魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

322 / 324
第296話:希望は潰えず

 グレムリンに次々と仲間を倒され、残った颯人は彼のテレポートジェムで奏が囚われている部屋に転移させられた。

 

 それまで映像でしか颯人達の事を見れなかった奏は、突如目の前に姿を現した実物の颯人に口を塞がれながらも安堵と喜びの混じった声を上げる。

 

「むぐっ! むむぅぅぅっ!」

「奏……グレムリン、テメェ……!」

 

 奏の格好が歌姫衣装に変えられている事に気付いた颯人は、連れ去られた後彼女がグレムリンに無理矢理着替えさせられたと理解し怒りで奥歯を食い縛る。そしてとりあえず彼女の口を塞いでいる猿轡を外すべく、視線はグレムリンに向けながらもコネクトの魔法で手だけをそちらに送った。

 

〈コネクト、プリーズ〉

 

 颯人は片手で器用に奏の口を塞いでいる猿轡を外した。漸く声が自由に出せるようになった奏は、口を塞がれていた分感じていた息苦しさが無くなった事に開放感から大きく息を吐いた。

 

「ん……プハッ! はぁ、はぁ、ふぅ……颯人ッ!」

「あぁ、奏……少し待ってろ。すぐにこいつ片付ける」

 

 奏の声に颯人は仮面越しに優しい目を向けると、すぐさま気持ちを切り替え鋭い視線をグレムリンに送った。それまで黙っていたグレムリンは、颯人から視線を感じて何が可笑しいのか肩を震わせ笑い出した。

 

「クフフフフ……!」

「何が可笑しいんだ?」

「いやぁ、だってさ? これからだよ、メインイベントは。漸く奏ちゃんが心から絶望した姿を見られると思うと、もう楽しみで楽しみで♪」

 

 この期に及んで尚他者を、奏を弄ぶような事を宣うグレムリンに颯人は頭の欠陥が切れそうなほどの怒りを感じたが、彼はそれを一旦堪えるとそれまで感じていた違和感が確信に変わったのを理解した。

 

「グレムリン、お前……シェム・ハに復讐しようってのは本心じゃねえだろ?」

「ん?」

「どういう意味だ颯人? だって、そいつ……」

 

 颯人の言葉にグレムリンは首を傾げ、奏も困惑の声を上げる。それは通信機で彼の話を聞いているエルフナイン達も同様であった。

 

 グレムリンは元々は先史文明期にシェム・ハにより作り出され、そして廃棄処分される事になった事を恨んで今日までリインカーネーションで生き延びてきたのではなかったのか。本人がそう言っているのに、それが違うとはどういう事か。そんな疑問を一身に浴び、颯人は奏を一瞥しながらそう判断した理由を話した。

 

「復讐が目的だってんなら、幾ら何でも寄り道が多過ぎる。奏をこうして捕まえてるのがその証拠だ。奏とシェム・ハには何の関係もないんだぞ」

「あ……!」

 

 そうなのだ。今でこそ奏とシェム・ハは、未来を通した仲間と言う間柄ではある。だがそれ以前には両者に関わりは全くなく、奏自身別にシェム・ハの血を引いているとか依り代だという事実もない。さらに言えばこれまでにグレムリンが手を出してきたクリス、セレナ、キャロルにしたって、同様に先史文明期とは縁もゆかりもない筈なのだ。にも拘らず、グレムリンは彼女らに狙いを定めその心を弄ぼうとちょっかいを掛けてきた。

 

 その彼の行動の理由が何かと言えば、彼は常々こう言っていた。絶望する様を見たいからと。

 

 これらを統合すると、颯人にはグレムリンの本当の狙いがシェム・ハへの復讐とは別にあるのだと理解できた。

 

「どうなんだ、グレムリン? お前の本当の目的ってのは……」

 

 グレムリンの真の目的、それは…………

 

「他人の絶望そのものだろ?」

 

 確信をもって放たれた颯人の言葉。それに対するグレムリンの答えは、周囲に響くほどの大きな笑い声であった。

 

