仮面ライダーエデン‐EDEN‐   作:あかLemon

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同じ作品がpixiv、小説家になろうにも連載されます。
また各サイトで違う最終回を迎えます。
ぜひ3つ全てチェックしてみてください。


第1話 変身/それは楽園の入口

-2019年 11月5日-

「550円になりまーす」

「あ、ちっさいのねーじゃん。あんまり崩したくないんだけどなぁ」

青年は独り言を呟きながら、1000円札をトレーに差し出した。

「1000円お預かりいたます。レシートは?」

「いや、大丈夫です」

優しく笑みを浮かべながら首を横に振る。

「お買い上げありがとうございましたー」

店員の声を背に、橘川夕樹(たちかわゆうき)はコンビニを後にした。

家に着くと、鍵を開けて、黒いドアを押し込む。しかしすっと体を後退させ、右手のポストに手をかけた。

「不在...届け?では、ないよな...」

恐る恐る取り出したポストの中身は、1枚の手紙だった。

 

"橘川夕樹様

お迎えに参ったのですが、ご不在でしたのでこのメッセージと引き換えにお伝え致します

また後ほど"

 

「お迎え?なんだそれ。あれか?天使のお迎えか?やだなー縁起でもない」

そう言いつつ手紙をクシャクシャに丸めて家に入ろうとした、その時だ。

「ひょっとしたらそうかもしれませんよ」

「うわぁぁぁ!」

背後の声に驚いて、夕樹はドアの沓摺(くつずり)に爪先を引っ掛け、盛大にコケてしまった。

「だ、誰だあんた!」

「申し訳ありません、申し遅れました。私"エデンの園"事務員の神谷と申します」

ドアの前で、背後の女は淡々と自己紹介した。

「エデンノソノのカミタニ?なんだそれ、カルト教団か?」

「本当に何も知らないのね...」

神谷はどこか残念そうな表情でつぶやいた。

「は?」

「あ!...いえ、独り言です」

「...で、そのエデンの園とかいうとこから、何しに来たんだよ?さっきの手紙と関係あんのか?」

服についた砂を叩き落としながら、夕樹はゆっくりと立ち上がった。

「えぇ。私はあなたを招待したのです。ライダーゲームに」

「ライダー...ゲーム?」

「ええ。詳しいことはあっちで説明されると思うけど...とにかくあなたはそのゲームに呼ばれたのよ」

「怪しい...怪しすぎる」

「そうね..."今のあなた"には信じ難いかもしれないわね」

夕樹と神谷の無言の睨み合いが続いた。感覚的には数十秒程だったかもしれない。

 

車で揺られること1時間。恐らく迂回や遠回りを繰り返していたのだろう、複雑な道のりを経て夕樹を乗せたワゴンは停車した。

「私は仕事があるのでここで一旦失礼するわね。ここを西に進んだ、あのゲートが会場入口よ」

「は?...はぁ。ってか急に馴れ馴れしいな」

夕樹は困惑しつつも、とりあえずこの神谷とかいう女の言う通りに動かざるを得ないと考え、西の方へ進んだ。最もこんな僻地ともなれば、言われなければどっちが東でどっちが西なのかわかったものでは無いが。

「お待ちしておりました、タチカワ ユウキ様ですね?」

口もとを白いマスクに覆い、上品なスーツ、そして白い手袋をした男がゲートの前を制していた。

「ああ。ってことは、やっぱりここが"エデンの園"ってやつか」

「こちらが必要になるバックル、"エデンドライバー"と"シークエンスシグナル"。そしてこのエデンウォッチはこの園における身分証明のようなものです、絶対に無くさず持っておいてください」

「無くせばどうなる?」

アイテムをご丁寧にアタッシュケースに入れて、門番が手渡してくれたのを受け取りつつ、聞いてみた。

「そうですね。万が一の時死にます」

「死ぬ?...それはどっちの意味でだ?」

「お客様がいう"どっち"が何と何なのか分かりかねますが多分、"どっちも"でしょうね」

「そうか...」

少し表情を曇らせつつも、最後はニコッと笑って見せて、門番に手を振りゲートを潜った。その間、門番の表情はピクリとも動かなかった。

10メートルほど進んだだろうか。そこには左右に、50センチ間隔くらいで松明が設置され、宗教的な雰囲気を醸し出していた。

「やっぱここ、カルト教団なんじゃねーか?...なわけねーか」

そんなことを言ってから、ふと視線を上へあげると、先程まで特に気にとめていなかったが、神聖な出で立ちの建物の、来るものを萎縮させるような、力強くそびえ立つ様が目に飛び込んだ。カルト教団だのなんだのと小馬鹿にしていただけに夕樹は一瞬呼吸を止め、軽く目眩さえした。

