魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

49 / 324
どうも、黒井です。

前回の話に関してですが、少々内容が宜しくなかったようでアドバイザーの方にも怒られてしまったので後半を主に改訂しました。
今後はこのような事が内容努めて精進しますので、今後ともよろしくお願いします。


第48話:3人寄れば姦しい

 その日、リディアンの地下にある二課本部の廊下を2人の少女が歩いていた。

 1人は2人居るガングニールの装者の1人として二課に協力している立花 響。そしてもう1人は、その響きの親友である小日向 未来である。

 

 今日は正式に二課の外部協力者として力を貸すことになった未来を案内する為に、響と共に二課の本部を訪れていたのだ。

 

 響に案内されて廊下を歩く未来は、普段自分が勉学を学んでいる学院の地下にこんな施設があった事に驚きを隠せず物珍しそうに周囲を見渡しながら歩いていた。

 

「学校の地下に、こんなシェルターや地下基地があったなんて……」

 

 映画の中同然の光景に目を丸くする未来に、響は堪らず苦笑を漏らした。自分も最初、訳も分からずここに連れてこられた時は似たような反応をしたことを思い出したのだ。

 

 その時、前方に設置された自販機の前に5人の男女が居るのが見えた。何やら真剣な表情で拳を握ってにらみ合う、5人の姿に響は元気よく声を掛けた。

 

「あ! 奏さん、翼さん、颯人さん!!」

「ん? あぁ立花か。そちらは確か、協力者の──?」

「こんにちは、小日向 未来です」

「えっへん! わたしの一番の親友です!」

 

 そこに居たのは奏に翼のツヴァイウィングの2人に颯人、そして慎次と朔也の5人だった。彼らに対し未来は丁寧に挨拶すると、翼と慎次、朔也の3人は挨拶を返したが、颯人と奏の2人は適当な挨拶だけ済ませて再び睨み合いを再開した。

 その雰囲気に加えて前半3人はともかく、後半の2人までが一緒に居るのは少し珍しかったので響は思わず翼に問い掛けた。

 

「あの、翼さん? 奏さんと颯人さんは一体どうしたんですか?」

「大した事じゃないわ。ただどっちがこの場の全員にジュースを奢るかでジャンケンしようとしてるだけよ」

 

 翼の答えに、響はまたかと言いたげに乾いた笑い声を上げた。未来はその様子を不思議そうに眺めている。

 と、その響の笑い声が合図になったのか、颯人と奏は同時に拳を突き出した。

 

「「ジャンケンポン! ポン! ポン!!」」

 

 相子二回の後、ジャンケンの決着はついた。

 結果は颯人がグーで奏がパー、よってジャンケンは奏の勝利となり颯人はめでたく全員にジュースを奢る事となってしまった。

 

「シャァッ!!」

「クッソ!?」

 

 心の底から喜ぶ奏と、対称的に悔しがる颯人。奏は悔しがる颯人に機嫌の良さそうな笑みを浮かべると、これ見よがしに颯人に催促した。

 

「ほれほれ、ぼやぼやしてないでさっさと買いな。響! それに、未来だっけ? 2人も何か欲しい奴言いな」

「うぉい!?」

「えぇっ!? いや、そんな……」

「私達、今来たばかりですよ。悪いですって」

「気にすんなって。2人増えた位大したことないよ。な、颯人?」

 

 奏の言葉に颯人は口をへの字に曲げ、憮然とした表情で財布を取り出した。

 

「ったく、好きかって言いやがって。へいへい仰せのままに。響ちゃん、未来ちゃん、翼ちゃん。レディーファーストだ。好きなの最初に選びな」

「で、でも……」

「それじゃ、私は緑茶を」

「えぇっ!?」

「立花、小日向も。こういう時は素直に厚意に甘える方が礼儀ってものよ」

 

 翼の言葉に一応の納得を見せ、響と未来も若干申し訳なさそうにしながらも好きな飲み物の名をを口にする。その後に慎次と朔也。

 奏は一番最後だった。

 

「おい、レディーファーストはどうした?」

「奏は別枠。ほれ、お前もさっさと選べよ」

「ふ~ん……ま、いいさ。そうだねぇ、アタシは……これ、レッ〇ブル」

「お前……一番高い奴を」

「ん? 何か文句でも?」

 

 颯人はぶつくさ文句を言いながら、奏の要望のジュースのボタンを押す。取り出し口に出てきた缶に手を伸ばそうとする颯人だったが、奏はそれに待ったを掛けた。

 

