その人物に対して抱いた「違和感」を覚えていて貰えると幸いです。
上空で鉄塊が爆ぜる鉄塊。
あまりにも暴力的な「花火」が打ち上げられた。
爆発の衝撃によって巻き上げられた土煙の中から、翼を捥がれたアンドロイドが姿を現し、地上へ向けて落下してくる。
エボルトはそれを満足げに見つめる。その右手には、白と黒に彩られたデバイスが握られていた。
その名は「エボルトリガー」
星狩り族足るエボルトが、ブラックホールを操る本来の姿へ至る為の拡張デバイスである。尤も、エボルトも全力で相手をする訳では無い。先程の爆発は、ブラックホールを用いて部品を損傷させて爆発を招いただけ。
言うなれば、ただの「お遊び」である。
「……さぁ、来いよ」
その言葉に応えるように、落ちてきたヨルハ機体が四方八方から襲いかかって来た。
爆発のダメージに、高度からの落下。
それを経てもなお、深い損傷を負っている機体は極僅かであった。
「おッと…成程、生身の人間とは比べ物にならない位タフだなァ」
呑気に呟くエボルトへ、ポッドによる実弾やビームの雨霰が降り注ぐ。
木々は燃え、大地は抉られて行った。
大型の機械生命体ですら粉微塵になるであろう量の弾幕。
だがしかし、目標物…エボルトは傷1つ付いていなかった。
「…さて、ドンパチはもう気が済んだかァ?なら…次は白兵戦と行こうかァ!」
【バットエンジン!】
エボルトの身体が血管のようなモノに包まれ、マッドローグへと変貌する。次の瞬間、彼の目の前にいたヨルハ機体の群れが吹き飛んだ。…蹴り飛ばされたのだ。それも、尋常ではない力で。
1体や2体の話ではなかった。何体にも及ぶヨルハ機体が、一瞬にしてスクラップと化す。
「次はお前だァ!」
一瞬にして屍の山を作り出したエボルトは、次なる目標へと狙いを定める。
目標となった相手は、2Bだ。彼女の持つ刀「白の契約」による斬撃を回避しながら、エボルトは僅かに驚く。
「へェ、随分とお前は良い動きをしてるなァ…」
「B型にしては」異様に動きが速く、鋭い。
恐らく、それは彼女が今まで培ってきた戦闘経験故だろう。
だが、それだけでは説明出来ない事がある。
何故、この個体はここまで強く在れるのか。
まるで、2Bだけ
エボルトがスチームブレードを突き出す。然し、2Bに其れが当たる事は無かった。
「何ッ!?」
一瞬だけエボルトの視界から2Bが消える。コンマ数秒後、エボルトの首元へ刃が迫っていた。
(貰った…!)
2Bの持つ刃は、吸い込まれる様にエボルトへと迫っていく。
誰が見ても勝負は決した。そう思われた。
「…なーんてなァ!」
刹那、2Bの背後からポッドが現れた。
それは2Bに随行していたポッドではない。
エボルトによって鹵獲され、データを書き換えられた「ポッド893」だ。
〖R010 起動〗
無機質な音声と共に、ポッドから直線的なレーザーが放たれる。
其れは勝利を半ば確信していた2Bの背中へと直撃した。
「が、ッ…ぁ……!?」
思いもしない方向からの一撃。ヨルハ部隊の服と人工皮膚が焼かれ、背中から煙が上がる。
「残念だったねェ」
エボルトは、地面に落ちた白の契約を拾い上げた。
そして、元の持ち主である2Bへと向き直る。
「コイツで…終わりだァ!」
無慈悲に振り下ろされる剣。
しかしその攻撃は、2Bに届くことは無かった。
何処からか伸びてきたバラの蔦。其れがムチの様に撓り、刀を弾き飛ばした。
エボルトの手から離れた刀は宙を舞い、音を立てて地面へ転がった。
「チィッ…横槍とは酔狂な真似をするじゃァないか………ッ!?」
戦いへ横槍を入れた無礼者へとエボルトは向き直る。
だが、その視線の先にいた者の姿を見たエボルトは、仮面の下で驚きと焦りの表情を浮かべた。
「その姿…お前は……ッ!?」
その者は、赤と緑のツートンカラーの装甲に身を包んでいた。複眼は薔薇の花とヘリコプターを模しており、背面にはプロペラ状のブレードが装備されている。
『情熱の扇風機!ローズコプター!イェーイ!』
─────仮面ライダービルド・ローズコプターフォーム
