虞美人の人理救済   作:幸福な市民

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ぐっちゃん先輩が人理救済可能なメンバーに入っていない。
そう項羽様から悲しげに伝えられた一人のマスターが、
ノリと勢いで書いたIFの人理救済の旅。

注:FGO二部三章までのネタバレを多分に含みます。
  既にクリアされた方向けへの小説になります。
  項羽様への愛(という名の補正)に溢れています。
  以上の内容に引っかかる方は、ブラウザバックをご推奨いたします。


プロローグ:虞美人への贈り物

 これはIF。

もしものお話だ。

とある英霊が人理継続保障機関カルデアのデータ、

及び未来予知すら可能とする演算領域の全てを駆使しした演算結果のお話だ。

 

 もしも、

  レフ教授がAチームを”レイシフト先で殺害”しようとしていたら。

   ”この世界で人理を救済した主導者”がカルデアを訪れていなければ。

    

 これはIF。

もしも”虞美人が人類最後のマスターとなって人理を救済したら”

 

 そんな演算結果のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

追記

「演算……結果:失敗」

「結果:失敗」

「結果:失敗」

「結果:失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」…………

 

 

 

 ふと、主導者がこう呟いていた。

 

「もし、ぐっちゃん先輩が最後のマスターだったとしても、絶対に世界は救えたよ」

 

 その言葉に対し、我が妻は苦々しい顔で「嫌味のつもり?」と主導者に言い返していた。

だが夜に我に与えられた部屋でその時の事を悦ばしげに語っていたので、

そう言われた事に嬉しかったのだと判断した。

 

 ところでもうすぐ虞の誕生日である、実に目出度い。

だが、渡す祝いの品に困っている。

何せ今部屋にある物は全てカルデアから与えられたもの。

誰でも要求すれば通る程度のもの。

かといって我が躯体は戦闘に特化するよう調整に調整を重ねられているため、

手作りで何かを作って贈るには不向きであるといわざるを得ない。

何を贈っても喜んではくれるだろうという予測結果が出はしたが、

それは我から与えられたという事象に対して喜んでいるだけであり、

贈り物の内容に対して喜んでいるわけではないと考えられる。

 

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

 

 我は決意した。

必ずや妻が心から喜んでくれるようなものを贈ろうと。

そして我が演算機能の限界まで駆使して出た結論はこうであった。

主導者が語った事が真実であると伝えよう。

虞や、虞や。

汝でも人理は救済出来ると証明してみせよう。

製作者より与えられた演算機能の全てでもって、それを事実として贈ろう。

それが無骨な戦闘兵器に過ぎぬ我が贈れる全身全霊のものだと判断したが故に。

 

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

 

 だがその演算は困難を極めた。

演算を行うことではない。

機能もデータも十全である。

純粋に”人理を救済する”という事がどれだけの難行であるか、という話である。

 

 試しに主導者本人で演算を行ってみる。

その結果試行回数100,0000に対し、達成数僅か7回。

 

 戦闘に負けて死ぬ。

流れ弾が当たる。

乱戦で純粋に殺される。

ヘラクレスが全てを蹂躙する。

溺れ死ぬ。

存在証明が間に合わず消失する。

劣悪な環境に耐え切れず死ぬ。

疲労が積み重なり倒れる。

仲間の英霊を逆に庇おうとして死ぬ。

倒すべき敵に情けを出して殺される。

供給魔力が足りなくなって負ける。

はぐれ英霊への答え方を間違えて殺される。

山で墜落し、英霊による助けが間に合わなかった。

混沌の泥に触れてしまう。

人理焼却までの時間制限に間に合わなかった。

必要な仲間が足りなくて全滅する。

魔術王の第三宝具にマシュ殿共々焼き尽くされる。

 

 主導者といえども、数々の奇跡と偶然がなければ人理救済は為しえない。

それほどの偉業であり、それだけの難行である。

 

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「失敗」

「第1,0000,0000回グランドオーダー仮説実証演算終了、結果:失敗」

 

 

 そして現在。

誕生日まで残すところ半日となりながら、まだ成功を証明出来ないでいた。

 

 迫害の歴史を有する為、人理救済に積極的ではない。

生来からの華人であるため、武才と戦略戦術論に欠ける。

温和な気性は戦闘そのものを忌避する場面も多々ある。

また複雑に再構築される霊基パターンの存在証明が追いつかない事も少なくない。

何より、ソロモンの人間体であるロマニ殿と、

円卓の欠片を盾に内包したマシュ殿が生存していないのが響く。

存在証明の負担を如何程ロマニ殿が死力を尽くして陰ながら支えていたのか、

英霊召喚の基盤として、万難から守護するという点において、

どれだけマシュ殿がマスターの隣で支えていたのかがよく理解できる。

それだけに、この二人がいないという理由での失敗事例が7割以上を占めている。

 

 だが我は信頼している。

主導者が出来るといったのならば、人理救済は為しえると信じている。

我が妻ならば、その深奥に可能性を秘めていると信じている。

飽くなき演算の果てに、必ずや人理救済を為せる可能性があると信じている。

しかし時間が無い。

演算そのものは一瞬に過ぎない。

一瞬も億と積み重ねたのなら、それは長き時間を要する。

贈り物はあくまで贈り物。

我が姿を見せぬ事によって我が妻が心に負う痛みは、

満足な贈り物を渡せぬより遥かに上。

そのようにして、部屋の中一人静かに演算装置を働かせて、

今後の行動の最適解を導き出さんと試みた。

 

