魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

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第256話:足手纏いに非ず

 月遺跡の管制室にて、地上との交信と遺跡内部の防衛設備を解除したガルド達。しかし安心したのも束の間、彼らの前にジェネシスの魔法使いが現れた。しかもその魔法使いは、特にガルドにとっては忌まわしい黒歴史と言っても過言ではないソーサラーの姿をしていたのだ。嘗ての、ワイズマンの傀儡としてセレナに正体も明かす事が出来ず言われるがままに戦う狗でしかなかった頃の記憶が蘇り、ガルドは屈辱と嫌悪に顔を顰めながらセレナとマリアを守る様にソーサラーの前に立ちはだかる。

 

「貴様、ジェネシスの魔法使いだなッ!」

「ご名答。私の名前はドレイク……魔法使いキャスターよ、貴様を始末しこの遺跡も破壊させてもらうッ!」

 

 言うが早いかドレイクと名乗った魔法使いは、手にしたハルバードを振り下ろしてきた。ガルドはそれをマイティガンランスで防ぎ、それに合わせてマリアがソーサラーの懐に入り込み蹴りを放った。

 

「フンッ!」

「むっ……」

 

 生身の人間の蹴りなど、鎧を纏った魔法使いにとっては蚊に刺された程度のダメージにすらならない。しかしその瞬間だけ、相手は僅かにだが隙を見せる。その隙さえあれば彼女らには十分であった。

 

 そう、セレナがギアを纏うだけの時間があれば…………

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

 一足先にアガートラームをセレナが纏う。ドレイクがセレナの行動に気付いた時には、既に彼女は左腕のガントレットから無数のビームダガーを射出しそれを遠隔操作して攻撃を仕掛けていた。

 

「行って!」

 

 ビームダガー自体がまるで意志を持ったかのように四方八方からドレイクに襲い掛かる。人間が手に持って扱うのとは全く違う動きで迫る無数の刃に、ドレイクも後退を余儀なくされていた。マントとハルバードで攻撃を防ぎつつ、セレナへの反撃の機会を伺っているようだがそれはガルドとマリアが許さない。

 

「変身ッ!」

マイティ、プリーズ。ファイヤーブリザードサンダーグラビティマイティスペル!

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

 マリアが作り出した隙をセレナが繋いでくれた事で出来た隙間に、ガルドとマリアが戦闘態勢を整える。変身したガルドは先程のお返しとばかりに飛び掛かりながらガンランスを振り下ろし、ドレイクがそれを受け止めるとマリアが再び懐に潜り込んで今度は抜刀した短剣で斬りかかった。

 

「ハッ!」

「二度も同じ手が通じるとでもッ!」

 

 しかしマリアの動きはドレイクに読まれていた。この時点でドレイクは、ガルドの役割が半分囮であると同時に盾として攻撃を引き受け隙を作らせるものであると言う事を見抜いていた。実際、この場に居る者の中でパワーと防御に優れているのはガルドが変身するキャスターが随一なのだ。その特性を利用するのであれば、所謂タンク役を彼が買って出るのは当然の事であった。

 

 しかし役割がバレてしまえばそれも脆い。ガルドの行動の後にマリアが来ると言う事は分かってしまったのだ。来ると分かっている攻撃であり、それが絶望的な程の実力差がある訳でもないのであれば対処は容易であった。

 

 ドレイクはガルドの一撃を軸をズラす事で受け流すと、返す刃の如く振るわれたハルバードの石突による刺突をマリアの腹に叩き込んだ。

 

「ぐふっ!?」

「姉さんッ!?」

 

 自身の突撃の勢いを逆に利用され、体をくの字に曲げながら吹き飛ばされるマリア。一瞬石突が腹を貫通したのではないかと思う程の激痛に、吐き気と息苦しさに咳き込み蹲る。

 

「がはっ!? げほげほっ……ぐ、ぅ…………ぁっ!」

 

 強制的に肺から空気を吐き出させられ、視界が歪む中マリアは何とか顔を上げた。そこで彼女が見たのは、今正に自分に向け処刑人の様にハルバードを振り下ろそうとしているドレイクの姿であった。

 

「死ねぃッ!」

「させませんっ!」

 

 マリアの首を切り落とそうと振り下ろされたハルバードの一撃。しかしセレナのビームダガーが張ったバリアがそれを防いだ。3本のビームダガーによって張られたバリアとハルバードがぶつかり合い、激しい火花を上げながらも刃がそれ以上マリアに迫ることは無かった。