一度深呼吸をして、建物の扉に視線を注ぐ。

洒落たフォントで書かれた文字を読み上げた。

Garden of Eden(エデンの園)...」

アタッシュケースを握る右手に力が篭る。夕樹はなんとなく、この扉を開ければ後戻りはできない気がした。

ひょっとしたら、後戻りさせないために訳の分からない経路でこんな僻地まで来たのかもしれない。

後戻りは出来ない気がしたが、入ってみなければ分からない、入らなければならないという気もして、夕樹は顔をしかめた。何より、お迎えやら万が一やら死ぬやら、飛び交うワードがいちいち物騒なのが、ここに来て夕樹を苦しめた。しかし、

「本当に何も知らないのね」

という神谷の呟きが何より自分をこの扉の先へ誘う要因になっている気もした。その途端に、夕樹はやはり踏み込むしかないと決心した。

「面倒事、嫌いなんだけどな...」

夕樹は扉をこじ開けた。

もう戻ることは出来ないのに。

 

重い扉を押し込むと、リンゴの木が至る所にそびえ、放射状に伸びた枝にはLEDが絡められて美しい生命のイルミネーションを演出していた。その淡い輝きと、艶やかな赤リンゴは魅惑とともに人に潜在する欲望をくすぐるようだった。

夕樹はその雄大で妖美な光景に目を泳がせた。呆気にとられていた彼の意識を呼び戻したのは、彼がみにつけていた腕輪、エデンウォッチがピコンッと反応したからだった。

ディスプレイには"ENTER"の5文字が表示され、レーザーが織り成す幾何学模様が画面を支配すると、表示はこう変わった。

"Welcome to The "Garden of EDEN"!"

文字がフェードアウトすると、ディスプレイの右上に赤く"C"の文字が表示され、

大きな赤りんごが2つと、小さな赤りんご3つが浮かんだ。

「お前、参加者だな?」

正面から、目付きの鋭い青年が歩み寄ってきた。

「あんたもそうなんだろ?」

青年は浅く頷くとこう続けた。

「俺は朝岡 聡(あさおか さとし)だ。精々よろしく頼む」

「よろしくっていってるやつの顔じゃないぜ?」

聡と名乗る青年の表情が、あまりにも硬かったんで、夕樹は苦笑いしながら言った。

「俺は橘川夕樹だ。」

頬をクイッと吊り上げ、聡とは対照的な笑顔で名乗ってみせた。

彼の他にも6人、夕樹を含めて計8人の参加者がいるようだった。

彼はその中から1人、知った人物の顔を見つけた。その男は代わる代わる参加者達と世間話に付き合わされていた。

「間違ってたら失礼ですが、貴方は確か...」

聞くと、男は柔らかな笑みを...というより社交辞令的な笑みを浮かべて頷いた。

「ああ。5joh.com(ゴジョー)CEOの五篠 ミナト(ごじょう ミナト)ですよ」

五篠と名乗る男は、日本の業界トップを争うネット通販サイト・5joh.comの若社長だった。30歳の時に、ホビーや雑誌を始めとするサブカルチャーの関連商品を取り扱う通販サイトとして"5‐Bay"を創設。その後3年で目覚しい発展をみせ、現在の5joh.comに改称、34歳の若さで"呼吸をするように札束を稼ぐ"敏腕CEOとしてその名を世間に轟かせた。

夕樹はそんな彼がなぜここにいるのか聞きたくなったが、そもそもここはなんなのか、何が始まるのかさえも分からないでいたから、聞くことを彼自身が拒絶した。

自信に与えられているヒントは、

"ライダーゲーム"なる響きと、おそらくもう元には戻れないということだけだった。

夕樹がそこにいる全員と交流するよりも先に、ルームの真ん中にある大木に貼り付けられたビジョンに、一人のディーラーの姿が映し出された。やがて壁際のモニターにも連鎖的に彼の姿が映し出され、怪しいディーラーの立ち姿がルームを囲んだ。

 

