ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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プログレッシブ見たのでモチベーション爆上がり中です。長ったらしいですが、どうぞ!


Ep.45 狂啼

<サツキside>

 

 

 

 

偵察から3日が経った日の午後。

 

俺たちKoBとその他攻略ギルドで結成された総勢45名のレイドは、第67層ボス部屋の前に集まっていた。

 

あれからボスに関する新たな情報は見つからず、順調だった攻略ペースが落ちるのを危惧した各ギルドのお偉いさん方の意向で本戦に挑むことになった。祠の件は全員に伝達済みで、警戒するように伝えてはいるがやはり不安は拭えない。

 

集団の端であらゆる可能性を考えていると、久しぶりの声をかけられた。

 

「よぉサツキ、珍しく難しい顔してんな」

 

「おめぇはいつも通りのアホ面だな」

 

「この顔の良さが分からねぇとは、まだまだ子供だな」

 

やれやれと首を振る侍男、クラインに俺は呆れのため息を吐いた。すっかり攻略組の一角となった<風林火山>を率いる彼だが、普段の姿を見ていると嘘ではないかと疑ってしまう。だがその実力と信頼は確かなものだ。

 

「お気楽なもんだな。こちとら消えない不安に頭を抱えてるってのに」

 

「まぁ正直、不安なことに変わりはねぇよ。でもよ、リーダーの俺が弱腰になってちゃあ士気に関わるからな。勝てるもんも勝てなくなるだろ?このメンツならいつも通り行けば大丈夫だって」

 

「いつも通り、な・・・」

 

俺は呟き、レイドの先頭でボス部屋の扉を無言で見つめる副団長に視線を向けた。タイミングよく副団長は、緊張した面持ちのレイドに向き直り凛とした声を発する。

 

「では予定通り、ボス戦を開始します」

 

それを合図に、各々が武器を手に取る。

 

「見ろ、アスナさんもいつも通りじゃねぇか」

 

「・・・だな」

 

直前に不安を煽りたくないので同意するが、副団長の声が不安に揺れていることに俺は気付いていた。

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

不気味なほど冷たい空気が漂う迷宮を独り歩く。

 

死角が多いため警戒に集中力を要するこの場所は、とてもソロ向けとは言えない。それでも訪れた理由は、武器の強化に必要な素材を手に入れるためだ。今まさにボスと激闘を繰り広げているはずの67層から、わずか2層下という最前線と遜色ない難易度だが問題はない。

 

誰かの為でなく、自分の為だけならば私は戦える。

 

迷わないように道を確認しながら奥へ進むが、私は違和感を感じていた。30分ほど敵とエンカウントしないのだ。広大な草原などのフィールドならば珍しいことではないが、迷宮のダンジョンでは本来運が良くても10分ほどで敵と遭遇する。

 

ありえない現象に警戒をさらに高めながら進むと、目の前の通路を猛スピードで何かが横切った。反射的に鎌を構えて目を凝らすと、一つ二つと続け様に通路を横切って行くのがモンスターだと分かった。私に気付いても不思議でない距離なのに、何かに引き寄せられるように走って行く。

 

「なんなの・・・?」

 

はち合わせしない様に音を消してモンスターたちが向かった先へ進むと、不気味な静けさの中で遠くから微かに何かが聞こえてきた。かなりの数と思われる、モンスターの声。

 

「・・・っ」

 

ずっと前、独りになる前の頃に見た光景が蘇る。無数のモンスター達にリンチにされたプレイヤーが、恐怖に染まった絶叫を上げながら死んでいく様が。

 

加速する鼓動を押さえつけて音のする方へ足を進めと、淡い光がこぼれる部屋の入り口があった。ぞろぞろとモンスターの群れが入って行くそこで、今まさに誰かが命を懸けて戦っている。私は全身を震わせながら、気付かれないように中を覗いた。

 

「ギシシシシェェェェ!」

 

「ガアァッアッ!」

 

耳を劈く咆哮が絶えず響いていた。室内を埋め尽くす群れの数は尋常ではない。しかしそれよりも異質な存在がそこにはあった。

 

「・・・」

 

群れに囲まれながら、全方位から放たれる攻撃をまるで踊っているかの様に軽やかに躱している剣士。装備から()と言った方が正確か。左腰に提げた大振りな刀を抜く気配はなく、ただ迫るモンスターの攻撃を躱し続けている。

 

「・・・すごい」

 

まるで周りが全て見えているかのような動きだ。攻略組でも真似できる者は限られるであろう芸当を、あの侍は当たり前であるかのようにやっている。

 

