魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~ 作:黒井福
グレムリンの罠に嵌り、危うく精神が崩壊する一歩手前まで追い詰められたクリスであったが、ギリギリのところで踏み止まり救援に間に合った透の助けもあり精神的安定を取り戻す事が出来た。透の胸の中で安堵に泣きじゃくるクリスを彼が優しく包み込む様子を、グレムリンは忌まわしそうに睨み付けている。
「チィ……あと少しだったのに……」
思わず口を突いて出た悪態に気付いた透が、クリスをグレムリンの視線から外す為自らの背を向け覆い隠す。クリスをこんな目に遭わせたグレムリンに透は彼にしては珍しく激しい嫌悪感を抱いていたが、それでも尚彼の中にある優しさはグレムリンに対して排除と言う選択肢を取ろうとはしなかった。それどころか、彼は普通の人間であれば考えが至らない様な思考に辿り着いた。
「グレムリン……あなたは何故そうなんですか?」
「はぁ?」
「透?」
突然の透からの質問に、グレムリンだけでなくクリスも困惑した声を上げた。無理もない。彼はこんな邪悪を懲り固めて作り上げたような相手にさえ、可能な限り歩み寄り理解しようとしているのだ。
勿論透だって、内心ではグレムリンに対して腸が煮えくり返る思いを抱えていた。もし彼に理性が働いていなかったら、そのままグレムリンを八つ裂きにしようと動いていても不思議ではない。だが彼はその怒りを優しく包む様に抑え、自身が納得できる形でグレムリンの行動と思考を理解しようとしたのである。
彼のそんな想いに気付いた、グレムリンが我に返った時に見せたリアクションは、差し出された手を払い除ける様な嘲りの笑いであった。
「は、はは……あははははははははっ!! き、君、本当に馬鹿だねぇ? 愛するクリスちゃんをそんな目に遭わせた僕にまでそんな態度取るなんてさ? 君、クリスちゃんの事大切じゃないの?」
「勿論クリスの事は大切だよ。でも僕は、自分が納得できないのに感情に任せてあなたを排除するような真似はしたくない」
見上げた超合金メンタルである。もしクリスの立場が奏であり、透の立場が颯人であったのなら、彼は問答無用でグレムリンを排除に掛かっていたであろう。だが透は怒りや憎しみで動く事を自ら諫め、最低限でも自身がグレムリンを討つに足る理由を見出す為踏み止まったのである。それほどの強い信念を持つ者が、果たしてこの世界にどれほどいる事か。もしそんな人間が多数存在してくれていれば、世界の争いは今よりずっと少なかっただろう事は想像に難くない。
そんな優しさを忘れず手放さない透に対して、グレムリンは…………
「そんなの簡単だよ………………愉しいからさ♪」
「愉しい?」
「そうさ♪ 人が絶望し心が崩れる瞬間! 人が何よりも輝くのはその瞬間なんだよ! 僕はね、人の心が壊れて砕ける瞬間を見るのが楽しくて仕方ないのさ♪」
俗に破壊の美学とも言うそれは、形あるものが崩れる瞬間に最も美しさを感じると言う。思えば嘗て敵対したレギオンもまた、美しい心を破壊する事に拘っていた。両者は似た者同士、故に共感する事が出来、レギオンはグレムリンが成り代わっていたワイズマンに大人しく従ったのであろう。
精神破綻者と言う言葉が生ぬるく感じるほどの異常性を見せるグレムリンに対し、クリスはこれまでにない程の強い嫌悪感を感じた。こんな人間がこの世に存在する事が信じられない。と言うより、許す事が出来なかった。断言してもいい。この男だけは、何が何でも世界から排除しなければならない。そうしなければきっといずれは全てを破壊しつくし、最後には己も破滅させて後には何も残らない不毛の世界が広がってしまう。
流石の透もここまで歪んだ人間を見たのは初めてだったのか、グレムリンが語る嗜好に目を見開いた。だが彼は一度目を閉じ、胸の内に溜まった淀みを吐き出す様に大きく息を吐くと、覚悟を決めた目でグレムリンの事を見据えた。
