魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

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どうも、黒井です。

今回はみんな大好き、そして今翼共々性格の違うanotherの登場により話題沸騰中のクリスが登場します。

*2020.3.23:諸事情により、この話で登場するメイジのメインカラーを青から白に変更しました。


第17話:月下の遭遇

 とある湖畔の屋敷、その中の一室に3人の人影があった。

 

 1人は女性、抜群のプロポーションを羽織った白衣だけで隠した長い金髪の女性だ。白衣とストッキングしか身に付けていないので目のやり場に非常に困る。

 

 その被害を最も受けているのは、この場で唯一の男性でもある少年だった。首にスカーフを巻いた少年と青年の中間と言った感じの彼は、目の前に立つ女性の目のやり場に困る恰好を前にして居心地悪そうに顔を逸らしている。

 

 残る1人は少女だ。こちらは長い銀髪を頭の後ろでツインテールにしているが、こちらもこちらで発育は良い。目の前の女性には負けているが、同年代では並ぶ者は少ないだろう。

 その少女は、居心地悪そうにしている少年に何とも言えぬ目を向け、次に女性に少し鋭い視線を向ける。

 

 少女からの視線を意にも介さず、女性は薄く笑みを浮かべながら2枚の写真を手に口を開いた。

 

「いい事? さっきも言った通り、最優先目標はこの子……立花 響よ。で、その次が──」

「明星 颯人、赤い魔法使いだろ? もう何度も言われなくたって覚えたっつうの」

 

 女性の言葉に食い気味に少女が答え、少年がそれに同意するように頷く。少女からの返答に、しかし女性は気を悪くした様子もなく頷くとその場を離れていった。

 

「分かっているならばいいわ。その代わり、しっかりとやりなさい。失敗したらお仕置きだからね?」

 

 そう言って立ち去る女性の後姿を見送る2人。部屋から女性が出ていき、少し経ったところで少女が苛立ったように口を開いた。

 

「けっ! 信用してねぇな、あたしらの事。見てろよフィーネ、あたしと(とおる)の前に敵は居ねえんだ。行こうぜ」

 

 少女は女性──フィーネの出ていった扉に向けて吐き捨て、透と呼ばれた少年を伴って別の扉から出ていった。

 

 その少年の両手には、妙に装飾の大きな指輪が嵌められ、少女の首には飾り気のない赤い結晶の様なものが付いたペンダントが掛けられていた。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 その日夕方から夜半に掛けて、突如街に大量のノイズが出現した。出現場所は分散しており、一か所ずつ対処していてはとてもではないが間に合わない。

 

 止む無く颯人と奏、翼はそれぞれ持ち場を決めて分散してノイズに対処していた。

 

 なお今回、響は戦闘に参加していない。理由は、親友である小日向 未来と今夜見る事が出来るとされている流星群を見させる為である。彼女はこの日の為に課題を頑張って終え、約束を果たせることを喜んでいた。

 

 そんな時に入ったノイズ大量出現の報。

 

 当初は響も掃討戦に参加させるつもりであったが、前々から親友と流星群を見る約束をしている事を聞かされていた奏はそれに待ったをかけた。

 響の日々の頑張りを知っている翼もそれに同調し、さらに颯人が現在の戦力なら響が抜けた程度で後れは取らないと説いたのだ。

 

 結果、今回の戦闘では響の参加は見送られることとなりノイズは颯人と奏、翼の3人で相手をする事となったのである。

 

 なったのだが──────

 

「ぬあぁぁぁぁっ!? 流石に数が多すぎるッ!?」

 

 この日だけでもう二桁は軽く超えているノイズ撃破スコアに、流石の颯人も悲鳴に近い声を上げた。

 

 通信によれば、奏と翼の方もかなりの数のノイズに遭遇しており合流することは出来ないそうだ。

 

 その間にも颯人は向かい来るノイズをガンモードのウィザーソードガンで撃ち抜いていく。

 しかしやはり数が多く、目の前には道路を埋め尽くさんばかりに大量のノイズが蔓延っていた。

 

 だがよく見てみると、目に見える範囲で空を飛ぶノイズは確認できない。先程までは居たのだが、地上のノイズを始末している時に上から攻撃されると面倒臭いので先にハリケーンスタイルになって倒しておいたのだ。

