プリンセスはどこまでいってもプリンセス   作:森峰

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今回の話はあくまで準備レベルで、本ヤンデレらしきものは次回です。


ミフユ 表

 

「お金はあった方がいいが、お金では買えないものもある。」

 

 それが私の父親の人生に対する考え方とも言うべきものだった。結局は"お金では買えない"という妻、つまり私の母親からの借金で身を滅ぼしたが。

 

 私が生まれた頃はまだ借金などは抱えていなかったらしい。父親も商人で色んな場所を廻ってはその土地の珍しい物を集めては部屋に飾っていた。

 

 私も物心ついた程の歳だったから、将来の夢は父親みたいに色んな所を巡りたいと思っていた、その時までは。

 

 起点となったのは、母の浮気で借金が膨らみ始めた事だろうか。父が商人で家にあまりいない為母は昼ご飯を食べた後よく化粧をして外に出掛けていた。

 

 父親も月に数回帰るかどうか、という位だった為その程度の浮気がバレるはずはないのである。その時は私も借金があることも知らず、見た目を小綺麗にするものだから、どこか楽しい場所にでも行っているのだろうかとも思っていた。

 

 しかし、それが長く続くので私も段々と不安になっていき、父にこっそりとその事についての手紙を送った。住所が無い旅をする人に手紙を送るのは中々にお金がかかるもので、それをなけなしの小遣いで送っていたということから、どれほど心配していたかが伺い知れるだろう。

 

 父の返事は婦人同士で食事にでも行っているのだろう、と。そこまで心配することはない、と。その土地の観光名所らしい写真と共に送られてきている。私は父が言うのであればそうなのだろうと思う反面、その返答に満足できずに悶々と日々を過ごしていた。

 

 日々を過ごしていくうちにやはり不安が膨れ、私を放っておいてほしくないと手紙をまた送るも返事は同じ。その事を帰ってきたら言ってやるの一点張り。

 そんな不安をよそに、めっきりと母の出掛ける頻度は少なくなっていき、終いには出掛ける事もなくなっていた。私も母がずっと家にいてくれることはすごく嬉しかったし、まだ幼かった私でも母が少し父から心が離れていたことは分かっていたのでそれが無くなって今度こそ3人の家族になるんだと考えていたことを覚えている。

 

 だが、それが崩壊の第一歩だった。それから程なくして、誰かが時間を問わず戸を叩くことが日常になった。そして、窓から石が投げ込まれ始めた。私は何が起きていたのかということが当時明確には分かっていなかったものの何かが私たち家族を蝕んでいるのだということは分かっていたのだろう。窓が割れて、石が飛び込んでくる度に母に泣きついていた。その度に母は子どもを泣かせる事に罪悪感を感じていたことを今は察することが出来る。それが拍車をかけていたと思う。

 

 ついに事は起こった。忘れもしない11月13日。明日父親が帰ってくるという日。母親が夜逃げすると言い出してきた日。もちろん私はその時は父親のようになりたいと言っていたので父親と離れるなどと聞いて許せるはずもそれを拒んだ。むしろ母を引き留めようとする。が、それも叶わず母は私が聞かないとなるとすぐに家を出ていき、家に独りぼっちで一夜を過ごした。その時はまた前のようにすぐに帰ってくるのではないかという希望もあって遅くまでひたすら待っていたが、気づいたら寝てしまい、起きると目の前には父の顔があった。

 

 そうしてどうしたと聞かれお母さんが出ていっちゃったということを話したり、これからどうするかということを話していると、外から数人が騒いでいる声や音が聞こえた。

 

 何が起きているのかを探ろうと父が扉を開けようとすると、それよりも前にやや乱雑に開けられ、そこには数人の一般人然としている人達とその後ろに6人程の武装した人達。

 

 そいつらによって全ての真実が伝えられた。母が浮気して借金していること、逃げた後に捕まって今はどこかで働かされるだろうということ。そして残った借金を払ってもらう必要があること。今考えるとそのような義務は一切ないのだけれど、父親の性格も手伝って借金を負うことにしたのだろう。

 

