infinite time ケータイ捜査官3 作:伊勢村誠三
傷だらけの幼女と入浴する。
普通の人はそんな経験ないだろう。
だが俺にはある。
その傷が転んだり喧嘩でできる様な傷ならまだ良い。
けど俺が見たのは明らかに大人によってつけられた傷だった。
まず煙草の跡。
余程の不良で変態でない限り、子供が小学生の少女に煙草を押し付けるなんてしようとも思わないだろう。
次に傷の位置が全て季節に関わらず服で隠れる場所にある。普通子供はよっぽど狡猾じゃない限り傷から暴行がバレるなんて考えない。
(そして赤の他人から受けた傷なら親が黙ってるはずがない。つまり親から受けた暴行による傷ってことだ。)
「……やっぱり汚いですよねこの傷。」
伏し目がちに言いながら華澄は風呂を上がろうとした。
「待て待て待て出ないでいい。」
華澄を引き留め、そのまましばらく一緒に入っていた。
終始気まずく会話も無かった。
そして上がった後、サードを使って警察のサーバーに侵入して粗方調べ上げた。
事件は俺の母が死んだ事件から3日後に起きていた。
華澄の両親が自宅で殺されていたのだ。
犯行は白昼堂々行われており、死因は刺殺。
母親の方は無抵抗で、父親の方はある程度抵抗したらしい痕跡が有ったらしい。
(で、これがガイシャの写真か。何度見ても気持ちのいいもんじゃ無いな。)
一応誰に読まれてもいい様に酷い殺され方だったとだけ言っておこう。
『よく日常生活を送れますね。』
サードがボソリと呟く。全く同感だった。
普通の子なら、もっと壊れてなきゃおかしい。
『異常を装う方が異常』と言う様にアレだけの事があってまともでいられる方がおかしいのだ。
酷い話だ。吐き気を催す。
もし、俺に父がいたらそんな酷い父親だったと思う。
なんせ1歳の俺と母さんを捨てて逃げたカス野郎だ。
ある意味ではいなくてよかったが、そのせいで母は『俺がアンダーアンカーエージェントになる代わりに会社が教育費を全て出す』という約束をしなければならなかった事にかなり負い目を感じていた様だ。
その話をするたびに母は泣き出して嗚咽混じりに何度も何度も謝った。
母に抱きしめられる度に立派なエージェントになって母を泣かせないと誓った物だが、今となってはどうなんだろう?母はいないし、祖父母は華澄を養って有り余るぐらいには蓄えがある。
俺がアンカーエージェントでいる意味って何だ?
今のところ、これしか金の稼ぎ方を知らないからとしか言えない。
(にしても、酷い殺され方だな。)
何故か俺は何度も何度も華澄の母の写真を見直した。
何故だろう?致命傷がよく写った写真を何度も何度も見直した。
なのに後一歩気付けなかった。
華澄の傷や酷い家族にばかり目が行っていたせいか、
華澄の両親につけられた致命傷が母のものと全く同じ事に気付けなかった。