「分かりました……僕も、あなたの事は許せません。今日ここで、僕達はあなたを討ちます……! 変身ッ!」
〈チェンジ、ナーウ〉
グロウ=メイジに変身した透が構えを取ると、その隣にクリスが並び立つ。まだ目には涙の痕が残っているが、彼女の目に弱々しさは無く透同様の強い覚悟が溢れていた。
「ペテン師に譲るまでもねえ。お前はここでアタシらが倒してやるッ! どうせお前もとっくの昔にファントムなんだろ?」
寧ろここまで人間性を破綻させておきながら、尚人間であると言われた方が驚愕であり恐ろしい。半分願望も混じったクリスの言葉に対し、グレムリンは壊れたような笑みを浮かべて対峙した。
「気になるかい? 僕の事が? それなら…………!!」
体から魔力を溢れさせ、その威圧感に透もクリスも気圧されそうになるのを堪えた。本気を出すらしいグレムリンに2人も本気で迎え撃つ姿勢を見せようとしたが、出し抜けにグレムリンから向けられていたプレッシャーが明後日の方へと逸れていった。直前まで2人を蹂躙する事に意欲的だった筈のグレムリンの興味は、今この瞬間消え去り何かを気にしたようにあらぬ方へと向かっていた。
「グレムリン?」
「何だ? どうしたんだ?」
突然明後日の方を見たまま動かなくなったグレムリンに、そちらに何があるのか分からず2人も釣られるように彼の視線の先を追った。だが見えるのは何の変哲もない石で出来た壁のみ。どうやら城内の事を把握出来るグレムリンだからこそ感知できる何かが起こったらしい。一体何が起こったのかと思わず困惑し動きを2人が止めていると、グレムリンはそのまま2人から興味を失ったかのようにその場を離れていくではないか。これに対しクリスは、咄嗟に逃がすまいとスカートアーマーを開きマイクロミサイルを発射してグレムリンの動きを止めようとした。
「クソッ!」
「あっ、待ちやがれッ!」
MEGA DETH PARTY
無数の噴煙を上げるマイクロミサイルが離れていくグレムリンの後を追跡していく。撃ってから気付いたが、今のグレムリンは姿を変えていない生身の姿。そんな状態の相手にマイクロミサイルを全弾発射してしまった事に、クリスは撃った後になって僅かな後悔を感じた。例え相手の正体がファントムだったとしても、人間の姿をした相手にミサイルを撃ち込むなど後味が悪すぎる。
しかしその心配は杞憂であった。グレムリンは2人から離れていく道すがらに、まるでゴミをポイ捨てするような感覚でミサイルを防ぐ魔法を振り向きもせずに放っていたからだ。
「フンッ……」
〈スプラッシュ、ナーウ〉
まるでスプリンクラーの様に分裂しながら大きく拡がる魔力弾が放たれると、それにより誘爆させられたミサイルが連鎖爆発を起こし瞬く間に通路を煙で覆い隠していく。透が咄嗟に爆風からクリスを守る為彼女を抱きかかえながらその場に伏せると、直後に襲い掛かった行き場を失った爆風が2人の体を押し流そうとしてくる。
「クリスッ!」
「くぅっ!?」
2人はそのまま互いに離れない様抱きしめ合いながら爆風が収まるのを待った。数秒と経たずに衝撃が収まったのを見て2人が立ち上がると、当然の様にそこにグレムリンの姿は影も形も無く逃げられた後となってしまっていた。
散々好き勝手された挙句まんまと逃げられてしまった事に、クリスは悔しそうにその場で地団太を踏んだ。
「クッソ、逃げられたチクショウッ!」
「仕方がないよ。まさかいきなり何処かへ行くだなんて思ってもみなかったんだから」
実際透もあそこでグレムリンが自分達を放置するとは予想外であった。あそこまで精神的に追い詰められれば、さしものグレムリンも2人の排除に躍起になると思っていたのだ。透自身ここでグレムリンを、倒せないまでも他の仲間達が合流してくるまで足止めするつもりで相対していた。ところが蓋を開けて見れば、グレムリンは突然2人から興味を失い何処かへと行ってしまったではないか。その際のグレムリンの様子が、透には何処か焦っている様に見えた。
