さぁ、アンドロイド解体ショーの始まりや(関西クレーマー)
今回も新しいオリキャラが出ますが、重要な役割ではないチョイ役です。
※2019年12月5日改訂。
地球に来た際擬態した姿を当初は白髪戦兎にしていました。しかしそうなると後々の話の展開に矛盾が生じてしまう事に気が付いた為、エボル万丈の姿に擬態したと変更させて頂きました。読者の皆様、あいすみません。
ちゃんとエボル兎は後で出しますよ!!!!
また、サブタイが少々おかしな事になっていたので改訂しました。
Phase 4.コブラの顕現
EVOL SIDE︙森の国の城
さくり、さくり。
ガシャン、ガシャン。
落ち葉混じりの土を踏む軽やかな音と、機械の駆動音が響く。
足音は1つではなく、2つ。それらは森の国の外、廃墟都市へと向かっていた。
軽い足取りで歩いているのは、エボルト。歩く度にガチャガチャと音を立てているのは、「ライプニッツ1716」という名前の機械生命体だ。
彼等はパラケルスス1493からエボルトに出された、「アンドロイドを一体殺した上で、その首を持ち帰る」という課題を達成する為に《街》へ向かっている。
ライプニッツ1716は、その課題達成を見届ける立会人としてパラケルスス1493の命を受け、エボルトに付き添った。
パラケルスス1493が立会人を用意したという事には、1つ大きな理由が有る。
この辺り一体には壊れたアンドロイドの義体がゴロゴロしており、其れ等の首を適当に捥ぎ取って「殺してきました」と偽る可能性が有るからだ。
「アンドロイドの首ねェ……。そもそものアンドロイドを知らないンだが、どんな奴なんだ?」
『お前とソックリな見た目をしてイる。最近は、白い頭に目隠シと黒い服を着ている奴もチラホラ見掛ける様になっタ。この先の《街》や工場にも居る筈ダベ』
エボルトにとっては、滅びた母星よりも愛しい地球だ。とはいえ、現時点では情報が絶対的に不足している。
そういった側面からも、都市部に潜入する事が出来るのは彼にとって僥倖であった。
『見エテ来たベ、《街》だ』
街が見えたというライプニッツ1716の言葉に、エボルトは心を躍らせる。
(さてさて、俺の居ない間にこんなのと宜しくやってた人間共とやっと会えるねェ……。そうだ、新世界のnascitaには未だ行ってなかったなァ。石動の奴、ちゃんと真っ黒い珈琲淹れる事が出来てるか不安だよォ)
遠くをよく見ると、懐かしい鉄筋コンクリートの建物群が視界に入った。
まるで誕生日プレゼントを開ける前の子供の様にワクワクとした気持ちで、2人は街に向かう。
それから数分歩くと、森の木々が開けて《街》の全貌が露になった。
「よーし、やっとこさ街に着い……た……ぞ……?」
しかし、その《街》を間近に見てエボルトは愕然とした。
そこには、確かに人間達が住んでいたのだろう。
確かに、人の営みというモノは連綿と紡がれていたのだろう。
だが、今やその建物群は。
「緑」に侵食されていた。
「……おい、何だよこりゃァ……俺の居ない数ヶ月間で何があったんだ……!!?」
思わず、エボルトは朽ちて植物に侵食された建物に向かって走り出す。背後からライプニッツ1716が制止する声が聞こえたが、それすらも振り切った。
(何なんだ……俺の居ない間に、こんな壊滅的な状態になっちまって……!)
建物の中へ入り、手当り次第に探し回る。何か、何か手掛かりは無いか。そうだ、nascitaはどうした。戦兎は、万丈は……美空は……?