 

 それでもその一撃を防ぐことはセレナにとっても大きな負担となったのか、攻撃を防いでいる間彼女は奥歯を噛みしめ額から汗を流していた。

 

「う、ぐ……くぅ……ぅ……!」

「苦しそうじゃないか。何時まで私の一撃を防ぎ続けていられるかなッ!」

 

 まだマリアは体勢を立て直せていない。故にセレナはバリアを張り続けなければならず、しかし元々後遺症を抱えている彼女には長時間の力の行使は苦痛でしかなかった。直接自分が攻撃に晒されている訳ではないのにも拘らず、セレナは呼吸を荒くし膝がガクガクと震え始めた。

 このままでは遠からずバリアが破られ、凶刃がマリアの首を切り落としてしまう。そうはさせじと、ガルドがガンランスを手に再びドレイクに突撃した。

 

「おぉぉっ!」

「チッ」

 

 流石にガルドの攻撃を無視する事は出来なかったのか、ドレイクはマリアへの攻撃を中断しガルドへの対処に向かう。マリアに迫っていた刃が外された事でバリアを張る必要もなくなったセレナが力を抜くと、バリアが消えビームダガーの柄だけが落下した。同時に彼女自身もその場に崩れ落ちる様に膝をつき、青白くなった顔で胸元を押さえ呼吸を整えようとしていた。

 

「ぅ、ぁ……はぁ、はぁ、はぁ…………!?」

「セレナッ!? セレナ、しっかり!」

 

 辛そうにしているセレナにマリアが寄り添う。その間もガルドは1人でドレイクの相手をしていたが、戦況は徐々にドレイク側に傾いていっていた。

 

「そらそら、どうしました? その程度ですか? ワイズマン様に楯突いたと言う割には、大した事ありませんねッ!」

「くっ!?」

 

 魔法も無しに、ただ純粋に振り回されるハルバードを防ぐので精一杯なガルド。本当ならもっと大技を使いたかったのだが、場所が場所なので彼はそれを控えていた。

 ここはバラルの中枢。つまりここで下手に派手な戦いをして、制御システムに不具合を生じさせてはバラルの呪詛が解除されてしまいかねない。そうなれば世界はワイズマンの手により、全人類を用いての大規模なサバトが行われ超高純度の賢者の石を生み出す糧にされてしまう。それを防ぐ為には可能な限り大技を控えつつ、ドレイクを始末するか退けるしかない。

 

 ガルドに戦う上での制約がある事を理解しているドレイクはそこを突いた。彼はガルドとの戦闘の最中、頻繁に攻撃の対象をエンキの上に浮いている制御中枢に変えガルドの行動を妨害したのである。

 

「そこッ!」

〈アロー、ナーウ〉

「く、させるかッ!」

〈ディフェンド、プリーズ〉

 

 再びドレイクが露骨に制御中枢を狙う攻撃をしてきた。直前まで反撃に転じようとしていたガルドは、バラルの呪詛を守る為に行動を中断し防御に専念せざるを得なくなってしまう。

 

 思うように戦えていないガルドの姿に、マリアはセレナを思いやりたいと言う気持ちを抑えつつ彼の援護に向かおうとした。

 

「セレナ、ゴメンね。暫く待ってて。直ぐに終わらせて来るからッ!」

「ん……うん。大丈夫……姉さん、ガルド君をお願いね?」

「えぇ、任せなさい。あなたの大切なフィアンセですもの。私が面倒を見てあげるから……!」

 

 そう言って立ち上がると、マリアの体を金色の光が包み込んだ。突然周囲に広がる眩い光に、ガルドとドレイクも戦闘を中断し光の出所であるマリアを見る。

 

「な、何事だッ!」

「この光は、アマルガムかッ!」

 

 何が何だか分からないと困惑するドレイクだったが、ガルドの方はこれが何であるかを理解していた。イグナイトに代わって実装されたシンフォギアの新たな決戦機能・アマルガム。金色のエネルギーで形成された蕾が開き、その手に愛する者を守る為敵対する者を薙ぎ払う力を取る。

 

「ハァァァァッ!」

 

 マリアのアマルガムのイマージュ形態は、左腕に装着されたドラゴンを模した腕。伸縮自在なそれをマリアが振るえば、ドラゴンの腕は意志を持っているかのようにうねりながらドレイクに迫っていく。

 

