ソードアート・オンライン ~二人の記録~   作:無気力さん

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七話

 2022年 12月2日 16:00

 

 はじまりの街からトールバーナまでの距離を特に時間も掛けずに踏破した俺とお嬢は、第一層攻略会議が行われる噴水広場へと来ていた。30分前には到着していたが、その時点で50人近いプレイヤーが既に集まっていた。彼らの中にははじまりの街で直接ソードスキルや戦術指南をしたプレイヤーが何人も居て、俺達の存在に気付き手を振ってくれたり、挨拶をしに態々出向いて来てくれる人達が沢山いた。そんな彼らに俺もお嬢も誠心誠意応え、この場で再び会えた喜びを共に分かち合った。ゲーム開始から1ヵ月、共に過ごした時間は短いが、俺達はこのデスゲームを生き延びた立派な戦友だった。

 

 定刻に近づくにつれ集まってくるプレイヤーの人数は更に増えて、今は80人近い人数のプレイヤーがこの小さな噴水広場に集まってくれていた。

 

 「す、凄い人数です……」

 

 「ええ、これは予想以上ですね」

 

 お嬢は集まってくれたプレイヤーの人数に息を飲んでいた。これだけの有志が集まるとは、実の所そこまで期待していなかった。そこら辺で時間と共に涌き出てくる雑魚とは違う。明日挑むのはこの第一層で最強を誇るフロアボスなのだ。今まで以上に命に関わる戦いにこれだけ多くのプレイヤーが参加する意思を示してくれていると思うと、図らずとも胸が熱くなるというものだ。

 

 俺達が到着した後に集まってきたプレイヤー達も、俺達の存在を確認すると手を挙げて合図してくれたり、それこそ親密になった友人と呼べるプレイヤー達とは明日の健闘を称えあった。

 

 「それじゃあ、5分遅れてしまったけど今から攻略会議を始めたいと思います!」

 

 その時、噴水広場のお立ち台から溌剌とした声が上がった。

 

 「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう! 知っている人は沢山居ると思うけど、先ずは自己紹介から。俺はディアベル。職業は……気持ち的に騎士(ナイト)やってます!」

 

 ディアベルさんのおどけながらの自己紹介に、周りから笑いながらの野次が入る。また、所々から黄色い声も上がった。彼ははじまりの街で初心者プレイヤーの育成に短時間ながら関わって貰い、戦闘センスの高さを見込んで攻略をお願いした、俺達と同じβテスターだ。この様子を見ても解ると思うが、人心掌握にも長けていて、尚且つ容姿も整っている稀に見る好青年だ。

 

 彼が静粛に、と手で野次を抑えると、スッと真剣な表情になる。

 

 「昨日、俺たちのパーティーが、あの塔の最上階でボスの部屋を発見した」

 

 ディアベルがそう告げた瞬間、広場にいたプレイヤー達がどよめきつつも、顔つきを変えて重苦しい空気に包まれた。

 

 「俺たちはボスを倒し第二層に到達して、このデスゲームをいつかクリアできるって事を、はじまりの街で待ってる皆に伝えなきゃいけない! それが今この場にいる俺たちの義務なんだ!そうだろ、皆!?」

 

 ディアベルさんの演説と問いかけにプレイヤー達が拍手と歓声を贈っていた。指笛まで吹くプレイヤーも出るほどだ。確かに、彼の発言は戦闘組をただ単に鼓舞するだけでなく、俺達の攻略を待っている人達が居ると改めて再認識させた。その使命感を煽る士気の挙げ方に演説を聞くプレイヤー達は第一層のボス攻略に更なるやる気を出し始めている。

 

 「OK。それじゃあさっそくだけど、まずは六人のパーティーを組んでみてくれ。勿論、はじまりの街で組んでもらったパーティーメンバーのままでも構わない」

 

 そう、1ヶ月前の会議でフィールドに出る時は少なくとも3人以上という規定を作った。その際に数え切れない程のパーティーが出来上がったのだが、そのパーティーをそのまま流用していいという事だ。勿論、6人に満たないパーティーや、規定を無視してソロで活動しているプレイヤーも居る。当の俺達も、俺とお嬢のみで1ヶ月間過ごしてきたのでソロ活動をとやかく言うつもりは無いのだが。そういった者達は恐らく人数の足りない所に組み込まれるか、もしくはレイドパーティー内で遊撃という形に収まる事だろう。周りを見ても、続々とパーティーが出来上がっていく所を見るとやはり攻略開始当初からの慣れ親しんだパーティーを組むプレイヤー達が殆どだ。

 

 そんな中、俺達はパーティーを組むでもなく周りの様子を窺っていた。人数が多いため、日頃からパーティーを組んでいるプレイヤー同士がパーティーを組終わってから、溢れた者を見つける方が効率的だ。加えて、この日を迎えるずっと前からお嬢から承った依頼事を実行するのにも、こうする方が都合が良かったというのもある。

 

 デスゲーム開始直後、はじまりの街の広場を抜け出したプレイヤーの救済。それがお嬢から承った依頼内容だった。

 

