俺ガイル 合同短編カップリング企画!   作:しゃけ式

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こめたさん 八幡×小町

高校の卒業式。よじれてねじれて、ぐちゃぐちゃになったなかから、なんとか探りだした本物にとても近似した何かは、俺達の心の中に深く根づいていた。

 

だから、俺達は明日に希望をもてた。この関係性ならば、また、もう一回あの心地よい空間にいつでも戻れると信じて。言葉なしには何もわからないし、言葉を尽くしても結局これっぽっちも心が通じたとは思えなかったけど、あの心地よい、甘えでない空間はいつでも帰ってこれるのだという確信をもって。

 

ーーー

 

「小町さん、そこの極大値が定義域内で常にこの関数よりも下だったらいいの。」

 

「あー。成る程ですね。ってことは、123/3よりも、これが常に小さければよくて…。」

 

そう言うと、小町は自分のノートに計算を始める。

 

「ヒッキー。なにいってるかわかる?」

 

「数学は早々に捨てた。漸化式って言葉くらいしか出てこない。てか、早くお前は自分のレポートを終わらせろ。」

 

「だって~。うーっ、わかった。やるよー。」

 

どういう状況か説明が必要だろう。

 

今年は小町が受験を控えており、雪ノ下にそれを手伝ってもらっている。

なぜ、由比ヶ浜がいるのかというと、こいつはこいつで、レポートの添削を雪ノ下に頼んでいたらしいが、あと、一割くらいが完成しておらず、ここでグダグダとやっている。

 

「ゆきのーん。どうすればいいかわかんないよー。」

 

「そこの、なにもすることがない、暇な人に聞いてみたら?国語"は"できるから。」

 

「わざわざ、そこを強調するな。」

 

「じゃあ、ヒッキー。これどうしたらいい?」

 

「じゃあって…。まあいいや。」

 

俺は由比ヶ浜からレポートを受け取って。サラ~っと読む。

 

どうも。子供のいじめと子供の生活環境との相関関係などのレポートであることが見てとれた。

 

「まあ、中身の大切なところはもう増やせないんだから、この辺の具体例を一個いれたらいい?もしくは、おそらく資料に関係性を示すなにかがあったはずだから、数字とそれに関する考察を書くとか。」

 

少し考えて、真面目にアトバイスをする。その、読んでるときにこっちをじっとみるな。気恥ずかしいわ。

 

「おー。ヒッキーさすが~。」

 

「手を抜くことに関しては、お手のものね。」

 

「お前ら少しは誉めろ。」

 

いつものことなのでなれてしまったかんはあるが…。

 

「お兄ちゃん。そろそろ、それは諦めた方がいいよ。小町が慰めてあげるから!あっ、今の小町的にポイント高い!」

 

小町が無駄なことを喋ると、雪ノ下に睨まれ、すぐに手元に戻った。

 

すると、何を思ったのか向かい合って座っていた由比ヶ浜が隣の席に移ってくる。

 

「こっちの方が見やすい。で、どこ増やせばいいのかな?」

 

いや、わざわざ横に来なくてもと言わせる気はないらしい。

 

「それは自分でやらないと俺のレポートになるだろ…。」

 

代わりにそう呟く。

 

「えー。……うん。わかった。やるから」

 

俺が死んだ目でじーっと由比ヶ浜の方を見ると由比ヶ浜はレポートにとりかかる。

 

「比企谷くん。暇ならお茶でも取ってきてくれるとありがたいわ。」

 

机の上におかれたパンさんのコップを見ると中はからだった。小町の勉強を見てもらってるのだから、それくらいのことはしよう。

 

「了解。なにがいい?紅茶でもいれようか?」

 

「それは挑戦状?」

 

「いや、ただ、お前は紅茶の方が好きだろうから…。」

 

先日、雪ノ下に紅茶をいれて眉をひそめられたという、事件があってから、密かにいれる練習をしていたのだが…。

しかたない、素直にお茶をとってくるか。

 

「お兄ちゃん、最近練習してたのはそのため?」

 

小町がそう呟く。

 

