プリンセスはどこまでいってもプリンセス   作:森峰

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クリスマスだからクリスマスのキャラでもあるアヤネという建前。
正直アヤネのキャラストーリー見ると闇深だったのでこれは実質原作準拠です。



アヤネ

「おはよっ、ぷうきち!」

 

『おう、アヤネ。今日も元気に行こうぜ!』

 

 今日もぷうきちは挨拶を返してくれる。

 

 ぷうきちは私の家族でもあり、親友だ。パパとママは一応家族だけど、全然私とおしゃべりしてくれなくて、家族だけど家族じゃないみたいな、そんな感じ。それだったらママ・サレンの方がずーっと優しいし、家よりもサレンディア救護院にいた方が落ち着く。

 

 朝もいつも通りの時間。今日はどうしよっかな。といっても今日はパパとママとの面会があるからそれまで遊びにはいけないけど。

 

「おはようございます。アヤネちゃん。それに、ぶうきちも。」

 

「おはよー。」

 

『いつも朝からご苦労様、だな。』

 

 とりあえず寝てた部屋から出てリビングに行くと、スズメがお掃除をしてた。スズメはこのサレンディア救護院の一員としてママ・サレンからこの家を任されているの。

 

 ママ・サレンはいっつも頑張ってる。全然ここには帰って来てくれない時もあるけど、それは私たちのために頑張ってくれてるからで、家でも私のことを褒めたりしてくれるし、まるで本当のお母さんみたいな。だから私はママ・サレンって呼んでる。

 

「今日はアヤネちゃんは何かお出かけとかはしますか?」

 

「うん。今日はパパとママに会う日だから。もうすぐ出掛けるね。」

 

『今日は珍しく朝からだからな。もうすぐ行くぜ。』

 

「あっそうなんですか。……う、うーん。あの、そのですね。」

 

「そんなに気を遣わなくても。そういえばクルミは?」

 

「もうご飯も食べ終わって外にいっちゃいましたよ?キョウカちゃんと遊ぶみたいですけど。」

 

「ふーん、そっか。それじゃあ私もご飯食べよっと。」

 

「はい!そういえば昨日お嬢様が……」

 

と繰り返すのはいつもの毎日。ずっとこのままだったらいいのにって思ったりもするけど、そうなればママ・サレンに迷惑もかけちゃうし自分でこのギルドを支えれる位にはならなくちゃ。

 

 そうして私みたいな子がいても助けれるようになれば、家族になれれば、なんて考えたりもするけどそれはまだまだ先の話。今は自分の事をしなきゃいけない。

 

 他愛ない会話と共にご飯を飲み込み、そろそろ時間だからと準備をして家を出る。家を出ると共に気分も落ち込んできた。正直言うとパパとママには放っておいてほしいという気持ちもある。けれども、向こう側も譲歩してその条件だから仕方ないと思うけど。まぁ早く済ませてクルミでも探そうかな。

 

「あれ?そういえば、私の隣にまだお皿置いてあったけど、誰か来てるのかな。」

 

『帰ってきたらわかるだろ。それよりもちゃっちゃと行くぞ。』

 

「はーい。」

何でかななんて言ったけど、理由は分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

『おいおい、そんなに落ち込むなよ。それを何回も繰り返す気か?そんなでどうするよ。』

 

「うー、でもー。」

 

 平日の昼下がり、こんな日でも人で埋もれているランドソルの広場でぼんやりしていた。昼ごはんも食べてないし、お腹がぐーぐー鳴っている。

 

 いつもだったらそこら辺で串焼きとかサンドイッチでも買ったりしてるけどそんな気持ちにはなれなかった。

 

 原因はさっきの、パパとママに会った時に、本当に今までしたことはなかったのだけど遂に手を出してしまったこと。普通だったら口では責めても暴力はしなかったのに、今日は何だかカッとなってしちゃった。

 

 そこからすぐ飛び出すように出ていき、今に至る。

 

