ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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オリキャラ登場回。


Ep.4 シュガー・ステップ

<サツキside>

 

「初めまして剣豪さん!僕は血盟騎士団の偵察隊長をやらせて頂いているシュガーです!よろしくお願いします!!」

 

「お、おう。よろしく─って剣豪って呼ぶな」

 

ギルド本部の一室で見事な敬礼を俺に向けるこいつは、爽やかイケメンを絵に描いたようなヤツだった。赤い瞳から彼の純粋さが感じられる。

 

「・・・と言うわけで、あなたにはボス部屋の偵察チームに所属してもらいます」

 

「えぇ・・・めんど─」

 

「よろしくお願いします!団長が認めた剣豪さんが一緒だととても心強いです!」

 

「・・・うん、よろしくね」

 

諦めよう。

こうなったのは全部ヒースクリフのせいだ。

 

 

迷宮区から帰還してアルゴと別れた後、俺と副団長はヒースクリフから本部へ呼び出された。それで話されたのが偵察隊の件だ。

 

「本戦はもちろん<剣豪>スキルは偵察戦でも役に立つと考えている。ボスの弱点を見つけるのに君ほどの適任はいないだろう?」

 

らしい。その通りだが。

 

「ではボス部屋が見つかったらご連絡させて頂きます!」

 

「ん?それまでは何もないのか?」

 

「彼らの任務はあくまでボスの偵察なのでボス部屋が見つかるまでは基本的に自由です。レベリングでも装備強化でも出かけても休んでも何してても良いです」

 

「へぇ、結構ホワイトじゃん」

 

最強の攻略ギルドという看板を背負ってるのでかなりのブラックだと思っていたが、案外そうでもないらしい。

 

「余談ですが、あなたとシュガーくんには本戦にも参加してもらいます」

 

「そっちが本題だろ!?」

 

訂正する。超ブラックだ。

 

「まぁ偵察戦って言っても、ただボスにちょっかい出してモーションとか能力を見るだけですけどねー生きて帰ってくることを第一にしてるので!」

 

「いや、十分凄いよそれ」

 

ほわんほわんしながらシュガーは言ったが、未知なるボスに挑むのはレベル的ステータスよりも心の方が大切になると思う。もしかすると彼は見た目に反してかなりの胆力があるのかもしれない。

 

「じゃあ改めてよろしくな、偵察隊長」

 

「はい!よろしくお願いします剣豪さん!」

 

「だからその呼び方やめて」

 

もしかしたら彼は天然なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

 

 

<アスナside>

 

 

事務的なやり取りしか交わしたことのない偵察隊長のシュガーくんだが、前から感じていた通り物腰が柔らかい性格のようだ。サツキくんともすぐに打ち解けている。

 

どこか抜けている彼だが、この世界で最も死の危険が高い偵察戦を幾度となくこなし、一人の死者も出したことがない。彼が偵察隊長になってからは人的物的損害は無くなり、情報の質は格段に上がった。おかげで本戦がかなり楽になっている。

 

彼自身のプレイヤースキルはもちろん、指揮官としての才能もあるのだろう。第五十層ボス戦でも、私が思考停止に陥っていた間に次々と指示を出して団長が駆け付けるまでの時間を稼いでくれた。レベルは私の方が高いと思うが、指揮官としては彼に劣ると思う。

 

「そうだ!今からフィールドに行きませんか?剣豪さんの戦いを見てみたいです!」

 

「今から!?いやちょっと・・・」

 

「そうですか・・・残念です」

 

「・・・わかった、行こう」

 

「本当ですか!ありがとうございます!!」

 

私やサツキくんより年上と思われる彼だが、どうにも放っておけない弟に見えてしまう。

 

「私も行きます」

 

シュガーくんは驚きの、サツキくんは明らかに嫌そうな顔をしたが気にせず話を進める。

 

サツキくんにかなり渋られたが、シュガーくんの説得が効いて3人で最前線のマッピングに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

<サツキside>

 

 

 

 

 

「剣豪さん!右はお任せ下さい!」

 

「あいよ、頼むわ!」

 

「新手は私が引き受けます」

 

「お願いします!」

 

「無理すんなよ」

 

「ええ」

 

第五十一層迷宮区は攻略が開始されてからまだ日が浅いが、全体の半分くらいは踏破されている。二十五層と五十層の迷宮区がアホみたいな規模と複雑さであったのに対し、ここは小規模かつシンプルなのでマッピングがガンガン進む。生息するモンスターも俺たち3人にとってもはや敵でもない。大量に湧いてくる群れを機械的に処理していく。

 

「剣豪さん凄いですね!さっきの連続技がユニークスキルですか!?」

 

実験的に試してみた両手斧と片手剣ソードスキルの組み合わせ技を見たシュガーが興奮した様子で聞いてきた。

 

「ああ、そうだよ」

 

「カッコイイなぁ!僕ももっと頑張らないと!」

 

「いや、シュガーだって十分強いよ」

 

「そんなとんでもない!僕なんてまだまだですよ!」

 

そう言う彼だが、流石は最強ギルドの偵察隊長と言ったところでその戦闘技術は見事なものだった。危なげも無駄もなく、余裕はあるが隙がない。全ての動きが洗練されていて、放つソードスキルは完璧と言える完成度だ。

 

「片付きましたね」

 

副団長が周囲を見回してレイピアを収める。

初めて彼女の戦闘を見たが、文句の付けようがなかった。第一層からボス戦に参加してきた経験が見ているだけでも伝わってくる。俺もよく使うリニアーなんか軌道が全く見えなかった。

 

「おつかれ。結構進んだな」

 

「そうですね!もうすぐボス部屋が見つかると思います!」

 

「あと数日中には見つかるでしょう」

 

「なんならこのまま俺たちで見つけるか?なんて─」

 

調子に乗った俺が冗談で口にしたそれに、

 

「良いですね!見つけちゃいましょう!」

 

「そうね、賛成よ」

 

2人は即乗っかった。

 

「へ?いや、今のは冗談でもう帰─」

 

瞬間、俺の弁明を掻き消す音が響いた。聞き間違いようのない特徴的なこの音は─

 

「新手が湧きました!」

 

「片付けて進みましょう」

 

「タイミング悪過ぎやろ!」

 

迫るモンスター郡に俺は泣きの連続ソードスキルを見舞った。

 

 

 

三時間後。

 

 

「ありました!」

 

「ようやくね」

 

「マジで見つけちゃったよ・・・」

 

巨大な二枚扉を見つけた俺たちはそこで切り上げてギルド本部へ戻り、ボス部屋の発見をヒースクリフに報告してアルゴに情報を提供した。

 

「たった3人で残りをマッピングしたノカ。相変わらずKoBは仕事が早いナ」

 

「まぁ・・・ノリと勢いでな」

 

今日はこれで解散という流れに。

 

マイハウスに戻る前、ふと気になったことが。

 

「なぁ、一ついいか?」

 

「どうしました?」

 

「まさかとは思うけど・・・偵察って明日?」

 

シュガーは疲れなど微塵も感じさせない爽やかな笑顔で、副団長は当然と言わんばかりに答えた。

 

「はい、そうですよ!一緒に頑張りましょう!」

 

「時間に遅れないようにしてください」

 

うへぇと思いつつ「了解です」と返して俺は帰路についた。

 

帰宅してそのままベッドに倒れ込み、今日を振り返ってみると思い出したことが。

 

 

・・・あれ?今日って休みじゃなかった?




オリキャラはあと何人か考えてます。

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