半ば錯乱しながらも探し続けた結果、ボロボロになった事務デスクの中から新聞を一部見つけた。
記事の大半は腐食して読めなかった。しかし1面だけは運良く腐食が殆ど無く、読み取る事が出来た。
その内容は……
「2018年……国立兵器研究所建設……? 魔法及び魔素の研究と兵器転用……?」
明らかに自分達の知っている世界と違うモノであった。2018年といえば、桐生戦兎が自分を打ち倒して新世界を作り出した年だ。
それに、首相や外務大臣が自分の知る新世界と異なっている。新世界では、首相に氷室泰山が。外務大臣は御堂正邦が就いていた筈だ。
明らかな齟齬。これでは、まるで別の世界に来てしまった様では無いか。
「……別の世界……?」
自嘲した自分の中でふと浮かんだワードを、エボルトは噛み砕くように呟く。
そして鮮明に思い出した。エボルドライバーを奪還する前の出来事を。
平行世界への扉を開こうとした科学者と、その科学者が生み出した産物を。
「……エニグマ……」
エニグマ。最上魁星という科学者が生み出した、平行世界に干渉する機械。
最上魁星は、かつて東都先端物質学研究所の科学者でありながら、葛城巧───後に桐生戦兎となる男の上司だった。
エボルトを含む「ブラッド族」が生成する強大なエネルギーを秘めたオブジェクト「パンドラボックス」から生み出された物質「ネビュラガス」を研究する中で、ガスに含まれていた異世界のウイルスを発見した最上魁星は、平行世界の存在を知った。
その後は平行世界の研究に没頭し、ついには先述のウイルスを元として作り出した新型ウイルスを動力源とする平行世界移動装置「エニグマ」を開発しようとしていた。
しかし東都政府がエニグマの開発資金提供を出し渋った為、最上を招聘した「難波重工」と呼ばれる巨大企業に籍を移し、そこで葛城巧を助手として「エニグマ」を開発に取り掛かった。
その中でネビュラガスと異世界のウイルスによる生体兵器「カイザーシステム」を考案している。このカイザーシステムは、後に西都の戦闘兵士「ブロス」へと引き継がれた。
しかし、最上魁星の真の目的は別にあった。
彼の真なる目的は「エニグマ」を平行世界合体装置として完成させ、2つの平行世界を衝突・消滅させる一方で、平行世界のもう一人の自分と融合して不老不死の力を得ることであった。
だが、その目的を知った葛城と衝突。 取っ組み合いの喧嘩になる内に図らずも「エニグマ」に接触してしまった最上は、左半身を失うという重症を負ったため、葛城に強い憎しみを抱いていた。
彼の野望は奇しくもエボルトの計画をとことん邪魔しており、当時まだ本来の力「エボルドライバー」を取り戻していなかったエボルトにとっては、正に目の上のタンコブであった。
流石に不味いと危機感を抱いたエボルトは、異世界から飛ばされてきたとある人物に接触したり、仇敵である戦兎にもこの事件におけるヒントを仄めかしたりなど、あちらこちらへ奔走して最上魁星の計画を阻止しようとした。
結果としては異世界の「仮面ライダー」の力を借りて、どうにか阻止出来たが。
「……成程なァ。此処は平行世界か……」
平行世界だと考えると、今まで引っ掛かっていた事にも辻褄が合う。
何故、戦兎達仮面ライダーが動かなかったのか? そもそもこの世界にライダーが居ないから。
何故、首相や外務大臣の名前が違うのか? 氷室泰山も御堂も存在していないから。
「つまり……俺はブラックホールで適当にワープしたら、別の世界へ突入しちまったって訳かァ……」
手に持った新聞を懐へ仕舞い込む。
その顔に、先程狼狽していたとは思えない程に凶悪な笑みを浮かべながら。
────玩具が、増えた。
ライプニッツ1716の声が聞こえ、エボルトは其方へ戻った。
(先ずは、俺の拠点確保が先だァ……。この世界にも人間は要るだろう、精々楽しませてくれよォ……)
EVOL Side︙工場廃墟
工場。
機械を用いて様々な製品の生産を主としている施設だが、既成製品の機械関係の点検・整備・保守等のメンテナンスも行う役割を兼ねている。
そんな人類の遺産たる工場も、今や機械生命体に占領されている有様だ。
機械が機械を占領する、という光景を横目にエボルトとライプニッツ1716は工場廃墟に設立されている巨大な建物の上から辺りを見回していた。
結局あの後廃墟都市を見て回ったものの、ターゲットとなるアンドロイドは影すら見つからなかった。
その為別のエリアを探そうという事になったが、ライプニッツ1716が工場に行こうと提案したのだ。ここには廃墟都市よりも高い建物も多い。上から見回せば見つけられるだろう、というモノである。