恐らく、城の何処かで仲間の誰かが何かをしたのだろう。それがグレムリンにとって都合の悪い事だから、彼は焦って2人の事を放置してそちらに向かっていった。問題はそれが何かと言う事であるが…………
「とにかく追うぞッ! あのクソ野郎、アタシ自身も一発ぶん殴っておかないと気が済まねえッ!」
調子を取り戻したクリスが姿を消したグレムリンの後を追おうと足を踏み出す。だが本人のやる気に反して、体の方はまだ先程の精神的消耗が後を引いているのか駆け出そうとする足から力を抜きその場に倒れ込みそうになった。透は彼女が転倒しそうになったのを見て、素早く彼女の体を支えて優しく抱きしめる。
「あっ!?」
「おっと! 大丈夫、クリス? 無茶しないで」
「だ、だけど……」
このまま放置していては、グレムリンは他の仲間達にまで手を出す。特に切歌や調などが襲われては、2人が純粋な事もありただで済むとは思えなかった。先輩として彼女達を危険に晒すまいと意気込むクリスであったが、透は事を急ぐ彼女を優しく諭した。
「気持ちは分かるけど、今は少し休もう。無理して追いついても、最悪逆に足を引っ張る事になるよ」
「それは……だけど……」
透の言い分も分かると言えば分かるのだが、この状況で自分だけ休むなどクリスには出来なかった。そんな彼女の心情を理解してか、透は妥協案として彼女をそのまま横抱きに抱え上げて歩き出した。
「よっと!」
「わわっ! ちょ、透ッ!」
「クリスは暫く楽にしてて。僕が運んであげるから」
「いや、それだと透が大変……」
「クリスを運ぶんだったら僕はへっちゃらだよ。だからクリスは、休んでて。ね?」
実際には、言うほど楽ではないだろう。特にスカートアーマーがある関係上、クリスは他の装者以上に嵩張る。そんな彼女を抱き上げて運ぶのは本来であればなかなかの重労働となる筈であるが、透は辛そうな様子を微塵も見せない。変身している為顔が仮面で隠れているので、もしかすると表面に出さないだけで顔には汗を浮かべているのかもしれないがそんなことはおくびにも出さなかった。
クリスは自分を気遣い、自分に安らぎを与えてくれる透に申し訳なさと同時に感謝を感じた。事実彼女は先程のグレムリンの精神攻撃により心身ともに疲れ切っていたのだ。あのまま無理をして追跡したとしても、全力が何処まで出せたかは分からない。
ここは彼の厚意に甘えて、少しの間だけでも休む事にした。
「分かった。透……ありがとう」
「うん」
透に全てを委ね、大きく息を吐き肩から力を抜く。するとそれまで肩肘張って気付かなかった疲労感を感じ、クリスは瞼が重くなるのを感じた。やはり偽りの存在とは言え仲間達と連続で戦い、更には幻とは言えその命を奪う事は彼女の心身に多大な負担となっていたらしい。体は休息を求めて彼女を眠りへと誘っていく。
自身の腕の中で静かに眠り安らかな寝息を立てるクリスの姿に、透は優しいまなざしを送ると同時に彼女を苦しめたグレムリンに対し静かに怒りを燃やしながら彼が向かっていっただろう方へと歩みを進めていくのであった。
***
グレムリンの仕掛けた罠によS.O.N.G.の仲間達は散り散りバラバラにさせられてしまった。当然その先に待ち構えていたのは無数のグールであったり、或いはまだ見ぬファントムであったりと装者や魔法使い達を追い詰める数々の罠。
だが百戦錬磨と言っても過言ではない戦いを切り抜けてきた彼ら彼女らはそれを自力で切り抜けていった。それは数々の戦いを経験した事で戦い方が洗練されたと言うのもあるだろうが、最大の理由はグレムリンの興味が基本的に奏とクリスにしか向いていなかった事が要因であろう。クリスなどに対しては気合の入った歓迎を用意していたが、それ以外は彼にとって雑多な存在でしかない為凝った内容ではなく、その程度であれば力技で切り抜ける事も不可能ではなかったのだ。