「とうとうお出ましか。おい!なんだこれは!説明しろ!」

グレーの厚いダウンジャケットに身を包んだ織田 登午(おだ とうご)という青年が、怪しい影に噛み付いた。

そうだそうだ!と言わんばかりに参加者たちが騒ぎ立て、夕樹も一緒になって噛み付いた。聡はこの光景をやれやれ、と見つめていた。

「静粛ニ。皆様、こんばんは。我々ハ、本ゲーム主催者"エデンの園"。そしてワタクシはメインディーラーを努めさせていただきます、仙石(センゴク)と申します。」

仙石なる人物の自己紹介のあと、続いて、後方から両手を腹の前でクロスしている女性が自己紹介を始めた。夕樹をゲームに招待したと言っていた神谷だった。

「皆様にはその8人で、ゲームに参加していただくことになります」

その一言で参加者一同は固唾を飲み込んだ。

意識がメインビジョンに集中する。

「ライダーゲーム...ってやつね?」

いかにもお金持ち、な風貌の美女、蛭間 藍華(ひるま あいか)が、ギロっとした目で睨みつけた。

「ええ。我々エデンの園がライダーゲームと呼んでいるこのゲーム。皆様は受付にて、エデンウォッチと言う腕時計を手渡されたはずです」

夕樹はもう一度エデンウォッチに目線を配った。

「右上にあるアルファベット表記は、我々エデンの園が皆様を管理する記号となっております。そのアルファベット自体が皆様のIDだと考えてもらって構いません」

どうやら、参加者にはアルファベットがひとつつずつ割り振られていて、夕樹はCだった、ということらしい。さしづめ、管理番号3番、と言ったところなのだろう。

「そして下の方にございますリンゴですが...」

 

少しの間があって、それでいて淡々とした口調で続けた。

「皆様の寿命を表しております」

「じゅ、寿命!?おい、どういうことだよ!」

夕樹がつっかかると、一瞬何を言っているのかわからず固まっていた皆の表情が、釣られるように怒りや戦慄を表した。

「皆様の寿命はライフコアと呼ばれる、そのリンゴの数で表示されます。5年で1コア、すなわちひとつの小さなリンゴとして表示され、5コアで大きなリンゴとしてまとめられます。つまり残りの寿命が45年なら、9コアですから、1つの大きなリンゴと、4つの小さなリンゴが表示されるというわけです」

「まさかとは思うが、これは本当の寿命ではありませんよね?」

低い声で、ガタイの大きなリオン・テイラーという男が問う。

「厳密には本当の寿命ではありませんが、あなたがたの本来の寿命から算出しているのは確かです」

ざわめきが酷くなる。藍華が困惑しつつも聞いた。

「本当の寿命から算出したのに本当の寿命ではないってどういうこと?」

頷きながら仙石が答えた。

「はい。私は先程、5年の寿命で1コア、とお答えしました。つまり、5年未満の分に関しましては、端数とみなし、切り捨てております。またここでいう寿命とは皆様の天寿ではありません。このゲームが干渉しない場合皆様がどういった最期を迎えられるか。例えば交通事故でお亡くなりになる場合、その日を寿命の尽きる日、としております」