 敵を食い千切らんと顎を開いて迫るドラゴンの腕に、ドレイクもハルバードを薙ぎ払うように振るって対抗した。

 

「この程度でッ!」

 

 流石に全てのエネルギーを攻撃に費やしただけあり、マリアのアガートラームの一撃を完全に弾く事は出来なかった。ドレイクのハルバードとマリアのドラゴンがぶつかり合い、結果どちらも互いの攻撃の衝撃で吹き飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

「くっ、まだまだぁっ!」

 

 一度は攻撃を弾かれたマリアであったが、彼女は直ぐに攻撃を再開させる。一度引き戻したドラゴンの腕を再び伸ばして今度は鞭の様にしならせて叩きつけようとした。ドレイクはこれを弾こうとすればまた互いに弾かれ合って自分が痛い目に遭うだけだと学んだのか、今度は防ぐのではなく回避を選択してマリアの攻撃をやり過ごした。

 

 マリアがドラゴンの腕を振り回し、ドレイクがそれを回避しつつ時には防いでやり過ごす。その度に遺跡内部に衝撃が走り、このままだと制御中枢にも影響が出てしまいかねない。

 

 これ以上戦闘が長引くのはマズいと、ガルドも短期決戦を決めるべく切り札の指輪を取り出した。

 

「コイツで……!」

ミキシング、プリーズ。ホワイトアンドブラック!〉

 

 白を基調としたコスモスタイルのキャスターとなるガルド。コスモスタイルは己の魔力を全て収束させ爆発的な身体能力を発揮できるようになるスタイル。迂闊に周囲に被害を広げる訳にはいかない、この状況にはピッタリの姿である。本当はもっと早くにこの姿になっておきたかったのだが、ドレイクの攻撃が激しくその隙がなかなか無かったのだ。マリアがドレイクを釘付けにしてくれたからこそ、この姿になるだけの猶予を得る事が出来た。

 

 コスモスタイルとなったガルドはドレイクを退けるべくマリアに加勢する。先程の数倍から数十倍の膂力を持って放たれたガンランスの一撃が、マリアの攻撃から身を守る為にドレイクが張った障壁を一撃で粉砕する。

 

「何ぃッ!?」

「もらったぁっ!」

 

 先程までマリアの攻撃を防いでいたとはいえ、まさかガルド相手に障壁が破られるとは思っても居なかったのだろう。あまりの驚愕にドレイクが動きを止めていると、そこを狙ってガルドがガンランスを床に突き立て自身の体を振り回す様に蹴りを放った。突き立てた槍を軸に遠心力を利用して放たれた蹴りは、咄嗟にドレイクが掲げたハルバード事彼の体を蹴り飛ばし壁に叩き付ける。

 

「うぐぉっ!?」

「これはおまけよッ!」

「ごふっ!?」

 

 ガルドの蹴りにより壁に叩き付けられたところに、今度はマリアのドラゴンの腕による一撃が襲い掛かる。穿つ様に突っ込んできたドラゴンの腕を、ドレイクは防ぐ事も出来ず喰らい壁に押し込まれた。その衝撃で土煙が舞い上がり、束の間ドレイクの姿が掻き消えてしまう。

 

「やったかしら?」

「油断するな。奴も幹部なら、そう容易くは――」

 

 幹部であるなら、ファントムになるなりで反撃する事を止めないだろう。そう予想していたガルドであったが、その予想は半分は正しかった。ドレイクはまだ諦めてはいなかった。出し抜けに土埃を拭きと出す様に魔力を放出させた。

 予想外だったのは、奴が魔法で動けないセレナを自分の直ぐ傍に引き寄せていた事であった。

 

「う、あ……!?」

「「セレナッ!?」」

 

 恐らくはコネクトの魔法を使ったのだろう。ドレイクはセレナの髪を掴んで持ち上げ、露わになった首筋にハルバードの刃を押し付けていた。

 

「動くなッ! 少しでも動けば、この女の首を裂く」

「貴様……!?」

「セレナを、何て事……!」

「ガ、ガルド、君……姉さん……ご、ごめんなさい……」

 

 自分が2人の足手纏いになってしまった事に、セレナは体を苛む苦しさとは違う意味で表情を歪める。折角アリスの手も借りて再び戦えるようになり、ガルドやマリアを支える事が出来ると思っていたのに現実はこれだ。結局は愛する者達の足枷になってしまっている事に、不甲斐無さから涙が溢れてきそうになる。

 

