ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ── 作:Syncable
<アスナside>
「久しぶりだなキリト、あの一件以来か」
「ああ、元気そうで良かったよ。サツキなんて最後倒れてたから心配してたんだ」
「あー確かにな。でも見ての通りピンピンしてるわ」
予期せぬ再会に戸惑ったアスナだが、男二人はそんな素振りも見せず会話を弾ませていた。会話に入るタイミングを探る中、巡らせた視線が同じく困惑気味のサチとぶつかる。
「こんばんは、サチさん。なんかごめんなさいね」
「いえいえそんな!こちらこそすみません」
なぜか互いに謝罪をすると、可笑しくてアスナとサチは笑ってしまった。男二人が疑問符を浮かべる中、アスナは言った。
「せっかくですから、一緒にどうですか?」
「それ美味そうだな」
「食うか?」
「サンキュー」
キリトが差し出した皿から肉の欠片を取ったサツキは、心底美味しそうに咀嚼を繰り返す。普段の彼には見られない子供っぽい姿に珍しさを感じつつ、アスナは手元の料理に手をつけた。
四人で食事となれば誤解の恐れはないと判断し、変装用のフードを外したアスナだが他の客からは遠慮のない視線が集まる。何時ものことだと気にしない三人に対し、アスナの前に座るサチはどこか落ち着かない様子だった。
何か話題を出して気を紛らわせようと、アスナが口を開くよりも先にサツキが思い出したかのように話し始めた。
「そういえば今日は二人だけか?他は?」
「用事があるってどっかに行ったよ。俺とサチは留守番を頼まれたから、久しぶりに美味い物でも食べようかってなってさ」
「なるほどね、意図せずデートの邪魔をしてしまったわけだ」
「で、デートってわけじゃあ・・・それならそっちはどうなんだよ」
「そりゃあ勿論デートに決まって──なんてことはなく、独り寂しいぼっちな俺に副団長が気を利かせて付いて来てくれただけだよ。うん」
横からアスナのリニアーの如き鋭い視線に射貫かれてサツキは即答する。キリトは苦笑いし、サチも小さく笑っているのを見てアスナも安堵する。
誘ったアスナ自身、場が持つか不安を感じていたが、サツキがズカズカと話題を振って話すので会話が途切れることは無かった。面識は互いに少ないはずなのに、よほど気が合うのか旧友と再会したかのように会話は弾んだ。内容はアインクラッドでの日々に限定されたが、攻略組として、中層プレイヤーとして、コンビで、それぞれが違う道を歩んできた四人にとっては新鮮で興味深いものだった。
想定していた時間をだいぶ過ぎ、店内に他の客が居なくなった頃に初めてサチが意を決した様子で話題を切り出した。
「お二人は、キリトが攻略組を抜けたことを怒っていないんですか?」
キリトは虚をつかれた様に目を見開いた。それに構わずサツキは即答する。
「んー、俺は入れ替わりで入ったからなぁ。知っての通り命懸けの事だから、他人に強制されるものでもないし。反対したヤツもいたらしいけど、もし俺がその場に居たら逆に今まで貢献してくれた感謝で送り出したと思う」
次を促すように視線を向けられたアスナは言葉に詰まった。当時は突然の事で気持ちの整理が追い付かず、ヤケになっていた部分もある。今の考えを、素直な気持ちをアスナは絞り出した。
「私は・・・怖かった。キリトくんがいなくなるのが。ずっとみんなの前に立って戦ってくれて、守ってくれていたから。私にそんなことは出来ないし、私が今まで戦えたのはキリトくんがいたから。でも攻略よりも大切なものができたんだって、今は少し安心してる」
キリトは驚いた様子からどこか安堵したような表情になった。アスナはチラリと隣りを見て続ける。
「それに、少し頼りないけど新しい人も入ったからね」
「今までの活躍で頼りないって、攻略組のレベル高くない?」
「最前線で戦っているんだからレベルは高いでしょう」
「いやそうだけど、そうじゃない」
アスナの珍しい冗談にもサツキはツッコミを入れ、その場は笑いに包まれた。
「あれで良かったのか?」
「なんのこと?」
店を出て帰る道すがら、少し後ろを歩くサツキが遠慮がちに聞いてきた。
「キリトだよ。本当は戻ってほしいんじゃなかったのか?」
「そうね、前まではそう思っていたわ」
転移門の前でアスナは立ち止まり、サツキに向き直る。
「戻ってほしい気持ちと、キリトくんの選択を尊重したい気持ち・・・どっちを優先すべきか悩んでいたけれど、ようやく答えが出たの」
「ほう、何が決め手だったんだ?」
「秘密よ。話したくなったら話すわ」
「なんだそれ」
首を傾げるサツキに別れを告げ、アスナは転移門をくぐった。
映画が楽しみです。