 さらに言えば大型のノイズも見当たらない。

 

 とくれば…………やりようはある。

 

「戦列歩兵ってか」

〈コピー、プリーズ〉

「「もういっちょ」」

〈〈コピー、プリーズ〉〉

「「「「更に!」」」」

〈〈〈〈コピー、プリーズ〉〉〉〉

 

 コピーを繰り返し、総勢8人の颯人が道路に横一文字に並んだ。その状態で8人の颯人が同時にガンモードのウィザーソードガンを構え、一糸乱れぬ動きで引き金を引く。

 

 その昔、欧州にてマスケット銃が兵士の装備として採用された時、当時の兵士達は互いに有視界距離で横一文字に並び号令を合図に撃ち合いを繰り広げていた。

 

 今颯人が行っているのはその当時の戦列歩兵による一斉射撃と非常によく似ていたが、大きく異なるのは当時のマスケット銃が一発撃ったら次弾装填に時間が掛かっていたのに対して颯人のそれは彼の魔力が持続する限り何発でも撃てる。

 

 しかもノイズには遠距離攻撃する手段が基本的に存在しない。一部のノイズはあるにはあるが、銃撃戦が繰り広げられるようなノイズは存在しなかった。

 

 物の数分と経たずに道路に蔓延っていたノイズは一掃された。苦戦したと言うほどの事はなかったが、これほどの数を相手にするとやはり魔力の消費が少々激しい。

 

 できればそろそろ終わりにしたいところなのだが…………。

 

「奏達の方はどうなってるかねぇ?」

『颯人君、聞こえますか?』

「おっ! 友里さんかい? ちょうど良かった、奏達の方はどうなってるんで?」

『それが、その…………響ちゃんが、翼さんと合流して』

「えぇっ!? 響ちゃん来ちゃったの?」

 

 何でも、やはり自分1人が戦いから離れて颯人達に全て押し付けるのは申し訳ないからと、流星群を見終わったところで急いで戦闘に参加してきたらしい。

 一応約束は守ったようだが、律儀と言うかなんと言うかである。

 

「しゃーねーなぁ、それで? 状況はどんな感じです?」

『現在ノイズ自体は殆ど掃討完了しているわ。奏ちゃんの方がまだ少し残ってるみたいだけど』

「んじゃ俺、奏の方に行くんでナビ頼みます」

『了解よ。そのまま西に向かって』

「了解っと!」

 

 颯人はあおいの指示の下、奏が担当している地点に向けて愛車である専用バイクのマシンウィンガーを走らせるのだった。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 一方、翼と合流した響は2人で協力してノイズを掃討し、気付けば街中にある公園に辿り着いていた。

 

 既にノイズは見える範囲で全て討伐し、辺りは戦闘中とは打って変わって静かになっていた。

 

「ふぃ~……」

「お疲れ様、立花。それと、ごめんなさい。折角友達との約束があったのに」

「あ、いえ! 流れ星はちゃんと見られましたから、大丈夫ですよ!」

「そう? それならいいのだけれど。それより…………まだ?」

「う…………はい」

 

 顔を覗き込むようにしながらの翼からの問い掛けに、響は表情に影を落としながら頷いた。彼女が暗くなった理由は、未だ出せずにいるアームドギアにあった。

 もう何度も訓練し、奏や翼に何度も話を聞いたりしているのに響は未だにアームドギアが出せないのだ。

 

 このままでは自分が足を引っ張るだけと分かってはいるのに、どうする事も出来ない。それが響にはどうしても情けなく、知らず知らずの内に己を追い込んでしまっていた。

 

 そんな響に対し、翼は先輩として何と声を掛けていいか分からずにいた。

 

 彼女と奏は特に難しい事を考えずに普通にアームドギアが扱えていたので、アドバイスできることがなかったのだ。

 

 それでも先輩として、何か言うべきだという事は分かっている。

 だが何を言うべきか分からず、先輩として不甲斐なさを感じてこちらも気分を落ち込ませていた。

 

「何で、ですかね? 私だって、守りたいって気持ちは本物の筈なんです。奏さんみたいにやれたらって。なのに…………」

「それは…………」

 

 何とも気まずい雰囲気が2人の間に流れ始めた…………その時である。

 

