今回は少し長いです。(なかなか切りがよく終われませんでした(ToT))
「いっちば〜〜〜〜ん!!!」
そう言ってライブハウスに走って元気に入店して来たのは、背中にギターケースを背負った少女だった。背丈からして高校生だろう。前髪に赤い星形の髪飾りをした茶色の長すぎず短すぎずの髪からなにやら猫耳のようなものが生えているが俺はあえて考えないようにした。そして彼女は入って来たのに続いてまた1人……
「私2ば〜〜〜〜ん」
と言って入って来たのは、最初に入って来た子よりも背は高く、髪も腰にまで届くほど長い黒髪の女の子だった。彼女も背中にギターケースを背負っている。
二人が揃って手に膝をついて息を切らしていると、
「もー、二人とも速すぎー」
と言って、息を切らしながら入ってくる今日で三人目の客。亜麻色のショートポニーを洒落たリボンのような物で結んでいる女の子だ。背丈は最初に入って来た子と2番目に入って来た子の間ぐらいか。この子は肩にバックをからっているだけだった。
そしてその子続き、
「はぁ……や、やっと追い付いた……」
と言って、とても走り疲れた表情で四人目が入って来た。黒髪のショートヘアーで、身長はこの四人の中で一番低い。この子は背中にケースを背負っている。
「えっと……皆大丈夫?」
さすがの月島も心配になって、息を整えている四人組に声を掛けた。
「あっ、まりなさん。おはようございます!」
最初に入って来た猫耳(?)の子はもう回復したようで、月島に元気よく挨拶をする。
「う、うん。おはよう香澄ちゃん。あれ?1人いないような……」
「あぁ、有咲ならもうすぐ来ると思いますよ」
月島の疑問に3番目に入ったショートポニーの子が苦笑いしながら答える。すると、2番に入って来た黒髪ロングの子が、
「あっ、有咲来たよ」
と言って外を指差した。すると、向こうから、よろよろと大きなケースを背負いながら女の子が息を切らして走って来る。その顔は今にも死にそうだ。
「有咲―――!!ガンバレ―――!!」
という猫耳(?)の応援に、走っている女の子はキツそうに声を絞り出して「う、うるせぇ―――!!」と返してきた。すると今度は黒髪ロングの子が、
「有咲〜〜〜もう少しだよ〜〜〜」
という声援にも、「だからうるせぇよ!!」と返事した。なんだかよく分からないが、俺はあの子がとても不憫でならなかった。
そして数十秒後、彼女は無事、CIRCLEへ辿り着いた。
入り口で四つん這いになってぜーぜーと息を切らしているのは、金髪のツインテールの女の子だった。身長はこの5人組の中では2番目に背が低い。だが何より気になるのは彼女が背中に背負っている長方形をしたほぼ彼女と等身大に近い黒い荷物だ。見た感じ重たそうだが、一体何が入っているのかとても気になる。
「有咲、大丈夫?」
「有咲ちゃん……」
猫耳(?)の子と黒髪ショートの子がしゃがみ込んで、四つん這いの子に声を掛ける。すると彼女は、猫耳(?)の子を睨み付けて、
「だ、大丈夫な……わけ……ねぇだろ。……大体こんな……暑い時に……走ってくお前らの方が……おかしいだろ。倒れたら……どうすんだ」
と、大変ごもっともなことを言った。金髪の子の言葉に猫耳(?)の子は、
「で、でも、走って行かないと、予約の時間に間に合わないと思って‥‥‥」
「誰のせいでそうなったと思ってんだよ!!それもこれも全部お前が寝坊したせいだろうが!!」
「えへへ〜それほどでも〜」
「誉めてねぇ!!」
このやり取りから考えるに、この猫耳(?)の子が寝坊したことで予約の時間に遅れそうになったので、全員ダッシュしてここまで来る羽目になったようだ。もしそうならこの猫耳(?)の子が完全に悪いが、こいつ、反省の色ゼロだな。
「まあまあ有咲落ち着いて。はい」
とショートポニーの子がなだめながら店内の自販機で買ったと思われるポ〇リを金髪の子に渡す。
「お、おう。ありがとう」
金髪の子は素直にお礼を言って〇カリを受け取り、そのままがぶ飲みした。年頃の女の子にしてはいささか品がないが、状況が状況なため目を瞑っておこう。
「ぷはー生き返ったー。サンキュー沙綾。後でお金は払うから」
「いいよこれくらい。さぁ、早くスタジオに入ろう。走って来たおかげで早く着いたとはいえ、予約の時間オーバーしちゃっていることに変わりないんだからね」
「あっ!そうだった!早く入らないと練習する時間なくなっちゃうよ!」
「だからそれはお前のせいだろ!」
この金髪、絶対振り回わされて苦労するタイプだ。
「全く、騒がしい奴らだな」
「でもそれがあの子達の良いところでもあるんだよ」
俺のため息交じりに
「まりなさん、スタジオの貸し出しお願いします」
ギターケースを背負った黒髪ロングの子がカウンターにやって来た。
「はーい。じゃあこの鍵と同じ番号の部屋を使ってください。今回は特別に今から貸し出しにするけど、次からはこんな事が無いようにしてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
月島のサービスに黒髪ロングの子はお礼を言ってスタジオの鍵を受け取った。
すると彼女はさっきからずっと空気だった俺のことをじっと見つめてきた。しかも、
「じ――――」
と言った変な効果音付きで。なんだこいつ?
