【完結】最強の聖騎士だけど聖女様の乳を揉みたいので魔王軍に寝返ってみた   作:青ヤギ

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最終話──おっぱいをこの手に

 ミルキースは暗闇の中を漂っていた。

 ここはどこだろう?

 自分はいったい何をしているのだろう?

 何か、とても大事なことがあったはずなのに……何も思い出せない。

 

 ――思い出す必要はないミルキース。そなたは我にすべてを委ねていれば良い。それが一番そなたにとっての幸せなのだ。

 

 厳かな声が語る。

 違う、と言いたい。

 自分の幸せはこんなことじゃない。

 そう声を大にして言いたいのに、何も言えない。

 

 あるはずなのに。

 自分にとって一番の幸せは、もっと別に……

 

(でも、それは、何でしたっけ?)

 

 何も、思い出せない。

 とても、大切なことだったはずなのに……

 

 ――……聖女様!

 

 声が聞こえる。

 厳かな声とは違う、いつまでも、何度でも聞きたくなるような、そんな声。

 

 ――聖女様! 目を覚まして!

 

 でも、この声は誰だろう?

 やはり思い出せない。

 自分にとって、特別な人だった気がするのに……。

 

 ――耳を傾けるなミルキース。ここがそなたにとっての楽園なのだ。だから何も考えなくて良い。

 

 楽園? こんな何もない真っ暗な世界が?

 違うと言いたい。

 そんなものは望んでいないと言いたい。

 だが、やはり口から声が出てくれない。

 

(私、は……)

 

 暗闇に包まれていると、自分が何をこんなに悲しんでいるのかすら、わからなくなっていく。

 肉体の感覚も無くなっていく。

 

 自分が強く求めていたもの。

 それすらも、わからなくなっていく……。

 

 でも。

 

 ちょっとした刺激があれば、思い出せるかもしれない。

 

 自分が本当に望んでいたことを。

 

  ◆

 

 竜の姿となった魔王の影武者の背に乗って、俺は《聖神》のもとへ向かう。

 

「来るな! 我が聖女に触れるな!」

 

 振り下ろされる光の槍は剣で薙ぎ払い、航路を作り出す。

 

「それで聖騎士。ヤツを聖女から切り離す方法はすでにあるのか?」

 

 翼をはためかせつつ、影武者が尋ねてくる。

 

「ああ。この光の剣は人間を傷つけない。神だけにダメージを与えるようにできているんだ。まさに《神殺しの剣》ってわけさ」

 

「そうか。ならば安心して斬れるというわけだな?」

 

 そのとおりだ。

 いくら《聖神》を倒すためとはいえ、聖女様のカラダを傷つけることはできないからな。

 

「《神殺しの剣》だと? ……ふふふ……はははははは!」

 

 俺たちの会話を聞き取ってか、《聖神》はさもおかしそうに高笑いしだす。

 

「何がおかしい!?」

 

「我が勝利を確信したからだ! お前たちは永遠に我を倒すことはできない!」

 

「なに!?」

 

「人間は傷つけない、神のみ殺す剣……ふふふ、残念だったな! その剣で斬れば器であるミルキースも死ぬぞ!」

 

「っ!? どういうことだ!?」

 

「ミルキースは一度、我が《聖神柱》に取り込み、我が憑依するに適した器として再構築した。この身はすでに人でありながら神と同質のものとなっている。……即ちその剣で斬ればミルキースも死ぬということだ!」

 

「なっ……!」

 

 そんな!

 聖女様を救うための唯一の手段が!

 

「おのれ! どこまでも卑怯な手を使いおって!」

 

 影武者が怒りから火のブレスを吐こうとする。

 

「よせ影武者! 聖女様を傷つける気か!?」

 

「しかし、このままでは!」

 

「くっ……」

 

 どうすればいい!?

 聖女様から《聖神》を切り離す方法は他にないのか!?

