「あの……恥ずかしいので、あんまり見ないでくださいね……?」
芽衣の部屋に足を踏み入れる。
桃色を基調としたなんとも女の子らしい部屋だ。
寝起きであるにもかかわらず、布団はきちんと整頓されていて、床や机の上はさっぱりと片付いている。
それに、鼻腔をくすぐる女の子らしい甘ったるい匂い。
それでいて、まったく嫌な気持ちのしない、いい香りだ。
同じシャンプーを使っているはずなのに、どこからこの違いは来るんだろう。
いい匂いを感じるってことは生物としての相性がいいって聞くし……まさか、俺にとって芽衣は、生物としてぴったりの相手なのでは!?
だとすると、俺が彼女を好きになったのも必然なのかもしれない。
そして、逆も然り……。
「だ、だから、あんまり見ないでくださいってば……!」
「わ、悪い悪い」
……咎められていたのに、思いっきり解説しながらジロジロ部屋を眺めてしまった。
いけないいけない。
「……じー」
「……部屋を見ちゃダメって言ったからって、私を眺めるのも禁止です!」
「じゃあどこを見ればいいんだっ!」
……視覚を全否定された。
「んん……っ。し、仕方がないので、私は眺めててもいいですよっ」
「そっちを取るんだ」
はい、一部禁止解除。
目の前の可憐な美少女を睨めまわすように見つめる。
美味しそうだな。
と、そこで俺は気付く。
……はっ! これが芽衣の思考なのか!?
だとすると……やはり、芽衣は食べてしまいたいほど俺のことを……!
「や、やっぱり見られると恥ずかしいです……」
こんなかわいい女の子が、俺のことを想ってる。
そう思うと、余計に芽衣のことが好きになってくる。
「み、見られてたら暑くなってきちゃいました……。脱いでもいいですかっ?」
「脱がさせていただいてもいいですかぁ!」
「……お兄ちゃん、変態さんみたいですよ」
ジト目で俺を見てくる妹。
はぁ、興奮しちゃうじゃないか。
でもなんだろう。
その冷たい眼差しの中にも、少しだけ愛が見え隠れしている。
照れ隠しのためにわざと冷たい態度をとってるんだろうか?
だとしたら、かわいいやつめ。
だとしなくてもかわいいんだけど。
そんなことを考えていると、ふいに立ち上がる芽衣。
ピンク色の毛の長いカーペットに埋まってる俺からは、パンツがもう少しで見えそうだ。
「ちょっ、お兄ちゃん! どこ見てるんですかっ!」
「妹のえっちなおぱんつです」
「……お兄ちゃんのばかぁっ!」
正直に答えたら、怒られてしまった。
いいねえ、もっと怒らせて踏まれたい。
「……まあ、いいです。それじゃ、始めるから……お兄ちゃん、横になってください」
いつになく積極的な、芽衣。
きっと、それだけ俺のことを長くにわたって想っていたんだろう。
そう思うと胸が高鳴る。
「……ベッドで、すればいいのか?」
恥ずかしながら、俺は今までそういった経験がない。
だけど、こういうことはベッドでする。
ベッド・インなんて言葉があるし、そのくらいは知っていたんだけど……。
「……ベッドだと汚れちゃうじゃないですかっ。床でいいですよ、床で」
芽衣が、そんなことを宣う。
実際にそういうことをするときは、女子のベッドではしないほうがいいのだろうか。
慣れていないのが、バレてしまった。
ちょっぴり恥ずかしい。
でも、逆らうわけにもいかないし。
その場で、俺は仰向けに横になった。
「……それじゃあ、お兄ちゃん」
芽衣が、俺にまたがって馬乗りになる。
「……お兄ちゃん、いただきますっ!」
……ほんとに、一線を超えちゃうんだな。
これまでそういったことに縁が微塵もなかっただけに、実感が湧かない。
でも。
お父さん、お母さん……俺、大人になります!
俺は、覚悟を決めた。
だって俺は、目の前の銀髪の彼女が、ずっと大好きだったんだから。
「……ああ! 来てくれ、芽衣っ!」
そう、俺が彼女を受け止めようとしたとき。
……芽衣は、俺の腕をノコギリで断ち始めたのだった。
続く。