魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

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どうも、黒井です。

大変長らくお待たせして申し訳ありませんでした!!オリライの方が盛り上がって忙しくてなかなかこちらに手を回す余裕がありませんでした。

今後は以前の様にこちらも週一更新していくようにしますので、どうか今暫くのお付き合いをよろしくお願いします。

まずはリハビリがてらの閑話を数話お送りします。


魔法絶唱しないフォギアG編
彼の弱点を探れ


 それは突然やって来た。

 

「チュウ」

 

 フロンティア事変も終わり、平和を取り戻した装者と魔法使い達。彼らが仮設から本格的な本部としての運用に移った潜水艦内部の食堂で駄弁っていた時、突如そんな鳴き声が颯人を除く一同の耳に入った。

 

 特徴的なその鳴き声に、響が机の下を覗き込むとそこには案の定の存在が居た。

 

「あ、鼠!」

「何?」

「マジか!?」

「あれ? この鼠……」

 

 響の声に全員が反応し一斉に机の下を覗くと、そこには確かに一匹の鼠が居た。白い毛並みの、一見小綺麗な見た目の鼠だ。少なくとも餌を求めて忍び込んだ野良鼠と言うより、誰かが飼っていた鼠が逃げ出したと言われた方が納得できる。

 

 そしてこの鼠の持ち主に奏は一目で気付いた。

 

「これ颯人の鼠だ」

「え? 颯人さんって鼠飼ってるんですか?」

「あ、もしかして手品で使う?」

「そうそう。他にも猫とか鳩とか蛇とかもいるけど」

「大事な商売道具逃がすなよ――――!?」

 

 奏が代表して手を伸ばすと、その鼠は勝手知ったると言った具合に慣れた様子で奏の手の上に飛び乗った。手に乗った鼠を机の上に乗せ、頭を指先で撫でてやると鼠は気持ち良さそうに目を閉じた。

 その小動物特有の愛くるしさに、響と翼は目を輝かせた。

 

「お~、可愛い!」

「確かに……これはなかなか……」

 

 奏に懐いた様子の鼠に響と翼が興味を引かれる中、クリスは鼠から距離を取っている。その事に気付いた奏がそちらに目を向けると…………

 

「あれ? クリス何やって…………って、透どうしたんだ?」

 

 何とそこでは透が怯えた様子でクリスの後ろに隠れていた。時折奏の方を見るが、直ぐに顔を引っ込めてしまう。

 

 あまりにも何時もの透らしくない。奏が疑問を抱き首を傾げていると、食堂に颯人がやって来た。

 

「お~す。奏、俺の鼠一匹いなくなったんだけどこっち来てねぇか?」

「こいつの事か?」

 

 やって来た颯人に奏が手の上の鼠を見せると、彼は足早に近付き奏の手から鼠を受け取った。

 

「お~! サンキュウ、助かったぜ」

「気を付けろよ。誰かに踏まれたりしたら一巻の終わりだぞ?」

「何気にさらっと怖い事言うなよ。ところでさ……」

 

 さっきから颯人もずっと気になっていた。透とクリスがやたらと大人しい。その様子に颯人の嗅覚が匂いを感じ取った。

 そう、楽しい事になる気配の匂いだ。

 

「……さっきから透とクリスちゃんは何であんなに静かなんだ?」

「さぁ?」

「さっきからずっとああなんですよ」

「うっ!? いや、これは……その……」

 

 颯人達に指摘され、顔を強張らせるクリス。彼女らしくない様子に怪訝な顔をする颯人だったが、クリスの背後にいる透が気になった。

 

 怯えた目でこちらを見る透。いや、よくよく見ると透が見ているのは颯人が持っている鼠だった。

 

「…………」

 

 試しに颯人は鼠を右へ動かしてみる。すると透の怯えた目もそれを追って右へ動く。左へ動かすと左に、上に下にと透の怯えた目は鼠を追い続ける。それは鼠に興味があるからと言うより、目を離す事も怖いから目が離せないといった感じだった。

 時々クリスの背に完全に隠れながらそれでも伺うように顔を出す事がそう思わせる。

 

 流石にここまでのものを見せられては、颯人だって気付く。

 

「……透って鼠苦手なのか?」

「…………悪いかよ」

「いや別に悪くはないけど……なぁ?」

「確かに。何て言うか、意外だなぁって」

「透君にも苦手なものがあったんだね」

「うむ。雪音の為に体を張れる北上が、まさか鼠が苦手だったとはな」

「色々あったんだよ」

 