 

「くたばれゴミども! 我とミルキースが生きる美しい世界に貴様らは無用だ!」

 

「ぐわああああああああ!」

 

 不意打ちの破壊光が照射される。

 防ぐ間もなく、俺と影武者は墜落する。

 

 くそっ!

 あと、少しなのに……

 聖女様……

 

「……聖女様! 頼む! 目を覚ましてくれえええええ!」

 

 必死の思いで彼女を呼んだ。

 すると……

 

「…………フェ、イン?」

 

「っ!?」

 

 《聖神》とは異なる声が、俺の名を紡いだ。

 これは……聖女様の意識が戻っている!?

 

  ◆

 

 フェイン。

 そうだ、フェインだ。

 自分はその名を知っている。

 どこで会ったか?

 そう、教会だ。

 子どもの頃に住んでいた教会で、助けてもらった。

 それから、ずっと自分は彼を……

 

 彼を、どう思っていたんだっけ?

 もう少し、もう少しで答えにたどり着けるのに。

 いちばん大事なことが思い出せな……

 

 ――思い出すな! そなたはこの我のことだけを考えてれば良い!

 

 肝心なところで厳かな声にまた邪魔される。

 ミルキースの意識は再び暗闇の中に沈んでいく。

 

  ◆

 

「くぅっ! 我が聖女を誑かすな!」

 

 変化は一瞬だけだった。

 また《聖神》の意識だけが表に出る。

 

 くそっ、ダメか!

 だが、こちらの呼びかけに反応することはわかった。

 いまはそれしか手段がない!

 

「影武者! もう一度飛んでくれ!」

 

「うむ! 振り落とされるでないぞ!」

 

 再び竜の背に乗って浮上する。

 

「聖女様! 俺だ! フェインだ! 頼む、目を覚ましてくれ! 《聖神》の支配から逃れてくれ!」

 

「ええい! やめろと言っているだろう!」

 

「俺と一緒に帰ろう! 《聖神》さえ倒せば、もう人間と魔族が争う必要はないんだ!」

 

 《聖神》の攻撃を躱しつつ、俺は呼び続ける。

 

 お願いだ聖女様!

 自分を取り戻してくれ!

 

  ◆

 

 争う必要はない?

 そうだ。自分はずっとそのために頑張ってきた。

 でも、それだけだったろうか?

 もっと他に強く望んでいることがあったはず。

 それは、とても気持ちの安らぐことだったはず。

 

 確かそれは……

 

「んっ……♡」

 

 気づくと、ミルキースは自らの胸元に手を伸ばしていた。

 

「はぁ、あっ♡ これ、は……♡」

 

 忘れていた快感の奔流。

 そうだ、自分はこれをずっと求めていた。

 それも自らの手で与えられるものじゃない。

 

 そう。彼の手自らで……

 

  ◆

 

「ミルキース!? やめろ! それは聖女とは程遠い感情だ! 捨てろ! 捨ててしまえ!」

 

 《聖神》が錯乱し始めた!

 どうやらお互いの意識が拮抗し合っているようだ。

 

「ええい! すべて貴様のせいだフェイン・エスプレソン! お前さえいなければミルキースはこんな破廉恥な少女にはならなかったのだ!」

 

「破廉恥?」

 

 あの清楚の化身とも言うべき聖女様が?

 いったい何の話を……

 

「墜ちろ! 墜ちてしまえ! ミルキースを誘惑する悪魔めがああああ!」

 

「うわああああああ!」

 

 広範囲にわたる破壊光で視界が奪われる。

 防ぐ間もなく、また墜落してしまう。

 

「……フェ、イン……」

 

「っ!?」

 

 まただ。

 また一瞬、聖女様の意識が戻った!

 

「私、は……」

 

 聖女様、あと少しであなたに届くのに。

 だが視界は光に遮られて何も見えない!

 何も……

 

 いや? なんだ?

 何か、見えてきたぞ?