「あははははははははははっ!! だ~い正解! よく分かったね?」

「アホか、分り易すぎる位だ。寧ろ何で今まで気付かなかったのか、自分で自分が情けないくらいだよ」

 

 もっと早くに気付くべきだった。グレムリンに本当に成し遂げたい目的など存在しない。奴の目的は人間の絶望そのものだったのだ。それは最初からそうだったのか、それとも長い年月を魔力の中で彷徨う内に辿り着いたものだったのかは分からない。だが少なくとも今のグレムリンは、大きな目的ではなく目先の刹那的な目的の為に動いている。

 

「僕も最初はさぁ、シェム・ハ様に絶対復讐してやるって気持ちで動いてたんだよ。それこそアダムみたいにね?」

 

「でもさぁ、魔力の中……人々の想いの中で過ごしてるとさ、嫌でも見えてくるんだよ。人が絶望する様子ってのが」

 

「それを何年も何年も、数えきれないくらい見続けてる内に……それが凄く面白くなっちゃって♪」

 

「気付いたらシェム・ハ様への復讐なんてついでになってて、人が絶望する様を見るのが楽しくて仕方なくなっちゃったんだ!」

 

「それで思ったんだ。もっとも~っと凄い絶望が…………見てみたいって!」

 

 最後の言葉を告げると同時に、グレムリンがロンギヌスの槍を掲げた。するとそれを合図にしたように城の各所を映していた映像が消え、代わりに周囲に光が灯った。一瞬視界が白く染まるほどの眩い光は直ぐに収まり、颯人が周囲を見渡すとそこは所謂玉座の間である事が分かった。奏はずっとこの部屋で奮闘する颯人達の様子を見せ付けられていたのである。

 

 その肝心の奏での姿が、気付けば居なくなっていた。何処に行ったのだと颯人が探せば、何時の間にかグレムリンが玉座に腰掛け、奏はその隣の床に鎖で繋がれていた。颯人が自分達に気付いたのを見て、グレムリンは槍を持っていない方の手で奏の顎を掴み彼女の頬を指で弄びながら颯人の方を向かせる。

 

「そうして僕は見つけたんだ。奏ちゃんって言う最高に絶望した顔が似合いそうな子を。この子の絶望した顔を見たら、僕はきっともっと笑顔になれる」

「くっ!?」

「でも多分それじゃあ物足りないんだよね。だから君を殺して、奏ちゃんを絶望させたら、その後は面倒くさいから全人類を一気に絶望させるんだ。その為の……ロンギヌスさ」

 

 ロンギヌスの槍は賢者の石の欠片と、ユグドラシルの欠片で作られている。一方は無数の人々の想いの結晶であり、もう一方は人々の想いを強制的に繋ぐ為に作られた。そしてユグドラシルシステムは機能を停止しただけであって、完全に除去された訳ではない。

 つまりグレムリンはあの槍を用いて再び全人類の心を繋げようとしているのだ。そうする事で起こる全人類の精神の統合。強制的に他人の想いや意識を頭の中に流し込まれ、恐ろしい情報量に全人類を絶望の渦に叩き落す。

 

 それこそがグレムリンの最後の狙いであった。

 

 恐ろしいグレムリンの計画に、傍らで顎を掴まれた奏は何とか口を動かして震える声を発した。

 

「な、何でそんな事……そんな事して、その後はどうするつもりだよ……!」

「その後~? 別に考えてないよそんな事。でもまぁ、退屈になったらまた次の絶望を探して旅立つだけだよ。並行世界とかに行ってみるのも悪くないかな」

 

 あっけらかんと告げるグレムリンに奏は絶句した。コイツは本当に分かり合う事が出来ない、正真正銘心まで化け物なのだと理解させられた。

 

 一方颯人は、別にグレムリンの狙いなんてどうでもよかった。彼にとって重要なのは、グレムリンが奏に触れ彼女を弄んでいるという事実のみ。これ以上彼に好き勝手をさせてなるものかと、颯人はインフィニティースタイルの超高速移動で一気に接近しカリバーモードのアックスカリバーを振り下ろした。