これから拠点とする場所の住人と波風立てるのは得策ではない、と考えたエボルトは素直にその提案を飲んだ。
その結果、今に至る。
しかし、居ない。何故かアンドロイドは居ない。
「……居ねェな」
『……そうだなァ』
ふあぁ、とエボルトは思わず欠伸が出てしまった。宇宙を彷徨っていた時に比べるとマシだが、退屈なのだ。
人間もアンドロイドも見当たらない。さっさとこの星をブラックホール送りにしてしまおうか。
頭の片隅でそんな物騒な事を考えていた、その時。
「……ん?」
妙な感覚がエボルトを襲う。五感で感じる感覚とは全く異なる何かだ。人間で言う所の「第六感」、というモノだろうか。
「この姿じゃ、補足にも戦闘にも限界があるなァ……。仕方が無い。少し早めのデモンストレーションと行こうかァ」
そう言って、懐から少し大きめの『何か』を取り出す。
その『何か』は血の様な赤色をベースとして、金や瑠璃紺の装飾が散りばめられた派手なカラーリングをしていた。
それを腰部分に宛がうと、『何か』の左右からEVバインドという帯状のパーツが出現し、腰に自動で巻き付く。
【エボルドライバー!!】
その名は、エボルドライバー。パンドラボックスのポテンシャルを、最大限に引き出す事が出来る唯一無二のデバイス。
『オ前、何をする気ダ……?』
「ちょっとしたショーだよ。黙って観てろォ……その為に着いてきたんだろ?」
戸惑うライプニッツ1716を横目に、エボルトは更に2つの掌に収まる程度の小さな絡繰「エボルボトル」を取り出す。
一方はエボルドライバーの基本色のように赤く染まっており、もう一方は無機質な黒に染まっている。
エボルトはそれをドライバーに空いたEVボトルスロットと呼ばれる部位に差し込む。赤を右側に。黒を左側に。
【 コブラ! ライダーシステム! エボリューション!!】
ベルトの留め具にも見えるパーツ「EVクオリファイザー」が、装着者をエボルト本人であると認証。
そして、エボルトがドライバー右側のパーツ「EVレバー」を回転させた。
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番のサビ部分にも似た音を鳴らしながら回し続ける。
すると、ドライバーに内蔵された「EVモジュール」と呼ばれる高速ファクトリー生成装置から、「EVライドビルダー」という装備生成ファクトリーが装甲を形成。
『Are You Ready?』
そして「ドライバー」は問い掛ける。
その問いは、変身する者に問うたのではない。
その問いを投げ掛けられたのは、変身する者以外の全てだ。
そう、それ即ち生きとし生けるもの全て。
『 俺 の 餌 と な る 覚 悟 は 出 来 た か ? 』
「───変身」
その宣言と同時に、交差させていた手を前にゆっくりと広げる。
まるで「この宇宙は全て俺の餌だ」と主張するかの様に。
その右手は、全てを壊す為。
その左手は、全てを殺す為。
【 コブラ! コブラ! エボルコブラァ!! フッハッハッハッハッハッハッハァ…… 】
EVライドビルダーによって生成された装甲が、エボルトを挟み込む様に合体。機械から発せられる音声にしてはあまりにも禍々しく悍ましい笑い声を響かせ、「変身」を完了させる。
『な、何ダベさ……お前……』
基本的に無機質な機械生命体特有の声が、恐怖で震える。彼が初めてアンドロイドを目にした時ですら、ここ迄の恐怖を覚えた事は無かった。
自分にとっての恐怖は、王様に不幸が訪れる事。それしかないと半ば自負すらしていたというのに、今自分は情けなく震えている。王にではなく、自分の身に危機が迫っているのに。この機械のカラダは王に捧げた筈なのに。
……怖くて、怖くて堪らない……!!
声だけでなく体すらガタガタと震わせるライプニッツ1716に、その「異形の鎧」は語る。
「俺の名前かい? そうだねェ、俺の驚異になりそうな奴等はそこまで居ないからな……教えても良いかァ……。 俺の名は、エボルト。この星の……いや、この世界の『外側』から来た地球外生命体だァ……」
蛇が、嗤う。
ああああああああああ!!!!!(文才の無さに対する嘆き)
それはさておき、いきなり最終兵器エボルさんの登場です。スタークさんは後々重要な役割として確り出すつもりなので、暫しお待ちを…!
感想お待ちしております。
別作品のライダーを1人だけ出しても
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良い
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いかんでしょ