 こことは違う、別の光景が……

 

 そこは古びた教会。

 幼い少女が懸命に水運びをしている。

 小さなカラダで、老いた神父のお手伝いをしている。

 

 これは、まさか……聖女様の記憶?

 

 質素ながらも平和な暮らしを送る彼女。

 だがある日、教会は異国の騎士に襲われる。

 これは、俺にも覚えがある。

 そうだ、初陣で俺は教会の女の子を助けたんだ。

 まさか……あの女の子が聖女様!?

 

『フェイン・エスプレソン様かぁ……お話してみたいなぁ……』

 

 若き騎士に助けられた少女は、その少年に思いを馳せている。

 じゃあ本当に、聖女様は、俺のことを?

 こんな小さな頃から?

 俺はずっと、忘れていたのに。

 聖女様があの女の子だと気づかなかったのに。

 

 やがて景色は聖都へと切り替わる。

 聖女として覚醒した彼女は、多くの人々に迎えられる。

 だが、彼女の瞳は、ひとりの男に向いていた。

 

『また、会えるなんて……』

 

 そこまで。

 そこまで彼女を俺を……

 

『んっ♡ フェイン♡ あっ♡』

 

 んうううううううううううう!?

 

 今度は神殿の光景。

 いつも聖女様が祈りを捧げる神聖な場所。

 そこで聖女様は、なんと、なんと……

 

『あうぅ……いけないのに、止まらないよぉ……はああぁんフェイィィン♡』

 

 ご自分でご自分のおっぱいを!?

 しかも俺の名前を呼びながら!?

 こ、これはまさかあああああああああああああああ!?

 

 

 

 

 

「フェイン! しっかりするんだ!」

 

「はっ!?」

 

 目が覚めると、俺は焼け焦げた大地に横たわっていた。

 傍らでは、リィムが影武者と俺に癒しの魔術を施してくれている。

 

「大丈夫かい!? 傷はすでにぼくが回復させたけど気分は!?」

 

「最悪だ! いいところだったのに!」

 

「は?」

 

「あ、いや……」

 

 あの光景……。

 きっと聖女様の記憶だったと思うのだが……でも、あれも本当にあったことなのか?

 俺の願望ではなく?

 だとしたら、俺たちは……。

 

「フェイン。どうやら彼女の意識を取り戻させるには、もはや君の言葉じゃないと無理なようだね」

 

「どうも、そうらしい。だが……」

 

 あと少しというところで《聖神》の邪魔が入ってしまう。

 くそっ、聖女様の意識を完全に目覚めさせるにはどうすれば……

 いったいどんな言葉をかけてやればいいんだ!

 

「……ねえ、フェイン。君がいま戦っているのは何のため?」

 

「え?」

 

「世界を救うため? 聖都の住人を守るため? ぼくらのため? あの子を救うため?」

 

「そんなのぜんぶに決まって……」

 

「いいや。君の目的はもっとシンプルなものだったはずだよ」

 

「っ!?」

 

 そうだ。それらの目的は副次的なものに過ぎない。

 俺の本当の望みは……

 

「上辺の言葉だけじゃ、きっと彼女の心に響かない。だからフェイン。君自身の言葉で語りかけるんだ。君の心の赴くままに。それがきっと、君にチカラを与えてくれる。彼女も、きっと君の本音を望んでいると思う」

 

 俺の心の赴くままに……

 そうだ。忘れてはならなかった。

 俺が一番やりたかったこと。

 それをやるとしたら……

 

「……影武者、もう一度飛んでくれるか?」

 

「無論」

 

「ありがとうリィム。おかげで俺のやるべきことがはっきりした」

 

「それはよかった。結界は引き続きぼくが維持する。だから安心して彼女のもとへ行ってあげて」

 

 おう。

 今度こそ取り戻すんだ、聖女様を。

 

  ◆

 

 足りない。

 こんなものじゃ足りない。

 もっと刺激が欲しい。

 やはり自分の手ではダメなのだ。

 

 欲しい。

 彼の手が。

 欲しい。

 彼の言葉が。

 欲しい。

 彼の愛が。

 

 求めてほしい。

 自分を強く、深く、荒々しく、貪欲に……。

 

 でも、そんなことは起こりえないとわかっている。

 敬虔な彼は自分を聖女としてしか見ていない。

 そもそも、彼は一度だって自分を名前で呼んでさえくれなかったのだから……

 

 ――ミルキース!

