皆城一樹は勇者に非ず 作:ここにいるもの
2015年、俺たちは平和の中にいた。
いつものように友達と笑い合い、次の日のことを話し、当たり前のように「また明日」と言って今日を終える。
そんな当たり前が続くと思っていた。
そう、あの地獄の日までは。
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鮮血が舞い、人の断末魔が耳に届く。
見渡す限りの炎と血、そして老若男女問わない死体。
まるで、地獄のような光景。その光景を作ったのは人ではなく突如空から現れた白い化け物。
人を喰い殺し、次々と数を増やしていく化け物は見ていたものからしてみれば絶望以外のなにものでもない。
その日、人類の多くは化け物によって殺された。
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誰もが生きることに必死だった。それは、俺にも言えることだ。
死にたくない。その一心で俺たちは走り続け、そしてアレが現れた。
四国に突然現れた『神樹』という特殊な樹木、瀬戸内海には巨大な植物組織でできた壁。
誰もが、もう安全だと思った。
俺たちも、そう思った。もうあんな怖い目に合わなくて済むと。
けれど、この時の俺たちは知らなかったんだ。
後に勇者と呼ばれることになる神様から力を授かった者たちの存在。
そして、俺たちのことを。
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普通の日々は前振りもなく壊される。
一度は体験したはずのことなのに、それがあると分かっていたのに俺たちはそれを失念していた。
2015年12月末。あの化け物が現れてから約五ヶ月経ったある日、俺たちのところに大人たちが来た。
なんでも、神樹という樹木が現れた時に近くにいた俺たちは何かしらの影響を受けていて、あの白い化け物に対抗できるのではないかという仮説があり、実験をしたいから来てくれないかという話だった。
俺たちの何人かはその話に喜んで乗った。
それもそうだろう。俺たちの中には何人か白い化け物に家族を、友達を殺された者もいるのだから。
2016年1月初旬。
大人たちの仮説が正しかったことが証明された。
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2016年3月末。俺たちは四国の外へと派遣された。
僅か十数人の子供と五人の大人という正気の沙汰とは言えない派遣部隊は四台のバスに乗り生存者を探す旅に出た。
必ず四国に帰ってくるとそれぞれが願いながら。
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2016年12月末。
俺たちは僅かに存在していた生存者を保護した。
旅をしてから約九ヶ月。初めて保護した生存者は子供四人と大人二人の僅か六人。
絶望的な状況で生き残った人がいる。その事実が俺たちに希望を見せた。
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2017年8月中旬。
白い怪物────大社との定期通信によりバーテックスと命名されたことが判明されたそいつの襲撃が酷くなってきた。
大人たちは話し合い、俺たちを二つのチームに分けることにした。
一つは、生存者とともに四国へと戻る帰還組。
一つは、このまま生存者を探す派遣組。
俺たちはここで、半数と別れることになった。必ず、四国で会うという約束をして。
そして────2017年9月初旬。
予定では四国についている帰還組からの通信は────無かった。
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2018年1月。
俺たちはバーテックスからの襲撃を受けた。
システムが弱くなる隙をつかれたと大人たちは言っていた。
これまで以上のバーテックスを相手に俺たちは約三時間の間戦い、二人の仲間が戦線を離脱するほどの傷を負った。
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2018年6月末。
バーテックスの襲撃は日が経つごとにその頻度と数が増して来た。
今では一日に二回以上襲撃を受けることが当たり前となった。
日に日に負傷者が増え、そして今日大人たちが恐れていたことが起きてしまった。
俺たちの仲間の一人がいなくなった。
バーテックスに殺されたわけではない。病気で死んだのでもない。
いなくなったのは俺たちの力が原因なのだと、大人たちが泣きながら言った。
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2018年夏。
俺たちの旅の終わりが近づいた。