 

〈インフィニティー!〉

「させると思ってるのかよッ!」

 

 目にも留まらぬほどの速度で放たれた一撃。だがグレムリンはロンギヌスの確定攻撃を用いてそれを容易く受け止めてしまった。読まれていたのだ、颯人が振り下ろしで攻撃する事が。

 

「だと思ったよ。この状況、奏ちゃんを傷付けないようにする為には、剣を横に振るう訳にはいかないからね」

「ちぃっ!」

 

 自分の攻撃が読まれていた事に舌打ちをする颯人だったが、彼はそこで止まる事無くロンギヌスを掴むと振り回してグレムリンを強制的に玉座から引き離した。グレムリンとしても槍を手放す訳にはいかなかった為、そのまま振り回されて奏と玉座から引き離される。

 

「くっ!」

 

 玉座から引き離された事で、グレムリンと颯人の位置が入れ替わる。今度は鎖に繋がれた奏の傍に佇んだ颯人が、彼女を守る様に立ち塞がった。その様は正に1人の姫君を守ろうとする騎士の様な姿である。自然、奏の表情も和らぎ、颯人は肩越しに彼女の方に視線を向けると柔らかい声色で彼女を安心させるべく声を掛けた。

 

「少し待ってろ、奏。すぐに終わらせて、お前を自由にしてやるから!」

「颯人ッ!」

 

 言うが早いか颯人は再び超高速でグレムリンに接近するとアックスカリバーで斬りかかった。またしてもそれをロンギヌスで防いだグレムリンであったが、続く颯人の攻撃に関しては能力の発動が追い付けなかったのか刃が鎧の様な表皮を切り裂いた。

 

「ぐっ!?」

「やっぱりな! 今のお前の弱点はそれだッ!」

 

 ロンギヌスの槍の確定攻撃は確かに厄介だ。これを打ち破れるのは響の神殺しの拳だけであったし、他に破る手段がない以上回避も防御も出来ない。

 だがこの槍は別に未来が分かる訳ではない。だからグレムリンが予測できない攻撃に対しては意味を成さず、先読みが出来なければ純粋な技量で防ぐしか出来ない。そして元々の得物が透と同じ双剣であったグレムリンにとって、槍は決して扱いやすい武器ではなかったのだ。ガングニールを扱う奏に倣う様にロンギヌスを槍の形状にした、グレムリンの性格が招いた弱点である。

 

「おぉぉっ!」

「くっ! こ、のぉっ!」

 

 颯人はここぞとばかりに素早さと手数でグレムリンを責め立てた。嘗てグレムリンはワイズマンを名乗り輝彦と戦い、彼を退ける事が出来たほどの実力があるという。だが今、颯人はグレムリンと対等に戦う事が出来ていた。それは純粋に颯人の技量が父を越えている事の表れでもあったろうが、同時にグレムリンが道楽で自身の実力を過信した結果能力が十全に発揮できないからでもあると言えた。

 

 だからと言って颯人は攻撃の手を緩める事はしない。別にこの相手に騎士道精神を以て相対するつもりは毛頭なく、討てる時に確実に討つ決意で攻撃していたからだ。

 

「この、調子にッ!」

 

 勿論グレムリンも一方的に攻められるばかりではない。彼の技量も間違いなく本物なのだ。得意のアイソレーションでフェイントを交え、颯人の動きに隙を作らせそこを狙って反撃する。敵ながら天晴、相手を出し抜く事に関しては颯人もグレムリンの技量を認めていた。

 

「うぉっ!?」

 

 グレムリンのフェイントに引っ掛かり隙を晒した颯人。そこを正確に狙いグレムリンがロンギヌスを振るえば、回避も防御も間に合わない颯人は穂先の斬撃をまともに喰らってしまった。大抵の攻撃は受け付けないアダマントストーンの鎧だったが、賢者の石にユグドラシルの欠片で作られた槍の攻撃力は侮れないのか鎧から火花が散り衝撃で体勢を崩してしまった。