 

(っ!?)

 

 呼ばなかった、はず……

 

  ◆

 

 天高く轟くように、俺は叫ぶ。

 

「ミルキース!」

 

 ずっと呼びたかった、その名前を。

 

「ミルキース! 俺は君が好きだ! 優しい君が好きだ! 花を育てている君の横顔が好きだ! 猫とじゃれつきながら頬を緩ませている君が好きだ! 怒ったときプクって頬を膨らませて拗ねる君が好きだ! よく()ける君が好きだ! こっそりと鼻歌を歌っている君が好きだ! 初めて見るものを前に目をキラキラさせる君が好きだ! 実は豆が苦手なところが好きだ!」

 

 せき止めていたものが溢れるように、彼女への思いが口からどんどん出てくる。

 

「好きだ! 大好きなんだ! 君なしの人生なんてもう考えられない! 愛しているんだ! だから……」

 

 万感の思いを込めて、いまこそ宣言する。

 

「君の乳を揉みたい!」

 

 揉みたい……揉みたい……と言葉が空にコダマする。

 

「……な、何を言い出すのだ貴様は? 気でも狂ったか?」

 

 《聖神》が訝しげな表情で俺を見る。

 だが関係ない。

 俺が見ているのは、もはやミルキースという少女、ただひとりだけなのだから!

 

「ずっと揉みたかった! 君のデカ乳を! ずっとずっと我慢してたんだ! もう本当になんなのそのおっぱい!? 俺を誘っているのか!? 誘っているよな!? 毎日まいにちプルンプルンたゆんたゆんバルンバルン揺らしやがって! どれだけお世話になったことか! ありがとうございます! でも妄想だけじゃもう我慢できない! 揉みたいんだ! 直に! 自分の手で! 君のそのおっぱいを! 心ゆくまで揉みしだきたいんだ! ああ! 揉みたい! 揉んで揉みまくりたい! おっぱいおっぱいおっぱい万歳! 大好きな君のおっぱいを揉んで揉んで揉んで揉みまくりたいんだあああああああああああああああ!!」

 

 シーン、と空気が静まっていく。

 《聖神》だけでなく、俺を背に乗せる影武者も、地上にいるリィムと魔王軍たちも、真顔になっているのがわかる。

 

「……そりゃ素直になれとは言ったけど……うん、いろいろと凄い男だよ君ってやつは……」

 

 そんなリィムの呟きが聞こえた気がした。

 

「ふん。どうやら本当に気が触れたらしいなフェイン・エスプレソン。そんな下劣な言葉でこのミルキースの心を動かせるとでも……うっ!」

 

 《聖神》が頭を抱えだす。

 

「バ、バカな……揺れ動いているというのか、あんな言葉で? よせ、ミルキース! 静まれっ! あ、ありえん! こんなことは……ぐあああああああああああああああっ!!」

 

 絶叫と同時にミルキースのカラダから光が漏れ出る。

 現れたのは光の結晶体。

 

 ――な、なんということだ……自力で我を切り離しただと!?

 

 厳かな声は結晶体から漏れた。

 あれが《聖神》の本体か!

 ということは……

 

「……しい」

 

 少女の頬から流れ落ちるのは涙。

 

「嬉しい、です……」

 

 冷酷な表情はもうそこにはない。

 俺の知る、彼女の笑顔がそこにはあった。

 

「嬉しいです、フェイン! 私も……私もあなたが好きです! ずっと、ずっと昔から、大好きなんです!」

 

「ミルキース!」

 

「フェイン!」

 

 互いに手を伸ばし合う。

 だが……

 

 ――我が聖女に触れるなああああああ!!