しばらく沈黙した後、夕樹が口を開いた。

「なんか釈然としないが、とにかくこれは俺たちの、"ゲームが干渉しない場合"の寿命なんだな?ということは、ゲームが干渉すれば変動するということか?」

「全くその通りでございます。」

会場のブーイングやどよめきを一切無視して...断ち切るようにして、仙石が答える。

「皆様にはお互いの寿命を奪い合って頂きます!」

その一言が、騒然とした会場を沈黙につつみ、そして起爆剤となった。

「ふざけるな!なんで他人の寿命なんかとる必要がある!」

「ルールは最後までお聞きください」

後方の神谷が、強い口調で言った。

「皆様に先ほどお配りしたそのバックルとアイテム。それは皆様を変身させ、寿命を刈り取り、護る戦士の力を与えるのです」

皆、自分の持ち物に視線を移す。

「エデンドライバーというバックルに、複眼のような形をしたシークエンスシグナルというアイテムを差し込むことで皆様はライダーに変身します。」

「ライダーに変身して戦うからライダーゲームか?馬鹿げてる。怪しい宗教みたいで面白そうと思ってたけど、ただのインチキだったようだね」

爽やか好青年、という佇まいの佐久間 颯太(さくま ふうた)が呆れ返ったように呟いた。

「嘘だと思うなら試して見てください。ただし、変身した時点でゲームへの参加の最終合意とみなし、退出を禁じます」

緊張が走った。

「説明を続けさせて頂きます。本ゲームはいくつかのステージが用意されており、ステージをクリアしていくにはそのステージごとに設定された規定のライフコア数を満たす必要があります。変身してライダーバトルを行い、変身解除に追い込めば相手から3コアを奪うことができます。また攻撃や防御のスキルには特殊なものもあり、コストを消費することで使用可能になります。そのコストは有限で、0になった場合、コアを消費して使用することになります。相手のコストを尽きさせれば、ボーナスとしてコアを1つ奪うことができます。コアが0になるか、戦闘中に死亡した場合はその場で消滅、二度と戻れません。殺害すれば、相手の持っていたコア全てを受け取ることができます」

 

平然と死の宣告をされ、もはや8人はリアクションを起こせなくなっていた。

「戦闘はこの館内に限らず、どこで行っていただいても構いません。ウォッチがある限り、どこにいても我々はあなたがたのデータを管理できますから」

「...ほんとに殺し合うことでしか勝ち上がれないのか?」

聡はなにかに気づいた様子で聞いた。

「鋭いですね。ええ、ライフコアを稼ぐ方法はもうひとつございます。殺し合うことではなく」

「なんだ!早く説明しろ!」

織田が慌ただしく震えながら怒鳴った。

「このゲームには怪人がいます」

は?と言った感じの表情で参加者達がビジョンを見た。しかしミナトは違った。

「ディーラーの言う通りなら、我々は寿命をやり取りするんだ。この時点でありえない話なんだから、バケモノくらいいたっておかしくない」

仙石は2度頷いて説明を続ける。

「ゴジョウ様、その通りでございます。このエデンの園には怪物が生成され、皆様を襲うでしょう。しかしその怪物を倒せば、それに見合っただけのコアを獲得できるのです」

「要するに、怪物を倒して稼いでもいいし、人を殺してもいいってことだな?あんたが言いたいのは」

佐久間の問いかけに仙石は答えた。

「ここにある寿命は皆様のものなのです。シェアするも、サバイバルするもよし。皆様がどう生き残っていくかは、皆様に委ねられました」

皆、下を向いて無言を貫いた。

千葉 空斗(ちば くうと)という青年が、体を震わせながら発狂した。

「む、無理に決まってるだろそんなの!俺はこんな酔狂なゲームごめんだ!退出させてもらう!」

「出口はあちら、神谷の立っている扉でございます。ご退出をご希望ならば、どうぞご退出ください。...帰れるものならば」

"うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!"

絶叫がルームにこだまする。千葉は一目散に扉に駆け込んだ。しかし、扉が手前にこじ開けられたかと思うと、そこから無数の糸を纏った蜘蛛のようなバケモノ、スパイダーケルビムが2体、侵入してきた。

「う、うわぁ!た、たすけてくれぇ!嫌だ、ボクはこんなとこで死にたくない...ッ!」

千葉は腰を抜かし、手を這わせるように後退していった。

「お、おい!あんた!」

夕樹は叫びながら、無意識的にエデンドライバーを手に持っていた。そして腰にうちつけようとしたところで、仙石の説明が脳裏をよぎる。

"変身した時点でゲームへの参加の最終合意とみなし、退出を禁じます"

「変身する気か?もう後戻り出来なくなるんだぞ!」

聡が手を伸ばしながら制止する。

深呼吸をして、夕樹は力を込めて言い放った。

「ここで変身すれば、俺は絶対に後戻り出来ない。けど変身しないと、俺は絶対に後悔する。変身してもしなくても、絶対に後悔する所まできちまった...まったく不幸なやつだ俺って。でもやらずに後悔するより、やって後悔する方が、絶対俺は納得出来る。だったら答えは決まってる!...俺は、こいつらを狩る。バケモノからみんなを護る、だから変身する!」

エデンドライバーをもつ右手を顔の近くに持ってくる。

「うおおおおおお!」

吠えながら、ドライバーを腰に打ち付けた。

ベルト部分が夕樹の腰を捕まえるように固定した。

シークエンスシグナルを力任せに装填する。

「変身!」

握りしめた拳で、シグナルを押し込んだ。

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