「何だい何だい、折角来たってのに随分と暗~い雰囲気してんじゃねえかよ?」

「「ッ!?」」

 

 突如2人に掛けられた少女の声。聞きなれない声に揃って身構えて声のした方を見ると、公園の暗がりから案の定1人の少女が姿を現した。

 

 全身を細かい鱗上のパーツで構成された鎧。頭部はバイザーで覆われ、両肩からは無数の紫色の棘が並んでいる。

 

 その姿が月明かりに照らされ明らかになった瞬間、翼が驚愕の声を上げた。

 

「まさか、それは、ネフシュタンの鎧だとッ!?」

「ん~? あんたこの鎧知ってんだ?」

「当たり前だッ! 2年前、私達の不始末と不手際で失われたもの、失われた命ッ!? 忘れる訳がないッ!?」

「それで? どうするつもりだ?」

 

 翼の言葉に、少女は両肩から伸びる鎖状の鞭を手に身構える。

 

 その様子を見て、翼もまたアームドギアを構えた。

 

「知れた事ッ! その鎧、此処で返してもらうッ!!」

 

 互いに戦闘体勢に移行する翼と少女。だが響はそんな2人の間に割って入り、戦いを止めようとした。

 

「ま、待ってください翼さんッ!? 相手は同じ人間、ノイズじゃないんですよッ!? それなのに──」

 

「「戦場で何を馬鹿なことをッ!!」」

 

 曲がりなりにも人間同士で争おうとした2人を止めようとした響だったが、結果2人に同時に叱られることとなってしまった。左右からステレオで怒鳴られ、思わず首を竦める響。

 

 一方、一言一句同じ言葉を同時に口にした2人は、互いに妙なシンパシーを感じていた。

 

「意外ね。あなたとは気が合いそう」

「なら、仲良くじゃれ合うかい?」

「あぁ……参るッ!!」

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 翼がネフシュタンの鎧の少女と戦闘に突入したのを、本部の司令室で弦十郎が苦虫を噛み潰したような顔でモニター越しに見ていた。

 

「まさか、こんなところであれが出てくるとはな」

「2年前、あのライブ会場を利用した実験の際に何者かに強奪されたネフシュタンの鎧。懸命な捜索にも拘らず行方不明になっていた筈だけど、よりにもよってそれが敵として出てくるなんてね」

 

 モニターの向こうでは、翼とネフシュタンの少女が激しく戦っている。戦況は一進一退と言いたいところだが…………正直に言って、翼が押され気味と言うのが現状だ。

 共に戦っていた筈の響は、少女が持っていた杖から召喚されたダチョウ型ノイズの粘液によって拘束されてしまっている。

 

 こうなると頼みの綱は、未だ合流していない颯人と奏になるのだが…………。

 

「肝心の2人も、ただ事ではないようだな」

 

 険しい表情で弦十郎が呟く。彼の視線の先では、別のモニターに映った颯人と奏の姿があった。

 

 その2人の前には、何処となくウィザードと似た姿の戦士が立ち塞がるように佇んでいた。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 奏と合流した颯人は、彼女が手を焼いていたブドウの様なノイズを合流して早々に仕留めていた。それが彼女の担当していた地点での最後のノイズであり、周囲にノイズの姿が無くなったことで2人は翼と響に合流しようとしていた。

 

 そんな時、そいつは現れた。翼達の元へ向かう為、マシンウィンガーに颯人が跨り奏がそれにタンデムしたところで、颯人に攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「くっ!?」

 

 咄嗟に奏を抱えて愛車から飛び降りる颯人。

 

 突然の襲撃者から距離を取り、奏と共に身構える颯人はそこに居た相手に仮面の奥で驚愕に目を見開いた。

 

「なっ、メイジだぁっ!?」

「メイジ? それがあいつの名前か?」

 

 驚愕の声で彼が口走った名前に奏が確認を取るように訊ねると、彼は若干の修正を加えながら答えた。

 

「あぁ、正確にはあいつ自身じゃなくあの格好をした奴がメイジだ。俺のこの姿がウィザードって言うみたいにな?」

「な~るほど。で? あいつは颯人の知り合いか?」

「知り合いっつうか……ま、敵だな。そこら辺詳しい事はまた後で説明してやるよ」

 