「おたえ―――早く早く!!」
「あっ、うん。今行くー」
猫耳(?)の子の声で我に返ったのか、彼女はさっと視線を俺から反らし、声の主達の元へ駆けていった。
何なんだあいつ?
「全く、香澄のせいで酷い目にあった」
金髪の子は両腕をぶら下げて歩きながら言う。彼女の言葉に猫耳(?)の子は笑いながら、
「ゴメン、ゴメン。次からは気をつけるから」
「私はあと何回その言葉を聞けばいいんだよ」
そう言って金髪の子はため息を吐く。
「でも、まりなさんのお陰で時間いっぱい使えるから良かったよね」
「沙綾の言うとおりだよ有咲、結果オーライだよ〜」
「それはお前が言っていい
ショートポニーの子の言葉に猫耳(?)の子が便乗するが金髪の子にツッコまれる。
そんな3人の会話の中、黒髪ロングの子が顎に手を当てながら歩く。黒髪ショートの子がそれに気付き、声を掛ける。
「?……おたえちゃん。どうかしたの?さっきからずっと考え込んでるみたいだけど‥‥‥」
「えっ、あっううん何でもないよ」
「そ、そう?」
黒髪ショートの子の声にに気付き、ロングの子は心配いらないように取り
「そういえばさ、まりなさんの隣にいたお兄さん、見ない顔だったよね」
「ああ確かに。新人のスタッフさんかな?」
「別にそんな考え込む事でもねぇだろ」
猫耳(?)の子の話しにショートポニーの子が便乗するが金髪の子が興味無いのか、話しを切る。
そんなこんなの内に5人はスタジオの入り口の前に着いた。髪をリボンで結ぶショートポニーの子が、「おたえ、鍵」と、スタジオの鍵を持つ黒髪ロングの子に鍵を開けるように促すが……
「う〜ん」
「おたえちゃん?」
彼女はそれを無視する所か、入り口を素通りし、そのまま歩き進む。
そして、現在の彼女の脳内には、
(やっぱりあのお兄さん、どこかで見たことがある気がする……)
という事しか頭なかった。顔は斜め下を向いていたため、彼女は前が見えていなかった。そのため……
「…たえ」 「…前」
(ん?)
「おたえ前、前!!」
「えっ?……わっ!!」
彼女が反応した時にはもう遅く、ゴッ!!っと鈍い音が廊下に響いた。 黒髪ロングの子の額が廊下の突き当たりの壁にぶつかったのだ。彼女は額を両手で押さえながら2、3歩下がるとそのまましゃがみ込んだ。
「いたたた」
「おたえ大丈夫!?」
「おまえ何やってんだよ!スタジオ素通りするし、何度呼び掛けても返事しないし」
「やっぱりおたえちゃん変だよ」
「おたえどうしたの?」
メンバーはすぐに駆けつけ、猫耳(?)の子から、金髪の子へ、黒髪ショートの子からショートポニーの子へと、心配そうに言葉を投げ掛けてくる。
「……」
しばらくすると、ロングの子は何も言わずにすっと立ち上がった。その表情は前髪に隠れてうまく読み取れない。
「おたえ?」
ショートポニーの子が再度心配そうに声を掛ける。が、ロングの子は聞こえているのかいないのか、ただ一言、
「思い出した」
「「「「えっ?」」」」
彼女の思いがけない一言に4人は呆気に取られた。
「思い出した!あの人は……!」
彼女はそう言いながら振り返り、廊下の出入口を目指して走り出した。
「ちょま!?おたえどこ行くんだよ!」
「おたえ〜〜〜〜!!」
金髪と猫耳(?)の子が叫ぶ頃には、彼女は出入口を通過していた。
「あいつらもバンドをやってんのか?」
「うん、そうだよ。Pippin'Partyっていうガールズバンドでね、最近結成したバンドなんだ」
「……ガールズバンドねぇ……」
同時刻、俺と月島は先ほどの5人組の事について話し合っていた。彼女達はスタジオに向かったが、どうやら金髪の子はまだ猫耳(?)の子を許していないらしく、ここから彼女の文句が
「うちをご贔屓してくれているバンドの一組でね。よくここのライブにも出演してくれるんだ」