とは言えそれも決して楽な道と言う訳ではなく、颯人らは大小の苦戦を強いられる事となっていた。それでも彼らは立ち塞がる困難を突破し、グレムリンを倒すべく城の中を進んでいった。
そんな中で、響は道中偶然にも切歌・調と合流する事が出来た。彼女らもそれぞれ分断されていた筈だが、2人は共にザババの刃を用いているからか意識せず互いに引き合い、割かし早い段階で合流出来ていたのである。
響は落とし穴に落とされた先で待ち構えていたファントムを倒すと、その際の衝撃で城内の壁の一部をぶち抜いてしまった。その先に居たのが切歌と調であり、2人は突然壁を破って姿を現した響に再会を喜ぶよりも先に面食らってしまっていた。
「「わぁぁぁぁっ!?」」
「ケホッ、ケホッ……ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
「あ、えっ!? ひ、響さんッ!」
「え? あっ! 切歌ちゃん、調ちゃんッ! 良かった~、2人共無事だったんだねッ!」
「それはこっちのセリフデス! 響さんこそ無事で良かったデス!」
3人は束の間互いの無事と再会を喜んでいたが、辺りを見渡して他の仲間が見当たらない事に揃って若干の落胆を感じていた。
「あ……未来達はまだ見付からないんだ?」
「デス。そっちもマリア達とはまだ合流出来ていないみたいデスね」
「クリス先輩も……」
「うん」
無事が確認されているのが自分達だけなのが響達には不安であった。通信は繋がらない為本部と連絡を取ったり、他の仲間の安否を知る事も出来ない。今の彼女達に出来る事と言えば、仲間の無事を祈りつつ少しでも早くに合流できるよう先に進む事だけであった。
「それに、奏さんも心配だし」
「そうですね」
心配と言えば奏もそうだ。流石にここまで来れば彼女達も幽霊村に翻弄されている間に、奏がグレムリンに囚われ入れ替わられていた事が分かった。となると、今本物の奏ではこの城の何処かで囚われの身になっていると言う事。ただ囚われているだけであればまだいいが、もし何かされているのだとしたら…………
「急ごうッ!」
「はい!」
「デスッ!」
ともかく今は前に進んで、他の仲間と合流するかしなければと進行速度を上げた。勿論道中には様々な罠があり3人の行く手を阻んでいたが、彼女達はそれを持ち前のパワーと連携で切り抜けていく。
それでもやはり数々の妨害を切り抜けながらの進行ではどうしても時間が掛かってしまう。焦りが徐々に募っていく中、響はふととんでもない事を思い付いてしまった。
「早く未来達と合流しないといけないのに…………! そうだ!」
「響さん?」
「どうしたデスか?」
突然何かを閃いた様子の響が足を止め、真上を見上げ始めた。一体何をするつもりなのかと2人が見ていると、彼女は徐にガントレットを変形させ槍の様に見えるパイルバンカーを作り出すと、エネルギーを充填させたそれを真上に向け突き上げた。
「行っけぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」
これには切歌と調も面食らってしまった。確かに下から上に徐々に上がっていくのは時間が掛かる。だから真上に直通の穴をあけて底を通って上へと向かおうと言う響の考えも分からなくはない。だが何があるかも分からない頭上にいきなり穴を開けるなど、次の瞬間起こる事が予想出来ない事をやろうと言う気持ちにはならなかった。下手をすれば真上にあるものが自分に向けて降り注いでくるかもしれないと言うのに、この躊躇の無さは流石と感心すればいいのかそれとも向こう見ずと呆れればいいのか分からなかった。
愕然とする2人を他所に、響は真上に開いた穴にガッツポーズをして2人を手招きした。
「よしっ! これで近道が出来た。2人共、行こう!」
「は、はいデス……」
「でも響さん、もうこれ以上は止めてくださいね?」
「え? 何で?」
「もし上にマリアやセレナ達が居たら大変だからです」