 これが今に繋がる出来事のあらましだった。

 それからはひたすら働くだけの日々。お金になることは何でもした。子供の子守りから工事現場、新薬の実験体まで、それのせいかおかげか、人より体の治りが異常と言えるほどまで早くなった。それもまた、私にとっては利点だった。

 

 そうしてかなりの年月かけて借金を返し終えると程なくして父は死んでしまった。それが彼の意地だったのだろうか。

 

 もはやその頃には私の父への愛情というべきか、運命共同体としての信頼はあるが憧れというものはすっかり薄れ、葬式等も親族の私のみで、ただ火葬をして骨を撒く程度で、と考えていた。

 

 家もその時にはすでに売っており、働くために住む場所すらも変え、簡素なもので売ってしまうのに躊躇いはない。私はそれを終えれば、やりたい事もないので各地を放浪しようかとでも考えていた。その為の力は今までの仕事で養ってきたつもりだ。

 

 しかし、火葬の日になると何処から聞き付けたのか老婆から、はたまた神父まで大勢の人がこの町に集い、勝手にというと言い方が異なるが共に葬式を行い、その後もかなりの日々を彼らと共に過ごした。そこでは勝手に露店を出したり、大道芸人らがそこでパフォーマンスを行ったりしていた。そこでは他の商人や富豪等がかなりの取引を行ったらしく、その町の町長に感謝された。

 

 そんな日々は中々に楽しかった。働くということしか眼中になく、自分は何者かというものすら考えられなかった時がまだ続いていたので、このどんちゃん騒ぎで今までの人生は終わったんだとけじめをつけることが出来たし、これからの事を考える事が出来た。

 

 そして、葬式も終わり、そろそろ他の人も帰ろうかと言うときに最後の宴のようなものが開かれる事となった。

 

 最後であるから、皆がよく喋る。様々な私の知らない父親の話を聞けたし、彼らもまた私から彼の話を聞いていた。その喧騒の中で私ははたと気づいた。皆が一人の事についてわいわい話すと言う光景。これが父の得た物か、と。

 

 その瞬間、今まで自然と封じ込められていた小さかった時の記憶が、ぼろぼろと崩れるように思い出された。

 父がくれた貝で出来たペンダント、サーカスに行った時に買ってくれた私があまり好きじゃなかったピエロの人形、それらも全部売ってしまった。それに、それに、と様々な思い出がこぼれて抑えきれなくなって、涙が溢れた。

 

 その後様々な人が私を受け入れようとしてくれたが結局ウェスタリア家というかなり有名とも言うべき商家で働くこととなった。

 

 そして今はその娘であるアキノと共に働いていたユカリと【メルクリウス財団】というギルドを立ち上げる事となって今に至る。今は私は相も変わらず何でも屋の真似事をして、ギルドに必要と思われるお金を貯めている。今までよりは多少楽になっただろうか。

 

 私は父のような商才もないし、目の前の仕事しか出来ないような単純で器用貧乏だ。けれども私は私の出来ることで父のいた道を往こう。

 

 そうして私もいつか、何かをつかめたらと、そう思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

親愛なる妻へ

 

私はいま東国と呼ばれる所にいる。写真にあるのはそこで有名な軍人「オダノ・ブナガ」と呼ばれる人の所有する城らしい。なんと大きなものだろうか。

子供が生まれるというのに仕事で帰れない事を残念で、申し訳なく思う。

 今回の話であるが、今度は女の子の名前を考えてみた。私も考えに考えたものであるが不満であれば別の名前をつけてほしい。

私が考えたのはミフユという名前、どうであろうか。

東国ではよく付けられる名前だそうで意味はどんなに厳しい冬でもしっかりと生き抜ける人という意味だそうだ。

 どんな困難があってもその子に春が、幸せに包まれますようにという意味を込めて私はこの名前を選んだ。

 私ももうそろそろ帰ることが出来る。その頃には子供も生まれているのではないだろうか。今から君と私たちの子供に会うのを楽しみにしている。それでは。

          

どんなに離れていてもこの心は変わらないままで




2019/12/6 加筆修正しました。
正直ミフユのルサンチマンもので一家業出来るまである。
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