「待ちな颯人! 手ぇ上げな」

「ん……」

 

 奏に言われるがままに手を上げる颯人。

 これは奏にとって当然の警戒だった。このまま普通に颯人に取らせては、どんな仕掛けを施された偽物とすり替えられるか分かったものではない。だが流石に手を触れなければ、彼だって何も出来はしないだろう。

 

 あっさり引き下がる颯人に少しばかり怪しいものを感じながら、奏は取り出した缶の蓋を悠々と開けた。

 

 その瞬間、缶の上部が弾け紙吹雪と紙テープが散乱した。

 

「どわぁっ!?」

「ぷっ! わっはっはっはっはっ!!」

 

 ビックリ箱へとすり替えられていた缶に奏は仰天し、驚きのあまり尻餅をついた。その様を見て颯人は先程までと打って変わって愉快そうに笑う。

 

 驚かされたのは響達もだった。颯人は確かに奏用に買った缶には手を付けていない。一体いつの間にすり替えたのか?

 その答えに行き着いたのは慎次だった。

 

「ん? これは……」

 

彼は徐に取り出し口に手を突っ込むと、そこから一枚の布と蓋の開いていないレッ〇ブルの缶を取り出したのだ。それを見て奏は目玉が飛び出さんばかりに目を見開く。

 

「お、緒川さん……それ──!?」

「お、気付いた?」

 

 これが今し方の手品のタネだった。颯人は奏の性格から彼女が何を望むかを予想し、朔也の分を取り出すと同時にレッ〇ブルが出てくる取り出し口の所にカモフラージュ用の布を仕掛け、偽物の缶を入れておいたのだ。布は黒いので、よく観察しなければ上から見ただけでは分からない。

 奏は見事に引っ掛かってしまったのである。

 

「な、何でアタシがこれ欲しがるって分かったんだ?」

「お前の性格考えりゃ、ここで一番高い奴言うのは分かったんでね」

 

 可笑しいと言う感情が押し殺せないのか、再び口元から笑いが零れる颯人。その笑い声が癇に障ったのか、奏は烈火の如く怒り未だ手の中にある偽物の缶を潰さんばかりに握りしめるとそれを渾身の力を込めて颯人に投げつけた。

 

「~~~~!? ふざけんな!!」

「お~っと!」

 

 投げられた缶をあっさり回避した颯人だが、その程度で済ませる奏ではない。投げると同時に颯人に駆け寄りとっ捕まえようとする。

 勿論簡単に捕まる颯人ではなく、奏が走り出すと同時に彼もその場から逃げ出した。

 

 あっという間に二課本部の奥へと言ってしまった2人。翼は暫し2人が走り去っていった方向を見て溜め息を一つ吐くと、改めて未来に話し掛けた。

 

「んん、改めて、風鳴 翼だ、よろしく頼む。立花はこう言う性格故、色々面倒を掛けると思うが支えてやってほしい」

「いえ、響は残念な子ですので、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「ええ~、なに? どういうこと~?」

「響さんを介して、お2人が意気投合しているという事ですよ」

「むむ~、はぐらかされた気がする」

「ふふっ」

 

 翼と未来、そしてそれに対する慎次のフォローに納得のいかない顔をする響。

 そんな響を見て笑みを浮かべる翼。

 

「でも未来と一緒にここに居るのは、なんだかこそばゆいですよ」

「司令が手を回し小日向を外部協力者として二課に登録したが……それでも、不都合をしいるかもしれない」

「説明は聞きました。自分でも理解しているつもりです。不都合だなんて、そんな」

「あ、そう言えば師匠は?」

 

 不意に響が、今日はまだ会っていない弦十郎の事を思い出し首を傾げた。苦労を掛けたと言うのであれば一言礼を言っておきたいのだが。

 

 そこで奏が颯人と共に戻ってきた。

 

「はぁ……はぁ……あ、戻ってきた」

「ふぅ……ちょうどいい、ちょっとタイム。何か飲もう……あ、小銭ねえ」

「ちょっと待ちなって」

 

 近くを一周して戻ってきた2人は、今度は奏の支払いでジュースを買い喉を潤してから3人の方を見る。

 

「んぐ、んぐ……ぷはぁ! な~に、気にすんなって。颯人以上に面倒掛ける奴はいないって」

「んん、俺が何時面倒掛けたよ?」

「何時もの事だろうが!」

「奏だけだよ」

「尚悪いわ!」

 

