魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

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第142話:二律背反の光

 颯人がオートスコアラー達と激戦を繰り広げている頃、シャトー内部ではガルド・マリア・切歌・調の4人がシャトー破壊の為内部を進んでいた。

 

「はぁぁっ!」

INFINITE†CRIME

 

「デースッ!」

切・呪りeッTぉ

 

「やぁぁぁッ!」

α式 百輪廻

 

「おぉぉっ!」

〈スラッシュストライク!〉

 

 道中では何体ものアルカノイズが出現し、4人の進行を阻んでいた。内部を埋め尽くすのではと言う程の数のアルカノイズが出現したが、4人はそれを正面から打ち破るように進んでいた。通路を埋め尽くさんばかりに出現するアルカノイズが、4人の攻撃により次々と薙ぎ倒されていく。

 

 このまま進めばシャトーの中枢まで辿り着けるかと思われたその時、唐突にアルカノイズの出現が止まった。蓄えていたアルカノイズが底を尽いたのかと一瞬思ったが、理由はそれだけではなかった。

 

 通路の先に誰か居る。背丈は小さく、子供のようだ。

 

 それはハンス。キャロルに味方する魔法使いであり、残り僅かな想い出と命を燃やし尽くそうとしている男である。

 

「ッ! あれは、ハンス!」

「!」

 

「これ以上はやらせねぇ……変身!」

〈L・I・O・N、ライオーン!〉

 

 ハンスはビーストに変身すると、脇目も振らずガルド達に突撃しダイスサーベルを振り下ろした。ガルドは咄嗟に前に出てそれを受け止めると、槍でそれを受け止めた。

 

「くっ!」

「ガルドッ!?」

「俺の事はいい、先に行け!!」

「でも……」

「シャトーを止める事の方が先決だッ! 良いから行くんだッ! こいつは俺が押さえとくからッ!」

 

 ガルドは以前に何度かハンスと戦っているが、いずれも彼一人で勝利を収めた事は無かった。フロンティア事変の頃から無茶をしてきた弊害でコンディションが完璧ではなかった事もあり、1人では基本的に敗北を喫し誰かと組んで漸く撃退できると言った程度であった。

 そんな彼をここに1人残して先に進む事は憚られたマリア。もし彼の身に何かあったら、セレナに対してどんな顔をすればいいと言うのか。

 

 不安を抱えるマリアであったが、その彼女の手を切歌と調が引っ張った。

 

「あっ!? 切歌、調ッ!?」

「ガルドの気持ち、無駄にしちゃいけないデスッ!」

「今は私達に出来る事をッ!」

「ガルドなら大丈夫デスッ! 信じるデスよマリアッ!」

 

 年下2人に諭され、マリアは覚悟を決めた。

 

「あなた達……分かった。ガルド、先に行くわッ!」

「あぁッ! こいつ倒して合流するから、先に待ってろッ!」

 

 マリアは切歌・調と共にシャトーの奥へ向けて走っていく。ガルドはそれを見送ったが、ハンスの方は大人しく3人を先に行かせてはくれなかった。

 

「ごちゃごちゃと、話してんじゃねぇッ!!」

〈バッファ! ゴーッ! バッバ、ババババッファー!〉

 

 バッファマントを纏い、力尽くでガルドを押し退けるハンス。ガルドが僅かながら離れると、ハンスはその隙にダイスを回転させてセイバーストライクを発動。離れていくマリア達に向けて放った。

 

〈ツー! セイバーストライク!〉

「おらぁッ!」

「させるかッ!」

〈ディフェンド、プリーズ〉

 

 それをガルドが受け止める。ガルドはマリア達とハンスの間に入り、障壁を張ってハンスの攻撃を受け止めた。

 セイバーストライクは指輪交換の手間が必要ない手頃に放てる強力な技だが、その威力をダイスの出目に依存すると言う弱点がある。最大威力を出せるのが6の目が出た時で、そこから段々と威力が下がっていく。ハンスは想い出の焼却により魔力を底上げしているのでその分威力にブーストが掛かっているが、それでも出目が2ともなれば威力の低下は否めず結果放たれた2体の小さめのバッファローはガルドの障壁により受け止められてしまった。

 

「チッ!? 邪魔すんなッ!!」

「そうはいかないな。世界の分解なんて、させる訳にはいかない。お前達は、俺達が止めてやる!」

 

