魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

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第104話:変幻自在の槍

 時間は少し遡って――――

 

 ファントムと化したメデューサと透・クリスの戦いは終始メデューサが2人を圧倒していた。

 

「喰らえッ!」

「ちっ!?」

 

 メデューサが蛇が絡みついた様な杖を掲げると、無数の魔力球が放たれ不規則な軌道を描き2人に襲い掛かる。クリスは向かってくる魔力球を右へ左へと動いて避けるが、追尾性が高いのか何処までもついてくる。いくつかは撃ち落とす事も出来たし周囲の障害物にぶつけてやり過ごす事は出来たが、しつこくついてくるやつが残った。

 

 あわやクリスの魔力球が命中するかと言う所で、彼女の前に立ちはだかった透がクリスに殺到する魔力球を両手のカリヴァイオリンで切り払う。

 

「サンキュー、透!」

 

 脅威が無くなればこっちのもの。クリスはお返しとばかりにスカートアーマーを展開させ、小型ミサイルを発射した。噴煙を上げながら小型ミサイルがメデューサに向け飛んでいく。

 メデューサは向かってくる小型ミサイルを迎撃しようと杖を構えた……その時、クリスの銃弾が小型ミサイルの一つを撃ち抜き連鎖爆発で全てのミサイルがメデューサの眼前で爆発した。

 

「何ッ!?」

 

 自分で撃ったミサイルを自分で撃ち落とした事に、メデューサが何をするのかと思う前に爆炎を突き破って透が突っ込んできた。ミサイルはメデューサの目を眩ませる為の囮であり、本命は透による接近戦だったのだ。

 

 メデューサに近付いた透はカリヴァイオリンでメデューサに斬りかかる。見た所メデューサは杖を用いての魔法戦が得意で、接近戦が得意であるように見えない。魔法使いだった頃は武器がライドスクレイパーだったので接近戦にもそこそこ対抗してきたが、ファントムとなった事で戦い方にも変化が発生したのだろう。

 

 振り下ろされる透の二つの刃。だがメデューサは、振り下ろされた透の剣を手にした杖で防ぎ杖術で対抗してきた。

 

「そんなに甘くはないって事かよ!」

 

 愚痴りながらクリスは透を援護すべく、ハンドガンにしたアームドギアでメデューサを撃つ。だがその程度ではファントムの体には効果が薄いのか、銃弾が当たっても気にした様子を見せない。もっと大きい威力のある攻撃でないとダメなのだろう。

 しかし今そんな攻撃をすれば、透まで巻き込んでしまう。クリスはアームドギアを変形させながら透に退避を促した。

 

「透、一旦下がれ!」

「させるか」

 

 クリスが透に警告すると、メデューサが頭の無数の蛇の髪を動かし透を雁字搦めにして持ち上げた。まずいとクリスがガトリングに変形させたアームドギアで攻撃しようとするが、メデューサはクリスに向けて再び魔力球による攻撃を行う。飛んでくる魔力球をクリスはガトリングで迎撃するが、全てを撃ち落とす事は叶わず何発かが命中して吹き飛ばされた。

 

「うあっ、ぐぅっ!?」

「!?」

 

 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたクリスに透が彼女を心配するように藻掻くが、メデューサの拘束は緩まない。

 それどころか、メデューサは拘束した透から魔力を吸い取り始めた。

 

「!?!?」

「フフフフッ」

 

 あっという間に透は魔力を吸い取られ、解放された時には辛うじて変身を維持するのが精一杯で立つ事も儘ならない状態になってしまっていた。動けない透を、メデューサは杖で殴り飛ばす。

 

「透ッ!?」

 

 殴り飛ばされ倒れる透にクリスが手を伸ばす。まだ先程のダメージが抜けきらず、彼女もまた立つ事が出来ないのだ。

 

 倒れた透に向け、トドメの魔法を放とうとするメデューサ。杖の先に膨大な魔力を集めて巨大な魔力球を形成する。これを喰らえば、今の防御も儘ならない透は木端微塵だ。いやここで使えば、透だけでなくクリスも巻き込まれて一緒に木端微塵だろう。或いはそれを狙っているのかもしれない。

 

「これで……終わりだ!」

 