忘れもしない。エボルトが元の地球に潜んでいた頃、東都と北都の代表戦前に、桐生戦兎へ特訓を付けていた時に発動させたベストマッチ形態だ。突如として現れた新たな乱入者に、エボルトのみならず、その場にいる全てのヨルハ部隊が驚愕の声を上げた。
そんな中、1機のポッドが淡々と告げる。
「報告:上空から物体が急速接近中」
ポッドの報告を受け、その場にいた全員が上を見る。
…その先に 比喩ではなく、物理的に「燃えている」何かがあった。
距離が近くになるにつれ、モノの詳細が見え始める─────否、それは「モノ」ではない。「ヒト」の形をしている。
『Ready Go! グレートドラゴニック・フィニィィィィッシュ!!!!』
場違いとも思われる程にけたたましい音を響かせ、その輩はエボルトへ向かって「必殺技」を放つ。
「ぐ、ぬぅッ……!!」
避ける暇もなく、エボルトは両腕をクロスして其れを防ぐ。
然し完全に勢いを殺し切る事は出来ず、エボルトは堪らず2m程吹っ飛ばされた。
十数秒間に行われた攻撃によって巻き上がる土煙。
其れが晴れると、そこにはビルドの隣に2人目の
仮面ライダーグレートクローズ。
エボルトが血を分け合った相手──万丈龍我が変身した姿である。
「…全く、随分と派手にやっちゃって。少しは慎みって物を持ちなさいよ、ドラゴンバカ」
「派手に出た方が見栄えが良いじゃねぇか…って、バカ呼ばわりすんじゃねぇ!せめて『筋肉』を付けろってンだよ!筋肉をッ!ていうかドラゴンバカって何だよ!」
「あーあーうるッさい!後でバナナあげるからさ、今は大人しくしてなさいよ」
「ウッキー!バナナだぁ…じゃねぇんだよ!この馬鹿ッ!」
「馬鹿ぁ!?この
飄々とした様子で話すビルドに対し、身振り手振りも混じえて怒りを表すクローズ。
半ばコントの様な光景と突然起こった出来事の数々に、エボルトも含めてその場にいた面々は呆気に取られていた。
「…ま、後で色々話すとして。取り敢えず、この『エイリアン』ぶっ倒すぞ!万丈!」
「言われなくてもやってやらァ!」
戦闘が再開された。然し、それは先程までのエボルトによるワンサイドゲームではない。
クローズが殴り掛かる傍らで、死角からビルドが斬り掛かる。
ビルドがピンチになった時は、クローズが横から割って入る。
2人の連携攻撃によりエボルトは防戦一方だった。
然し、このまま一方的に攻撃を受け続ける訳にもいかない。エボルトは一旦後ろへ大きく飛び退くと、ネビュラスチームガンを取り出す。
「まさか乱入者が来るとはねェ…仕方ない。今日の所はイーブンって事にしておいてやるよォ…
そして銃弾を地面に放ち土煙を巻き起こす。視界が遮られた隙を突き、エボルラビットへと姿を変えて逃げ出した。
残されたのは立ち尽くす仮面ライダー2人と、地面に倒れ伏した2B。そして数人のアンドロイドのみ。
「…最ッッッ悪だ。コールドスリープから目覚めた矢先にコレかぁ…」
ビルドは溜息を吐きながら頭を抱えた。
そのすぐ後ろから、ぬっと姿を現したモノが有る。ポッド042だ。
「報告:正体不明の生命体が2体。ヨルハ部隊のブラックボックス信号、旧型アンドロイドの信号、何れも確認出来ず。要求:型式番号、及び所属の開示」
一切の温度の無い声で言う。既に隠し武装を展開し、攻撃可能な体勢を取っていた。
後ろに居るのが分かるものならば誰でも反射的に構えてしまう様な威圧感を放っている。事実何人かの兵士は腰を落としたりしている有様だ。
「…なぁ、コレ第一印象最悪じゃね?」
「……見りゃ分かるでしょうが。最ッッッッ悪だよ」
「……ていうか、変身解いてないから警戒されてるんだろ」
「…あ、それもそうか……」
ビルドとクローズはフルボトルをベルトから抜き取り、変身を解く。
装甲が
ビルドの中からは、ベージュのコートを羽織り、一部分だけがハネた黒髪の男が。
クローズの中からは、青いスカジャンに身を包んだ茶髪の男が出てきた。
「…さて、取り敢えずパパッと伝えるか。俺は桐生戦兎。こっちは
