魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~   作:黒井福

53 / 324
どうも、黒井です!

お気に入り登録ありがとうございます!大変励みになります!


第52話:通じ合う2人

 意を決してフィーネの館に戻ってきた透とクリス。

 2人はいきなり館に突入するようなことはせず、少し離れた所に着地するとそこから徒歩で周囲を警戒しながら近付いていった。フィーネが2人が戻ってくることを警戒して、罠や待ち伏せをしていないとも限らないからである。

 

 ところが蓋を開けてみれば、森の中ではこれと言った罠などに遭遇する事も無く思っていた以上にあっさりと館まで辿り着けてしまった。

 その事に素直に喜ぶほど、2人は平和ボケしていない。寧ろ逆により警戒を強くした。これ自体が罠の一つかもしれないのだ。もしかすると、館の中に魔法使いが潜んでいるかもしれない。

 

〈チェンジ、ナーウ〉

「Killter Ichaival tron」

 

 2人は互いに無言で頷き合うと、メイジとイチイバルを纏う。そしてそのまま館の中へと一気に突入し即座に襲撃を警戒して武器を構える2人だったが、彼らの目に飛び込んできたのは思いもよらぬ光景だった。

 

「ッ!?」

「なんだよ、これ……」

 

 2人が館の中に入って目にしたのは、無数の人間の死体だった。それもただの死体ではない。全員が武装した、明らかに軍人とかそう言う類の人間達だ。

 

 よく見ると死に方も様々だった。胸や腹を鋭利な刃物で刺し貫かれた様な者も居れば、全身黒焦げになっていたり上半身か下半身が木端微塵になっている者も居る。何より目を引くのは、屋敷の一画毎石にされた連中だ。この殺し方が出来る人物を、透は1人しか知らない。

 

 クリスは血と死臭に吐き気を覚え、透も彼らの無残な姿に思わず顔を逸らした。

 

 だが目の前の光景から目を背けてばかりはいられない。2人は喉元に嫌なものが込み上げてくる感覚を覚えながら、館内に転がる死体を慎重に確認していく。

 

「こいつら、日本人じゃないぞ。この装備に顔立ち……米軍か?」

「…………」

 

 死体を検めていくと、2人は彼らが米軍である事に気付く。そこでクリスは、そう言えばフィーネは時々どこかと連絡を取り合っていたことに気付いた。

 

 もしその相手が米軍であり、魔法使いと手を組んだことで切り捨てられた彼らが報復で襲撃してフィーネと魔法使いに返り討ちになったのだとすれば?

 

 そう考えればこの状況にも説明が付く。何より、他はともかく人間を石に変えて殺すなどと言うやり方は、透が知る限りではメデューサにしか行えない。

 

「見た所もうここはもぬけの殻みたいだな。フィーネの奴、もうトンずらした後か」

 

 普通に考えて、襲撃があった場所にいつまでも居を構えたりしないだろう。特に相手が物量の鬼とも言える米軍ともなれば。

 待ち伏せや罠、襲撃が無かったこと自体は安堵すべきところだが、これで2人はフィーネに再会する為の手掛りを失ってしまった事になる。

 

 これからどうするべきだろうか?

 

 そんな事を2人が考え出した時、突如館の入り口が慌ただしくなる。

 

「「ッ!?」」

 

 もしやこのタイミングで魔法使いが襲撃を掛けてきたのか? と身構える2人だったが、予想に反して館内に入ってきたのは魔法使いでも、ましてや米軍の増援なんかでもなかった。

 筋骨隆々の男──弦十郎に率いられた、黒い服装の一団が館内に流れ込んできたのだ。

 

「これは──!?」

 

 館内の惨状に、弦十郎も思わず言葉を失い透とクリスを見やる。

 その視線にクリスは彼が自分達がこの惨状を作り上げたのではないかと疑ったと捉えて、慌ててそれを否定しようとした。

 

「ち、違う!? あたし達じゃねぇ!?」

「別に君らを疑っている訳じゃないさ。これをやったのは君や俺達の近くに居た彼女の仕業だ」

「え?」

 

 予想外の弦十郎の言葉に、クリスは言葉を失い透は構えを解き変身も解除した。

 

 透が臨戦態勢を解いたのを見て、クリスは彼と弦十郎を交互に見比べた。透が構えを解いたという事は、彼ら相手にはその必要が無いと判断したという事だ。彼の事を信じているクリスとしては、それに倣ってシンフォギアを解除したい。

