ソードアート・オンライン ~二人の記録~   作:無気力さん

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彼女も登場


二話

 不意に、足が地に付く感覚を感じた。重力により身体が地面に抑え付けられるしっかりとした感覚。閉じている瞼の隙間から、僅かに漏れてくる光。

 

 現実では一切感じる事の出来ない光。

 

 期待ではち切れんばかりの心を抑えてはいますが、そんな努力など直ぐに何処かに行ってしまう事でしょう。私は普段開ける事の無い瞼をゆっくりと開けるとそこには……。

 

 「あぁ……!」

 

 目の前に広がる蒼穹、眩く照らす太陽、西洋を思わせる街並みが、私を迎え入れてくれました。辺りには私達以外にもログインしたプレイヤーの皆様が沢山居て、皆一様に思い思いの行動をとっています。

 

 手を閉じたり開いたりして、現実との感覚の違いを確認している者。私と同じ様に風景の美しさに感動している者。近くにいる他のプレイヤーに話しかけている方や、何か予定があるのか、人混みの中を物凄い早さで駆け抜けている方もいらっしゃいました。

 

 その様な風景を見ながら、私は大挙して押し掛けてくる感動の波を一身に感じております。βテストでかつて体験してきたとは言え、やはり数ヵ月ぶりの光の体感は言葉に現せない程です。気を緩ませると思わず涙が溢れてしまいそうです。

 

 そう言えば、一緒のタイミングで佳樹もログインした筈ですが、一体何処へ行ったのでしょうか?

 

 辺りを見回しますが、それらしい影は見当たりません。直ぐ隣で一緒にログインしましたが出てくる場所は違うのでしょうか?

 

 「やア、そこのお嬢さン」

 

 私が佳樹を探していると、不意に声を掛けられました。お嬢さんと呼ばれたので一瞬佳樹かと思いましたが、そもそも佳樹はさん付けしませんし、私はその声に心当たりが有りました。

 

 「アルゴさん!」

 

 振り返って確認すると、そこには頬に鼠の髭を模したペイントを施し、フードの着いた外套を羽織った女性が笑いながら立っていました。

 

 「やあやあ、βテストぶりだネ。元気にしてたかイみっちゃん?」

 

 「はい!アルゴさんもお元気そうで何よりです!直ぐにアルゴさんだって分かりました!」

 

 「まア、βテストのアバターをそのまま使ってるからナ。みっちゃんも元気そうで何よりだヨ。ところでお連れさんが見えない様だけド?」

 

 そう言いながらアルゴさんはキョロキョロと辺りを見回しています。

 

 「そうなんです。一緒にログインしたので近くに居るとは思うんですが……」

 

 「まア、地域毎にある程度の法則はあるだろうガ、こればかりはランダムだからナ。私の場合は見知った顔が居て助かったヨ」

 

 ナハハハハと、笑いながらアルゴさんは私の頭をポンポンと撫でてきます。彼女は時々、この様に相手にたいして余裕のある態度をとってくる事がありますが、一体歳はお幾つ位なのでしょうか?以前は佳樹が居た為でしょうか教えて頂く事は叶いませんでしたが、今なら教えて下さるかもしれません。

 

 「やあ、そこのお嬢さん方」

 

 私はアルゴさんに気になった事を聞こうとしたら、私達に話し掛けてくる声が聞こえました。何だかその呼び掛けに若干の既視感を感じた私に対して、アルゴさんはどこかムッとした雰囲気を出しながら声のした方へ振り向きます。

 

 話し掛けてきて下さったのは、二人の男性でした。お二方とも人当たりの良さそうな笑顔を浮かべており、ゲームのアバターなので当たり前なのでしょうが、西洋風の整った顔立ちをしているのも相まって、とても好感が持てます。

 

 「キミ達今フリーかな?良ければ俺達とパーティーを組んでこれから狩りに行かない?」

 

 「狩りですか?」

 

 どうやらパーティーのお誘いだったようで、これからモンスターを狩りに出掛ける様です。私としては、知り合いが増える事は喜ばしい限りですし一向に構わないのですが、未だに出会えていない佳樹の事が気掛かりです。そんな折、アルゴさんが私と男性二人組の間に入ってきました。

 

 「悪いけどオニーサンがタ、私達は今ツレを待っててソイツと一緒にパーティーを組む予定なんだヨ。他を当たってくれないかナ?」

 

 「?」

 

 アルゴさんとパーティーを組むという話はしてない筈ですが、何か考えがあるのでしょうか?とりあえず私は黙っておくことにします。

 

 「ふーん……。それって男?」

 

 「ああそうだヨ。期待させちゃって悪かったネ」

 

 「でもソイツまだ居ないみたいだし良いじゃん。女の子二人を待たせちゃう男なんてほっといて俺達と行こうぜ?」

 

 「だからもうすぐ来るんだヨ!」

 

 何故か徐々に険悪なムードになって行きます!佳樹、助けてください!