戦兎が言うと、兵士全員の顔に驚愕の色が浮かぶ。
無理もない反応だ。つい数刻前まで、機械生命体と互角に渡り合っていた未知の生命体の正体が、まさか自分達の創造主と同族だとは思いもしないだろう。
しかもそれが2人も居れば尚更だ。
だがそんな驚きも束の間、2人は拘束される事になった。
当然と言えば当然の話。
いきなり現れた謎の生命体を易々と信用できるほど、ヨルハ部隊は甘くはないのだ。
特に、先程の戦闘を見れば余計に。
「えぇーッ!?俺達何もしてねえじゃん!ていうか、俺達はお前らの味方だって!!」
「検査!検査すれば分かるだろッ!ていうか力強過ぎだろ…ッ!肩!肩外れるって!」
万丈と戦兎が叫ぶ。
「…一先ず、レジスタンスの所へ運ぶぞ。彼処ならば、此奴らが本当に人間かどうか確かめる機材も有るだろう」
部隊長と思しきアンドロイドが指示を出す。2人は成す術も取り付く島もなく、首根っこを掴まれたままレジスタンスキャンプへと連行されて行った。
︙レジスタンスキャンプ
「…で、なんでこうなるんだよ?」
現在、戦兎と万丈は手錠を掛けられ、椅子に座らされていた。目の前には険しい表情をした女性型アンドロイドと、数人の兵士が立っている。
「…手荒な真似をして済まない。私の名はアネモネ。此処、レジスタンスキャンプの長を務めている」
アネモネと名乗ったアンドロイドは、少しだけ頭を下げる。その頭を上げると、再び話し始めた。
「君達が只者ではない事は、先程の戦いのデータを見ただけでも明らかだ。だからこそ、君達は何者なのか。何故ここに居るのかを知りたい。本来なら直ぐにでも詳しく調査したいところだが、残念ながら今は機材を作る為の材料が無い。そこで、まずは君達の事を教えて欲しい。…君達が、本当に私達の味方かどうかを確かめたいんだ」
「つっても、今の状況じゃどうしようも無くないか? 俺らはエイリアンと戦ってると思ったら、ヘンなコスプレしてる奴等が戦ってるし。んでエイリアンと戦ったら今度は敵扱いだし……」
「…要求:質問に対する速やかな回答」
2人は未だに混乱しているのか、会話が遅々として進まない。しびれを切らした様に、2Bの修復を待っていたハズのポッド042が催促をし始めた。
「…あー。それじゃ、まず俺から話す」
「お願いする。出来る限り簡潔に頼むよ」
「…了解。俺の名前は桐生戦兎。歳は28歳で趣味は……色々あるけどまぁ大体なんでもイケる口だな。好きなものはコーヒーと…まぁ、後は科学かな。物理学者だし。嫌いなものは…タコ、かな」
「……」
「おい黙んな」
「……続けてくれ」
戦兎が口をつぐむと、全員がじっとりとした視線を向ける。
この男は一体何を言っているのだろうか、という視線だった。
「……いやだから、俺は物理学者なんだって。ほら、これ。このボトルとか見たことは…そりゃないよな」
戦兎は手錠で拘束された手をどうにかこうにか使い、ポケットから金と黒に彩られたフルボトルを取り出してアネモネに見せた。
「……確かに、初めて見る形状だ。何かの武器……なのか……?それに、そのボトルの中に入っているのは…液体なのか?それは一体、どういう成分で出来ているんだ…?」
「あー…それは後々説明するよ。……さて、と。次は、俺が何でここにいるかって話だよな」
そう呟くと、戦兎は一息吐いて話し始めた。
「…アレは地球が火の海になる前。俺は、エイリアンの襲来を兼ねてから警告していたんだ」
ぽつり、ぽつりと戦兎は話し出す。
「…でも、当時は全く俺の話は聞き入れられなかった。当然の話だけどな…宇宙人が襲って来るなんて、イマドキ出来の悪いオカルト雑誌やB級映画でも取り扱わない様な題材だし」
だけど、と続ける。その時の光景を思い出したのか、僅かに顔をしかめていた。
「…あの時はまだ、人類も余裕があったんだ。宇宙からの侵略者に対抗できる程の力は無くとも、何とか撃退する事ができていたという自信が世界にはあった。けど、ある時を境に状況は一転したんだ。それが……」
──エイリアンによる、機械生命体の実戦投入。戦兎の一言で空気が変わった…気がした。