 

「ぐっ!?」

 

 あとちょっとで手が届きそうだったのに、またしても光の障壁で邪魔される。

 くそっ、そんな状態になってもまだ小細工ができるのか!

 しぶといヤツめ!

 

 ――渡さん! ミルキースは我のものだ!

 

「きゃああああっ!」

 

「ミルキース!?」

 

 光り輝く触手状のものがミルキースの肉体に巻き付く。

 

 ――もう一度《聖神柱》に取り込んでくれる! 二度と貴様を思い出せないように徹底的に記憶を弄ってやる!

 

「いや! 助けてフェイン!」

 

 まずい!

 

「追ってくれ影武者! このままじゃまたミルキースが!」

 

「おうとも! というか貴様、いい加減に余を『影武者』と呼ぶのヤメロ! 地味に気にしているのだぞ!」

 

「こんなときに何言ってんだ!? 名前知らねーんだからしょうがねえだろ!」

 

「ならば名乗ろう! いいか余の名は……ぐわああああああああああああ!!」

 

「影武者あああああ!?」

 

 光の弾丸で翼をもがれた影武者が墜落していく。

 

 ――ふはははは! 人間ごときが我が君臨する天に昇るなどおこがましいわ! 翼を治癒したところでもう間に合わん! ミルキースが生まれ変わる瞬間を指をくわえて見ているがいい!

 

「そんな……フェイイイイイン!」

 

 確かにいまから体制を立て直していたら間に合わない!

 くそっ、こんなとき、俺に翼があれば!

 

 ――さあ新生のときだミルキース! ……ふむ、しかし、その下品にデカイ胸部は我が理想の聖女にふさわしくないな。ついでだ、次に肉体を再構築する際に、その膨らみは消しておこう。

 

「っ!?」

 

 いま、ヤツは何と言った?

 

「……ろ」

 

 光の触手が食い込んだミルキースのおっぱい。

 いまにも触手から零れ出そうな大ボリュームのおっぱい。

 見るだけでも柔らかさが充分に伝わってきそうな生白いムチムチのおっぱい。

 それをヤツは……

 

「やめろおおおお!」

 

 そのおっぱいは!

 お前が好きにしていいものじゃない!

 

「そのおっぱいは……俺のモノだああああああああああああああああああ!!」

 

 ――なっ!? バカな!?

 

 気づけば俺は天に向かって飛翔していた。

 背中にはいつのまにか光の翼が生えている。

 

 ……そうか。

 これこそがリィムのチカラ。

 俺が望んだチカラが、そのまま顕現するのか!

 

「ミルキース! いま行くぞ!」

 

「フェイン!」

 

「その乳の素晴らしさもわからんヤツなんかに、ミルキースは渡さない!」

 

「フェイン……はい! 私はフェインのものです! ずっと昔から決めていました! 身も心もぜんぶあなたに! ……も、もちろん……お、おっぱいもです!」

 

「うおおおおおお! おっぱあああああいぃぃぃ!」

 

「来てフェイン!」

 

 おっぱいにかける思い……それが俺のチカラを何十倍にも増幅させる!

 

「おおおおおおおおっぱあああああああああああいぃぃ!」

 

 雄叫びと共に疾走。

 光そのものとなった俺は《聖神》の障壁もあっさりと貫き、拘束をも切断する。

 そして……

 

 

 

 

 

「……はううううううううぅぅぅンンンン♡」

 

 空に響き渡る、なんともなやましい少女の嬌声。

 

 ……掴んだ。

 ……ついに。

 いま俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっぱいを、この手にしているううううううう!!

 

 

 

 

 

 

「ふにゃあぁぁぁン♡ 私ほんとうにフェインに……はううぅぅう♡」

 

 ふおおおおおおお!?