 

 「なあ、そっちの子もさ、良いだろ?一緒に行こうぜ」

 

 そう言って一方の男性の方が手を伸ばしてきて私の腕を掴んできました。反射的に武の動きが出て制圧しそうになりましたが、理性でそれを抑え込みます。その代わりに彼と私の空間の間に警告文が現れました。

 

 「そんな……強引なのは困ります」

 

 「オイ!ニーチャンいい加減にしナ!気の弱そうな方を狙ってんじゃないヨ!ハラスメントコードで吹き飛ばされたいのカ?」

 

 アルゴさんもあからさまな敵意を出して、男性方に対抗しています。辺りの人達も私達の方を見ながらざわついています。

 

 「お嬢」

 

 不意に私の腕を掴んでいた手が緩まりました。その聞き慣れた声に、私は漸く来たかという感情は有りましたが、やはりとても安心しました。

 

 「大変お待たせしてしまって申し訳ございません」

 

 「もう!本当です!一体何処へ行っていたのですか!」

 

 「後程弁解させていただきます」

 

 そう言って佳樹は男性方の方を向きました。すると、お二方はばつが悪くなったのか、踵を返して行きました。その様子を見てアルゴさんも関心したかの様に口笛を吹きます。

 

 「いやぁ、睨み一つで男供を追い払っちゃうなんてナ。ヨシ坊もやるじゃないカ!」

 

 「アルゴさんも、自分が居ない間にお嬢を守って頂き、有り難う御座います」

 

 「全くだヨ!女を待たせる何てナイト失格だナ」

 

 「返す言葉もございません」

 

 そう言って佳樹は私達に深く頭を下げた。私は怒っている訳では無いので慌てて頭を上げさせます。

 

 「それより佳樹、今まで何処に居たのですか?」

 

 「お嬢、βテストでも云いましたが、ゲーム内では現実の情報を晒さないという暗黙の了解が有ります。このSAO内での自分の名前は《ケイジュ》ですので、よろしくお願いいたします。先程の質問ですが、お嬢にこれをお渡ししたく、少々時間を頂いておりました」

 

 まあワタシはこれからもヨシ坊って呼ぶけどナ。というアルゴさんの発言を横目で聞きつつ、私は佳樹がアイテムストレージからアイテムを取り出すのを確認しました。

 

 「これは、槍?」

 

 それは柄が木製で、穂先が金属製の一般的な槍でした。受け取ってみると、握りはしっかりしていて非常に使いやすそうです。

 

 「初期の装備ですので性能は余り宜しくは無いでしょうが、使い易さを重視させて頂きました。お気に召しますでしょうか?」

 

 佳樹はトレード申請を出しながらそう聞いてきました。隣でアルゴさんが関心したように腕を組ながら首を縦に振っています。

 

 「はい!とても嬉しいです!ありがとうございます、よし……ケイジュ」

 

 「お気に召された様で何よりです。アルゴさん、貴女にも此方を」

 

 「エッ!ワタシにもあるのカ!?」

 

 ケイジュの行動が予想外だったのか、アルゴさんはとても驚いていました。

 

 「貴女にはお嬢を守って頂いておりましたので、これも初期の物で性能は低いのですが、敏捷力に若干の補正が掛かるブレスレットになります」

 

 ケイジュはアルゴさんに対してトレード申請を出しながらそう説明しました。アルゴさんはとても驚いていた様で、固まった様に動きませんでした。

 

 「ナハハハハ、まあみっちゃんはβテストの時からの付き合いで妹分みたいな所もあるからナ。言っとくけど、ワタシが無償でここまで遣ってやるのはみっちゃん位なもんだゼ?」

 

 そう言ってアルゴさんは照れながらも、ケイジュからのプレゼントを受け取ってくれました。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 その後私達とアルゴさんは、互いにフレンド登録を済ませた後に別れました。一緒に行動しないかと誘ったのですが、アルゴさんはアルゴさんでやりたい事があるとかで……。