 まるで小さな太陽の様な一撃を透に向けて落とした……その時。

 

〈シューティングストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!〉

 

 ギリギリで現場に駆け付けた颯人の炎属性のシューティングストライクと、奏のLAST∞METEORが魔力球を撃ち抜き透を助けた。

 更にメデューサには合流してきた翼が大剣に変形させたアームドギアで攻撃して強制的に遠ざけ、倒れたクリスを同じく合流してきた響が助け起こした。

 

「間に合ったか」

「ギリギリだったな」

「北上、無事か?」

「クリスちゃん、しっかり!」

 

 颯人・奏・翼・響が合流したのを見てメデューサが彼らから距離を取る。流石のあの人数を相手に、たった1体で相手をするのは不利だと思ったのだろう。

 その隙に颯人はメデューサにより魔力を奪われた透に自分の魔力を分け与える。

 

「大丈夫か、透? ほれ、しっかりしな」

〈プリーズ、プリーズ〉

 

 颯人に魔力を供給してもらい、透は自力で立ち上がれるくらいに回復した。いや、立てるどころか全力で戦っても問題ないほどの魔力が分け与えられた。

 こんなに魔力を分けて颯人自身は大丈夫なのかと透が心配していると、その視線に気づいた颯人が仮面の奥で笑みを浮かべた。

 

「ん? もしかして俺の心配してる? 大丈夫、前も言っただろ? 俺は奏が居ればいつでも全開だって。今日は特に絶好調だから大丈夫!」

 

 そう言ってサムズアップする颯人に、透も言葉では言い表せない安心感を感じ安堵の溜め息を吐く。

 

 その横では、奏が翼に謝罪していた。

 

「翼。その……悪い。アタシ…………翼にとんでもなく迷惑かけて……」

「うぅん、私は奏が戻ってきてくれただけで充分。確かに驚いたけど、でもそれは奏の所為じゃないんでしょ?」

「そうですよ! 悪いのは悪い魔法使いなんでしょ? だったら奏さんは悪くありませんよ!」

「響……悪いな、響にも迷惑かけた」

「いやぁ、私は全然。でも奏さんが戻ってきてくれて良かったです」

 

 翼に対して強い罪悪感を抱いていた奏だが、翼は許すどころかそもそも怒ってすらいなかった。怒る訳がない。奏が意味も無く自分を攻撃する筈がないと、翼は信じていたからだ。あれはきっと何か理由があっての事だと最初から思っていた。

 

「お? クリスちゃんその腰にある物は?」

「ん? あぁ、この通りしっかり取り戻してきたぜ」

 

 徐に颯人はクリスの腰に畳まれたソロモンの杖がぶら下がっている事に気付いた。颯人が指摘すると、クリスはソロモンの杖を手に取りやり切ったような顔をした。

 

「透が居てくれたからだよ」

「そいつは何よりで。さて! 後はあいつをぶっ飛ばして、ウェル博士とっ捕まえてフロンティア何とかすれば終わりだ」

「あぁ!」

「行くぞ! この場に槍と弓、剣を携え、魔法を駆れるのは私達だけだ!」

 

 翼の啖呵に全員が頷くと、それを待っていたかのようにメデューサが再び颯人達の前に立ち塞がった。

 

「それを私が許すとでも?」

「誰もお前に許可は求めてねぇよ。奏、コイツは俺と透で何とかするからそっちはフロンティアを止めに行ってくれ」

「任せな。了子さん! フロンティアを止めるにはどうすればいい?」

『解析で高出力のエネルギー反応地点を特定したわ! そこがフロンティアの炉心、心臓部よ!』

 

 奏からの通信に答えた了子だが、そこで彼女は声のトーンを落とした。

 

『ただ、ウェル博士捕縛の為に向かった弦十郎君と緒川君との連絡がさっきから取れないの。きっと何かがあったんだと思うわ。あの2人に限ってもしもと言う事はないでしょうけど、皆は十分に気を付けて』

「任せろ! ナビ頼むよ!」

 

 メデューサの相手を颯人と透に任せ、奏を先頭に装者達があおいからのナビゲートによりフロンティアの炉心に向って行った。

 

 

 

 

 その様子を、炉心でワイズマンが魔法で見ていた。彼の足元には、意識を失った弦十郎と慎二が倒れている。

 

