買い物で外出、何も起こらない訳もなく、、、
簪と同室になって数日が経過したある日、簪にこう言われた。
「そろそろ臨海学校の時期だけど水着とか用意してる?」
「臨海学校?あっ」
入学後のドタバタですっかり忘れていたがこの学園には臨海学校というものがあった。ちなみに彼は生まれてこの方おしゃれにはとんと縁がなく、する必要も無い上、中学校時代は誰とも遊ばずすぐさま家に帰っては兵器の開発(妄想)に励んでいたため私服も数種類しかないのだ。
「簪さん。実を言うと、、、」
この話を聞いた簪は即答した。
「今週末、レゾナンスで有澤君の水着と私服も買いにいくよ」
「えっ俺は今ので十分なんだが、、、」
「い く よ !」
「はいっ!よろこんで!」
他の選択肢は無かった。とても怖い笑顔だった。
週末、レゾナンス
「なあ簪。もういいんじゃないか?」
「何言ってるの?有澤君素材はいいんだからカッコいい服着なくちゃ」
俺は着せ替え人形と化していた。同室になった時タンスの中身は意地でも見せるんじゃなかった。夏物と冬物がそれぞれ2組づつ。後は下着類とパジャマしか無いことがバレた俺は簪に服を選んでもらっていた。だって平日は制服だし休日も基本部屋から出ないからその、、、
「大体そんなに買ってどうやって運ぶんだ?このあと水着とか色々買うんだろ?」
「有澤君のISってさ。バススロット大量にあったよね?」
「いやいやいや、ISの無断展開は禁止されてるだろ!?」
「展開は禁止だけど使用は禁止されてない」
「つまりどゆこと?」
「ISを展開せずに買ったものをバススロットに入れればいい。容量まだ空いてるよね?」
「そりゃあ空いてるけども、、、出来るのか?」
「専用機持ちは非常時に備えてISスーツをバススロットに入れたりしてる。いざとなったら直接着れるようにね。エネルギーバカ食いするからしないけど。つまり普通の買ったものとかも入れられる」
「マジか」
荷物持ちの問題が解決した俺達は買い物に勤しんだ。バススロット、量子変換って偉大だな。ただ水着に関しては臨海学校で御披露目したいらしくお互いに別々で買うことにした。ただ俺は忘れていた。女性の買い物と風呂程長いものは無いことを。つまり俺は待ちぼうけを食らっていた。散々買い物に連れ回されて疲弊した俺は奇跡的に空いていたベンチに座って休んでいると不意に影が被さってきた。顔を上げるとそこには中年女性、所謂おばさんが立っていた。
「そこのあんた。私に席を譲りなさい」
「すいません。買い物続きで疲れているので他をあたってもらえますか?連れが来たら退くので」
「あなた!男の癖に私に逆らうと言うの!?私に逆らうとどうなるか知らないようね。んふふ、、、きゃーーー!警備員さん!今すぐ来てください!この男に乱暴されそうなんです!」
そうおばさん、、、ババアが金切り声を上げるとどこからともなく警備員が5,6人出てきて俺を取り囲んだ。
「ひぐっうぐっ、私が席を譲ってくれない?って聞いたらこの男、「てめえにやる席はねえとっとと失せろババア」って殴りかかってきたんです!」
このクソババア、言わせておけば、、、
「君、本当かね?ちょっと詰所まで来てもらおうか」
俺は問答無用で詰所へ連れていかれた。詰所に向かう途中クソババアはこれ見よがしに俺に向かって満面の笑みを浮かべてきた。
レゾナンス、警備員詰所
「さて、君の職業を教えてもらおう」
「俺は学生。高校1年生です」
「へえ高校生ね。もうあんたおしまいよ。この事を高校に連絡すれば婦女暴行であなたは退学処分。お先真っ暗ってわけ。ねえ今どんな気持ち?男がかっこつけて女に逆らってねえねえ今どんな気持ち?」
警備員の顔を見れば苦虫を噛み潰したような顔をしている。今の社会、こうなると何が起ころうと男は有罪不可避なのだ。
「仕方ないな、親御さんに来てもらおう。電話番号は?」
あっいいこと考えてたぞ俺
「ちょっと待ってください。来てもらうのは不可能ですが電話は出来ます」
そういった俺は詰所の電話を借りて有澤重工に繋ぐとこういった。
「もしもし。俺だ。隆彦だ。聞こえてるか?今レゾナンスでかくかくしかじかでな」
「ふむふむ。それは大変ですね」
そこへ割り込むクソババア
「話は聞いたわね。私だって鬼じゃあないわ。ここで慰謝料10万円払ったら許してあげてもいいわよ」
すると
「では社長と変わりますね」
電話口は我が父、有澤隆文に変わった。父はあの渋い声で
「相手の女性と話がしたい。電話を代わってくれ」
俺はクソババアに電話を代わった。
「うちの息子が世話になったそうだな。企業連所属、有澤重工社長、有澤隆文だ」
企業連という単語が出てきてあからさまに狼狽え始めたババア。覚えてらっしゃいと逃げようとするも警備員に止められる。グッジョブ警備員。
「ところであなたはうちの息子が世界で二人目のIS男性操縦者と知った上での事なのかね?その上うちの息子はIS学園に通っている。まさか冤罪等ということは無いだろうがもしそうなら、、、分かっているな?」
「なんだって言うの?私の友人は国際IS委員会日本支部会長よ。こんなことをしてただで済むとでも思っているの?」
「ほう。あなたは自分の立場が分かってないと見える。今回の騒動はうちの息子への、ひいては企業連への宣戦布告と判断してよいのだな?ちなみに企業連はIS委員会に少なからず資金援助をしているのだが、、、果たしてそんなことをしたあなたをIS委員会会長が庇いますかな?それにこちらで簡単に調べたところあなたはこういったことの常習犯だそうだが?」
クソババアは顔を真っ青にして震えていた。
「警備員よ。後処理は我々に任せてください。今企業連の者をそちらに向かわせています。うちの息子は解放してやって下さい」
「分かりました。それでは少年よ疑って悪かったな。もう出ていっていいぞ」
「大変ですね。それでは失礼します」
おっとあれを言い忘れていたな。
「ねえねえねえ、今どんな気持ち?圧倒的優位に居たと思ったらいつの間にか追い詰められて。ねえねえねえ、今どんな気持ち?」
よし。やるべきことは済んだな。さあ屑のせいで想定外の時間を取られた。早く簪と合流しなくては。俺は待機場所に急いだ。
思いの他レゾナンスでのクソババアのトラブルに文字数を使ってしまった。すまない。そのせいで準備編を2つに分ける羽目に、、、というか現実的にあんな人が実在したらトラブル解決には時間がかかると思うんですよ。生徒手帳見せれば一発かもですが、見せる間もなく連行されそうですよね。なおクソババアの出番はもうありません。ご安心下さい。
次回はイチャイチャを存分に書くので許してください。