 クリス曰く、何でも子供の頃に透は実家の屋根裏でとんでもない大きさの鼠に襲われ、それ以来鼠を見るとその時のことが思い出されるくらいのトラウマになってしまったのだそうだ。

 

 因みにこれは子供時代の誇張したイメージが定着してしまっただけである。

 詳しく当時の事を話せば、子供時代の透が出会ったのはただの鼠である。確かに普通の鼠に比べれば大きかったが、精々が通常の鼠よりもデブだという程度で言うほど大きくはない。それでも子供目線で見れば信じられない大きさなのだろう。

 

 更に言えば、鼠は別に透に襲い掛かっても居なかった。当時の状況を説明すれば、透は暗闇から出てきたデブ鼠に大層驚いたが、実は鼠の方も突然透と遭遇した事にパニックを起こしており驚きのあまり後先考えず前に飛び出していった。デブ鼠の大きさに驚いていた子供の透は、それを大きな鼠が自分に襲い掛かって来たと感じ叫び声を上げながら逃げ出したのだ。

 

 その時の事があり、透は未だに鼠が大の苦手なのだった。

 

 事実透は怯えた目で颯人の手の中の鼠を見ている。小動物の様に怯える透。その姿に颯人はいたずら心を刺激されたが、流石に鼠を嗾けると言う可哀想な事はしない。回収した鼠を颯人は帽子の中に放り込む。

 

 これで一安心…………と思っていたのだが、颯人はある事に気付いてしまった。

 

「あ、透……」

「?」

「ポケットにすっぽり」

 

 最初、透はそれが何のことなのか分からなかった。だが自分の服の胸ポケットで何かが動く感触に恐る恐る視線を下に向けると、そこには胸ポケットから顔を出して見上げている鼠の姿が――――

 

「!?!?!?!?!?」

「うおっ!?」

 

 その瞬間、透は椅子を薙ぎ倒しながらひっくり返り上着を脱ぎ棄てて逃げた。声の出せない透の口から颯人達は声にならない悲鳴を聞き、透は椅子やテーブルをひっくり返して鼠から距離を取る。それでも鼠自体は傷付けないようにしている当たり、透の優しさが伺えた。

 

「止めろよペテン師!?」

「言っとくけど俺じゃないよ? そいつが勝手に入っただけだからね?」

「颯人が嗾けたんじゃないの?」

「違うよ、さっきのはネズ太郎。あれはネズノ介だよ」

「鼠の違いなんて分かるか!?」

 

 すかさずクリスは怯える透に近付き、彼を抱きしめ安心させようとした。完全に怯えた透は、自分を抱きしめてくれるクリスに涙目で縋りつき震えている。

 

 その弱々しい姿に、女性陣は全員ときめかずにはいられなかった。

 

「透君、なんか可愛い」

「これは確かに、庇護欲をそそられる。……雪音、羨ましいぞ!」

「うるせぇ!」

 

 クリス達が騒ぐ中、颯人は透の上着からネズノ介を回収しネズ太郎同様帽子の中へと放り込んだ。

 

「大丈夫大丈夫、もう鼠はいないから。マジでマジで」

「颯人がゴメンな。しっかり言って聞かせておくから」

「イテッ!?」

 

 一応原因の半分は自分にあるという事で、頭を下げた颯人の頭を奏が小突く。割と強めに小突かれたのか、頭を押さえる颯人の姿に透も少しは安心したのか怯えた様子がなりを潜める。

 

「しかし意外だったなぁ。透が鼠苦手だったとは」

「別に不思議でも何でもないだろう? クリスにお化けって言う弱点があるんだから」

「余計なお世話だ!」

「でも颯人さんにだって、苦手な物や怖い物の一つはあるんじゃないんですか?」

「ざ~んねんでした。俺に怖い物なんてないよ」

「俄かには信じがたいですね」

「本当だって。俺に怖い物なんてない」

 

「ハンッ」

 

 次第に奏達の意識は颯人の弱点を探る事に集中し始めた。だが颯人はのらりくらりと奏達の追及を躱している。

 

 暖簾に腕押しの状況に、矛先は奏の方に移った。

 

「先輩! このペテン師の幼馴染なんだろ? 何か弱点とか知らないのか!」

「そうよ奏! この中で一番颯人さんに詳しいの奏なんだから!」

「どうですか奏さん!」

 