その異様な光景に釘付けになり、私は背後に迫った敵に気付くのが遅れた。

 

「グルルルジャァァ!!」

 

「え──きゃ!」

 

背後からの奇襲をまともに喰らい、私は群れの中に吹き飛ばされた。HPが2割ほど減少し、視線を上げると無数のギラついた眼が私を捉えていた。

 

次の瞬間、私に向かって血に飢えた数多の武器が振り下ろされた。

 

「くっ!」

 

ダメージエフェクトで視界が赤色に染まる。全身を不快なショックが駆け巡る。もの凄い勢いで減少していくHPを見てめちゃくちゃに鎌を振るうが多勢に無勢だ。

 

死が迫りあの時の、見殺しにしたプレイヤーの死ぬ瞬間がフラッシュバックする。あの人も、こんな絶望と恐怖を感じていたのだろうか。

 

いや、あのプレイヤーだけではない。

 

守ると約束したのに、自分が生き残るために最悪の形で裏切ってしまった親友の顔を思い出す。絶望の中で足掻いていたであろう彼女に、私がさらに絶望を突き付けて、そして──

 

「・・・ごめんね、アスナ」

 

伝えることの出来なかった言葉が、涙とともに零れた。

 

数ミリになったHPを最後に、私は目を閉じた。あの時と同じ、死の瞬間を見たくなかった。訪れる死を待った。

 

直後に聞こえたのは、部屋全体を揺るがす轟音と大量の破砕音だった。耳障りだった群れの声が消え、辺りが静寂に包まれた中で私に近付く足音が一つ。

 

「・・・大丈夫、か・・・」

 

恐る恐る目を開けると、へたり込む私を見下ろす()と目が合った。正確には、顔につけた鬼の仮面のそれと。

 

 

 

 

♦️

 

 

<サツキside>

 

 

 

「スイッチ!」

 

「あいよ!」

 

長髪を両断して出来た隙で後方へ大きく跳躍する。すかさず飛び込んで来た槍使いにタゲを任せ、俺は大きく息を吐いた。

 

戦闘開始から30分程が経過し、残りHPバーが1本と少しになったボスを見て誰もが順調だと思うだろう。このまま何事もなく終わってくれと祈りつつ、俺は改めて戦況を見直した。

 

俺と副団長、シュガーを遊撃隊として除いた42名で6人パーティーを7つ編成し、ボスのタゲ取りと回復、攻撃をローテーション形式で回している。手練揃いなだけあって連携やスイッチに問題はなく、危なげなく戦闘は続いている。余裕、とさえ言える。

 

「大丈夫そうですね」

 

ポーションを飲み終えたシュガーが同じように戦況を見回して言った。

 

「だな。お偉いさん方にグチグチ言われるぞ」

 

ボス戦を延期すると言ったら各ギルドの幹部たち、特にDDAが抗議に近い文句を延々と言ってきたのだ。ヒースクリフの一言で収まったものの、何事もなく終わればまた文句を言って来るに違いない。

 

「言わせておけばいいのよ、気にすることないわ」

 

戦線から離脱して来た副団長が合流してくる。彼女の言うように、何事もないに越したことはないので言わせておくことにしよう。

 

「あと10分もしないで終わるな」

 

俺がそう言った瞬間に、HPバーが最後の1本となった。ボスが一際甲高い絶叫を上げる。各パーティーはローテーションするためにスイッチするタイミングを伺っていた。

 

「うっし、ラストやるか」

 

「はい!」

 

「ええ」

 

俺たちも加勢するために愛剣を握り直す。

 

ボスが絶叫が止み、一瞬の静寂が訪れた時だった。

 

 

 

ギイィィ・・・

 

 

 

不気味なほど、その音はボス部屋に響いた。

 

音がした67層ボス(ザ・サッド)の後方、例の()がその扉を開いていた。そして──

 

「ァァアア・・・アアアアァ」

 

呻き声とともに恐ろしく長い指が、次にグチャグチャにひしゃげた醜い顔、異常に痩せ細った腹と足が、顕になった。

 

誰もが動けずに現れたソレを見ていた。血走った眼で立ち尽くす俺たちを見回したソレは、腰に提げた2本の禍々しい鎌をだらんとした動作で握った。

 

同時に、ヤツの頭上に1本の長大なHPバーと固有名<奪者(ザ・ラバリィ)>が表示された。

 

「副団長!シュガー!」

 

言うや否や俺は走り出した。

 