 高らかに宣言すると、ガルドは新たな指輪を取り出した。それは彼の修行の成果。

 

 それは一見奇妙な指輪であった。指輪の装飾は菱形をしているのだが、中央から前後に色が白と黒で分かれている。

 ガルドはその修行の成果を見せる為、ハンドオーサーの前に指輪を着け変えた左手を翳した。

 

ミキシング、プリーズ。ホワイトアンドブラック!〉

 

 白い方が前を向いた状態で指輪を翳すと、キャスターの姿も白を基調とした姿に変化した。スーツが白で、一部の鎧だけが黒と言うモノクロな姿。仮面の宝石部分も白くなり、不思議な煌めきを放っている。

 

 これがキャスターの新たな姿、その名もコスモスタイル。ガルドは新たな力を手にし、その力をハンスに見せつける。

 

「行くぞッ!」

「ハッ、お前程度に俺がやられるかッ!」

 

 これまでの戦闘で、ハンスの戦闘力がガルドを上回っている事は彼自身理解していた。今更多少力を手にした程度で、自分が後れを取る筈ないとハンスは確信しバッファマントの恩恵である膂力によるタックルをお見舞いする。

 

 それに対し、ガルドは受け止める構えを取った。それも武器であるガンランスは使わず、床に突き刺し空いた両手で受け止める構えだ。確かにキャスターはウィザードに比べてパワーに優れているが、それでも比較的程度のレベルである。本気でパワーを強化し更にブーストまで掛かっているバッファマント装着時のビースト相手では分が悪いと言わざるを得ない。

 

 それも理解できないほど馬鹿なのかと、ハンスはそのまま構わずキャスターに突撃した。

 

 もしこの時、ハンスにまだ幾分が猶予があれば、彼の次の行動はまた違っていたかもしれない。彼は自分のタイムリミットが近い事を察し、行動を焦ってしまったのだ。

 

 その焦りが、結果となって返ってくる。

 即ち、ガルドにタックルを受け止められるという結果でだ。

 

「なッ!?」

 

 あり得ないとハンスは驚愕に目を見開く。バッファマントはタックルもそうだし、地面を叩けば大地を揺らし周囲の敵を衝撃で地面から浮き上がらせることもできるほどのパワーがあった。そのパワーを一点に集めたタックルが、素手で受け止められた事が信じられない。

 

 何が起こっているのかとハンスがガルドを注視すれば、彼の手に奇妙な魔力が集まっているのが見えた。赤、青、緑、黄と色とりどりの魔力がガルドの両腕に集束している。

 

「これは、魔力が集まって……ハッ!」

 

 ガルドが変身するキャスターの最大の能力は、スタイルチェンジ無しで全ての属性の能力を最大限発揮できることにあった。それによりウィザードに比べれば遥かに臨機応変に様々な敵に対応する事が出来ていた。

 だがその一方、伸びしろと言う点で言えばキャスターは劣っていると言わざるを得ない。一芸に特化している訳ではないので、満遍なく能力が上回っている敵が現れた時にどうしても自力で劣ってしまう。キャスターと同様、ベースはそのままに様々な能力を付与して自身を強化するタイプで地力が上回っているビーストは正に彼が苦手とする相手であった。

 

 

 そんな相手が出た時の為、ウィズが考えたキャスターの強化案がこれだ。このコスモスタイルは、キャスターが使える4属性全ての能力を融合させた戦いが出来るスタイルだった。

 4つの属性を一つに合わせ、キャスター自身を大幅に強化する。それがこのスタイルの特性だ。

 

「今度はこっちの番だ……ハッ!」

「ぐぁっ?!」

 

 ハンスを押し退け、バランスを崩させたところで蹴りを放つ。強烈な一撃がハンスを大きく吹き飛ばし壁に叩き付けた。

 

「がは、ぐぅ……!?」

「おぉっ!」

「くっ!?」

 

 壁に叩き付けられ呻くハンスだったが、顔を上げれば槍を構えたガルドが突撃してくる。ハンスは咄嗟に剣を振るい槍を弾くと、一旦ガルドから距離を取り体勢を立て直した。

 そして指輪をカメレオンに交換する。仲間が居る状態ならともかく、1人しかいない彼などカメレオンマントの透明化による奇襲戦法で圧倒出来る。

 