 

「貰った!!」

 

 今が好機とグレムリンが即座に次の攻撃をイメージしようとした、その瞬間颯人が何も持っていない筈の手を振るうとパチンと弾ける音と共に火花と紙吹雪がグレムリンの眼前に広がり思わず攻撃のイメージが霧散してしまった。

 

「わっ!?」

「そこだッ!」

「ぐぅっ!?」

 

 余程の強固な精神が無ければ、突然目の前で火花と紙吹雪が散れば驚き意識はそちらに向いてしまう。魔法使いである以前に手品師でもある颯人は、得意の手品を用いてグレムリンの意識を攻撃から反らす事に成功したのだ。

 

「俺が手品師だって事、忘れてんじゃねえのかッ!」

〈ターンオン!〉

「ぐはっ!?」

 

 隙さえ晒させてしまえばこちらのもの。颯人は素早くアックスカリバーをアックスモードにすると、破壊に特化した一撃をグレムリンに思いっきり叩き込んだ。カーバンクルファントムを吸収する事でより力を上げたグレムリンファントムであったが、それでもアックスカリバーの一撃を完全に受け止めきる事は出来ず体を大きく切り裂かれその場に膝をついてしまう。

 

 強烈な一撃を受けた際の衝撃で、グレムリンの手からロンギヌスの槍が離れた。颯人はそれを見逃さず、槍を蹴り上げて手に取るとそのまま遠くへと放り捨てた。少なくともすぐにグレムリンが再び槍を手にする事はこれで出来ない。自分から離れていく槍を目で追うグレムリンだったが、颯人はそんな彼の首元にアックスカリバーの刃を突き付ける。

 

「う、ぐ……!?」

「終わりだな、グレムリン。今度こそ……」

 

 これでようやく決着となる。とは言え問題は、このまま素直にグレムリンを倒しても根本的な解決にはならないという事だった。グレムリンはリインカーネーションで世代を跨いで蘇る事が出来る。今は良くても、何時かの未来で再び同じ事をされてしまう。故に今すぐトドメを刺す事は出来ない。少なくとも切歌と調、2人の本気のギアで切り裂いてもらわなければ、ここで倒しても意味がない。それが分かっている颯人は刃を突き付けて脅しはしても、それ以上の行動に出る事が出来なかった。

 

 グレムリンもそれを分かっていた。故に、彼はこの束の間の沈黙を最大限に利用すべく行動する。

 

「ふ、ふ……はははっ……」

「何笑ってやがる?」

「くくくっ……そりゃそうさ。この期に及んで後先の事を考えるなんて、馬鹿のする事だからだよっ!」

 

 そう告げた直後、グレムリンは徐に明後日の方に向け魔力の砲撃を放った。颯人に悟らせない様体の裏でこっそり手の中に溜めていた魔力を一気に解き放ったのだ。

 

 一体何を狙って撃ったのかと颯人が視線をそちらに向ければ、あろう事かそこに居たのは奏であった。それを見た瞬間彼は反射的に放たれた砲撃の前に割り込み彼女を守るべくその身を盾にした。

 

「奏ッ!?」

〈インフィニティー!〉

「颯人ッ!?」

 

 それは本来であれば必要のない行動であった。何しろグレムリンの本当の狙いは奏が絶望する姿そのものなのだ。その為に必要な奏を消し飛ばすなんて事をしては本末転倒になる。だからこれはきっとグレムリンが颯人の油断を誘う為のフェイクに過ぎないのだ。その筈なのだ。

 

 だがそれが分かっていたとしても、颯人に奏を守る為に動かないという選択肢は無かった。きっと颯人が動かなければ、グレムリンはギリギリのところで砲撃をずらして奏に被害が及ばないようにした筈だ。しかしだとしても、もし万が一狙いやタイミングがズレて奏に何かあるような事があったらと思うと、颯人にはジッとしている事など出来ず彼女の盾となるしか出来なかった。

