俺ガイル 合同短編カップリング企画!   作:しゃけ式

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ひなあられさん 八幡×雪乃 変わらぬ愛に願いを込めて

十一月。季節が秋から冬へと変わる時季。

外に出ると冷たい風が耳などの肌に触れると刺すような痛みを感じるようになってきた。つい、一ヶ月前まで最高気温30度を超える日があったのに…季節の切り替わりって突然やってくるんだな。まじでこの切り替えの良さ今の日本代表に教えて欲しいぐらいだわ。

と、まぁそんなことは置いといて…俺はとある喫茶店に向かっていた。

その場所の名は、「CATS」

まぁシンプルで良いとは思うのだが、猫としか略せない為この喫茶店を経営してる人はさそがし猫が好きなのだろうと感じる。

店の外装も猫が壁に描かれており、重ねられた本にチョンと座った猫が欠伸をしているというなんとも可愛らしい心が洗われる壁画だ。外装は猫カフェのような雰囲気だが、内に入ると本棚がいくつか配備されており、好きな本を取りカウンターかソファ席に座って珈琲や紅茶…様々なドリンクやフードを楽しみながら読書をする。なんてぼっちに優しいお店なのだろうか。

 

気づけば俺はCATSに到着していた。早速、店内に入ろうと引き戸を開けるとチャリンチャリンといくつも積み重なった鈴の音色が屋内に小さく響く。

 

「いらっしゃいませ。あ、比企谷さんですか?」

「はい。そうです」

「いつもありがとうございます。お席は…」

「あ、いつものとこで」

「かしこまりました。どうぞおかけになってください。では、ごゆっくりと…」

 

落ち着いた雰囲気の男性に接客してもらい、俺はいつもの席へと着く。いつもの席とはカウンター席。奥側から三番目。何故ここにするのかというと…初めてここに来たとき何故か俺に懐いてきた猫がいるのだ。その次の日から俺が店内に入るとパチッと目を覚ましにゃーと鳴き擦り寄ってくる。

しかしながら今日は相当なお眠のようで…。俺が店内に入っても反応もせずぐっすりと寝ていた。俺はその睡眠を邪魔しないように本棚から本を一冊手に取り、こっそりと座りその取った本を読み始めた。読んでいる本はライトノベル。ここは様々なジャンルの本が置いてあるから俺的にはとても嬉しい。

すると右隣から俺の名を呼ぶ声がした。その声音は聞き慣れたソプラノで…

 

「比企谷くんまた来たの…?」

 

彼女の名は雪ノ下雪乃。容姿端麗、彼女の美貌に惹き込まれる奴らは少なくない。そんな彼女がエプロン姿で俺に絡みにきた。どうやらここの制服らしい。それにしても、何を着ても似合うなこいつ。

 

「んだよ、悪いか?」

「いえ、別に…クロくん起こさないようにね」

「分かってる分かってる。お前と違って俺はクロに懐かれてるからな」

「…聞き捨てならないわね。私があなたより人望がないですって…?」

「いや誰もそこまで言ってないだろ。というか相手猫だぞ猫。」

 

相変わらずの負けず嫌いさんである。しかも猫のことになるとより一層負けたくないようで…この前も雪ノ下がクロにこっちおいでと言っても雪ノ下の元へ向かわず餌を黙々と食べていた。どうやらクロは雪ノ下に懐いていないらしい。

 

「にゃむ」

「ん?起こしちまったか」

 

クロは大きな欠伸をしたあと、ぶるぶると身体を震わした。ほほう…これはアレか。雪ノ下の氷属性の力によってダメージを受けたんだな。

 

「…な、なんだよ。」

 

すると俺の方にもひんやりと冷たい視線が繰り出された。比企谷は「目を逸らす」を使った……効果はいまひとつのようだ。

 

「ちょ、そんな目で見ないでくれます?」

「はぁ…まぁいいわ。紅茶、でいいわよね?」

「ん、頼む…」

 

一分少々経ったあと、紅茶の香りが店内に漂ってくる。出来上がったのか、なんとも可愛らしい猫の絵が書かれたカップを持って俺の前にどうぞと置いた。俺は軽く会釈をしカップを手に取り一口口の中に流し込む。

 

「あっち…」

「あなたの為に熱々にしたもの。それは熱いに決まってるでしょ?」

 

当然でしょ?と言わんばかりに雪ノ下は首を傾げそう言った。いや、お前俺が猫舌なの知っててそれやってるだろ。可愛く首傾げても俺にその技は通じない、と思っていた時期が僕にもありました。もう可愛いから許す。可愛いから。

 

「で、今日は何しに来たの?」

「……特に何をしに来たわけでもねーけど、ただお前に会いに来た…というか、まぁそんな感じだ」

「そ、そう。ありがとう…と言えば良いのかしら…」

「…多分合ってる、と思うぞ」

 

