日本side
「ようやくこの日が来たわ。開戦よ。覚悟なさい有澤重工!」
日本の開戦は最も遅く与えられた猶予を使いきっての開戦であった。勿論原因は与野党の足の引っ張り合いである。いくら国会が女尊男卑の波にのって女性で溢れていても議論は全く進まなかった。揚げ足の取り合いに責任の押し付けあい。そこには日本という国の闇が色濃く出ていた。勿論報道はされなかった為国民はこの事を知るよしもない。
「はぁはぁ、どうして開戦前なのにこんなに疲れてるのかしら?これだから無能な野党共は!」
人はこれをブーメランという
「でもここまでこれたなら後は簡単。幸い他国の状況も分かったことだし」
他国の状況、それは彼女の予想を遥かに上回っていた。まともな戦いになったのはイギリスだけ。他はほとんど手も足も出なかったというのだ。
「取り敢えずは通常戦力は無意味、なら最初からISを使うのは確定。後は‥‥」
そして一番の課題、AFである。
「数の暴力ってこうも厄介だとはね。搦め手もなにもあったもんじゃない。あるとすればISを展開せず接近、強襲ってところ?」
今のところ唯一打てる手がこれであった。
「日本で陸上AFの運用は事実上不可能。とすれば十中八九水上型のはず。なら水中から強襲すれば!」
彼女は少しだけ見えた勝機を掴むため指令室に急いだ。
有澤重工side
「今日が指定した期間の最終日だな。何も反応がないのを見るに奴等はやる気のようだ。AFは?」
「発進準備できています。迎撃を考えるとそろそろ発進した方が‥‥」
「だな。SOKOKURA、出る!」
「SOKOKURA、発進シークエンス開始!」
大地が‥‥揺れた。海岸に位置する有澤重工本社が揺れ始めたのだ。すると‥‥
ドガンドガンドガン!
本社を囲むように連続した爆発音。さらに‥‥
「偽装解除!抜錨!SOKOKURA発進!」
本社ビルの表面が剥がれ落ち出てきたのは立派な艦橋。そう、有澤重工はあろうことか本社をAFに変えたのだ。爆発音と共に露になる甲板、鈍く光る素人目にも分かる重厚長大な戦艦がそこにはいた。その外見はかの戦艦大和に酷似していた。サイズ以外は。
ここで有澤重工のこうなった経緯を説明しよう。
戦争が起こることを知る
↓
国民に少しでも被害が出れば勝っても負けても猛烈な批判は避けられない
↓
なら標的となる本社をどこかに動かせばいい
↓
ならAFに改造してしまえ!戦闘がこなせて日本には被害がでない。完璧だ!
ということである。
「しかし、壮観だな。やはりデカイ船が動くというのは心が踊る」
「船と言うよりちょっとした島ですね。ここまでだと」
SOKOKURAの大きさは全長500m、全幅80mと戦艦大和のおおよそ2倍の大きさ。その巨大な船体が霞むほどの威圧感を放つのが艦橋の前に設置された2門の巨大な砲。単装砲だがその大きさのため凄まじい存在感を放っていた。160cm、小柄な大人なら入れてしまうほどの大口径とそれに見合う長い砲身、それを支える巨大な砲塔、世界最大と言われたドーラ・グスタフ列車砲でさえも足元にも及ばないそれは大鑑巨砲主義の頂点とも言える主砲であった。
「沖合いに出たら艦首を東京に向けろ。照準は東京湾の入り口と日本海を狙え。間違ってもアクアラインに当てるなよ?後が面倒だ」
「了解!」
「さてさて奴等は考えてもいないだろう。まさか既に首もとにナイフを突きつけられているなぞ」
200km、規格外の大きさから放たれる砲弾の射程も規格外、65mの長砲身から放たれる砲弾は本州を飛び越えるだけの射程を有していた。それが2門も搭載されているのだ。
「さあ、どこからでもかかってこい。発進したSOKOKURAは逃げも隠れもせんぞ!逃げも隠れも出来ないというのが正しいが‥‥」
その巨体ゆえに速力は出せても20ノットが精一杯、通常時は15ノット程度しか出せない。
「SOKOKURAは全ての攻撃を耐えきった上で大火力で叩き潰すまさに正統派AF、さてISよどこまで耐えられるかな?」
その戦法は社長お気に入りのガチタン戦法であった。
日本IS部隊side
「作戦の概要を説明します。目標は有澤重工、有澤重工は現在超大型兵器を沖合いに展開、本社を兼ねているこれを破壊するのが今回の作戦です。真っ向からでは歯が立たない事が予想されるので目標まではISを展開せず泡の出ない軍用ダイビング装備を使用して接近、敵のどこかに穴を開け沈める流れとなります。ISの展開は直前に行い、作戦の成功失敗に関わらず即座に離脱してください」
「「「了解!」」」
「また穴を開ける装備ですが既存のパイルバンカーを改造した物を使用してください。流通している有澤重工製装甲を貫通できることが確認されています」
「「「了解!」」」
「では作戦開始!」
亡国企業side
「あっけないな、どこの国も。たかが企業と侮りすぎだ」
「ですね」
「しかし良かったです。あなた方と協力関係を築けるとは」
「いえいえ、win-winの関係という奴です。お互いに利益があるならやらない手は無いでしょう?それに過程はどうあれ我々の利害と目的が一致している以上おかしな話ではないはずです」
「しかし我々は今までやってきたことがやってきたことです。受け入れられないと思ってました」
「ですが‥‥‥分かってますね?」
「ああ、汚れ仕事は我々の仕事だ。特に表立って出来ないことは」
「ええ、よろしくお願いします。企業連との繋がりを強くする好機です。そちらにとっても、悪い話では無いと思いますが?」
「今のところは‥‥な。こちらの用件も忘れないでほしい」
「それについてはお気になさらず。我々は企業です。対価に見合うだけの仕事はいたします」
胡散臭い笑みを浮かべながら企業連の仲介人は去っていった。
有澤重工がAFを作るとこんな感じかなぁと。発進シークエンスは宇宙戦艦ヤマトを参考にしました。