今回は上に何も無かったから良かったような物の、下手をすれば真下から仲間を吹き飛ばしてしまっていたかもしれないのだ。その事に調に言われて漸く気付いた響は、自分の配慮の足らなさにバツが悪そうな顔になった。
「あ、あ~……そっか。分かった、もう止める」
「ホッ……」
「分かってくれて助かったのデス」
「次からは真上じゃなくて横の壁をブチ破るね」
「「違う、そうじゃない」」
急いでいるからか、響の思考のぶっ飛び具合が半端ではなくなっている。早く未来に合流して響のブレーキ役になってもらわなければと2人が焦る中、響は真上に開けた穴に飛び込み上の階へと上がっていく。幸いな事に上の階に巻き込まれた味方は居らず、それどころか恐らくは上で待ち構えていたと思しきグールが無数に倒れている。お陰で不意打ちを受ける事無く3人は更に上へと開いた穴へと飛び込み、一気に2階分移動距離を短縮する事が出来た。
「よっと!」
響がもう一つ開いた穴に飛び込み上の階へと向かうと、そこは普通の部屋では無い雰囲気が漂っていた。無数の工具の様な物や宝石の原石の様な物が無造作に転がっている。
「? 何だろ此処?」
「物置……いや、作業場?」
「誰の作業場デスかね?……ん?」
響に続き部屋に下から上がり込んだ切歌と調も、室内の様子に首を傾げていた。ジェネシスの本拠地であるこの城の中に、このような部屋がある事が驚きであったからだ。印象ではもっと生活感の薄い、殺伐とした印象を抱いていた3人だが、この部屋はどこか生活感と言うか人の活動した雰囲気が漂っている。
そのまま室内を見渡していた切歌は、ふと暗がりの中に何者かの影を見た。切歌に見つかった事に気付いた人影は、ビクリと肩を震わせると一目散にその場から逃げようと駆け出した。
「あっ! 調、響さんッ! そこに誰か居るデス!」
「えっ!」
「待ってッ!」
逃げようとする人影に気付いた響は、それが誰であるかも確認せず真っ先に捕縛に走った。逃げようとする以上少なくとも仲間ではないが、攻撃してこない所から察するに敵の戦闘要員の可能性も低い。ならば捕まえればこの城に関する事が何か分かるかもしれないと思ったのだ。
響の見立ては正しく、戦闘要員ではないと思しきその人影は響に飛び掛かられると抵抗する間もなく取り押さえられた。顔はフードで隠している為分らなかったが、飛びついた際の感触から響はそれが女性……それも自分と同い年か少し年上位の少女である事に気付く。
飛び掛かられて暴れるその相手を、響は取り押さえながら宥めようと声を掛ける。
「待ってください、落ち着いてッ! 抵抗しなければ、これ以上の事は何もしませんッ! ただ話を聞かせてくれればそれでッ!」
必死に語り掛ける響であったが、相手は半ば恐慌状態に陥っているのか暴れ方が半端ではなかった。それでもやはりギアを纏っている上に数々の戦いと訓練で鍛えられた響から逃れる事は出来なかったらしく、最終的にはそのフードを被った少女は取り押さえられてしまった。
これ以上の抵抗は無意味と悟ったのか、それとも体力が尽きたのか相手は大人しくなった。抵抗が無くなった事に響は安堵の溜め息を吐くと、相手の顔を拝む為フードを外させた。
「ふぅ、やっと大人しくなってくれた。すみません。でも私達本当にただ話を聞かせてくれれば…………えっ!?」
「うそっ!?」
「そんなっ!?」
響が優しく話し掛けながらフードを外すと、その下に隠れていた顔に3人は驚愕し言葉を失ってしまった。
何故ならそのフードの下に隠れていたのは、これまでに響達が何度も対峙してきた筈のジェネシスの幹部、メデューサのそれとそっくりだったからである。
松明の炎に照らされたメデューサ似の顔をしたその少女は、驚愕に固まる3人を不安そうな顔で見渡すのであった。
という訳で第287話でした。
執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。