「練習?」

 

雪ノ下がこっちを見て、何のことか早く言えと首をかしげる。

 

「小町。要らないことを言うなよ…。」

 

「しょうがない。一言多い兄妹ですか。」

 

雪ノ下はようやく察したように、少し吐息をもらすと、

 

「それじゃあ、お願いしようかしら。お手並み拝見ね。」

 

「…了解だ。」

 

少しかっこはつかなかったが、まあ、元からかっこよくねーしな。

 

ーーーー

 

夕刻。

 

お茶についてはまあまあ、酷評されたが、雪ノ下が笑っていたのでまあ、成功だったのだろう。

 

まあ、精進しろとのご命令を承るはめにはなったが。

 

由比ヶ浜の課題も終わり、そろそろ帰るかな~って時刻になった。

 

「今日はわざわざ見ていただいてありがとうございました!兄じゃ頼りなくて…。」

 

「大変な兄妹をもったものね。」

 

「いや、お前何を同意してんだよ…。」

 

普通、そんな返しはしないだろ…。まあ、昔なら小町がもらってほしいってよくいってたことをふと思い出す。

 

「お二人はこのあとどうするんですか?」

 

「今日は由比ヶ…。結衣の家に泊まる予定よ。」

 

そういえば、最近雪ノ下は由比ヶ浜のことを名前呼びに改めるよう努力しているらしい。仲のいいことで…。

 

俺がそんな風に雪ノ下を眺めていると、

 

「ヒッキーも、ゆきのんからあだ名呼びされたいの?」

 

と、由比ヶ浜が検討外れなことをいってくる。

 

「確かに、奉仕部の三人で差があったら、お兄ちゃん可哀想。」

 

小町もふざけて泣き真似をする。

 

「いや、そういうんじゃないよ。てか、それこそ平等と公平を取り違えた…。」

 

俺がどうでも理屈をこねようとした矢先に、

 

「八幡。黙りなさい。」

 

と声が聞こえた。一瞬、全員の発言が止まった。天使が通ったとでもいおうか。

 

「こんな感じかしら?」 

 

雪ノ下本人はしてやったりと少しどや顔ぎみだ。

 

「…。雪ノ下。心臓に悪いからやめてくれないか?」

 

一瞬本気で心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥った。

 

「あら、私は名前呼びなのに、八幡は名前呼びしてくれないの?」

 

「…。いや、あの、雪ノ下さん。少し落ち着いて…。」

 

どうしようかと本気で悩んでいる。いや、正直なれない呼び方をされるのは気恥ずかしい。

 

八幡なんて、戸塚と材木座しか呼ばねーしな。あ、あと、父と母。まあ、最近呼ばれないけど…。

 

すると、由比ヶ浜が独り言のように

 

「ゆきのんがヒッキーを名前呼び。じゃあ、ヒッキーも私を名前呼びするべきじゃあない?」

 

と言い出した。いや待てどういう謎理論なんだよ…。お前の頭のなかで必要充分条件とかわかってる?対偶と裏とかちがうんだよ?まあ、俺もわかってはいないが…。

 

「いい流れじゃん、おに~ちゃん。面白いよ。」

 

小町はクスクスと笑っている。

 

「いや、ちょっと待てお前ら、一回落ち着いてはなそう。話せばわかる。」

 

「八幡。逃げは良くないわよ。特にこういうときはね。」

 

雪ノ下は俺から視線をそらさない。

 

…。なに?これ?

 

「…。わかったよ。ゆきのん。」

 

俺がそういうと、雪ノ下の耳が一気に赤くなる。

よし、勝った。

心のなかで大ガッツポーズをきめる。

 

「ふん。あなたがそのつもりなら私も出るとこでようかしら。」

 

「いや、ゆきのん。一回落ち着け。」

 

俺はたたみかけるようにそういう。すると、雪ノ下は目を一回閉じ深く息をつくと、いつもの落ち着いた表情で、あの、きれいに透き通るような黒目で冷静になったように

 

「わかったわ。これからは、八幡ゆきのんで行きましょうか。」

 