「……因みに腕前の方はどうなんだ?」
「そりゃあ、君達のバンドに比べたらまだまだだけど、私はあの子達の演奏は好きだよ。あの子達のライブを聞いていると、とても楽しくなるんだよね」
「ふーん」
月島の台詞に俺は興味ない反応を示す。
あっ、今廊下の方で金髪の子が怒鳴ってる声が
「ここのライブってああいうバンドが出演するんだろ?結構人来るのか?」
「うん、チケットも毎回ほぼ完売するし、ライブをやる度にお客さんもバンドの人達も盛り上がってくれるから私もとてもやり甲斐を感じるんだ」
「……ふん」
下らない。そんな紛い物のバンドの一体何処がいいのか、俺にはさっぱりだ。
百聞は一見に如かず。
昨日祖母との電話の後、俺はガールズバンドについて調べて見た。いくつか動画やSNSを視てみた結果、有名な曲をカバーしたものばかりで新鮮味も感じなければ、完璧に演奏しきれてもいなかった。時々出てきたオリジナルの曲もクオリティの低い歌詞や演奏に俺はこれ以上視る価値はないと判断した。
観客もその場のノリと勢いで勝手に盛り上がっているだけだ。
確かに、音楽をやる理由は人それぞれだ。だがどんな理由があるにせよ、例え遊びにせよ趣味にせよ、確固たる意志を持ち、音楽を本気で取り組くみ向き合わなければその演奏に価値など無いと俺は思っている。
俺が視たガールズバンドの音楽はどうも
だから俺はガールズバンドを……軽い意志で音楽をやっている奴らを認めない。
これはかつて音楽を生き甲斐としてきたとある男の
「どうしたの?さっきからそんな怖い顔をして」
「悪かったな、元からこんなに顔なんだよ」
「……もし気のせいだったらゴメンだけど、響君、
「……別に」
「そう?だったらゴメンね。なんだかそんな風に見えたから」
「……数ヶ月ぶりに顔を合わせたお前に俺の何が分かるってんだよ」
「うん、そうだよね。ゴメン……」
お互いに沈黙が流れる。月島は俺に苦笑いを浮かべて謝ってきた。俺もさすがに気が立って言い過ぎたと思い謝罪しようとしたが……
ゴッ!!
というまるで人が壁に激突したかの様な鈍い音が廊下から
「どうかした?」
月島も俺の反応に気付いて話しかけてきた。
「今、誰かぶつかった音がした」
更に廊下から「大丈夫!?」などという声が
「えっ!?ぶつかったって、何処で?」
「向こうの廊下からだ。さっきの奴らの誰かが壁にぶつかったんだろう」
そう言って俺は顎で廊下の方を示す。
「大変!怪我していないか見に行かないと!」
月島はそう言って廊下に向かって駆け出そうとした。
「待て、月島」
俺は彼女を呼び止めた。
「どうして?もし怪我でもしていたら……」
「そのまま走ったら
「えっ!?」
月島がそう叫ぶと、廊下の角からギターケースを背負った黒髪ロングの子が走って出てきた。その額は赤く腫れている。おそらくこいつが壁にぶつかったんだろう。だがあの様子からして大丈夫そうだ。もし月島があのまま走っていたら、月島とあの子がぶつかって余計に被害が出ていただろう。俺があの子の走っている足音が
だが、俺にとっての問題はそこじゃない。俺は廊下での彼女達の会話がほとんど
黒髪の子は辺りを見渡し、カウンターに立って俺を見つけると、月島の呼び掛けを無視し俺の元に駆けていった。
その時、
「おたえ?」「おたえちゃん?」
残りの4人が廊下から出て来た。しかし、黒髪ロングの子は、それにも反応せず俺に言葉を投げ掛けて来た。俺は彼女何て言って来るか大体分かりきっていた。
さてどう答えようか……
「お兄さん、もしかして“
いかがでしたでしょうか?
投稿が少し遅れましたが、新年と同時に投稿出来るように頑張りました。
そして今年も私のつまらない小説をどうぞよろしくお願いいたします。
それではまた!あなた様が良い年になることを祈って……