「止めろ、セレナを放せッ!」

「放してほしければ、先ずはお前達が武装解除する事だ。そうすれば、この女も解放しようじゃないか」

「下衆め……!」

 

 あまりにも卑劣な行動に憤るガルドとマリアだったが、セレナを人質に取られてはどうしようもない。2人は手にしていた武器を手放し、変身も解除しようとした。

 

 しかしそこでガルドの目が、セレナの口元が僅かに動いているのを見た。言葉は発していないが、何かを口にしている。

 

「ん?」

「ガルド?」

「しっ……」

 

 ガルドが何かに気付いた事を察したマリアが小さく問い掛けるが、彼は仮面で顔が隠れているのをいいことにマリアを黙らせセレナの口元に注視した。ドレイクからは、ガルドが何とかしてセレナを取り返そうと策を巡らせている様にしか見えないだろう。

 

 一体セレナは何を伝えようとしているのか? ガルドが疑問に内心で首をかしげていると、ふと彼女の視線が彼女自身の手元に向けられている事に気付いた。その視線に従って彼女の手元を見れば、何かを手繰り寄せようとしているように動いている。

 

 その動きでガルドは全てを察した。彼はセレナの意図が伝わった事を示す様に小さく頷くと、マリアに小さな声でこれからの動きを伝える。

 

「マリア、よく聞け。これから――――」

 

「何をしている、早く武装を解除しろッ! それとも、この女の喉が切り裂かれてもいいのか?」

 

 武器を手放しただけでなかなか武装解除に応じようとしないガルドとマリアに、ドレイクが焦れた様に声を上げる。それを聞いてガルドは、両手を肩の高さまで上げながらゆっくりと近付いていった。

 

「そんなやり方で、俺達がはいそうですかと言う事を聞くとでも思ってたのか?」

「何?」

「悪いが俺も欲張りでね。バラルは解除させないし、セレナも無傷で返してもらう」

「今のお前にそれが出来るとでも?」

「誰が俺がやるって言った?」

 

 ガルドの言葉の意味が分からず、ドレイクは頭に疑問符を浮かべた。直後、まさかマリアが何かするつもりなのかとそちらに視線を向けた次の瞬間、ガルドが横に動くと同時に彼の背後から飛んできたビームダガーがセレナの髪を掴んでいるドレイクの手元を切りつけた。

 

「ぐっ!?」

「マリア、今だッ!」

「セレナァッ!」

 

 ドレイクが隙を見せた瞬間、ガルドは飛び掛かる様にしてハルバードを掴んで押さえ、その間にマリアは下ろしていたドラゴンの腕を伸ばしてセレナの体に巻き付けて自身の方へと引っ張った。折角の人質を奪い返されてなるものかとガルドを引き剥がそうとするドレイクであったが、コスモスタイルとなり全ての魔力を身体能力につぎ込んだ今の彼の力を振り払う事は出来ず、逆に振り回されて壁へと投げつけられてしまった。

 

「ちっ、させるかッ! クソ、放せッ!?」

「あぁ、お望み通り離してやる、よっと!」

「がっ!?」

 

 単純な膂力だけで比べればインフィニティースタイルのウィザードすら凌ぐ。そのパワーで思いっきり壁に叩き付けられれば、ソーサラーと言えども一溜りも無い。

 

 そして動きを止めてしまえばこちらのもの。ガルドは一旦距離を取ると、取り急ぎセレナに魔力を補充し負担を軽減させ自分達の背後を全力で守る様に伝えた。

 

〈プリーズ、プリーズ〉

「セレナ! 少し辛いだろうが、後ろの制御中枢を全力で守ってくれ! 大技でアイツを吹き飛ばす!」

「分かった、任せてッ!」

「ガルド、行くわよッ!」

「あぁっ!」

 

 魔力の補充を受けた事で体調が戻ったセレナが、無数のビームダガーを展開させて強固な障壁を張る。先程マリアを守る為に即席で張ったものとは比べ物にならない規模のバリアは、ちょっとやそっとの事では破れはしないだろう。

 

 そのバリアに背後を守られながら、ガルドはマリアと共にドレイクをこの場から排除すべく全力の攻撃を行った。

 

〈チョーイイネ! キックストライク、サイコー!〉

「たぁぁぁぁぁっ!」

「ハァァァァァッ!」

 