 しかし弦十郎の事を信用していないクリスは、そうする事に躊躇せずにはいられなかった。

 

 逡巡するクリス。その彼女の肩に、透が優しく手を置いて頷いてみせる。

 それだけでクリスは彼が何を言おうとしたのかを理解した。大丈夫だと、そう言いたいのだ。

 

 透に諭され、クリスは渋々シンフォギアを解除した。信用していない弦十郎達に無防備な姿を晒すのは気が進まないが、透が信用すると言うのなら彼を信じるクリスとしてはそれに倣わずにはいられない。

 

 シンフォギアを解除し、弦十郎の話を聞く姿勢を見せるクリス。しかし弦十郎への警戒は解いていないのか、透の陰に隠れる様に──或いは透がクリスの心情に配慮して自ら壁になったか──している。

 そんなクリスの姿に弦十郎が軽く肩を竦めると、周囲の死体などを調べていた二課のスタッフが何かを見つけたのか彼の名を呼ぶ。

 

「司令!」

 

 3人がその声に釣られてそちらを見やると、黒服のスタッフが1枚のメモ用紙の様な紙を持っているのが見える。

 

 一体それが何なのか? それを弦十郎が確認しようとした時、突然周囲が爆発し始めた。トラップが仕掛けてあったらしい。爆発自体はともかく、それによって崩れる館の天井が彼らに降り注ぐ。

 

 その時透が何より気にしたのは、弦十郎と共に入ってきた二課のスタッフ達だ。自分達は兎も角、このままでは彼らが瓦礫の下敷きになってしまう。

 

〈グラビティ、ナーウ〉

 

 逡巡は一瞬。透は重力魔法を頭上に全力で掛け、降り注ごうとする瓦礫を浮かせに掛かった。流石にこの規模となるとコンディションが万全でも苦しいものがあるのか、透の額に大粒の汗が浮かび上がる。

 

「と、透!?」

「総員退避だ! 急げ!!」

 

 この状態は長くは続かない。そう判断した弦十郎は即座に全員に退避命令を出した。

 命令を受けて速やかに館から出ていくスタッフ達。最後の1人が出ていき、残るは弦十郎と透、クリスの3人のみと言うところで、館の暗がりからライドスクレイパーが飛んできた。

 

 まさかの攻撃に目を見開く透。見ると館の奥にはライドスクレイパーを投擲したのだろう琥珀メイジが1人佇んでいた。恐らく、館を爆破しても尚生き延びた者が居たら始末する為に配置されたのだろう。

 

「させるか!!」

 

 あと一歩と言うところで透に突き刺さりそうだったライドスクレイパーを、弦十郎がギリギリのところでキャッチする。

 そこで透の重力魔法が切れた。支えを失い、館の天井が3人に降り注ぐ。

 

 クリスは咄嗟に透に抱き着き彼を衝撃と落下物から守ろうとしたが、何時まで経っても何も降ってこない。違和感を感じて目を開けると、そこでは弦十郎が落下してきた瓦礫を受け止め2人を守っていた。

 

「大丈夫か?」

「な……何で?」

 

 状況が理解できず呆然と問い掛けるクリス。一方透は、自分に向けてライドスクレイパーを投擲してきた琥珀メイジが再び襲い掛かってくる事を警戒して、魔力消費によって気怠い体に鞭打ち周囲を警戒した。

 

 するとそこへ、何者かに攻撃されたのか琥珀メイジが後ろ向きに飛んできた。3人が何事かとそちらを見ると、そこには全身を黒いローブで包んだアルドが右手に銀色のハーメルケインを構えているのが見えた。

 

 琥珀メイジは直ぐ様体勢を立て直し、アルドと弦十郎達を交互に見ると状況が不利である事を悟り、瓦礫を受け止める為に弦十郎が手放したライドスクレイパーで飛び立ちあっという間に逃げていってしまった。

 

 逃げていく琥珀メイジを見送ったアルドは、肩の力を抜くと銀色のハーメルケインを左手に逆手に持ち替えながら3人に近付いた。

 

「ご無事ですか?」

「あぁ、こちらは問題ない。衝撃は発勁で掻き消した」

「…………そうですか」

 

 さも当然の様に言う弦十郎に、アルドが何か言い淀んだのを見て取ったクリス。言いたい事は分かる。正直彼女が感じた疑問とかには同意したいところだが、それ以上に気になる事があったのでその事にはそれ以上突っ込む事はしなかった。