 颯人が奏に簡単に説明している前でその襲撃者――白い宝石のような仮面の魔法使い・メイジは、右手に細身、左手に幅広の剣を持って構えを取った。どうやらやる気満々らしい。

 

 だがその割には殺意の様なものが感じられない。どちらかと言うと、闘志とかそんな感じだ。

 その事が颯人に違和感を抱かせる。彼が今まで戦ってきたメイジとは、何かが違っていた。

 

 その事に疑問を抱きつつ奏と共にメイジと対峙していると、本部から緊急の通信が入った。

 

『奏、颯人君! 急いで指定した場所の公園に向かってくれ、翼と響君が苦戦している!?』

「何だって!? 翼が、ノイズ相手に!?」

『いや違う。敵はネフシュタンの鎧を纏った少女だ!?』

「なっ!?」

 

 奏と弦十郎の会話は当然颯人にも聞こえている。

 彼はそのネフシュタンの鎧と言うものが何なのか知らなかったので奏が驚愕する理由も分からなかったが、少なくとも翼と響が危機的状況にある事だけは分かった。

 

 となると、今すぐ指定された場所に向かうのが最適なのだろうが、どうにも目の前にいるメイジはそれを許してくれなさそうだった。

 

 案の定奏の様子から何かを察したのか、通信が終わる前に奴は攻撃を仕掛けてきた。

 

「危ねぇっ!?」

 

 思いの外素早い動きに、一瞬反応が遅れつつも颯人は振るわれた2本の剣をウィザーソードガンで受け止めた。

 

 そのまま剣戟の応酬に移行するが、二刀流相手に剣一本では少々分が悪い。素早く振るわれる2つの刃を前に、颯人は防戦一方となっていた。

 縦、横、斜め、更には一方をフェイントにしての時間差攻撃など素早く多彩な攻撃にウィザードは仮面の奥で冷や汗を流した。

 

「くっ!? やっぱ白頭は違うな、流石は幹部候補ってかッ!?」

「颯人ッ!!」

『どうしたッ!?』

「旦那、悪いがこっちも今取り込み中だッ! 出来るだけ急ぐけど直ぐには行けそうにないッ!?」

 

 苦戦する颯人を見て、奏は早々に通信を切り上げるとアームドギアを構えて助太刀に入った。彼女は颯人以上に得物が大きい為彼以上にこの相手は不向きなのだが、そこは2人と言う数の利を生かして対抗する。

 

「合わせろ颯人ッ!」

「あぁっ!」

 

 2人は息の合ったコンビネーションでメイジの二刀流に対抗していく。

 

 奏のアームドギアは大型の為取り回しに難があるが、その分攻撃力が高い。

 

 対する颯人は彼女に比べると威力は劣るが取り回しには優れている。

 

 互いの得意不得意を上手く組み合わせ、入れ代わり立ち代わり攻撃を仕掛け今度は逆にメイジを押し返した。

 

 颯人が前面に出てメイジの注意を引き、自分への警戒が疎かになったタイミングを見計らい奏が大振りの一撃を放つ。

 それを肌で感じた颯人は咄嗟に身を屈めると、メイジは回避不能な距離にまで迫った奏の一撃を辛うじて防御するが大きく吹き飛ばされてしまった。

 

 呻き声一つ上げずビルの壁に叩き付けられたメイジ。だが見た目以上にタフなのか直ぐに体勢を立て直すと再び両手の剣を構えて2人と戦う意思を見せた。

 

 正直な話、このまま戦っても勝てないことはないだろう。奏とのコンビネーションを前に、このメイジは完全に押されていた。勝てる可能性は高い。

 

 だが、翼達を差し置いてこの相手にかまけていいかと言われれば話は別だ。聞けば翼達は苦戦を強いられているとのこと。

 ここは早々にこいつを何とかして翼達との合流を目指さなければならない。

 

 奏がその事に内心で焦りを見せ始めると、不意に颯人が話し掛けてきた。

 

「なぁ奏。少しの間でいいからあいつの注意を引いてくれるか?」

「少し? それくらいなら何とかなるだろうけど……」

 

 あのメイジの行動を見る限り、完全に2人の足止めが目的でそれ以外に何かを仕出かす気が感じられない。

 ならばここは一瞬の隙を見て翼達と合流するのが最善手と考えウィザードは簡単に作戦を奏に説明した。

 