 なんじゃこりゃあああああああああ!?

 こんな柔らかいものがこの世に存在していいのかあああ!?

 マシュマロとかそんなもの比べものにならん!

 掌の中で自在に形を変える極上の柔らかさ!

 これはもう……《神乳》だ!

 

「んんん♡ フェイン好きぃ♡ 愛しています♡ もっと、もっとしてください♡」

 

「ああっ! してやる! 一度だけじゃ満足できるわけがない! この先もずっと、何度でも! 一生な!」

 

「はうぅうん♡ 嬉しいです♡ ずっと、ずっとこうしてほしかったんです♡」

 

「俺もだ! ずっとこうしたかったんだああああ!」

 

「あああン♡ エッチな女の子でごめんなさい♡ 聖女失格でごめんなさぁぁい♡」

 

「エッチな女の子を嫌う男などいない! それに俺たちはもう聖騎士でも聖女でもない!」

 

「はい♡ フェイン♡ 私たちは……」

 

「ただの男と女だあああああ!」

 

 身分の壁を越えて、倫理の壁を壊して、ついに俺たちは、互いの思いを打ち明けた。

 

 

 

 そんな俺たちを見て、

 

 ――なんと、なんと……おぞましい!

 

 《聖神》は声を震わせていた。

 

 ――こんなのは……聖女ではない! いらん! もうミルキースなどいらん! 穢らわしい! よくもよくも我の思いを裏切ってくれたな! そなただけは、完全に清く美しい存在だと信じていたのに!

 

「黙れ潔癖症。これ以上、自分の理想像を押しつけるな。完全に清く美しいものなんて存在しない」

 

 ――なに?

 

「人の汚い部分、卑しい部分。それを含めて、丸ごと愛せるのが真実の愛ってもんだろうが。お前はそれができなかったから、そうして独りぼっちになったんだ!」

 

 そう。

 完全な節制などできるはずがない。

 誰しもが欲望を持っている。

 それは清廉な聖女も例外ではなかった。

 当然だ。

 俺たちは……人間なのだから!

 

「ゆえに《聖神》! 貴様の支配を今日ここで終わらす! 俺たちは……人として生きていく!」

 

 光が俺たちを包む。

 手には再び光の剣。

 柄を握る俺の手に、ミルキースが手を重ねる。

 

「ミルキース……。約束を果たすときだ。一緒にこの世界を平和にしよう」

 

「はい。あなたと一緒なら、きっと……」

 

 ふたつの思いが交わるように、光の剣が形を変える。

 

「覚悟しろ《聖神》! これが俺たちのチカラだ!」

 

 光の剣は天を貫かんばかりの巨大な剣となった!

 

  ◆

 

「……リィム様」

 

「うん」

 

「あの剣の形……」

 

「うん。どう見てもアレだね」

 

「アレですね」

 

「先っぽがすごい膨らんでいるね」

 

「すごいのが噴き出そうですね」

 

「あれってさ、これから『伝説の剣』って語り継がれるのかな?」

 

「勝てばそうなるのでしょうね」

 

「そっかー。なんだか……」

 

 気の毒だなー。

 と、()()()()()と化した『伝説の剣(になる予定)』を見て思う影武者とリィムだった。

 

  ◆

 

「観念しろ《聖神》! この一撃で決めてやる!」

 

 剣の先端を《聖神》に向ける。

 切っ先を中心に強大なエネルギーが集まっていく。

 

 ――やめろ! そんな卑猥な形をしたものを我に向けるな!

 

「卑猥とはなんだ! これこそ俺たちの愛と絆の形だ!」

 

 ――最悪だな! もう我慢ならん! 一秒でもこんな穢れた世界にいられるか! 我は天界に帰る!

