ソードアート・オンライン ── 血盟の剣豪 ──   作:Syncable

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去年で終わらせると言いつつアインクラッド篇すら終わってない。この調子だとあと3年はかかりそうですね(遠い目)


Ep.50 反撃

<サツキside>

 

 

ボスの同時撃破。

 

鎌使いの少女──ミトが告げた打開策は、今の状況ではあまりに絶望的なものだった。

 

「2体同時に・・・?」

 

俺の呟きにミトは頷く。

 

「ええ。正確には、2体のHPが共にゼロになる瞬間を作ればいいの。髪の方はもうゼロになってるから、あとは──」

 

「あの野郎をゼロにすればいいわけか」

 

俺の答えが正解だと言わんばかりに、ラバリィは醜悪な笑みを浮かべた。

 

 

俺は地獄絵図を見回して思考を加速させる。

 

サッドにタゲられたメンバーは風林火山を主体として即席の陣形を作り、振るわれる髪を捌いている。しかし後退して離脱しようとする者がいれば優先してタゲるようで逃げられない。このままではジリ貧になる。彼らが耐えているうちにケリを付けなければならないが、凶敵・ラバリィのHPはまだ七割近くも残っている。

 

だが絶望の中にも、一筋の光はあった。

 

「・・・死闘、だな・・・剣豪・・・」

 

「来てくれたのか、ルナ」

 

仮面の侍はこの状況に臆している様子はなかった。さすがの頼もしさを感じながら、俺は座り込んだままの副団長の前に屈んで感情に揺れるヘイゼルの瞳を見つめた。

 

「副団長・・・俺とあんた、ミトとシュガー、ルナの五人でヤツに勝てる見込みはあると思うか?」

 

この場にいる最強メンバーで短期決戦に持ち込む。俺が出した最善策だが、無謀だと自分でも思う。俺たちが負ければ、全滅に直結する危険な賭けだ。だが勝てば、全員が助かる。

 

「・・・かなり、厳しいと思う」

 

「勝率は?」

 

「・・・三割くらい」

 

「充分だ」

 

驚きで目を見開いた副団長の手を取り立ち上がらせ、近くで手探りに周囲を探っていたシュガーの手を引いてみんなに向き直る。

 

「ミト、<開眼結晶>は持ってるか?」

 

「ええ、一応あるけど・・・」

 

一定時間索敵ボーナスを獲得でき、盲目デバフを解除できる唯一の結晶アイテムだ。俺は続ける。

 

「よし、みんな聞いてくれ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

 

 

 

 

「あら天音(あまね)ちゃん、今日も来てたの?」

 

消毒液の匂いが漂う室内で私の名前を呼ぶ声が聞こえた。視線を向けると、少し驚いた様子で両手に荷物を抱えた女性が立っていた。反射的に立ち上がり頭を下げる。

 

「お邪魔しています、おばさま」

 

「いやぁねお邪魔なんて、きっとその子も喜んでるわ」

 

そう言いながら荷物をテーブルに置く女性は、ベットの上で眠ったままの彼の母親だ。私が物心つく前から可愛がってくれていて、勝手ながら二人目の母親とも呼べる大切な存在になっている。

 

「お仕事の方は大丈夫なの?」

 

「ええ、ようやく落ち着いてきました」

 

「そうなのね。でもせっかくのお休みにわざわざ来てくれなくても良いのよ?この子ったら全然起きないんだから」

 

「それなら起きるまで通い続けますよ。今の姿を一番見て欲しいのは彼なんですから」

 

「あら、そうなの?」

 

嬉しそうに微笑むおばさまの視線が私の背後で止まり、微かに表情に翳りが見られた。つられて見ると、病室の角に設置されたテレビから淡々としたアナウンサーの声が聞こえる。

 

『続いては・・・本日のSAO内での死亡者数ですが、14時現在で6名──え?あっ、失礼しました。死亡者は26名です。今月初めて二桁代と──』

 

私は思わずテレビを消した。そして傍らで眠る、いや戦い続ける彼を見る。

 

「・・・大丈夫よ、絶対に帰ってくるから」

 

「・・・そうですよね」

 

私たちの声は、抑えられない感情に揺れていた。

 

 

 

 

 

 

♦️

 

 

<ミトside>

 

 

 

 

「まず、俺が結晶を持ってヤツを引き付ける。その間にシュガーに結晶を使ってくれ。そして俺とシュガーでヤツの攻撃を捌くから、隙を見て三人で削ってくれ」

 

さも当然かのように言ったサツキに、私は瞬時に反応した。

 

「疑うわけじゃないけれど、二人で捌けるの?」

 

「任せてください!」

 

「伊達に偵察隊やってないからな、捌くくらいなら俺たちで充分だ」

 

軽い返事に反して私はシュガーとサツキに頼もしさを感じた。サツキは削り役の三人を順に見て続ける。

 

「三人はガンガン攻撃してくれ。短期決戦だ、五分で終わらせる」

 

「・・・承知、した・・・」

 

「わかった」

 

「やりましょう」

 

短い打ち合わせを終えて各々が武器を構える。

 

「クライン!あと五分だけ耐えてくれ!」

 

「──おうよ!頼んだぜ、サツキッ!」

 

厚い信頼を感じさせるクラインの返事を受け、サツキはラバリィを見据えた。右手に提げた流麗な剣が纏うオーバーレイが輝きを増すと同時に、漆黒の剣豪は走り出した。

 

「──勝つぞ!」

 

サツキは左手の剣を収め、代わりに転移結晶を持っていた。これによってラバリィのタゲがサツキに固定される。私は打ち合わせ通りに盲目の両手剣使いに<開眼結晶>を使った。

 

「ありがとうございます!」

 

真紅の双眸を開いた彼はそう言うと、臆することなくサツキを追従する。それを視認したサツキは結晶を二本目の愛剣に持ち帰ると、本格的に攻防を始めた。

 

「・・・さぁ、往くか・・・」

 

側面に向かって走り出したルナを倣って私も走り出そうとした時、隣りに懐かしい気配を感じた。

 

「ミト・・・」

 

二度と聞けないと思っていた声は少し大人びていた。再会の喜び以上に、ボスに対する恐怖以上の罪悪感を払い除けて、私はかつての親友に向き直った。

 

「絶対勝とうね。話したいこと、一杯あるんだから」

 

その声と瞳には怒りも悲しみも無かった。あの頃と変わらない親友の姿がそこにはあった。

 

「うん、勝とう・・・アスナ」

 

互いに頷いて同時に走り出す。ルナと反対に挟むように回り込み、ソードスキルを発動させる。

 

「「スイッチ!」」

 

二本の鎌を高々と弾いたサツキとシュガーの声に合わせて、私たちは飛び込む。がら空きの醜体に斬痕が刻まれ、長大なHPが目に見えて減少する。反撃の一撃も正確に危なげなくサツキが受け止め、シュガーが押し返す。

 

「・・・次、だ・・・」

 

「ミト、行こう!」

 

「うん!」

 

初めてのボス戦──

 

間違いなくアインクラッドで最も死に近い状況でも私は動けている。

 

勝つんだ、このまま。

 

ボスにも、弱い自分自身にも。

 

 

 

 

 

 

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