 

 

 

 「セイッ!」

 

 私は《フレンジーボア》の突進に対して、後方へ下がりながら槍による突きを放ち、それでも止まらない突進を危なげ無く回避しつつ、すれ違いざまに切り払いの一閃。振り返りながら槍初級スキル《スラスト》の初動を完了させた。穂先が淡い水色に光るのを確認して、フレンジーボアが振り返るのと同時にソードスキルを発動。

 

 「はあっ!」

 

 槍はフレンジーボアの眉間に突き刺さり、ポリゴンを霧散させて消えた。

 

 

 

 「ふぅ……」

 

 残心を終えて私は一息つきました。私の目の前にフレンジーボアを倒した際の経験値と獲得コルが表示されます。

 

 「あ……今のでレベルが上がりました」

 

 「おめでとう御座います、お嬢」

 

 今ので私はレベル3に上がりました。佳樹は先程レベル4になった所です。かなりのハイペースでレベル上げが進んでいます。その理由は……。

 

 「ふぅ……武術家としての血が騒ぎます」

 

 単純に楽しいからです。普段の稽古で、私達武術家は如何にして敵を倒す、もとい『殺す』かの訓練をしているのです。乱暴に感じるかも知れませんね。しかし、矛を止めると書いて武と呼ぶ物でも、その本質は『力により自己を貫く』『他者を力により押さえ付ける』事なのです。綺麗事を言っても武とは即ち暴力。だからこそ武術家の精神は高潔かつ、自己を律する為に鍛えなければいけません。

 

 それにより、今まで培ってきた技術を使う事なく生涯を終える武術家が殆どで、寧ろそれが当たり前と言えます。だからこそ此のように磨いた技術を向ける相手に事欠かないこの空間はフラストレーションを発散出来る唯一の空間と言えるでしょう。

 

 故に楽しい。私がSAOに嵌まった第二の理由と言えるでしょう。

 

 何より、SAO内にあるソードスキルには藤堂流の型が参考にされていて、使っていて嬉しいというのも有ります。

 

 先程私が使ったスラストも、藤堂流槍術『一之突』とほぼ同じですし、佳樹が使っている片手用曲刀初級スキル《リーパー》も藤堂流短刀術『霞』と一緒です。沢山の人達に導入部分だけとは言え、藤堂流を使っていただけるのは嬉しい限りですね。

 

 「お嬢、時刻がそろそろ夕食の時間に迫っております」

 

 「あら、本当ですね」

 

 ゲームに夢中になって時間を忘れる何てβテスト以来です。視界の左上の隅にデジタル時計があり、そこには5時25分を指した所でした。周りの景色を見てみれば夕日が沈んでいる所で、SAOにも時間や季節の設定があるという事が予想出来ますね。

 

 「自分は夕食の準備をしなければなりませんので、ここでログアウトさせて頂きますが、お嬢は如何致しますか?」

 

 「そうですね、一人で楽しむのも宜しくありませんし、私もログアウトさせて頂きます」

 

 そう言って私は右手を振って、メニューウインドウを開きました。しかしそこで私はある事に気がつきました。

 

 「お嬢」

 

 佳樹が訝しげな声で私を呼びました。どうやら佳樹も気が付いたみたいです。

 

 「ログアウトボタンが無い?」

 

 「GMコールも、繋がりません」

 

 佳樹は既にGMコールを試してくれた様ですが、それもどうやら意味が無かったみたいです。

 

 「一体どうしたと言うのでしょうか……」

 

 只のバグである可能性もありますが、それではGMコールも繋がらない理由は?私にはこの出来事から何らかの悪意を感じてなりません。佳樹も同じなのか、難しい表情をしています。

 

 始まりの街にある鐘が鳴り始めました。時刻が5時30分を回ったのでしょう。その鐘の音色は、今現在起こってる問題も相まって、酷く不気味に聞こえます。

 

 「……佳樹!?」

 

 不意に佳樹の気配が無くなり、慌てて佳樹の方を見ると、そこには誰も居ません。佳樹が居なくなってしまいました。

 

 そして、私の視界は急に白く埋め尽くされ、謎の浮遊感に襲われました。

 

 

 




アルゴの口調や性格がわかりません

これで良いのでしょうか?
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