〈カメレオン! ゴーッ! カカッ、カッカカッ、カメレオー!〉

 

 カメレオンマントを装着し、早速姿を消すハンス。彼が姿を消したのを見てガルドは周囲を警戒するが、目に見えない相手を警戒するのはとても難しい。案の定あっさりと背後を取られ、奇襲の斬撃を喰らい前のめりに倒れる。

 

「がっ!? くぅっ!? ぐっ!?」

 

 その後も次々と一方的にハンスからの攻撃を喰らう。姿が見えない故に警戒のしようがない死角からの攻撃に苦しめられるガルドだったが、それも長くは続かない。

 修行の成果はコスモスタイルだけではなかったからだ。

 

「次はこいつだ」

 

 ガルドは左手の指輪に手を掛けると、装飾部分を回転させて前後を入れ替えた。そしてその状態で左手をハンドオーサーの前に翳す。

 

〈ターンセット、プリーズ〉

 

 ハンドオーサーに左手を翳すと、ガルドの体が光りキャスターの色が白黒反転する。今度は黒を基調に白い鎧、黒い仮面の姿となった。

 

 キャスターの色が変化した事に、ハンスは今度は何が来るのかと警戒する。あれが張ったりではない事位は流石に分かるくらいには冷静さを持っていた。次は何をするつもりなのかと身構える。

 

 それは悪手だった。この時、彼は迷わずガルドに攻撃を仕掛けるべきだったのだ。

 

「ハァァァァァッ!」

 

 徐にガルドが全身に力を入れると、彼の体から白と黒の波動の様な物が放たれ周囲に破壊をもたらした。容赦の無い全包囲攻撃は姿を消したハンスにも影響し、衝撃波により吹き飛ばされた。

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

「そこかッ!」

 

 衝撃波を喰らい吹き飛ばされ、同時に透明化も解除される。そうして姿を露わにしたハンスに向け、ガルドは槍を振るった。すると刃から黒い魔力の刃が飛びハンスを切り裂く。

 

「ぐはぁっ?! こ、これは……!?」

 

 これがキャスターのもう一つの新たな力、ケイオススタイルだった。コスモスタイルは魔力の集束により自身を強化するスタイルなのに対し、こちらは逆に魔力を放出する事で攻撃力を底上げしたスタイルであった。4つの属性の魔力を一斉に放出する事で、敵を近付けずに攻撃する。それがこのスタイルのキャスターの能力だ。

 

 その後もガルドは、ガンモードにしたガンランスでハンスを一方的に攻撃した。放たれる砲撃は4つの属性を併せ持つ強力な一撃、それが何発も飛んでくるのだから堪ったものではない。

 ハンスは必死に回避と防御をするが、一撃が強烈な上に何発も飛んでくるので対応が間に合わず遂に攻撃をまともに喰らってしまった。

 

「ぐあ、がぁぁっ!? く、くそ……この俺が、こんな奴に……!?」

「こいつで、終わりだ!」

〈チョーイイネ! キックストライク、サイコー!〉

 

 槍を手放し発動したストライクキャスター。魔力を周囲に放出しながらの必殺技は、ハンスから逃げ場を奪い攻撃を確実に届かせる。

 

「クソがぁぁぁぁッ!!」

〈ゴー! キックストライク!〉

 

 こちらもストライクビーストで対抗するが、4つの属性の魔力を同時に扱う今のキャスターには威力が及ばない。

 

 ぶつかり合った両者の一撃は、一瞬の拮抗の後ガルドの方に軍配が上がりハンスは打ち破られた。

 

「がぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 ガルドに蹴り飛ばされ、ハンスは壁を突き破ってシャトーの外へと落ちていく。

 

 遠くなっていくハンスの叫び声に、ガルドは己の勝利を確信し大きく溜め息を吐くのだった。




という訳で第142話でした。

今回はキャスターの強化形態のお披露目です。キャスターはどういう方向で強化しようか迷ったのですが、シンプルに4属性を同時使用して自身を強化する方向に落ち着きました。ただそれだけだと味気ないので、強化の方向を集束と放出で分ける形になりました。コスモスタイルでは肉体の強化、ケイオスタイルは魔力の強化と言った具合です。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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