 どうしてあんなことをしてしまったんだろう。これできっとママ・サレンも少なからず怒られるだろうし、私も別の場所に移されちゃうかもしれない。よく考えればわかることなのに……。何でかな。やっぱり一緒に暮らそうなんて言われたからかな。

 

 さすがにそのように誘われたのは初めてだった。今までは何をしてるのか、とか何を食べたのかとか簡単な質問しかしてこなかった。私も渋々それには答えてたし、それが別段不満というわけでもなくて。そんな簡単な返事にに満足したのだろうか。

 

 しょうがないよ、しょうがない。そんなこと言われても、今更過ぎるよ。私が欲しかった時にはくれなくて私の家族ができたと思ったらそれを奪おうとする。

 

 はぁ、いつもこうだ。小さいときからずっと変わらない。気分が落ち込む、家には誰もいなくて、私だけでずっと独りで。

 

『そんなに落ち込むなよな。どうせまた会わなきゃいけないんだぞ。』

 

 そうだ。今の私にはぷうきちがいる。それにお兄ちゃんとかも、こんなとこ見られたらお姉ちゃんなのにそんなのでいいの?って笑われちゃう。

 

「そうだね、ぷうきち。」

 

とばっと立ち上がる。

 

『おっ、元気でたか?』

 

「ううん、まだ!今から元気を出しに行くの!」

 

 とりあえずご飯を食べよう。そうすれば遊ぶ元気も出てくるはず!

 

 なに食べようかな。そういえばお兄ちゃんがよく行ってたのはクレープ屋さんだって聞いたことがある。疲れた時には甘いものが一番とも言うし、とりあえずそれを探しに行ってそのついでにお兄ちゃんかクルミかが見つかればいいけど。

 

 クレープ屋さんを見つけようと歩みを進めると意外とすぐに見つけれた。水色髪の女の人がやっているけれどこの店であっているのかな?わからないけどとりあえずお腹も空いたから買っちゃお。

 

「すいませーん!」

 

「…………」

 

「すいませーん!」

 

「……はっ!あっ、ごめんねー。ぼーっとしちゃってて、お姉ちゃん、失敗♪クレープ注文かな?」

 

「クレープひとつくださーい!」

 

「味は?いまならイチゴがおすすめだよ♪」

 

「じゃあそれで!」

何か変な人だった。

 

作っている最中もすっごいぼんやりしてたりどこか遠くを眺めるからこの人本当に大丈夫かな?と思うけどこの人が見てる方向を見ると人混みの中にうっすらお兄ちゃんっぽい服の人がいたから合点がいった。出来たクレープをもらって少し急ぎながら食べていく。

 

 ちょっと変な人みたいに思われるけどもし本当にお兄ちゃんだったらとなりふり構ってはいられない。距離が段々縮まったから姿も見えてきて胸中の人である事が分かった。少し急いで食べたからか口の周りにクリームがついちゃったから口を拭う。

 

『おいおい、ちゃんとハンカチ使えよ。鞄に入ってるだろ?坊主に見られたら恥ずかしいぞ。』

 

「……うん。」

 

たしかにそんなみっともないところは見せられない。ついでに鏡も見ながら身だしなみをパッと整えよう。お兄ちゃんは人だかりから離れて、町の北へと向かっていた。どこか山でも目指しているのかな?私も追いかけないと。

 

 人だかりを抜けるとお兄ちゃんの姿が見えると共に、また別の事に気がついた。1人じゃないのだ。もう1人ついていっている。

 

背丈は私くらいで…………帽子の形がちょっと変だ。突起が2つあって、何かいれてるのかな?っていうくらい盛り上がっている。

 

 手には剣と盾を持って、振り回したりもいるけど武器というには小さいような。何か戦いごっこみたいな事をするのかな?お兄ちゃんは見た目と違って純粋だからごっこ遊びとかも喜んでやってくれる。

 