 ガルドが魔力を集中させた必殺の飛び蹴りストライクキャスターを放つ。迫る一撃にドレイクは障壁を張って対抗しようとしたが、そのガルドを後押しするようにマリアのドラゴンの腕から放たれた火炎が彼を包み蹴りの威力を上乗せした。

 

〈バリアー、ナーウ〉

「ぐ、お…………!? ぐぐ、ぐ……!」

 

 必死にガルドとマリアの攻撃を防ぐドレイクであったが、ここに来るまでの時点で消耗していた事に加えて一点集中に特化したコスモスタイルと攻撃に性能を極振りしたアガートラームの一撃はとてもではないが防げるものではなかった。抗うドレイクを嘲笑うかのように障壁に罅が入り、次の瞬間突き破ったガルドの蹴りがマリアのドラゴンの腕の炎と共にドレイクを蹴り飛ばした。

 

「オォォォォッ!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 強烈な蹴りは壁1枚を突き破るだけでは飽き足らず、遠く離れた遺跡の何処かまでドレイクの体を蹴り飛ばした。ガルド達からも見えない所まで蹴り飛ばされ、突き破った壁の向こうで爆発でも起きたのか振動と共に光が見える。

 

 直近の脅威が過ぎ去った事にガルドは安堵し、呼吸を整える様に大きく息を吐いた。そして背後を振り返れば、ドレイクが抗おうとして防いだ結果行き場を失ったエネルギーにより管制室内部も大きく被害を受けている光景を目にする。一瞬やり過ぎてしまったかと冷や汗を流したが、肝心の制御中枢周りはセレナによりしっかりと防護されていた為生命維持装置やバラルが解除される事は防げたようだ。その事にガルドは安堵し、マリアと共に支えてくれたセレナに駆け寄り今度は彼らが彼女を支えた。

 

「セレナ、大丈夫か?」

「うん、何とかね……」

「ありがとうセレナ。あなたのお陰よ」

「そんな、こっちこそ……」

 

 一時は人質にされてしまい、足を引っ張ってしまうかと思われたセレナだったが、結果として彼女も居なければドレイクを退ける事は出来なかっただろう。偏に彼女が最後まで諦めず、ガルド達を支えようとしたからこそ掴めた勝利であった。

 自分が足手纏いで終わらなかった事にセレナがホッと胸を撫で下ろしていると、先程の戦闘の音を聞きつけたのか切歌と調が管制室に飛び込み、続き響とクリス、透の3人がやって来た。

 

「ここが管制室デスかッ!」

「マリア、セレナ、大丈夫?」

「切歌、調! えぇ、こっちは大丈夫よ」

「何とか敵の幹部を今退けた所だ」

 

「あ、居たッ! クリスちゃん、透君! やっぱりここだった!」

「んなこた、さっき説明されてたんだから分かってるってのッ!」

「皆さん、大丈夫ですか? 何か凄い音が聞こえてきましたけど?」

「はい! 私も、ガルド君達もみんな無事です!」

 

 仲間と合流出来た事に一時安堵する響達であったが、この場に集まったのが全員ではない事にすぐ気付き不安の声を上げる。

 

「あ、あれ? 未来や奏さん達は?」

「その4人はまだだ。こっちに来ては居る筈なんだが……」

「エンキさん、残りの4人が今どうなっているかは分かりませんか?」

「……エンキ?」

 

 手っ取り早くこの遺跡のホストコンピューターとも言えるエンキに颯人達の所在を訊ねるセレナ。その際旧二課組が何処か聞いた事のある名前に首を傾げるが、彼らの反応を特に気にした様子もなくエンキが施設内の様子を投影したモニターで映した。

 

『君達の仲間は、今も尚戦っているようだ』

 

 そう言ってエンキが投影した映像には、それぞれ別のジェネシスの幹部と対峙する颯人と未来、奏と翼の姿が映し出されるのであった。




という訳で第256話でした。

今回はソーサラーとガルド達の戦いをメインに描きました。ソーサラーに変身していたのはドレイクと言う名の幹部。映画でもソーサラーに変身していたオーマ大臣は正体がドレイクファントムだったので、そのまま使った感じです。
一時はセレナが人質に取られて窮地に陥りますが、諦めない強さを見せたセレナにより勝機を掴みました。映画ではラスボスであった事もあって手強い相手でしたが、本作では飽く迄幹部の1人と言う事もあって今回のソーサラーの活躍はこんな感じになりました。とは言えまだ完全に倒した訳ではなく、退けただけなのでまた立ちはだかることもあると思いますが。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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