 

 光の結晶体はそうして《聖神柱》の中に入っていく。

 地上に埋め込まれていた《聖神柱》が浮かび上がり、徐々に天高く昇っていく。

 

「おっと、逃がさないよ!」

 

 だがリィムの結界がその進行を止める。

 

 ――おのれええええ! リィム貴様ああああ!

 

「往生際が悪いよ。さんざん多くの者を苦しめてきたんだ。報いを受けるときだよ」

 

 ――い、いやだあああああ! 死にたくなああああい!

 

「さあフェイン! ミルキース! 《聖神柱》ごとヤツを破壊するんだ!」

 

「おう! いくぞミルキース!」

 

「はい!」

 

 身を寄せ合い、より強く柄を握り合う俺たち。

 必然的にミルキースのおっぱいがむにゅう~んと密着する。

 

「おうふ……」

 

 光の剣はさらに膨張した。

 

「受けてみろ《聖神》! これが俺たち人間の……欲望()のチカラだあああああああ!」

 

 膨大なエネルギーが一点に集まった先端から、いまこそ必殺の一撃が放たれる!

 

「……うっ!」

 

 轟音を立てながら、洪水のような勢いで放たれる破壊光。

 それは見事《聖神柱》に直撃する。

 

 ――バカ、な……消える? この我、が……嘘、だ……嘘だあぁああああアァアァァアァァァァァ!!

 

 その日、人類は聞いた。

 神の断末魔を。

 

 かくして。

 自己しか愛せず、他者をついぞ愛せなかった憐れな神は死んだ。

 人の時代が、再び幕を上げた瞬間だった。

 

 

 ……ふぅ。

 

 

  ◆

 

 それからは激動の日々だった。

 まず、俺は『世界を救った英雄』として人々に祭り上げられていた。

 

「なんと! 聖都最強のフェイン・エスプレソンは生きていた!」

 

「兄上えええええええ!」

 

「魔王を討ち滅ぼしたあと、精神を魔王に乗っ取られていたらしい!」

 

「兄さああああああん!」

 

「くっ! そうとは知らず魔王を倒した英雄に刃を向けていたとは!」

 

「お兄ちゃああああん!」

 

「だが彼は自力で自我を取り戻した! さすが英雄だ! そして気づいた! 真に倒すべき敵を!」

 

「お兄たああああああん!」

 

「まさか、あんな邪神を長年信仰していたとは!」

 

「兄たまあああああああ!」

 

「だが邪神は滅んだ! フェイン様は魔王だけでなく、我々を騙していた邪神をも討ち滅ぼしたのだ!」

 

「あにいいいいいいいい!」

 

「フェイン様万歳! 救国の英雄万歳!」

 

「にぃにぃ大好きぃいいぃ!」

 

 救国の英雄。

 話が独り歩きした結果、そういうことになっていた。

 あとシュカ。肋骨が折れるからいい加減抱きつくのやめて。そして呼び方を統一しろ。

 

 結果として、確かに俺は世界を救ったかもしれない。

 でも英雄になるつもりはない。

 すでに俺の目的は果たされたのだから。

 名誉とか地位とか、そんなものに興味はちっともなかった。

 だが、そうも言っていられない状況になった。

 

 というのも、国を治める人材がひとりもいなくなってしまったのだ。

 神官たちは各国の王家の血筋で構成されていた集まりだった。

 だが神官のほとんどが《聖神》に浄化の名のもとに殺されてしまった。

 誰かが主導者となる必要があった。

 

 その結果……

 

 

 

「俺が新国の王って正気かよ……」

 

 そういうことになったのだった。

 

「仕方ありませんよ。皆がフェインを世界を救った英雄だって信じているのですから」

 

 王妃となったミルキースが苦笑を浮かべてそう言う。

 

「こうしてイチから始まる国は、まず人望のある人が治めたほうがうまくいくものですよ?」

 

 ミルキースが言うと説得力があるな。

 こうして王妃になってから、より貫禄と美しさに磨きがかかった気がする。

 