 

「って! そんな事どうだって良い! それよりも、ギアを纏えない奴があたし達を守ってんだよ!? つかそもそも、おっさん誰だ!?」

「ん? あぁそう言えば、前は颯人君の通信機越しに話しただけだったな。改めて初めまして、風鳴 弦十郎だ。雪音 クリスに、北上 透」

 

 どこか聞き覚えのある声だと思ってはいたが、自己紹介を受けてクリスは漸く弦十郎の事を思い出した。通信機越しにではあるが、自分たちの事を助けたいと言っていた男だ。

 それを思い出した瞬間、クリスは透の陰に隠れながら彼を睨みつける。強い警戒心を感じはしたが、肝心の盾にされている透が弦十郎に困ったような笑みを向けている為迫力に欠けている。今の彼女の姿は寧ろ微笑ましくもあった。

 

「それと、俺が何故君らを守ったかだったな。それは単純だ。ギアの有る無しじゃなく、俺がお前達よか少しばかり大人だからだ」

 

 大人…………弦十郎が口にしたその単語に、クリスは顔を歪めた。クリスにとって、大人と言う存在はそれだけの存在だったのだ。

 

「また大人か……あたしは大人が大嫌いだ! 死んだパパとママも大嫌いだ! とんだ夢想家で臆病者、あたしはあいつらとは違う!? 戦地で難民救済? 歌で世界を救う? いい大人が夢なんて見てるんじゃ……あ────」

 

 感情のままに大人と言う存在に対する不満を吐き出すクリス。その不満は彼女の両親、そしてその2人が描いていた夢にまで及んだ時…………クリスは己が何を口にしたのかを自覚し顔から血の気が引いた。

 

 弾かれるように透の方を見ると、彼はクリスに笑みを向けている。が、その笑みには隠しきれない悲しさが滲み出ていた。

 

「ッ!? ち、違うんだ、透。そんな……そんなつもりは、無かったんだよ。あたしは…………あたしは────!?」

 

 言うべき言葉が見つからず、頭の中がぐちゃぐちゃになりクリスは支離滅裂な事しか口に出来ずにいた。今にも泣きだしそうな顔で透に近付く。が、あと一歩で触れられると言うところでクリスは先に踏み出す事が出来ずにいた。

 おずおずと手を伸ばすが、触れそうになると見えない力が押し返しているかのように引っ込んでいく。少しでも触れたら透が壊れてしまうと、そう思っているかのようであった。

 

 そんなクリスの頭に、弦十郎が手を置いた。

 

「俺は君らがどんな辛い目に遭ったのかを知らない。想像する事しかできない。だが彼が、お前の両親と同じ夢を抱いていたのだという事は分かる。その夢を、もう叶えられないのだろうという事も……」

 

 弦十郎が目を向けると、透は首に巻いたマフラーを少しだけずらした。そこに見える傷跡に、思わず痛ましい顔をせずにはいられない。

 

「……すまなかった。助ける事が出来なくて」

 

 辛そうに顔を歪めながら透に向けて弦十郎が頭を下げると、透は彼に頭を上げさせ儚い笑みを浮かべながら首を左右に振った。そこには悔恨も何も感じられない。どこまでも透き通った、純粋に弦十郎を気遣っている様子が見て取れた。

 

──この少年は、何処まで優しいんだ──

 

 弦十郎には分かった。透はクリスとは対照的に、大人に大して何の恨みも憎しみも抱いていない。彼は全てを受け入れているのだ。己の身に降りかかった災難も、何もかもを────

 

「……クリス君の両親は、君達2人に夢は叶えられると言う揺るがない現実を見せたかったんだろうな」

「何だって?」

「大人になったら背も伸びるし、力も強くなる。財布の中の小遣いだって、ちったぁ増える。子供の頃はただ見るだけだった夢も、大人になったら叶えるチャンスも大きくなる。夢を見る意味が大きくなる」

 

 紡がれる弦十郎の言葉を聞いて、透は大きく頷いた。彼が頷いたのを見て、クリスは2人の顔を交互に見比べた。

 

「お前の親は夢を見る為だけに戦場に行ったんじゃない。歌で世界を平和にするって言う夢を叶える為、自ら進んでこの世の地獄に踏み込んだんだ。きっとな」

 

