剣鬼の軌跡   作:温野菜

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第4話

あれからバルデルとの死闘から2年の月日が流れた。リィンとバルデルが闘い、そしてリィンが勝った。それだけで話が終わったのならばいいだろう。しかしそれで終わらなかった。辺境のユミル、そこのテオ・シュバルツァー男爵の義理息子リィン・シュバルツァーが『赤い星座』団長の『闘神』バルデル・オルランドに勝利したのだという情報が上級貴族たちのなかに流れたのだ。何故こんな情報が流れたというとリィンとの死闘の後に意識を取り戻したバルデル・オルランドが「見事!」と讃えたのだ。このような辺境の地にて戦に明け暮れていた自身の武を打ち破ってみせたのだ。そこには戦場に身を置き続けることに匹敵するほどの鍛練を繰り返した証なのだとバルデル・オルランドは確信していた。そのことに団員全員が頷き、また一人最強の一角たる強者が生まれていたことに喜んでいたものだった。そしてバルデル・オルランドは『赤い星座』に入りたいのであればいつでも歓迎すると酒の席で声高々に言ったのであった。

そしてそれは『西風の旅団』の団長『猟兵王』の耳にも入る。その情報が知り得たとき『猟兵王』は驚きの念を禁じ得なかった。何故ならば『闘神』の実力は自身がよく知っていたからである。その情報も更に広まわり猟兵を私兵として抱えるエレボニア帝国の上級貴族たちにも知り渡った。これには上級貴族たちは驚愕した。当然上級貴族たちは自分たちが抱える猟兵たちの実力を知っているのだ。そしてその猟兵たちが口を揃えて『赤い星座』の団長バルデル・オルランドは自分たちでは到底及ばない最強の一人であると。

下級貴族たちはそんな上級貴族たちを観て失笑した。何をそんなに慌てている?たかだか薄汚い猟兵の長が子供に負けた弱卒という話だけではないかと。無知とはなんと幸せなことか。上級貴族たちにも焦っている理由がある。何故なら男爵家とはいえ皇族縁の家だと言うのに浮浪児を拾ってくることは何事か!とテオ・シュバルツァー男爵を弾劾したのだ。そして思い出す。自分たちが口にした罵詈雑言を。テオ・シュバルツァーを領地に引き籠らさせたのが自分たちに原因があると自覚しているのである。これは不味いのではないかと、

上級貴族たちは考える。権力闘争に明け暮れ、腹の探り合いばかりをしている上級貴族たちは疑心暗鬼にかられているのだ。もしかしたら自分にその武を向けてくるのではないかと恐怖する。その中の一人が堪えきれず高額ミラで気の乗らない猟兵を釣り数を揃えば恐れるに足りずと考えほかの上級貴族たちもその考えに乗り揃えた猟兵のその数50人。馬鹿げている。少なくとも一人の人間に向ける武ではない。だからこそ同時に安心した。これで不安にかられることはなくなると。そして上級貴族たちは待った。自分たちが望んだ答えを持って帰ってくる猟兵たちを。1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、どういうことだ。帰ってこないぞ。貴族たちにそんな声が挙がってくる。貴族の一人が偵察用の猟兵を差し向ける。そして驚くべき報告がきた。全滅という報告。上級貴族たちは唖然とした。それが徐々に恐怖へと変わる。

詳細を聞けば自分が向かったときには猟兵たちの血を吸い地面が赤黒くなっていたことと、ほかには地面にポッカリと何かに切り裂かれたような大穴の中に焼け焦げて顔の判別もつかない50人の猟兵たちであった。この偵察猟兵は知らないことではあるがリィンが自分に差し向けられた猟兵たちに使った技は【疾風迅雷】。電撃を帯びた剣閃を駆使し目にも止まらない速さで切り裂いた後、超質量を持った一閃で終わらせるという技だ。リィンいわく「ただ単に派手な技なだけだよ」と苦笑していた。ただの派手な技だけで地面に50人者の猟兵の死体を入れられる大穴を開けられる筈がないのだが。威力だけで言うなれば【閃突】のほうが凄いらしい。ゆえにリィン自身も何故心臓を外れたとはいえバルデルが死ななかったのか不思議であった。そこで【閃突】が未完成の技であることに思い至った。実戦では未完成の技を使うべきではないとリィンは猛省したらしい。これはまた別の話だろう。

さて、この話を聞いた貴族たちは呆然とした。もうどうすればいいのか、わからないのだ。そこで思い至ったことは不干渉であることだった。もうこれ以上、化け物に関わるべきでは無いのだと。そしてそれは正解だった。

もちろん、これほど大事になれば社交界に興味がなく自身の領地内で暗躍していたとはいえ猟兵50人の姿を隠しきれる筈がないので当然リィン・シュバルツァーの父、テオ・シュバルツァーは気付いた。リィンを呼び出し、これまで視たことのない剣幕でリィンを叱咤する。その父の剣幕にエリゼ・シュバルツァーも自身の兄がとても危ないことをしたことがわかり「兄様兄様……」とボロボロと泣かれる始末。父の剣幕、妹の涙に流石のリィンも普段の無表情面を崩してオロオロ。家族に心配をかけたことを反省した。何よりも妹の涙に兄が勝てる道理など無かったのだ。

 

リィンはこう言った。「次から伝えることにします」と。コイツ反省していない!と突っ込みたくなるだろう台詞。だがしかしリィンは反省しているのだ。リィンにとってこれが精一杯の誠意だったのだ。リィンの道は剣を振るうこと。剣を振るうということは殺し合いの場に立つこと。何より剣はリィン・シュバルツァーはそのものだ。斬らない剣に意味など無い。まさに狂人の理。これを辞めるということは生きたまま死ねという意味そのもの。ゆえに止まらない。止めれない。

テオ・シュバルツァーもそのことを理解している。自分の息子が常人とは違い、理がたがっているのだ。どうするのか考える。剣の道を捨てられないのであれば何かしらの指針を与えよう。それが親心というものだ。

 

リィン・シュバルツァー

 

15歳

 

クラフト

 

『殺意』

【攻撃(威力D):全体 封技(100%)封魔(100%)気絶(100%)混乱(100%)悪夢(100%)遅廷+30 HP回復30%+4ターン CP回復+20 +4ターン】

 

状態異常オンパレード。殺意を研ぎ澄まされるほど自身の体が活性化する技。

 


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