背中に提げたままだったカタルシスも引き抜き、ノロノロと動き始めたラバリィの元へ向かう。

 

「CからG班で残りの1本をお願いします!A・B班は僕らとこちらの相手を!」

 

「攻撃パターンを見極めるまでは防御に専念してください!」

 

シュガーと副団長の指示に全員が即応し、想定内だと言わんばかりに陣形が変更されていく。ラバリィの一番近くにいたB班──クラインたち<風林火山>がタゲを取り、もう一体と混戦にならないよう引き離した。

 

ラバリィの前でタンク役のトーラスが盾を構えると、狙いを定めたのか右手の鎌を無造作に振るった。

 

何の変哲もない、ソードスキルですらないその一撃は、先ほどまで哀者(ザ・サッド)の猛攻を防ぎ切っていたトーラスの盾をあっさりと捲りあげた。間髪入れず、強烈な金属音とともに体勢を崩されたトーラスに、左手の鎌が横薙ぎに払われた。

 

「ガッ──!?」

 

直撃を喰らって吹き飛ばされたトーラスは勢いよく転がった。HPは赤に染まる寸前で止まったが、ぐったりとしてその場で動かない。

 

「と、トーラス!」

 

「ッ!」

 

悲鳴にも似たクラインの声に反応してか、ラバリィはクラインに向けて鎌を振り上げた。それが振られる前に、俺はラバリィ目掛けて突進技・”レイジスパイク”を発動させた。限界まで威力をブーストして10メートルほどの距離を一瞬で縮める。

 

だが胴体を狙った剣尖はヤツを捉えることは無かった。消えたと錯覚するほどの速度で、背後からの俺の一撃を躱したのだ。着地した時には、すでに俺の攻撃範囲から絶妙な距離を置いていた。

 

「見かけによらず頭は良いようだな。クライン!こっちで引きつけるから回復させろ!」

 

「わかった!すまねぇ」

 

風林火山の面々がトーラスを引きずって後退していく。その間もラバリィは俺を見たまま動かなかった。

 

「強さはケタ違いって感じですか」

 

「ああ、かなり強いぞ」

 

「ええ。タンク役で一撃半分、つまり──」

 

「──紙装甲の俺たちなら、即死だろうな」

 

A班から息を呑む気配がした。俺はラバリィから目を離さずに副団長に判断を仰ぐ。

 

「どうする?出直すか?」

 

一瞬の間のあと、副団長は決断する。

 

「・・・片方を倒した後、撤退します」

 

「了解。じゃあシュガーはあっちに加勢してサクッと倒して来てくれ。その間こっちのタゲ取っとくから」

 

「わかりました!」

 

「クライン!片方倒したら撤退するから、倒れたヤツは外まで連れて行け!」

 

「あ、ああ・・・わかった」

 

壁際で回復を終えたクラインたちが移動するのを見届けて、俺は再びラバリィと対峙した。やる気がなさそうに脱力した見た目に反し、攻撃力と速度は間違いなく今までのボスでも上位に入る。俺はわずかな予備動作も見逃さないように、ヤツに意識を集中させた。

 

そんな俺から、ラバリィは突然ずっと固定していた視線を外した。見ているのは、今まさに残り数ドットのHPが無くなる寸前のサッドだ。

 

「これで、終わりだぁぁぁ!」

 

トドメとなるソードスキルを放ったのは、DDAの両手斧使い。サッドの頭上まで跳躍し、単発技・”インパクト”を発動させる。

 

途端、俺の全身を戦慄が走った。

 

だが動くのも、声を出すことも間に合わなかった。振り下ろされた両手斧が脳天を直撃し、そのHPを全損させる。

 

サッドはピタッと動きを止め、その全身が光を帯びて爆散──

 

 

 

 

 

 

 

 

──しなかった。

 

 

 

「・・・は?」

 

誰もが有り得ない現象に理解が追いつかない中、空中で技後の硬直時間に囚われていた両手斧使いに、サッドの長髪がグルグルと何重にも絡み付いた。

 

そして、それを見据えたラバリィが右手の鎌をゆらりと持ち上げる。

 

「ッ!?クソッ!」

 

俺はラバリィを止めようと走り出すが、同時にヤツは軽々した動作で鎌を投擲した。狙い違わず、モゴモゴと長髪の中で蠢く両手斧使いの元へ吸い込まれるように近付き、そして──

 

 

「あっ・・・?」

 

 

その体を、腹部から両断した。




映画見ました?
やっぱりSAOと言ったらアインクラッドだな!ってなるのでまだ見てない方はぜひぜひ
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