 そうしている内に部屋の外から足音が響く。

音の大きさ、高さ、一歩ごとの間隔などの様々な条件を元に、

到着までの時間、来訪者の身体の大きさ、年齢、機嫌などを予測していき、

それを元に部屋のレイアウトや好みそうなお茶請けなどを用意する。

性別は不明……、来訪者特定。

 

「入るぞ、会稽零式よ」

 

 予測通りである。

性別不明、その時点でこのカルデアには仏蘭西の間諜、

そしてもう一人、我が設計者たる秦の始皇帝二名以外在り得ない。

理性が蒸発しているというライダーは、このカルデアには招かれていないのだから。

そして間諜がここを訪ねる道理なし。

故に答えは決まっていた。

しかし我が演算では、どのような事象が起きるかは予測できても、

その心算の内奥は読み取れぬ。

特に予定もないこの時期に、我が設計者が訪れたのは何故だかは分からなかった。

 

「我が設計者よ。

申し訳ないが、急ぎの案件が有る故、手短に御用命を賜りたく」

 

 そのような場合、率直に聞くのが一番である。

臣下の礼を取る我に頷くと、用意した椅子に座って語り出した。

 

「何、今カルデアではそなたが虞美人の誕生日祝いに盛大な贈り物を用意していると、

サーヴァントの間では専らの噂でな。

蘭稜王辺りは楽しみに待つが吉、探りは無粋などとお行儀のいい事を言っておったが、

朕は近くを通りがかった際に、ふと先に内容を知ってみたくなってな。

何、大勢が知らず気にしている中、唯一知っている優越感とやらだ」

 

 残念ながら、盛大には程遠い為、皆の期待には添えないだろう。

我が設計者にはそのように伝えた。

用意しているものは、

”虞美人がAチームの生き残りとして、最後のマスターとして人理の未来を担い、

人理焼却を防ぐ事は可能かどうか”の”成功した演算パターン”である、と。

実際に人理を救済した主導者、付き従った英霊マシュ殿。

それに影ながら支え続けた異聞帯以前からのカルデア職員。

それらの人員ならその価値は通じようが、

逆にその旅路が如何に難行かを知らぬ者にとっては、

ただの計算結果に過ぎないのかもしれぬ。

下手すれば贔屓目で達成したに過ぎないと揶揄する輩や、

自分でも出来ると論争を始める輩が生じるかもしれない。

つまり一部の者以外にとっては無価値に過ぎない可能性の方が高い。

 

「なんだ、つまらん。

というより、あの女がその条件で人理を救済出来る可能性……0であろう」

 

 流石にそれは聞き捨てなら無い。

ただの一言で斬って捨てるには、

余りにも主導者の言葉と、我が妻の可能性を軽んじている。

だが一瞬だけの空白、我が設計者の真人躯体の内部に搭載された最高級の演算装置、

そう、手慰みに長大極まりない機械の躯体の演算機能を人型にまで圧縮した代物。

即ち、我が演算機能を旧世代と鼻で笑える高性能を誇ることだろう。

 

「その条件と申したであろう?

そう気を悪くするものでない。

なに、気紛れに一つ良き事を聞かせてやろう。

謹んで拝聴せよ」

 

 その言葉に、自然に膝を折り、当然の如く頭を垂れていた。

また我が設計者も当然のように言葉を続ける。

 

「なに、試しに朕も軽く演算してみてな。

だが朕が主役でなければつまらぬので、

サーヴァント召喚成功例として、

あの小娘のオリジナルの代わりに召喚させてみた。

そして朕ならば驪山にて凍結させてある英雄達、

つまりは人智統合真国秦が誇る強靭無比なる者共を我が機械の躯体内にて生産可能。

まあ、英霊召喚システムを流用して出来た代物ゆえ、

座に登録された者しかクローン生産出来なかったが十分に過ぎる。

あやつもそなたが居る事で意気軒昂。

もはや人理の一つや二つ、救済して当然の陣容よ。

ここまで言えば、そなたの演算装置なら容易に理解出来よう。

そなたの演算に足りない要素とは何か?」

 

 

「すなわち、朕である」

 

 

 

 

 これはIF。

もしものお話だ。

とある英霊が人理継続保障機関カルデアのデータ、

及び未来予知すら可能とする演算領域の全てを駆使しした演算結果のお話だ。

 

 もしも、

虞美人が最後のマスターとなったら?

第四号英霊召喚成功事例となった始皇帝が、

カルデアでその演算機能を最大限活用してバックアップを行ったら?

韓信、諸葛孔明、司馬懿が戦略が軍略を担当したら?

項羽、呂布、自称呂布(?)が戦場を暴れまわったら?

哪吒、三蔵法師、野生的な玉藻の前が武と術を巧みに使って戦ったら?

蘭稜王、秦良玉、武則天、玉藻の前が後方支援したら?

燕青、若き李書文、老いた李書文、荊軻が敵指揮官の暗殺を狙ったら?

陳宮によるマスターの自爆特攻(ただし無限残機)を敢行したら?

 

 

 

 これはIF。

もしも”虞美人が人類最後のマスターとなって人理を救済したら”

 

 そんな演算結果のお話である。

 

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