「フフフッ、もう勝った気でいるのか。それは幾ら何でも甘すぎるぞ」

 

 ワイズマンが手を翳すと、ウェル博士がコンソールに触れる。その顔は心此処に非ずと言った感じで、まるで幽鬼のようにふらふらとしている。

 それもその筈で、今の彼はワイズマンにより魔法で操られている状態なのだ。

 

 ワイズマンにより操られたウェル博士がフロンティアを操作する。

 

 するとそれに呼応するかのように、炉心に取り付けられたネフィリムの心臓が強く鼓動した。

 

 ネフィリムの心臓が鼓動すると、それに合わせてワイズマンの視線の先で変化が起きた。奏達の眼前で地面が隆起し、まるで細胞が分裂する様に地面が膨らんだ。そして次の瞬間そこには見上げるほど巨大な怪物が出現していた。

 

「さぁ、暴食の二つ名で呼ばれた力を見せてもらうぞ。精々私を楽しませてもらおうか、ネフィリム」

 

 

 

 

 巨大ネフィリムの登場は、当然颯人達にも見えていた。だが、見えていてもどうしようもできない。

 ファントムと化したメデューサはそれほどの強敵なのだ。

 

 颯人はフレイムドラゴンを用いてメデューサと対峙していたが、優れた魔法を駆使するメデューサにはなかなか攻めあぐねていた。ヒュドラは単純に力押しだったので御しやすかったが、メデューサは頭を使って的確に魔法を放ってくるので颯人も頭を使った。

 

 何よりもメデューサの魔法で危険なのは、石化の魔眼と蛇の髪による魔力の吸収だ。魔法使いだった時と違い石化の魔眼は前段階の動きが殆どないので気付くのが一瞬遅れる。直撃こそ喰らわないが、危うい場面がいくつかあった。

 

 だが何よりも彼ら魔法使いにとって厄介なのが魔力吸収だろう。あれを喰らっては魔法使いとして致命的なダメージを負ってしまう。文字通り牙を抜かれたも同然となってしまうのだ。なので戦いの途中で相方がメデューサの蛇の髪に絡めとられたら、何をおいてもそちらの援護に向かわなければならず必然的にメデューサに体勢を整える機会を与えてしまう。

 

 前に比べて厄介さが数段跳ね上がった。颯人は思わず舌打ちをしてしまう。

 

「くそぉ、面倒だな。奏にはああ言ったが、こいつはちと厳しいぞ……ん?」

 

 その時、颯人の中に名案が浮かんだ。名案と言うか、打開策だろう。

 

 要は、魔法使いが戦うと厄介な能力をメデューサが使ってくるのだ。ならば、その厄介な能力が殆ど意味を成さない相手に肩代わりしてもらえばいい。至極単純な話だ。

 

「奏ッ!」

「何! 今こっちも忙しい――」

 

 颯人は透を伴って奏とネフィリムが戦っている所へ移動した。当然メデューサは逃がすものかと2人を追い掛ける。

 名前を呼ばれた奏は、颯人がメデューサを連れてやって来ることにギョッと目を見開いた。

 

「ちょっ、おまっ!? 何連れてきてんだ!」

「交代! チェンジだ! ちょっとメデューサの相手は魔法使いじゃちと荷が重い。俺と透がネフィリム相手にするから奏達はメデューサを頼む!」

「はぁ? 何だよ1人相手に情けないな」

「しょうがねえだろ、あいつこっちの魔力持っていきやがるんだよ。やり辛くてしょうがねぇ」

「ったく、貸し1つだぞ?」

「後で全員に寿司でも焼肉でも何でも奢ってやるよ」

 

 奏と軽口を叩き合いながら、颯人は奏達とすれ違いネフィリムへと攻撃を開始する。今正に火球を放とうとしていたネフィリムに対し、颯人はスタイルをハリケーンドラゴンにチェンジしサンダーの魔法を放ち火球を妨害した。

 

〈チョーイイネ! サンダー、サイコー!〉

 

 颯人の放った緑の雷撃がネフィリムの口の中の火球に直撃し暴発させる。火球と雷撃がぶつかり合った結果、ネフィリムの口の中で大きな爆発が起こった。

 

