沢山の感想、ありがとうございます。皆さんの厳選やポケモンに対する考え、とても参考になりますし、個人的にも楽しんで読んでます。
「行けっ!ヒバニー!ひのこだ!」
「無理をすんなサルノリ!距離とって被害を抑えろ!」
オレ、ホップはライバルが2人いる。
1人はユウリ、バトルセンスが抜群でこの前も負けてしまった。自分の手持ちを十二分に理解してて、正直カッコイイなってたまに思う。
もう1人はシキ!こいつはすごい!知識というか、教科書つうか!一緒にアニキの試合を見た時に、分かりやすく解説してくれるんだ。
オレたちは3人とも、アニキに推薦してもらってジムチャレンジに挑んだ。
「ヒバニー!逃がすな!でんこうせっか!」
「サルノリ!えだづきで迎え撃て!」
オレたちは見事にファイティングスタイルが違った。
オレはまぁ、少し…というかかなり攻めに寄ってる。「ご、ゴリ推しで勝っちゃうのかよ…」とよくシキに驚かれる。
シキは防御というかカウンター狙いの動きが多い。地味だけど、決まった時の連撃はこっちまで熱くなる。
ユウリはオールラウンダーというか、全部をこなせる。タイプ相性もすぐに覚えて、最近の戦闘は圧倒されてる。
いま思い出しているのは、シキとの初戦闘。
「そのまま押し勝て!ヒバニー!」
「やっぱそうくるよなぁ!サルノリ、えだをぶん投げろ!」
ヒバニーの接近を予想してえだを前方に投げたサルノリ。進行方向に思わぬ攻撃を置かれたヒバニーは目をつぶってしまった。当然、枝はヒバニーに直撃。
「サルノリ!えだごと『はたけ』ぇ!」
「ひ、ヒバニー!態勢を立て直せ!」
これも直撃。えだと共にヒバニーは吹っ飛ばされる。さらにサルノリが接近。ヒバニーは態勢を立て直す。
「…サルノリ!右から回れ!」
「…?1回距離をとるぞ!ヒバニー!サルノリから離れ…ッ!ヒバニー!足元!」
サルノリは右から回る。そこから離れる指示を出したから当然、ヒバニーは身体をサルノリに向けて下がる。
そして、足元に転がっていたサルノリのえだに足を取られる。
「!しまっ」
「はたけぇ!サルノリ!」
サルノリの全体重を乗せた「はたく」が炸裂。
こうしてタイプ相性を覆してシキは初戦闘でオレに勝利した。「身内読みだけどな…」ってシキは言っていたが、それも才能だとオレは思った。
もうひとつ思ったのは、絶対にリベンジするってこと。
けど、その思いは、いまだに果たせていなかった。
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「…そうか、シキ、思ったより追い込まれてたんだな。」
『うん。私が預かり屋さんから聞いたのは、これで全部。』
突然ユウリから電話があった。オレたち、もちろんシキを含めて、はライバルだ。旅に出てからは連絡も取り合うことは減ったし、シキがジムチャレンジを諦めたことを知ったのはsnsなどでシキがバッシングされ始めたあとからだ。
もっと早く気づいたからって何ができた訳でもないけど、友人として寄り添うぐらいはできた。
この感情はもちろんユウリだって覚えているはずだ。
「でもお前もお前だぞユウリ!話聞くならオレにも声かけろ!」
『ご、ごめんね。実はシキと会ったんだけど、じっといられなくて…』
「…まぁ、すぐ行動しなかったオレも悪いけどよ。」
『それは…私も同じ。』
今すぐシキに会いに行って元気づけたい。当然だ。ライバルだし、友達だ。張り合いがないし、元気でいて欲しい。
けど、ユウリの話を聞いて、余計なんて声をかければいいのか分からなくなった。
「…なぁユウリ、なんて声かければいいのか、分からないぞ。」
『…うん。
シキのせいでポケモンがたくさん死んじゃったのは、変えられない…。』
──────────
「レイド穴はもう二度と行かん。」
シキは運が良すぎた。
入るレイド穴はいつだって難易度が高く、サルノリとレドームシでは太刀打ち出来なかった。
サポートトレーナーよりも弱い状態と言っても、間違いではない。