 

「ぐ、ぅっ!?」

 

 グレムリンの砲撃はそこそこ威力があったのか、衝撃に呻き声が漏れてしまう程であった。だがアダマントストーンの鎧の前ではそれが限界で、ダメージらしいダメージを彼に与える事は出来ない。だがそれで十分だったのだ。

 

 それだけの時間があれば、グレムリンはロンギヌスの槍を回収し隙だらけの颯人に肉薄する事は出来る。そして…………

 

「お馬鹿さん♪」

 

 グレムリンは隙だらけの颯人の体に手を当てると、カーバンクルファントムの能力を用いて颯人の魔力を全て吸い取ってしまった。

 

「ぐあ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「颯人、ダメだッ!?」

 

 ほぼ無敵を誇るインフィニティースタイルであったが、唯一の弱点は魔力を奪われる事であった。使用した魔法の魔力を還元する事で無限に魔法が使えるインフィニティースタイルだが、自力で魔力を生み出せている訳ではないので外部に吸い取られては成す術が無くなる。

 

 グレムリンはあっという間に颯人の魔力を吸い尽し、魔力が枯渇した颯人は変身が維持できず元の姿に戻ってしまう。本来であれば意識を失ってもおかしくない状態であったのだが、そこは彼も気合で堪え顔中に脂汗を浮かべながらも目の前に佇むグレムリンの事を睨み付けていた。

 

「ぐ、グレムリン……テメェ……!?」

「じゃ、さようなら♪」

 

 変身していなければ颯人はただの人間である。そんな状態の彼の前で、グレムリンはロンギヌスの槍を振り上げる。次に何が起こるかは子供でも分かる状況に、奏は顔を青褪めさせ無駄と知りつつ必死に止めるよう懇願した。

 

「ま、待てッ!? 待ってくれ、止めろッ!? 止めろグレムリンッ! アタシは、アタシはどうなっても良いから颯人は、颯人だけはッ!?」

 

 このままでは颯人が殺される。嘗て皆神山でノイズの攻撃を受けた時は無意識の内に魔力を用いていた為颯人は一命を取り留めた。が、今はその魔力も奪われた。これでは奇跡も何も起こらない。この状態であの槍を喰らっては颯人が死んでしまうと奏が目に涙を浮かべながら半狂乱になって叫ぶように懇願すると、その声に反応したようにグレムリンの動きが止まる。だがそれは奏の願いが届いたからではない。一瞬でも彼女を安心させ、そこから絶望に突き落とす為の僅かな間であった。

 

「ん…………だ~め♪」

「あ――――」

 

 次の瞬間、奏の目には全てがスローモーションで見えていた。グレムリンが袈裟懸けに振り下ろした槍の穂先が、颯人の体を斜めに切り裂く。生身で体を切り裂かれた颯人は、傷口と口から血を吐きながらゆっくりとした動きで崩れ落ち、奏の目の前で倒れるとそのまま玉座に続く階段を転がり落ちていった。

 

「は、颯人…………?」

 

 呆然としながら奏が彼の名を呼ぶが、彼は反応する事無く俯せに倒れていた。その彼の下から見る見るうちに血が拡がっていき、彼の体が血の海に沈む姿を目にした奏は呼吸の仕方を忘れたかのように口を震わせる。

 

「あ、ぁ……ぁぁ、ぁ…………」

 

 そんな彼女の姿をグレムリンが然も楽しそうに眺めている前で、頭が状況を理解した奏の口からはこれまでにない悲痛な叫びが飛び出した。

 

「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

「あははははははははははははははははっ!!」

 

 絶望と悲しみから来る慟哭を上げる奏に対し、グレムリンは待ちに待った瞬間が訪れた事に歓喜の笑い声をあげる。

 

 相反する二つの声が響き渡る中、自身の流した血の海に沈む颯人の手が僅かに動くのであった。




と言う訳で第296話でした。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。