 ついさっき追いかけっこして、たった今仲直りしたと思ったらまた喧嘩。目まぐるしく表情を変える2人──しかも片方は国民的アーティストだ──に、未来は目を白黒させた。

 

「あの、もしかして奏さんと颯人さんって……お付き合いしてるんですか?」

「ぶぅぅっ!?」

 

 

 とても親しそうにしている2人に、勘繰った未来が口にした言葉に奏が口に含んでいたジュースを思いっきり噴き出した。それを彼女の前に居た颯人が思いっきり被る事になる。

 顔面に奏の口から吐き出されたジュースを浴びた颯人は、無言で帽子からタオルを出しそれで顔を拭く。

 

 一方の奏は顔を真っ赤にして咽ながら反論しようと口を開く。

 

「おま、な──!?」

「え? 違うんですか?」

「ち、違う! まだ答えてないし」

「そうそう、まだ答え貰ってないから付き合ってないよ」

 

 奏に続き顔をタオルで拭きながら未来の言葉を否定する颯人。タオルで顔を覆っている為その顔色は窺えない。

 

 しかし、未来は2人の言葉の中に含まれた”ある単語“を聞き逃さなかった。

 

「『まだ』……って事は、その内付き合うんですか?」

「んなっ!?」

「……そうなったら良いけどねぇ」

「ん゛っ!?」

 

 未来の言葉に続けて放たれた颯人の言葉に奏は言葉を失う。堪らず目を瞑って天井を仰ぎ見る奏と、それを合図にしたかのようにタオルを取る颯人。タオルの下から現れた彼の顔は、特に赤くなることも無くいつも通りであった。

 

「あら~、いいわね。ガールズトーク? 混ぜて混ぜて。私のコイバナ百物語聞いたら、夜眠れなくなるわよ~?」

 

 そこに姿を現した了子。彼女は薄ら聞こえてきた会話と顔を赤くして天井を意味も無く見ている奏の様子に、新しいおもちゃを見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべながら近づいてきた。

 

「俺ガールじゃないよ~」

「右に同じ」

「左に同じです」

「細かい事は気にしな~いの!」

 

 了子の言葉に軽く反論するもあっさり流されるこの場の男3人。全く相手にされない事に、颯人は残ったジュースを一気に飲み干した。

 

「りょ~うこさんのコイバナ~ッ! きっとうっとりメロメロオシャレで大人な銀座の物語~ッ!」

 

 そんな彼を放置して、了子の言葉に食い付く響。何だかんだで響も健全な女子高生、他人のコイバナやガールズトークには目が無いのだ。

 当然彼女の話には未来も興味津々と言った様子だし、翼も満更無関心と言う訳ではない様子だった。唯一奏はそれどころではない様子だが、それでも気にならない訳では無いようで少しすると顔を扇ぎながら了子の話に耳を傾けた。

 

「そうね……遠い昔の話になるわねぇ……こ~う見えて呆れちゃうくらい、一途なんだからぁ」

「「おお~ッ!」」

 

 しみじみと口にする了子に、声を上げる響と未来の2人。少女2人が目を輝かせるのだが、そこにこの男が水を差した。

 

「遠い昔……何だか年季を感じさせる言葉だな」

 

 女性にとって禁句となる年齢に直結する言葉を口にする颯人。妙齢の女性である了子がそれに反応しない訳も無く。

 

 女性の割には結構固く握られた拳が颯人に飛んだ。

 

「うぉっと危ないッ!?」

 

 飛んできた拳を颯人はギリギリで回避。更に追撃を恐れて距離を取る颯人を、奏は呆れた目で見ていた。

 

「馬鹿な事言うから」

「意外でした。櫻井女史は恋と言うより、研究一筋であると」

「命短し恋せよ乙女ッ! と言うじゃなぁい? それに女の子の恋するパワーってすっごいんだからぁッ!」

「女の子、ねぇ……」

「あら何か文句ある?」

 

 懲りずに藪を突く颯人を了子が笑顔で威嚇する。顔は笑っているが、その手には何時の間にか奏が飲み干し空になった空き缶が握られていた。スチール缶の筈のそれは、握り締められて形が歪み、思いっきり振りかぶられている。

 

 音を置き去りにした空き缶が飛んできそうな気迫に、颯人は無言で口にチャックのジェスチャーをした。

 

 流石に懲りた様子を見せた彼に、了子も気が済んだのか空き缶をゴミ箱に放り投げ話を続けた。

 