シキは運が悪すぎた。
毎度毎度、穴から嵐で追い出される度に、後頭部を、膝を、とにかく痛いところを何度もうちつけてワイルドエリアに戻る。
サポートトレーナーはダイマックスバンドを持たないからダイマックスできない。ならダイマックスするのはシキのポケモンだ。
そして何よりもきついのがダイマックスポケモンの猛攻だ。この世界では、ターン制の戦闘はない。
しかも巣だ。家だ。当然ポケモンも全力で抵抗する。追い込まれてから攻撃の激しさが増す?否、常にフルスロットルだ。
全体攻撃連発、容赦のないダイマックス技、天候やフィールドの操作。
挙句の果てには上手く決まらないはずの「だいばくはつ」で共倒れ(シキも倒れる)。
勝てない。勝てないからダイマックスアメも取れない。ポケモンが少ないから対策もしにくい。
こうして、シキはレイドから高個体値のポケモンを捕獲するという行為を諦めた。
「…今日は帰ろ。レドームシ、明後日はヤローさんとの試合だからな。頑張ろうぜ。」
シキは母親から貰ったタマゴを撫でながら言った。
──────────
言ってしまえば、それは奇跡というものだった。
タマゴというものは、100%ではないが、双子なんて生まれない。
生卵を割った時、卵黄が2つあることは珍しくないが、孵化するとなると話は別だ。
胎児が体内で養分を貰って育っていく人間や他の動物とは違って、母親から栄養を貰えないのがタマゴだ。
卵黄が2つあろうが、子供の栄養となるものは1匹分しか卵の中には存在しない。そのため栄養の取り合いとなり、結果産まれてくるのは1匹になる。2匹奇跡的に生まれたとしても、奇形だったり、すぐ死んでしまう。
だが、目の前で孵ったタマゴからはリオルが2匹現れた。
だからこそ、シキは目の前の光景をみて、口を開けたまま固まっていた。
「…ぇ…?」
感動、喜び、驚愕。胸の中で渦巻く感情をどうにか言葉にしようとしたが、声も出ない。
固まってしまっているシキを正気に戻したのは、サルノリだ。
─キィ!!
「へ?あっ…そうだ!も、毛布とか出さねぇと!!」
トレーナーとなる上で、知っておかなければならないのが卵から孵ったポケモンの世話の手順だ。ある程度育ってから孵化するものなので、特別なことはしなくていいのだが、体温を落とさないことと、守ってあげることは言わずもがな、理解出来ることだろう。
すぐ戦闘に出せるほど育っていないので、やはり世話をするのが第一になる。
あたふたしながらシキはリオルたちの世話をする。その時に気づいた事だが、オスとメスが1匹ずつ生まれていた。何をすべきなのか自分で考えたあとも、何か足りていないのではないか、心配になり、ホップとユウリにも連絡をとった。
ひと段落する。
今ではリオルたちはゆっくり眠っていて、シキはカレーを作っている最中だ。サルノリとレドームシはリオルたちの様子を見て、何かあったらシキを呼ぶ。我ながら完璧な布陣だとシキは得意げになっていた。
「リオルたちもカレーなのか…?いや、ミルクのがいいか?」
よく分からないので、とりあえず両方用意したシキ。サルノリとレドームシにカレーを食べてもらって、その間はシキはリオル達のそばにいる。
「…かわいいかよ。」
シキはなんてことなく、その頭を撫でた。
ここで、奇跡が起きる。
「…っ」
なぜだ。サルノリやレドームシの頭を撫でた時はこんなの出なかった。
シキは困惑した。
転生特典。なんて言う言葉をご存知だろうか。これは一種の「それ」なのかもしれない。
故に、これを奇跡と捉えるのか、はたまた運命と捉えるのか…
リオル ♂
H まあまあ
A ダメかも
B さいこう
C すごくいい
D さいこう
S まあまあ
リオル ♀
H ダメかも
A さいこう
B まあまあ
C すごくいい
D まあまあ
S まあまあ
『これ』が見えるようになって、彼は「プレイヤー」になっていく…。
これで投稿納めです。
次も少し遅くなるとは思いますが…。
みなさま、良いお年を!