全員が息を呑み、次の言葉を待っているようだった。万丈だけは何故か首を傾げていたが。
しかしそれも束の間、すぐに話は再開された。
「インチキ地味た物量と性能。当時のテクノロジーじゃマトモに対処なんか出来なかった。自分達で科学力を発展させようにも、1人の単独研究で『アレ』に追いつくには数千年あっても足りなかった」
そして、と付け加える。
「…俺は機械生命体のネットワークへハッキングを仕掛けた。そして、奴等のテクノロジーを盗んだんだ。その結果が…『ビルド』を初めとする仮面ライダーの力だ」
そこまで言うと、戦兎は再び深くため息をついた。
思い出したくもない記憶だったらしい。
そんな戦兎の様子を見て、ポッド042が問いかける。
「質問:貴方の先ほどまでの発言は真実か否か」
「…信じるか信じないかはソッチ次第。それに、この話にはまだ続きがある」
そういうと、戦兎は自嘲気味に続けた。
「…とは言っても、奴等の目を完全に欺けた訳じゃない。ハッキングしてデータを盗んだはいいけど、ログがバッチリ残ってたからな。だから一時的な避難として…地下の核シェルターで、助手だった万丈と一緒にコールドスリープに入ったんだ。いつか、反撃する為に。…まさか、こんなに長い時間眠るとは思わなかったけど」
「…報告:貴方の言葉の真偽を判断することは我々には出来ない」
戦兎はその言葉を聞いて軽く笑った。
当たり前といえば当たり前だろう。何しろ証拠がないのだ。
「……なぁ、俺も話そうか?」
そんな中、それまで黙っていた万丈が手を挙げる。
今度はアネモネが口を開いた。
「…ありがとう。話してくれて。……そうだな、次は君が話してくれ」
流れる重い空気に耐えられなくなったのか、アネモネは万丈へ話を振った。
それを聞いた万丈は嬉しそうな表情を浮かべると、勢いよく話し始める。
どうやら話す気満々のようだ。
「俺の名前は万丈龍我!出身は神奈川県!俺が生まれたのは横浜の産婦人科だった。3203グラムの元気な赤ん坊で…」
「 誰が生い立ちから話せって言ったよ! 」
流石に話が長くなりすぎると思ったのか、戦兎がツッコミを入れた。
そんな様子を見て、その場にいた万丈以外の全員が思わず苦笑いをした。然し、重苦しい空気も幾許か和らいだ。
「…ポッドも言った様に、今の段階で君達の話を完全に信用することは出来ない」
先程よりも穏やかな声音だが、アネモネは告げる。まあ、当然の反応ではある。それでも、戦兎にとっては充分だった。自分の話がどこまで伝わっているかを知ることができただけでも収穫だ。
とはいえ、このまま帰るわけにもいかない。
帰る場所もない。
ふと、アネモネがポッドの方へ視線を向ける。
「…だけど、君達の話を聞いた私個人の感情としては……君達を信用したい」
意外な反応に、全員が目を丸くした。
アンドロイド側からすれば、自分達の存在は異質だ。人類に仇なす存在かもしれないし、実際使っているテクノロジーは機械生命体由来のモノでもある。
「…君達が本当に人間であると証明出来たなら、話の信憑性も跳ね上がるだろう」
そう付け加えると、アネモネは戦兎と万丈へ向き直る。
「だから、その手伝いをして貰いたい」
「…手伝いって言ったって、何すんだよ?」
「さっきも伝えた通り、君達の体を検査する設備を作らなければならない。バンカーへ直接送るというのも考えたが…生憎のところ、暫く物資を輸送するロケットも打ち上がる予定は無い」
そこまで話し終えると、戦兎は何かを察した様にアネモネを見上げる。
「…もしかして……」
「…そのもしかして、だ。君達には、設備の材料集めがてらに物資の確保を手伝って貰いたい」
コールドスリープから目覚めて、最初の労働。
肉体労働に慣れている万丈に対して、戦兎は
「最ッ悪だ」
と小さく呟くのだった。
「地獄への道は善意で舗装されている」とはよく言ったものです。
さて、このヒーロー達は
「本物」なのでしょうか?
別作品のライダーを1人だけ出しても
-
良い
-
いかんでしょ