 奏はその作戦を聞くと、それが一番だと了解し早速行動に移した。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 颯人の援護射撃を受けながらメイジに突撃する奏。先程とは異なる行動に、しかし相手は冷静に対応した。

 

〈バリアー、ナーウ〉

 

 白い魔法陣からなる障壁で颯人の銃弾を防ぎ奏を迎え打つ体勢を整え、彼女が攻撃圏内に入ると即座に障壁を解除し攻撃に移った。

 

 すると突然颯人からの援護射撃が無くなった。恐らく誤射を恐れて撃つのを止めたのだろう、メイジはそう考え奏に対し可能な限り接近戦を仕掛け続けた。

 

 これに対し奏はひたすら守りに徹する。

 

 縦横無尽に振るわれる二本の剣を、アームドギアの長さを生かして防ぎ続ける。

 攻めに回れない事にもどかしさを感じつつ懸命に待ち続けた結果、遂に念願の好機が訪れた。

 

 奏を攻めているメイジ、その鎧に無数の銃弾が突き刺さったのだ。

 

「ッ!?!?」

 

 突如として奏を避ける様にした軌道を描いてメイジに殺到する銃弾。その攻撃に面食らいメイジは動きを止めてしまう。

 

 その瞬間を見逃さず奏はアームドギアを地面に突き立て、穂先に溜めたエネルギーを一気にメイジに向けて開放しながら振り抜いた。

 

「喰らいなッ!!」

SATURN∞BREAK

 

 一気に解放されたエネルギーは地面を砕きながらメイジに向かっていく。直前の颯人の銃撃で怯んでいたメイジはこれを回避することが出来ず、手にした武器を盾に防ぐしかできなかった。

 

 奏の攻撃が直撃し、大きく吹き飛ばされるメイジ。

 

 その隙に颯人は奏を呼び寄せる。

 

「奏、今の内だ。来いッ!」

「分かった!」

 

 跳躍して一気に颯人の隣に立った奏。

 彼は彼女が近付くと迷わず彼女の腰を掴んで引き寄せながらテレポート・ウィザードリングを装着した右手をハンドオーサーに翳した。

 

 その際、当然ながら突然の行動に顔を赤くした奏の抗議が飛んだが状況が状況だった為、彼はそれを無視した。

 

「お、おいっ!?」

「四の五の抜かすな、これが一番確実なんだよ! 置いてきぼり喰らいたくなかったら大人しくしてろ!」

「ッ!? お、おぅ……」

〈テレポート、プリーズ〉

 

 奏を抱き寄せたまま、2人は転移魔法でその場から一瞬で翼達が苦戦している公園へ転移する。

 

 後には奏が最後に放った攻撃により破壊された道路と、それで吹き飛ばされた状態から体勢を立て直したメイジだけが残されていた。

 

 メイジは2人が転移すると、一瞬そこを見ていたがすぐにある方向に目を向け右手の指輪を別の物に変えハンドオーサーに翳した。

 

〈コネクト、ナーウ〉

 

 詠唱後、すぐ近くに現れた魔法陣に両手の武器を入れるとそれと交換で一本の箒の様な槍を引っ張り出した。

 

 それを持って駆け出し飛び乗ると、メイジと槍――ライドスクレイパー――が魔法陣に包まれ槍の形状が僅かに変化。柄尻にあるブラシ状の部位が肥大化し、穂先はハンドル、棒部分には簡易的なシートが装着された。

 

 メイジがそのまま跨ると、形状が変化したライドスクレイパーは浮遊し何処かへと飛び去って行く。

 

 メイジが飛び去った事でつい先程まで激しい戦闘が行われていた街中は、それが嘘だったかのような静寂に包まれた。後に残されたのは、戦闘があったことを知らせる破壊痕だけであった。




と言う訳で第17話でした。

メイジと行動を共にしているクリスですが、一期では特にクリスを巡るストーリーが奏に次いで大きく弄られる予定です。どんな変化があるかは今後のストーリーをお楽しみに。

執筆の糧となりますので、感想その他、描写や展開に対する指摘も随時募集していますのでよろしくお願いします。

それでは。
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