「ガァァァァァァッ!?」

 

 口周りを吹き飛ばされ苦悶の叫び声を上げるネフィリム。だが苦悶の声に反して、見た目のダメージは少ないように見えた。

 

「頑丈だなぁ、デカさは伊達じゃないってか?」

 

 ネフィリムの攻略法を模索しながら颯人は振り下ろされたネフィリムの腕を回避した。

 

 一方奏達はメデューサを相手に4対1で戦っていた。数で言えば奏達の方が圧倒的に有利、だがメデューサは多彩な魔法と頭部の蛇の髪を巧みに駆使して数の不利を覆していた。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁっ!」

「遅い」

 

 突撃した響の拳が、メデューサに片手で止められる。人間という枠から外れたファントムは素の身体能力でもシンフォギアを纏う装者に匹敵するか勝っていた。単純な力比べでは勝ち目がない。

 

 それを奏達はチームワークで補っていた。

 

「翼!」

「あぁ!」

 

 メデューサは片手に杖を持ち、もう片方の手を響の攻撃を防ぐのに使っている。両手が塞がっている隙に奏と翼がメデューサの左右から迫りアームドギアで攻撃しようとした。振り下ろされる槍と剣。

 だがメデューサには蛇の髪がある。これは飾りではなく、メデューサの意思で自由自在に動かせるし攻撃にも防御にも使用出来る。奏と翼の攻撃は、一方を杖で、もう一方を蛇の髪で防がれてしまった。

 

「それで精一杯か?」

「な訳ねえだろ?」

「雪音!」

 

「応ッ!」

 

 3人の攻撃にメデューサが気を取られている間に、クリスは離れた所でアームドギアを狙撃銃に変形させていた。狙うは頭部。3人の攻撃を防いでいて動く事が出来ない。ちょっとでも動けば即座に均衡が崩れて3人の攻撃がメデューサに殺到する。

 

「いい加減とっとと失せろ、クソ野郎!」

 

 狙いを定めて引き金を引くクリス。放たれた銃弾は高速で飛んでいき――――

 

「だから?」

 

 杖を使って発動した魔法により防がれた。別に魔法を発動するのに、杖を振るう必要は無い。簡単な障壁を張るだけなら持ってさえいれば固定されていても問題ないのだ。

 

「ッ! チクショウ!?」

 

 あっさりと防がれた事にクリスが悪態を吐いている前で、奏と翼を受け止めている蛇の髪がさらに伸びて2人を拘束した。

 

「しまっ!?」

「離せ、クソッ!?」

 

 藻掻く2人の前で、メデューサは響を見る。彼女の手は未だメデューサに掴まれていた。メデューサは目の前の響をまず最初に始末すべく、魔眼を煌めかせる。

 メデューサが何をするつもりなのかに気付いたクリスは、それを止めようともう一発撃つ。だがそれも障壁で防がれてしまった。

 

「くそ、逃げろ!?」

 

 自分の攻撃が無意味に終わり、せめて逃げてくれと響に向かって叫ぶクリスだが手を掴まれている響には無理な話。万力の様な力で掴まれた手を、握り潰されないようにするだけで精一杯だった。

 

 そのまま石化の魔眼が響を石にしてしまうかと思われた、その時――――

 

「デェェェェスッ!!」

 

 飛来した丸鋸と大鎌が奏と翼を拘束している蛇の髪を切断した。その衝撃でメデューサの石化の魔眼は中断され、さらに自由になった2人の攻撃でメデューサは遠くに吹き飛ばされた。

 

「このヤロッ!」

「ハァッ!」

「ぐぁっ!?」

 

 メデューサを引き剥がし、体勢を整えた奏達。響の無事に安堵する一行の傍に、2人のシンフォギア装者が降り立った。

 

「お前ら……」

「シュルシャガナと」

「イガリマ、到着デース!」

 

 参戦したのは切歌と調の2人だった。2人は無事和解を成し、そして今やるべき事を成す為にこの場に姿を現したのだ。

 

「来てくれたんだ、2人共!」

「うん」

「あの蛇女! 今まで散々馬鹿にしてきた恨みを晴らしてやるデス!……ところであれ何デス?」

 