 その言葉はクリスの胸に深く突き刺さった。本当は、クリスにも分かっていた。

 クリスの両親は彼女の事を大切に思っていた。思っていたからこそ、夢を叶える瞬間を見せて彼女の心を希望の光で照らそうとしたのだ。ただそれが、理不尽と言う陰で覆われてしまっただけで。

 

 恐らく透はもっと早くからその事を理解していたのだろう。理解し、そして信じていたからクリス達について行ったのだ。

 

「じゃあ、夢を叶えようとする前に夢を、歌を奪われた透はどうなるんだよ? 透は何でそんな風に笑っていられるんだよ? 返してくれよ…………透の声を、夢を、歌を返してくれよ」

 

 堪らずその場に崩れ落ち、静かに涙を流すクリスを透が抱きしめ、その2人を弦十郎が優しく抱きしめた。医者でもない彼に今できる事は、少しでも人の温もりを与えてやる事だけだったから。

 

 崩れた館の中に、クリスのすすり泣く声が響く。

 

 それを止められるのは、この場にいる者の中でただ1人────

 

「…………」

 

 涙を流すクリスを見て、透は何かを決心したように顔を上げると徐にクリスから離れ、カリヴァイオリンで演奏し始めた。突然の彼の行動に、クリスだけでなく弦十郎とアルドも彼に注目する。

 

「透、何を……?」

 

 透の行動が理解出来ず、クリスは涙を流しながら問い掛ける。それに対し、透は笑みを向けると演奏を続けた。

 

 そんな彼の行動の意図に、クリスよりは冷静だった大人2人はいち早く気付いた。

 

「何かを……伝えようとしているのでは?」

「あぁ。声を、歌を歌えない代わりにヴァイオリンの音楽で想いを伝えようとしているんだ。それを理解できるのはただ1人、君だけだ」

 

 言われるまでも無く、クリスは透の想いを受け取ろうと心を落ち着かせる事に専念していた。

 懸念があるとすれば先程まで頭が混乱していた為、透の想いを理解できるまでに時間が掛からないだろうかと言う事だったがそれは杞憂だった。透の演奏は、それだけでクリスの心を落ち着かせる事が出来た。おかげでクリスは、とても落ち着いた気持ちで透の演奏を聴きその中に込められた彼の想いを受け取る事が出来た。

 

「透……少しも悲しんでない」

 

 クリスが感じた通り、透は微塵も悲しんではいなかった。歌が歌えなくなった事、言葉で想いを伝える事が出来なくなったことは確かに惜しい。しかし、歌が無くなっても彼にはヴァイオリンがあるし、彼の想いを言葉も介さず受け止めてくれるクリスが居る。

 たったそれだけの事だが、それで彼は十分に救われていた。

 

 だからこそ、彼は自分の事でクリスに苦しんで欲しくはなかった。自分の事を、彼女の歌の枷にして欲しくはなかった。

 

 クリスは透の優しい演奏から、その想いを確かに感じ取っていた。

 

「でも、あたしを元気付けようとした所為で、透は歌えなくなったんだぞ? なら、あたしが透の代わりに歌うのが……」

 

 それは違う、違うのだ。透が望むクリスの歌は『クリスが心から楽しむ歌』であって、『歌えなくなった自分の代わりの贖罪の歌』ではないのである。

 

 透が先程悲しんだのはそれが理由だ。彼はクリスが透の夢を否定したようなことを口にしたから悲しんだのではない。クリスが透も愛した彼女の両親への想いを忘れてしまったようなことを言った事が悲しかったのだ。

 

 だからこそ、クリスには想いを理解してほしかった。そして思い出してほしかった。自分は少しも辛くはない事と、彼女の両親への愛を。

 

「透……あたしは……」

 

 それでもまだ一歩踏み出す事が出来ないのか、愁いを帯びた顔をするクリス。どうやら演奏だけではここまでが限界らしい。自分の演奏の力の及ばなさに透は歯噛みする。

 

 すると透は今度は演奏を止め、クリスに近付くと彼女の頬を両手で包み目を瞑って額を付けた。演奏と言う小手先の手段に頼ることを止め、裸の想いを肌で彼女にぶつける事を選んだのだ。

 

 普通に考えれば、こんな事で想いなど伝わる訳がない。傍から見れば何を血迷った事をと思うだろう。だが透は信じていた。自分のクリスへの留まる事の無い愛を、そしてクリスが自分を愛してくれている事を。