と言い切る。

はっ?まて、そんなつもりじゃあ、

 

「負けず嫌いに喧嘩を売った八幡のミスね。」

 

「…。」

 

全員が黙り込んでしまった。

 

「まあ、今日はそろそろいい時間だしお暇しましょうか。結衣。帰りましょう?」

 

「うっ。うん。」

 

由比ヶ浜は少し戸惑いつつも、荷物を持つ。雪ノ下も荷物を持つ。

 

俺と小町は二人を送るために玄関まで出た。

 

「小町さん。勉強頑張って。それじゃあごきげんよう。小町さん、八幡。」

 

「あっ。今日はありがとうございました。」

 

小町がペコリと頭を下げる。

 

雪ノ下はそれを聞ききると先に扉から出てしまった。

 

「うっ?よくわかんないことになったけど、じゃあね。ヒッキー。小町ちゃん。」

 

「おう。じゃあな。」

 

「結衣さんまた、遊びましょうね。」

 

「うん。またね。」

 

由比ヶ浜も雪ノ下を追いかけるように出ていった。二人が帰って、急に家が静かになる。

 

「ふーっ。なんか、最後にドット疲れた。」

 

俺はリビングに戻りながらそう呟く。ソファーに腰を掛けたところで、小町も俺のとなりに座りながら

 

「お兄ちゃんよかったじゃん。」 

 

と、言ってくる。

 

「はっ?、なにが?」

 

名前呼びのこと?えっ、あれって新手の拷問では?戸塚に呼ばれるなら大歓迎なのだが…。

 

「ふーん。そういうの小町的にポイント低いかも。」

 

小町は少し拗ねたように俺に寄りかかってきながらそういう。こうしてみるとやはりうちの妹は可愛い。

 

「いや、うっ?どうした?」

 

「はーっ。これだからごみ~ちゃんは…。」

 

ん?あー。なるほど。こいつ可愛いな~。俺は少しにやけて、

 

「小町、少し妬いてるのか」 

 

「そういうことを面と向かって言わない!そういうのは、友達にのろけるときのやつ!」

 

そういわれた小町は材木座ばりの早口でそう捲し立てる。

 

「もー。最悪だよー。」

 

ぷんぷんと、怒りマークが飛び出しそうな雰囲気である。

 

「おにーちゃんの、彼女は小町なんだよ?」

 

「いや、うん。間違ってはないけど…。」

 

間違ってはない。俺と小町の関係は少し変わっている。互いに彼女彼氏を作らないという協定を結んでいる。

いや、だったら彼氏じゃないだろうと思ったそこの君、これは実質彼氏彼女ではないか。

 

寝食をともにし、互いを恋愛的に束縛しあい、休日は二人やその友達を呼んであそぶ。ほとんど彼氏彼女だろう。

 

いや、実際付き合ってるのだが…。なにか変わったことをするわけでもないので、なんか、その辺はナアナアになっている。

 

「結衣さんと、雪乃さんにはいってるの?」

 

「いや、言うわけないだろ…。」

 

まあ、兄妹で彼氏彼女なんて世間におおっぴらにできる話ではない。

 

「そうだよねー。……。ねえ、めんどくさい彼女やっていい?」

 

小町は急にしんみりとしてそう言う。

 

「めんどくさい彼女はそれを押し付けてくるんだよ。」

 

俺は肯定も否定もしない。 

 

「お兄ちゃんは小町のこと好き?」

 

「嫌いじゃないな。どちらかと言えば好きかもしれない。」

 

妹としてなら大好きだと、俺の数少ない友人の全員から太鼓判が押されるのだがな。

 

「小町はお兄ちゃんのこと大好きだよ。まあ、兄としてだけどね。」

 

そういって、ニコッと笑うと俺の膝に頭をおいてソファーに寝転がる。

 

素直でない兄妹である。まあ、似た者同士、兄妹なのだから仕方はあるまい。

 

俺は自然と小町の頭を撫でていた。こんな日常も、過ぎ去っていく時の流れにすぐに風化する。変わらないものなんてない。俺たちの関係もなんて、感傷に浸るのがかっこいいと思ってた時期があった。いや今でもかっこいいとは思ってる。