 聖都で起こった悲劇のことで、しばらくの間、深い罪悪感に囚われていたミルキースだったが……民衆たちは『邪神に憑依された不幸』ということで、ミルキースを責めることは一切しなかった。

 むしろミルキースの身に起きたことを『さぞお辛かったでしょうに……』と自分のこと以上に嘆いたほどだ。

 さすが、もともと民衆に愛されていたミルキースだ。

 禍根が残らなくて何よりだった。

 幸い《聖神》による後遺症もなく、その後は何の問題もなく健康的に過ごしている。

 

 もちろん、そのご立派なおっぱいも健在だ。

 

 

 

 リィムたちは戦いの後、無事に元の世界に帰っていった。

 理不尽な《聖神》の被害者だった彼女たち。

 その真実を、俺は人類に話すと約束したのだが……

 

『その必要はないよフェイン。ぼくらのことは人類を脅かした魔王軍として歴史に残すといい。実際、《聖神》を滅ぼすために君たち人間をたくさん傷つけてきたんだからね』

 

 それはそうだが……しかし彼女たちの名誉のことを考えると複雑な気持ちだった。

 彼女たちがいなければ、《聖神》を倒すことはできなかったというのに。

 

『気にすることはないよフェイン。ぼくらは、もともとこの世界にいるはずのない存在だったんだから。君たちの世界は元通りになった。これからの時代は、君たちで創っていくんだ』

 

 そう言ってリィムは最後のチカラを使って、これまでの戦いで傷ついた人々、物、自然を元の状態に戻してくれた。

 失った命は戻らないが……世界は本来の姿を取り戻したのだ。

 

『バイバイ。ミルキースと幸せにね?』

 

 そう言ってリィムは、見た目相応の少女のような笑顔を浮かべて去っていった。

 

 

 

 天界の超常のチカラは失われた。

 人類は、またここから歩き出すのだ。

 国が広がり、文明が栄えると、きっとまた人同士の争いが起こるだろう。

 それでも、手にしたこの平和を守りきってみせる。

 最愛の女性、ミルキースがいる限り。

 

 ……とまあ、そういうわけで、

 

「んっ♡ もうフェインったら、このあと執務がたくさんあるのにぃ♡」

 

「だからこそだ。エネルギーを充填しなければ頑張れん」

 

「もう♡」

 

 小柄な肢体を膝の上に乗せて、その豊満な膨らみを思う存分に堪能する。

 

 はぁ~今日もミルキースのおっぱいは最高だ。

 憧れのムチムチおっぱい。

 念願のぷるぷるおっぱい。

 大望のたぷたぷおっぱい。

 朝昼晩、いつでも好きなときに、このおっぱいが揉めるのだ。

 こんな幸せがあっていいのだろうか?

 

 聖騎士時代では想像もできなかった充実した日々。

 あの日、勇気を出して正解だった。

 やっぱり、人間は《背徳的行為》には抗えない生き物なんだね!

 おっぱい万歳!

 

「……ねえフェイン。揉むだけでいいのですか?」

 

「へ?」

 

「王様になったのですから……跡継ぎは必要ですよね?」

 

「っ!?」

 

 そ、それはつまりミルキースさん!

 

 最近すっかり少女から熟成した美女として成長し始めたミルキースが、なんとも色っぽい艶顔を浮かべながら振り返る。

 

「私、フェインの赤ちゃん……たくさん欲しいです♡」

 

「……」

 

 この後、滅茶苦茶《背徳的行為》をした。

 

~Fin~

 

 




 本作はこれまで挑戦してこなかったバトルファンタジーに自分の好きな要素(おっぱい!)を足して書き始めた習作でした。

 いろいろ自分の予想を越える事態が起きて混乱することが多々ありましたが、なんとか無事に完結させることができました。
 結果的に良い経験になったと思います。
 本作でうまくいった点、うまくいかなかった点。それらをよく分析して、次回作に活かしていきます。

 ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
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