 

 互いに吐息がかかる距離に顔を近付けられ、思わず赤面するクリス。

 

 その瞬間、クリスは確かに聞いた。

 

 

 

 

 クリス……大好き……

 

 

 

 

「あ、え…………」

 

 耳で聞いた訳ではない。だが心は確かに感じ取った。透からの温かな愛と、自分への明確な好意。自分への愛の告白を、確かに感じたのだ。

 

 クリスの様子から想いが伝わった事を察し、目を開けて顔を離そうとする透。

 だがクリスは離れそうになる彼に抱き着き、ギュッと抱き締めた。溢れ出る想いが力を与えているかのようだ。

 

「うん……うん! あたしも、透の事が好き。愛してる」

 

 透の想いは確かに伝わった。彼が本当にクリスに求めているもの。そしてクリスへの愛。それはクリス自身も望み、ずっと傍にあったものだった。

 同時にクリスは体が軽くなったような感覚を覚えた。再会してから今までずっと、クリスは透に対して後ろめたさを感じていた。透の代わりに歌う事が自分の使命とも感じてすらいた。それが間違いだと分かった。

 

 この瞬間、クリスは本当の意味で透と向き合う事が出来たのだ。

 

「透…………ありがとう」

 

 先程とは違う涙を流しながら、笑みを浮かべて透を抱きしめるクリス。透の方も、クリスと本当に分かり合えた事に歓喜に涙を滲ませていた。

 

 心が通じ合った事に喜ぶ2人。その様子を、弦十郎とアルドは優しく見守っていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 その後、落ち着いた2人を伴って弦十郎とアルドは館を出た。その際透とクリスはずっと手を繋いでいた。

 

「それで、これからどうするんだ?」

 

 館を出た所で弦十郎は3人に問い掛けた。透とクリスの2人は勿論、何故かまだ居るアルドにもだ。

 

「正直、まだ大人は信用できない。でも…………」

 

 クリスが不安そうに透を見ると、透は優しい笑みを浮かべながら頷いた。それがクリスの心に安心感を与え、重い一歩を踏み出させた。

 

「でも、透が信用するって言うなら、あたしも……信用してやるよ。透に感謝しろよな!」

「ははっ、それで十分さ。これからよろしくな」

 

 こうしてクリスと透が仲間に加わった。長年捜し続けた少女を結果的に救う事が出来、弦十郎も安堵からか薄く笑みを浮かべている。

 

 問題はアルドの方だ。彼女はここに何をしに来て、何故まだ居るのか?

 

「君の方はどうするんだ?」

「その事ですが、ウィズよりこれを預かっています」

 

 そう言ってアルドが差し出したのは、一つのウィザードリング。以前颯人がウィズから一方的に渡され、そして用事が済んだら使い魔に回収されていったテレフォン・ウィザードリングだった。

 

 差し出されたウィザードリングを見て、弦十郎は透を一度見て再びアルドに目を向ける。

 

「これは?」

「ウィズもあなた方との連携について考えていたようで、これで颯人を中継点にして今までより適度に情報交換などを交わしたいそうです」

 

 どうやらウィズの方も二課に歩み寄る姿勢を見せてくれたらしい。ウィズが直接傍にいてくれないのは残念だが、少しはこちらを信用してくれたような気になり弦十郎は嬉しさを感じずにはいられなかった。

 

「分かった、颯人君に渡しておく。ウィズにはよろしく伝えておいてくれ」

「それでは、私はこれにて。失礼します」

 

 指輪を渡すと恭しく頭を下げ、その場を立ち去っていくアルド。

 

 その背を見送って、弦十郎は透とクリスを車に乗せ二課本部へと帰還するのだった。




と言う訳で第52話でした。

今回で透とクリスも正式にカップルになりました。こちらは普段からイチャついてるからあまり変化はありませんがね。

基本クリスはスカイタワー戦まで二課に合流はしませんが、この作品では弦十郎達の事を信じている透が懸け橋となってクリスを早々に二課へと合流させました。
因みに今回の告白シーン、最初はアルドが作った一時的に声が戻るアイテムで久しぶりに話せるようになった透の生の声で行わせる予定でしたが、アルドが便利キャラになり過ぎる気がしたので断念して2人の愛が言葉無くして心を通じ合わせると言う演出にしました。

執筆の糧になりますので、感想その他よろしくお願いします。

次回の更新もお楽しみに!それでは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。