 

まあ、続かないから要らないということはないと言うことを俺は知っている。

 

「おにーちゃんはさ、大学出たらどうすんの?」

 

「専業主夫。」

 

俺が食いぎみに即答すると

 

「はー。そこは成長しないねー。」

 

と、クスッと笑う。

 

「小町さ、大学県外にいこうと思ってるんだ。」

 

それは初耳である。

 

「そうか…。」

 

と、俺は生返事しかできない。いや、言わないといけないことがあるのはわかってるんだ。しかし、それをやるのは、俺の流儀に反する。いや、流儀なんてかっこいいものじゃないな。

 

「止めないんだね。もちろんわかってたけど。お兄ちゃんは優しいから。」

 

「優しいは過大評価もいいところだな。」

 

「うん。そうだね。まあ、お兄ちゃんは表情を消すのが苦手だからすぐわかるけどね。」

 

そんなに表情が顔に出てただろうか?

 

「小町もお兄ちゃんと一緒じゃないのは嫌だよ。たださ、こんな関係は終わらせないといけないのも事実なんだよ。雪乃さんと結衣さんにも悪いしさ。」

 

「あいつらは関係ないよ。」

 

「関係しかないよ。お兄ちゃんがyesを言わないから、発展してないだけで…。」

 

「まあ、もしかしたらそうなのかもな。」

 

俺はけして鈍感主人公をやりたいわけではない。しかし、鈍感主人公だったら、どれだけ楽だろうと思ったことはある。たださ、俺は小町が好きなんだよ。愛してると言ってもいい。

 

そこに理性が介在する余地はない。倫理的に論理的に常識的に考えて、この関係にはメリットはないし、お互いにたいして邪魔にしかならないはずだ。

 

ただ、俺はもう理性の化け物ではない。感情に向き合うだけの経験をしてきた。

 

「引き留めてくれるってわかってて、こういうのって。やっぱりめんどくさい女だね。」

 

小町は全力でニコッと笑う。それは、この言葉は否定してくれるなという、ように感じた。

 

俺は小町を座らせる、正面から抱き締める。

 

「お兄ちゃん。いたい。」

 

小町は俺のなかで体をよじらせるが本気で抵抗はしてこない。俺はもう少し強く抱き締めた。絶対はなさないなんて言えないけど、そう言いたくて。

 

「もー。お兄ちゃんもめんどくさい彼氏だよ。」 

 

小町はそういいながら少し笑うと俺の頭を撫でてくる。優しい手つきだった。俺たちはしばらくそうしていた。小町の心臓の鼓動が聞こえる。

 

「お兄ちゃん。離して、小町、勉強しなくちゃ。」

 

俺はそういわれて小町を解放する。小町はソファーに座ると、すこし、頬を赤らめながら

 

「小町の求めるものはなんでしょう?」

 

という。何回かやったことのある流れ。

 

俺は少しためらいながらも、小町のおでこにキスをする。唇と肌がふれるかふれないかくらいの、軽いキス。しかし、キスをした瞬間なにかが弾けるように感じた。しかし、それは心にしまっておく。

 

「お兄ちゃんにしては合格点かな。」

 

そういうと、小町も俺のおでこにキスをする。

 

「小町にしてはなかなかだな。」

 

俺たちはそういうと笑い合う。

 

「小町は勉強に戻るよ。雪乃さんいないから部屋でやる。」

 

「おう、頑張れよ。」

 

「うん。ありがとう。」

 

そういうと小町は部屋に戻っていく。

 

俺はソファーに寝転がりながら腕で目を隠す。少し頬が冷たかった。

 

ーーー

私は勉強道具を持つと、階段をかけあがり部屋に飛び込む。

 

自分からいっといて何が悲しいのだろうか。心のなかの黒いものがうごめいている。

 

私はそれを吐き出すように泣いた。静かな涙だった。しかし、その涙は今までにないほど冷たかった。まるで、雪の衣のように。

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