 2人はファントムの存在を知らないし、メデューサがファントムになる瞬間を見ていなかったので分からないのも無理はない。

 なので奏が手短に教えてやった。

 

「あれがお前らの言う蛇女だよ」

「デデデッ!? あの怪人がデスか!?」

「詳しい話は後! 早くメデューサを倒して、ネフィリムも何とかしないと……」

 

 この場に装者が6人揃った今、メデューサを下す事は出来るだろう。だがメデューサを下せても、その後にはネフィリムが待っている。あの高い回復力を持つネフィリム相手には、颯人達の魔法も効果が薄いのか攻めあぐねた様子だった。

 

「エクスドライブになれればなぁ……」

 

 響が何気なく呟く。確かに、強大な力を発揮できるエクスドライブであれば幹部とは言えファントム1体を6人で下す事に何の苦もない。それどころか、ネフィリムを倒す事も出来るだろう。

 だがエクスドライブモードになるには、莫大なフォニックゲインが必要だ。この場でそれは望めない。

 

「今の状態でどうにかするしかない訳デスね?」

 

 状況を掻い摘んで切歌が纏める。結局はそう言う事だ。今あるもので何とかするしかない。

 

「――――それでも、私達には歌がある!」

 

 その時、辺りに凛とした声が響き渡る。

 

 装者達どころか、颯人達までもがそちらを見れば、そこにはフロンティアが発生させる重力によって浮遊する岩の上に乗ったマリアとキャスターに変身したままのガルドが居た。

 

「マリア!」

 

 装者達はすぐさま全員がマリアの居る岩の上に乗った。一方颯人と透は、ネフィリムとメデューサが装者達の邪魔をしない様にと目を光らせる。

 

 マリアの傍に降り立った装者達は、当然の如く始めて見るキャスターに注目した。

 

「アンタは? 魔法使いみたいだけど……」

「俺はガルド……ソーサラーだった男と言えば分かりやすいか?」

「え!? あなたソーサラーなんデス!?」

「あぁ……今まで、すまなかった。特に二課の皆に対しては……」

 

 開口一番、ガルドは奏達に今までの事を詫びた。仕方が無かったこととは言え、ウェル博士やジェネシスの魔法使い達の片棒を担いでいたのは事実。弁明のしようもない。

 

 仮面で顔は見えないが、心の底から申し訳なく思っているだろう事は伝わった。それに学祭の時など、彼の人となりが伺える機会はあったので、彼が誠実な人間なのだろうと言う事は理解できた。

 

 故に、(そもそもそんな者はこの場に居ないが)奏達はガルドをそれ以上責める事はせず、マリア達と同じく受け入れた。

 

「気にすんなよ。なぁ?」

「そうですよ! こうして私達を助ける為に来てくれたじゃないですか!」

 

 奏と響の言葉に、ガルドは仮面の奥で頬を綻ばせる。

 

 その時、眼下で一際激しい爆発が起こった。見ると颯人とネフィリム、透とメデューサの戦いが激化していた。特に透の方は、メデューサに魔力を奪われない様に立ち回るので攻めあぐねている様子だ。

 

「透!?」

「あちらは俺に任せろ。皆はその内に、何か策があるならそれを」

 

 ガルドはそう告げると、岩から飛び降り手にした槍に跨った。すると槍の穂先が二つに割れ、中にあった砲口から火を噴いて加速し一気にメデューサに向けて降下していく。

 

 あっという間にメデューサが居る地点に近付くと、体を反転させ砲口の炎で制動を掛けると同時にメデューサに出合い頭の一撃を喰らわせた。

 

「くっ!? 何ッ!?」

「俺が相手だ、メデューサ。透だったか、お前はウィザード……明星 颯人の方に向え」

「貴様、ソーサラーか? 裏切った……いや元の鞘に戻ったと言うべきか。ワイズマンの障害となるなら、貴様も消えろッ!」

 

 選手交代と、ガルドが告げると透が動くよりも先にメデューサが迫る。ガルドはそれを正面から受け止めた。

 

「行け!」

 

 再度ガルドに言われ、透は1つ頷くと彼に背を向け颯人の元へと向かって行く。

 

 それを見送る事無く、ガルドは一旦メデューサから距離を取った。

 

