皆城一樹は勇者に非ず 作:ここにいるもの
2016年の3月末から始まった俺たちの旅は終わりを迎えた。
救助した生存者は十数人。
派遣部隊の重軽傷者、八人。
派遣部隊の死亡者……十五人。
半分以上の仲間がいなくなった。
派遣部隊の生存者八人のうち、戦える者は残り二人。
もう俺たちには戦う以外の選択肢はない。
あと、五人……いや、三人でも戦える奴が居れば、戦わない選択肢もあったのだろうか。
でも、それを考えるだけ無駄だ。
勇者以外でバーテックスと戦えるのは俺たち二人で、戦う以外の選択肢は無い。
だから、戦いたくない奴でも戦わなければならない。
☆★☆
「本当に良いんだね?」
「はい」
四国にある大社管理下の病院。その一室で一樹は医師と話をしていた。その内容は一樹たちの身体の治療薬についてだ。
あの後、四国の勇者たちによって助けられた一樹たちは全員揃って、大社管理下の病院に搬送。
検査と、端末の回収、治療を受けていた。
最初は未知の現象に医師たちも困惑していたが、一樹が回収した総士の端末。そこに残されていたデータによって試験薬を作ることには成功した。
だが、まだそれが安全かどうかは確認できておらず本来なら使うことはしないのだが……一樹たちの症状が酷いため急遽、本人たちに説明し了承を得た場合のみ使用することにした。
紅葉、翔子、輝の三人は説明を聞いた上で了承。残る一樹は今、その危険性を聞いていたのだ。
そして、医師の問いかけに対する一樹の答えは了承。
「……本当に良いのかい?失敗すれば君は今よりも酷く……残りの命が一瞬で無くなるかもしれないんだよ?」
「……それでも、可能性があるんですよね?なら、それに賭けます」
再度確認する医師に一樹は苦笑して答える。
医師はそんな一樹にため息を吐くと、近くの棚から注射器と薬、錠剤を一樹の目の前に出した。
「注射器の方は今から使うやつで、君のその末期症状を……理論上回復させる薬だ。
そして、錠剤の方はこれから君がずっと服用し続けることになる末期症状の抑制剤だ。必ず、一日に一回は飲みなさい」
「はい」
☆★☆
一樹たちが治療を受けてから数週間後。
一樹たちは各々のペースで回復していき、今日、一樹と紅葉は退院することになった。
医師や看護師にお礼を告げ、病院を出た二人はそこに待機していた大社の人の車で今日から住むことになる場所へと向かうことになったのだが……。
「…………」
「…………」
「…………」
気まずい、それが一樹が思ったことだった。
大社の人は一樹たちを車に乗せるとそのまま一言も喋らず、紅葉も大社の人に対して口を開ける気配すら見せない。
こんな紅葉は初めてだと一樹は疑問に思ったが、それを紅葉に聞くのは憚られた。
何故かは分からない。けれど、それを聞くのは駄目だと感じていた。
「……着きました」
時間にして小一時間。大社の人に声をかけられ、一樹と紅葉が車から降りる。
そして、目の前にあるものに紅葉と一樹は驚く。
「……丸亀城」
教科書で見たことのある建物が目の前であり、しかもそこがこれから過ごすことになる場所になることに一樹は唖然とする。
そんな二人を無視して大社の人が車から一樹たちの荷物を降ろしていき、一樹たちに声をかける。
「……これから戦士様たちにはこの丸亀城で過ごしていただきます」
「……戦士?」
「あなた達のことです」
一樹が大社の人の言葉の中で出てきた知らない単語について疑問符を浮かべると大社の人はそれに答えた。
どうやら、大社は一樹たちを戦士という勇者とはまた違う存在として認識しているようだと一樹は思った。
「…………」
「……それでは、私はこれで」
最後まで事務的な口調を治すことなく大社の人が去っていく。
残された一樹と紅葉はお互いに荷物を手にして丸亀城へと歩いていった。
☆★☆
俺たちの旅は終わった。
でも、旅は終わっても俺たちの戦いは終わっていない。
俺たちは戦う道以外を選ぶことができなかった。
状況が、それを許してくれなかった。