「私が聖遺物の研究を始めたのも、そもそも────あ」

「「うんうんッ! それでッ!?」」

 

 話の途中で何を思ったのか言葉を途切れさせる了子だが、響と未来の2人は彼女の様子に気付いていないのか続きをせがむように身を乗り出す。

 

 そんな2人の様子に、了子はやや引き攣った笑みを浮かべた。

 

「……ま、まぁ、私も忙しいから! ここで油を売ってられないわッ!」

 

 無理矢理話題を変える様にそう言った了子に、彼女が凶器を持っていない上に距離があるのを良い事に再び何かを口にしようとする颯人。しかしそれを予見していた奏は素早く彼に近付き、手を押し込む勢いで彼の口を塞いだ。

 

「とにもかくにも、できる女の条件は、どれだけいい恋をしているかに尽きる訳なのよ。奏ちゃんみたいにね?」

「えっ!? いや、あの──」

 

 ここで了子がこんな事を言うとは思っていなかったので、奏はまた顔を赤くした。動揺して力んでしまい、颯人の口を塞ぐ手に力が籠る。

 

 颯人と奏の様子を目にすると、了子は満足そうに頷いた。

 

「ガールズ達も、いつかどこかでいい恋なさいね? んじゃ、ばっはは~い」

 

 響達に手を振りながら颯爽と去って行く了子。

 彼女の背を響は残念そうに見送った。

 

「んむむ~、ガードは堅いかぁ。でもいつか、了子さんのロマンスを聞き出して見せるッ!」

 

 肝心の部分を聞きそびれてしまった事に響と未来は心底残念そうにした。

 次の機会に思いを馳せ、意気込む響だったが彼女達はある事を忘れていた。

 

 それに真っ先に気付いたのは、一歩引いたところから状況を見ていた慎次であった。

 

「あの、ところで奏さん?」

「ん? 何、緒川さん?」

「颯人君はいいんですか?」

 

 言われてそれまで見向きもしていなかった颯人の事を見ると、彼は顔を青くして必死に奏の手を叩いていた。

 先程了子の言葉に動揺し加減を忘れた奏は、彼の口だけでなく鼻まで思いっきり塞いでしまっていたのだ。途中から矢鱈颯人が自分の手を叩いてくることに違和感を覚えていたのだが、それが酸欠が近付いてきた事のアピールであった事に漸く気付いたのだ。

 

 もうタップする余裕も無いのか、顔を青くして体をプルプル震わせ始めた彼に奏は慌てて手を離した。

 

「わぁっ!? 颯人大丈夫かッ!?」

「ぶはっ!? はぁっ! はぁっ! はぁっ!」

 

 颯人が落ち着きを取り戻したのは数分後。流石にそこからはふざける余裕もないのか、ベンチに座り大人しくなった。その隣では、流石に悪いと思ったのか奏が座り彼の背を擦っている。

 

「それにしても司令、まだ帰ってきませんね?」

「えぇ。メディカルチェックの結果を報告しなければならないのに……」

 

 了子が去り、場が落ち着いた頃を見計らい慎次と翼が首を傾げた。

 

「次のスケジュールが迫ってきましたね」

 

 慎二が腕時計を見ながら口にした言葉に、響がやや驚いた様子を見せた。

 

「もうお仕事入れてるんですか?」

「ま、翼ももう回復したしね。まだ無理は禁物だけど」

「少しずつよ。いまはまだ、慣らし運転のつもり」

「じゃあ、以前よりは余裕があるんですね?」

 

 奏と翼の言葉に何かを思いついた様子の響。

 彼女の声に、興味をそそられた颯人がそちらに目を向ける。

 

「ん~、まぁ、そう言う事になるかな?」

「それじゃそれじゃ、奏さん! 翼さん! デートしましょ!」

「「で、デート?」」

 

 突然の響の言葉にきょとんとした顔になるツヴァイウィングの2人。一方颯人はデートと言う言葉に何かを思いついたのか、会話に混じらず1人真剣な表情で考え込む。

 

──タイミング的には……うん。となると……──

 

 完全にプライベートで遊びに行く予定を立てて盛り上がる女性陣を他所に、颯人も何かを計画していくのだった。




と言う訳で第48話でした。

了子さんが遠い昔と言う言葉を使うと、本当に年季を感じさせられるから困る。
次回は女性陣によるお出かけ回になります。なお、颯人は…………

執筆の糧となりますので、感想その他お待ちしています。

次回の更新もお楽しみに!それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。