 私もクルミとかも一緒におままごとをしたことがあるけど凄い楽しかった。途中から浮気とかナイフで刺すまねをしたりして変な感じになっちゃったけど。

 

 …………にしてもこれは、嫌だ。お兄ちゃんがどこの誰かも分からない人と喋っている。きっと私が行っても何でもないように挨拶をするだろう。それが嫌だ。

 

 私がお兄ちゃんの日常じゃなくなってしまっている。前だったらそんなことは無かったのに。この感じはあれだ。パパとママと対面している時の。

 

 なんとも言えない不快感と焦燥感に駆られるけども、必死に落ち着くように体を強張らせる。

 

 落ち着け。今ここで私が行ってもお兄ちゃんに迷惑をかけるだけだ。それならクルミを探そう。私がここにいても嫌な気持ちになるだけだ。クルミとキョウカと一緒に遊ぼう。そうとなれば体を反対に向けて、反対に、向けて。

 

『アヤネ、そんなのでいいのか?それじゃ、前と同じだぞ。坊主が俺等から離れる時アヤネは何が出来た?』

 

前、少し前にお兄ちゃんは実は私達と一緒に住んでいた。その時はとっても楽しかった。ママ・サレンもその時はなるべく早く帰って来ていたし、休みの日も皆でお出かけしたりと、楽しいことに事欠かなかった。

 

 けれど、お兄ちゃんはここでいつまでも居候するわけにはいかない、と家を出てしまい私達は引き留める事が出来ず。いてほしいではなく、いても構わないと言ってしまった。

 

 そもそも私達、サレンディア救護院は何かしら家族に対して歪んでいる。ママ・サレンがサレンディア救護院を立ち上げたのも、スズメがママ・サレンに仕えているのも、私とクルミが救護院にいるのも。

 

 それからはママ・サレンも帰りが遅くなってきて、スズメもつい皿を一つ多く並べてしまう。私も、クルミも、最近は二人で寝ることが多くなった。

 

「でも、そんなことしたら、お兄ちゃんが困っちゃう。」

 

もう間違えちゃいけない。今じゃなくてもいいんだ。明日にでもお兄ちゃんが独りで居るところを探しに行けばいい。

 

『それであいつに盗られてもいいのか?もしかしたら俺達に愛想つかせてあれの家に今住んでるかもしれないなぁ。』

 

 それを聞いてピクリと震えた。私達から離れたのは別の人が好きになったということ?それじゃあもう駄目じゃん。私達にうんざりしたのかな。やっぱり面倒だったんだ。そうだよね。帰ろう。帰ってスズメとお話しよう。クルミとかも、一緒に出かけれれば

 

『だから、あいつを吹き飛ばせばいい。俺を使ってさ。』

 

 その言葉に驚いてぷうきちを放して落としてしまう。いつもだったらぷうきちは私を諫めてくれる家族のような立場なのに、今日はどこかおかしい。それに驚いて落としてしまった。だからごめんねと言おうとしたその時 

 

『まず、俺を持つんだ。それからあいつに当てる。簡単な事だろ?』

 

 頭の中から声がした。

 

 え?と思ってぷうきちを見る。ぷうきちは動かないまま。けれども頭の中ではぷうきちの声がする。

 

 ぷうきちを持って問いかける。

 

「本当に、それでいいの?」

 

『あぁ、それからお前の気持ちを伝えればきっとわかってくれるさ。』

 

 ぷうきちは動かないままで、声だけが頭のなかにどろりと残り続ける。

 

いつもは話しかければぷうきちが返事をしてくれた。でも今はぷうきちからは響かない。

 

 

 

 

 

それじゃあ一体この声は誰?

 

 

今までの家族の事やお兄ちゃんのこと、そして家族の事がぐるぐると頭の中でかき混ざってぐちゃぐちゃになってもその出口は見つからないから、ぷうきちを握りしめてそれから逃げる様に私は走り出した。

 

 




やーってやるやーってやるやーってやーるぜ いーやなあーいつをボーコボッコにー

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