「メデューサ……その姿、ファントムになった様だな。そこまで堕ちたか」

「何を言うのかと思ったら、それは侮蔑か憐れみか? 生憎だったな。私はむしろ晴れ晴れとした気分だ。漸く解き放たれたのだからな」

 

 メデューサが杖の先端に魔力を集束させる。バニッシュストライクに匹敵する強力な魔法。

 

 ガルドはそれが放たれる前に行動を起こした。右手に赤い指輪を嵌め、マイティガンランスのハンドオーサーに翳した。

 

〈ファイヤーエンチャント、プリーズ〉

 

 右手をハンドオーサーに翳すと、槍の柄と穂先の接続部にある灰色の宝石が赤に変色し、槍の穂先が炎を纏う。

 その状態で槍を両手で構え穂先をメデューサに向けると、穂先が二つに割れ砲口が開き、そこからメデューサが放とうとしている魔力球に匹敵する火球が放たれた。

 

「くッ!?」

 

 先手を取られたメデューサは、僅かに遅れて魔力球を放つ。火球と魔力球はぶつかり合うと、一瞬拮抗した後大きな爆発を起こした。

 

 ガルドはそのまま魔力を纏わせたマイティガンランスでメデューサに斬りかかった。炎を纏った斬撃がメデューサのファントムとしての体を焼きながら切り裂く。

 

「グゥッ!? えぇい、忌々しい!」

 

 このままやられてばかりではないと、メデューサは蛇の髪でガルドを拘束しようとした。

 それを見たガルドは右手の指輪を緑の物に変え、再びマイティガンランスのハンドオーサーに翳した。

 

〈サンダーエンチャント、プリーズ〉

 

 今度は槍全体が緑の稲妻を纏う。その槍は振るわれる度に周囲に放電を放ち、見た目以上に攻撃範囲が広い。その広範囲攻撃により、メデューサの蛇の髪は一掃される。

 

「くっ!? えぇい!?」

 

 接近戦では勝ち目はないと見て、メデューサは距離を取る。それを見ると、ガルドは今度は指輪を黄色に変えた。

 

〈グラビティエンチャント、プリーズ〉

「逃がすか!」

 

 ガルドがマイティガンランスをメデューサに向けると、風も吹いていないのにメデューサの体がガルドの方に引き寄せられる。何が起こっているのか理解できず困惑するメデューサを、ガルドは容赦なく切り裂いた。

 

「がぁぁぁっ!? おの、れぇ!?」

 

 攻撃されながらも反撃しようとするメデューサだったが、それよりも前にガルドが槍を振るうとその動きに合わせてメデューサの体が空中で振り回され放り投げられた。

 

 地面に叩きつけられたメデューサ。その姿を見ながら、ガルドは4度目になる指輪の交換を行った。今度は青い指輪だ。

 

〈ブリザードエンチャント、プリーズ〉

 

 右手をハンドオーサーに翳すと、槍が冷気を纏い周囲の水分を氷結させる。氷結した水分は穂先に纏わり付いて大きくし、あっと言う間に元の大きさの倍以上の穂先となる。

 ガルドはそれを軽々と振り回し、そのリーチの伸びた槍でメデューサの体を切り裂いた。切り裂くと同時に、超低温の氷の刃が切断面を凍てつかせる。

 

「うぐ……く、そぉ……」

 

 これこそがキャスターの最大の特徴。4つの属性に即した能力を槍に付与する事で、様々な効果の魔法を自在に操れる様になる。颯人のウィザードの様に属性それぞれの形態で特性を持つ事は出来ないが、代わりに槍一本で様々な事が出来た。この多彩さがキャスター最大の売りだ。

 

「さて……そろそろチェックメイトだ」

 

 最早ガルドの勝利は揺るがない。

 

 ガルドは蹲るメデューサに、穂先を向けながらゆっくりと近付いていった。




という訳で第104話でした。

今回は最後にキャスターの基本戦法を描いてみました。ビーストがいろいろなマントを纏って自分を強化するのに対して、キャスターは武器そのものに魔法を付与してそれを駆使するのが主な戦いとなります。今回の魔法を付与しての戦い方はあくまでも一例であり、これ以外にもいろいろな使い方をしていく予定です。

執筆の糧となりますので、感想その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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