雪ノ下は頬を紅く染め、下唇を甘く噛み視線を斜め下に逸らす。なんだ、さっきから。ナナメシタ可愛いぞ。いやでもそれは元からか。うんうん。と1人で解決していると逸らしていた目線が合ってしまう。そしてまた、目線を逸らし誤魔化すように俺は紅茶が入ったカップを手に持ち一口、二口と飲む。先程よりかは熱くなくなり、適温になった紅茶は体の芯から温まってくる。心を落ち着かせてふぅと鼻から息を吐くと紅茶の良い香りが漂う。この香りを嗅ぐとあの頃の香りも思い出す。そして、一旦俺はカップを置いて話を始める。

 

「なぁ、俺らって大人になったのか…?」

「何を急に……それは年齢の話?それとも……いえ、年齢の話では無いわよね」

 

そう問いかけた俺を見て雪ノ下はすぐ理解をしてくれたのだと思う。年齢的にはもう第三者などから見たら大人という部類に入るのだろう。しかし俺が言いたいのはそうじゃない。内面…というか考え方というか説明が難しいのだが、まぁそんなとこだ。それを受け取った上で雪ノ下は訂正を加えたのだろう。

 

「…どうなのかしらね。いざ、その質問をされると答えに困るわね…。」

「…………」

 

雪ノ下は視線を遠くに向け、優しい口元に薄笑いをうかべていた。そこには儚げな表情と今にも消え入りそうな声音があった。

大人になるって一体どうゆうことなのだろうか。お酒飲めるから大人。煙草吸えるから大人。経験豊富だから大人。人それぞれ大人について違う価値観、違うイメージ、違う捉え方があるのだろう。多分、きっと雪ノ下と俺が考える大人というものも何処かしらズレているのだろう。

すると雪ノ下は椅子に腰かけ体をこちらに向かせ、頬杖をつき優しく綺麗な微笑みをしながらこう呟いた。

 

「でも…私たちはまだ子供なのかもしれないわね」

「…どうゆうことだ?」

「こうやって大人ってなんだろうって考えてる時点で、まだ子供なのよ…きっと。いつかそれが分かる日がくるかもしれないし、こないかもしれない。それでも私は子供のままでもいいと思う。何も、変わらなくていい…そのままで。無理して変わらなくてもいいのよ。」

「ふっ、誰の言葉だろうなそれ」

「ふふっ…さぁ、誰でしょうね」

 

そうやって互いに笑い合う。そうやって思い出を、語り合う。そうやって、そうやってを…繰り返す。現実から目を背けるように。

すると、近くにいたクロがてくてくと俺の方に寄ってきて足を顔でスリスリとしてきた。

 

「…分かったよ。ほれ、今日のごはん」

「にゃおん」

 

俺はカバンの中からキャットフードを取り出し、手前に置いてあった皿を適当にとり盛り付けクロに渡す。

 

「いっぱい食べて大きくなれよ。お前も立派な大人になるんだ…分かったか?」

 

クロは口をもぐもぐとさせながら首を傾げる。何言うてんねん自分、と言われてるようだ。なんでもないと言いながらクロの頭を撫でる。するとそれが通じたのか、将又、そんな事より食事と思ったのか。あまり後者であってほしくないが…。

そんな俺は温くなった紅茶が入ったカップを手に取り、一気にゴクゴクと飲みほした。

 

「ふぅ…ごちそうさん」

 

深く息を吐き、肩を落とす。俺はポケットに入った財布を取りだしワンコイン、500円を空になったカップの中に入れる。カランカランと音が静かな店内に鳴り響く。それ以外の音なんてクロが食事をしている音だけだ。

 

「それじゃまた来るよ……」

 

聞いてくれる人がいないと知りつつも、誰か反応をくれるんじゃないかと思いそんなことを言ってみた。勿論、誰の反応はない。そりゃそうだ、このお店は一年ほど前に閉店してるのだから。

と、俺はまた深く息を吐き天井を仰ぐ。目頭が熱くなり、鼻も啜った。少しして落ち着くと正面を向き頬をパチンと強めに叩く。さながら20代OLのさぁ、今日も頑張んなくっちゃ!!みたいに。出口である引き戸を開けまたもチャリンチャリンと幾つもの鈴が重なった音がした。

店を出るとみぞれ混じりの冷たい雨が降っている。生憎、傘を持ち合わせていないのでフードを深く被りカバンだけできるだけ濡れないように抱えて歩き始める。それだけカバンの中身は濡れてほしくないのだ。

青のハナシンスとハナニラの数本の束を持って。

 

 

 

青色のハナシンス、花言葉…変わらぬ愛。

 

ハナニラ、花言葉…悲しい別れ、耐える愛、星に願いを。

 

 

━━了━━ 

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