 クリス・翼・響の3人に詰め寄られた奏は、顎に手を当てて記憶の本棚を漁るがいまいちピンとこない。流石に子供の頃の話の上に離れていた期間も長かったので忘れてしまっていた。

 だが颯人にも苦手なものがあったという事だけは漠然と覚えていた。

 

「ん~、何かあった筈なんだよ。それは間違いない」

「無い無い。怖い物なんてないよ」

「いや嘘だね。颯人にはまだ怖い物がある」

「何でそう言い切れる?」

 

 意固地になる奏に颯人だけでなく響達も何が彼女をそこまでさせるのかと首を傾げる。

 その疑問に答える様に、奏は食堂内の一方を指差しながら口を開いた。

 

「今、ウィズが鼻で笑ったのを確かに聞いた」

 

 奏の一言に全員が一斉にそちらを見ると、そこには確かにウィズが居て湯気を立てるティーカップを持っていた。

 

 その姿に颯人は全員の視線がウィズに集中しているのを幸いと盛大に顔を顰めた。

 

――何でウィズの奴!?――

 

「つまり颯人にはまだ克服できていない弱点がある!」

「それは何!」

「…………分からない」

 

 期待を寄せる響達だったが、奏が肝心の颯人の弱点を忘れている為何も変わらない。期待していただけに落胆も大きく、全員肩をがっくりと落とした。

 

 対照的に颯人は安堵に胸を撫でおろしている。奏が完全に忘れていなかった上にウィズがヒントを出した事で肝を冷やしたが、この分なら大丈夫そうだと安心していた。

 

 何しろ彼の怖い物は、普通に考えたら絶対辿り着かないものなのだから…………

 

「おぉ! 皆、ここに居たのか」

 

 いよいよ颯人の弱点を探る事については諦めるしかないかと思われたその時、食堂に弦十郎が入って来た。その腕には発泡スチロールで出来た箱が抱えられている。

 

「旦那? それ何?」

「海産物ですか師匠?」

「あぁ。さっきウィズから差し入れがあってな。これで皆に精を付けてもらえだそうだ」

 

 奏がもう一度さっきウィズが居た所を見ると、そこにはティーカップだけが残されてウィズの姿は影も形もなかった。

 

「旦那、今あたしらそれどころじゃ……」

「まぁまぁ。それで司令、その中身は?」

「見て驚くなよ?」

 

 弦十郎はもったいぶる様に箱を開けた。

 

 その中には――――

 

「どうだ、いいウナギだろ? こいつを蒲焼にして――」

「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

 箱の中には黒光りするウナギが無数に入っていた。それを見た瞬間、颯人は悲鳴を上げて食堂から逃げ去り、奏達はその姿に目を丸くした。

 

 突然悲鳴を上げて逃げていく颯人の後ろ姿を見て、奏はここで漸く颯人の弱点を思い出した。

 

「あっ、思い出した! 颯人の奴、ウナギが大の苦手なんだった」

「マジか!?」

「何で颯人さん、ウナギが苦手なんです?」

「あ~……確かガキの頃、うな重食った時骨の処理が甘い奴に当たって喉に骨が刺さって豪い目に遭ったんだよ。その時からウナギが苦手になって……」

 

 まさかの弱点に奏以外の全員が目を丸くしたが、真っ先に笑みを浮かべたのはクリスだった。

 

「そうかそうか。あのペテン師ウナギが弱点だったのか。だったら……」

「でもウナギが弱点だと分かって、それでどう颯人さんを追い詰めるつもり? まさか常日頃からウナギを持ち歩く訳にもいかないでしょ?」

 

 やっと颯人の弱点が分かり喜ぶクリスだったが、直後に翼に正論を突き付けられ肩を落とす。翼の言う通り、流石にウナギを持ち歩く訳にはいかない。

 

 とは言え颯人の弱点が分かった事は大きな収穫。

 

 これから暫くの間、颯人は事ある毎に今回の一件でクリスを始めとした面々に揶揄われることになる。

 

 そしてその事を地味に根に持っていた颯人により、後々仕返しを受ける事になるのだがそれはまた別の話。




読んでいただきありがとうございました!

颯人の弱点はウナギです。因みに颯人がウナギを苦手になるほどのエピソード、私じゃなく妹ですがほぼほぼ実話です。妹は颯人ほどではありませんが、この一見以降ウナギを一切食べなくなりました。

執筆の糧となりますので、感想や評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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