力を見せろ!死力を尽くせ!不滅(オレ)を殺してみろ!剣豪ォッ!!」

 

「安心しろ、すぐにケリを付けてやる」

 

防戦一方だった俺は一転し、攻撃に転じる。

 

”暗香疎影”で乱撃を回避し後ろに回り込むと、すかさず”バーチカル”を振り下ろす。変幻自在の不意打ちだが、流石の対応力でアニマはレーヴァ=テインを躱すと拳を横凪に払った。技をキャンセルしてそれを回避し、続け様に”バーチカル・スクエア”、”ホリゾンタル・アーク”でアニマの身体を削る。

 

「どうした!?そんな技じゃオレは殺せないぞ!」

 

「・・・なら、これはどうよ?」

 

記憶の中に鮮明に刻まれた相棒の動きを完璧に模倣し、俺はレーヴァ=テインを中段に構えた。

 

<暗黒剣>刺突技”戎暗餓突(かいあんがとつ)

 

黒い彗星の如き威力・速度で放たれた一撃は、アニマの反応速度を上回って胸部に命中し、大きな風穴を開けた。ごっそりと八割近くHPを減少させたアニマは、直撃を受けた勢いそのままに吹き飛び、床に仰向けで転がった。

 

「ガッ・・・ハハ、ハハハハハッ!!」

 

狂った笑い声を上げるアニマ。そのHPが回復していくにつれて胸に空いた穴も徐々に塞がっていく。やはり()()()()()()()()()()()()H()P()()()()()()()()()()()()()()()でないと殺すのは不可能なようだ。

 

「・・・やるしかないな」

 

思い当たる技は、ある。相棒が気まぐれで思い付いた<剣豪>たる俺だからこそ可能性のある技が。

 

 

 

『どう言えばいいかなぁ・・・ぐぅぅぅっと溜めて、バァァァンッ!って一気に解放する感じだよ』

 

『なるほど、わからん』

 

 

遠い記憶の中に答えを見出す。かつては理解できなかった相棒の言葉が脳を、全身を巡る。

 

「行くぞ剣豪!!」

 

全快したアニマが構える。と同時に、俺は左手を背中に回しカタルシスを引き抜いた。純白の刀身がレーヴァ=テインと同じように漆黒に染まり、そして。

 

「────」

 

漆黒の二刀がアニマの全身を切り裂き、四肢をその根元から分断した。本来赤いはずのダメージエフェクトは黒く輝き、周囲を夜の帳が包んだような錯覚に陥る。

 

「な二・・・ハッ・・・ガ?」

 

状況を理解出来ないままグリグリと動かしていたアニマの眼が一瞬開かれ、そしてその()が断ち切られた。

 

二本の愛剣が本来の姿に戻るのを見届けながら、俺の意識は闇の中に消えた。

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