 これは攻略初期に俺達や、俺達と以前から交流のあったβテスターと一緒に、初心者プレイヤーを鍛え上げていた時の事だった。初心者プレイヤー達は、自分達の為に時間を割いて生きる手段や戦い方、ソードスキルの使い方を教えてくれる俺達に対して並々ならぬ感謝を寄せてくれていたが、それに比例する様にある疑問を感じ始めていた。

 

 

 

 

 他のβテスターは何をしているのか。

 

 

 彼等がそう感じるのも必然だった。当時初心者プレイヤーを教えていたβテスターは、俺達やアルゴさん、ディアベルさんを合わせて12人。βテスター1000人に対して全体の1%しか参加していない計算になる。一応付け加えておくと、βテストを体験したにも関わらずこの正式版をプレイしていない幸運な者も中には居るだろうから、必ずしも1000人全員がゲームに参加しているとは限らない。ただそれは飽くまでも数字上の問題であって、俺達以外のβテスターが初心者プレイヤー育成に携わっていない事実は覆せない。しかし俺はそれを当たり前だと思っている。βテスターなんて、一般プレイヤーよりも2ヶ月多くソードアート・オンラインをプレイしただけのそれこそ一般人に過ぎない訳で、世間一般的に俺達の方が常識はずれであるのだ。しかし理不尽にもデスゲームに強制参加させられたプレイヤー達はそのような冷静な思考が出来る筈もなく、徐々に俺達以外のβテスターに対する非難の声が目立ってくるのを感じた。勿論、声を大にしてβテスターを非難する事は無かったが、言葉の端に俺達以外のテスターを良からず思っている発言をするプレイヤーは多くなっていったのは明らかだ。βテスターと一般プレイヤーの間に埋めようの無い確執が生まれてしまう。それを危惧したお嬢は俺に件の依頼をしてきたのだ。

 

 これに関しては俺も自ら動こうと考えていた。何故なら、俺達以外のβテスターを孤立させてしまった原因の一端は俺達も担っていたからだ。デスゲーム開始直後、俺は一万ものプレイヤー達を納得させる為にβテスターの名を語り、βテスターである故に技術や情報を持っているとさえその場で公にした。ならば、俺達が初期にやっていた初心者プレイヤー育成に参加していないβテスターは、自らが持てる技術や情報を独り占めしようとしていると一般プレイヤーが考えるのは当たり前だ。俺達の行いが一部のプレイヤーの形見を狭くしている以上、何とかしなければならない。

 

 とりあえず救済とは言ったが、一般プレイヤーから非難を浴びせられているβテスターの間に入って盾になるといった事をするつもりはない。現状誰がβテスターかが分からない以上、俺も他のプレイヤー達も下手に動けないのは事実だ。ならばこちらでβテスターであろう目ぼしい人物に声を掛けていく、その対象が今回の攻略会議で溢れた少数パーティーやソロプレイヤーだ。此方が1人の状況で非難や晒し上げをする意思が無い事を示せば、少なくとも話位は聞いてもらえるだろう。後はこれからの行動を改めさせつつ、βテスターが陰ながらに支援をしていたという事実さえ作れば当面の目標は達成だ。その為の事前準備は既にアルゴさんに頼んである。まあ其なりのコルは支払ったが、必要経費と思えば仕方がない。

 

 

 「あの、ケイジュさんとミヤビさんですよね?」

 

 ふと、俺達を呼ぶ声が聞こえた。声がした方を振り向くとそこには1人の男性が立っていた。

 

 「覚えてますか?俺、キリュウって言います」

 

 「はい、確か先日迷宮区で助太刀した方ですね」

 

 お嬢は彼の問い掛けに笑顔でそう答えた。

 

 「あっ、覚えていてくれたんですね!あの時は助けてもらってありがとうございます!」

 

 話しかけてきたのはキリュウという両手用大剣を操るソロプレイヤーだ。数日前に迷宮区でモンスターに囲まれていた所を手助けしたのだ。歳は見たところ10代後半で、髪は短く逆立てられている爽やかな青年だ。

 

 「お二人とももうパーティーって組おわってます?もし良かったら俺と一緒にパーティー組んでもらえないですか?」

 

 「まだパーティーは組終わっていませんので構いませんよ。誘っていただいて有難う御座います」

 

 「やった!ありがとうございます!」

 

 キリュウさんは勢い良くガッツポーズをしながら喜びを顕にした。俺とお嬢がキリュウさんとパーティー申請をしていると、近くで何やらヒソヒソと騒ぐ声が聞こえる。そちらに目を向けると、3人組の女性パーティーがこちらを見ていた。向こうも俺が見ている事に気づいた様で、1人をけしかけている。背中を押されている女性は戸惑いながらも俺達の方へ近付いてきた。

 

 「あ、あの……ケイジュさんですよね?」

 

 「はい、貴女は確かコユキさんですね?」

 

 俺が彼女の名前を言い当てると後ろで待機していた2人は色めき立ち、当の本人は顔を赤らめて俯いてしまった。何故俺が彼女の名前を覚えているかと言うと、初心者プレイヤー育成の際に珍しい女性のみのパーティーがあり、偶然にもその担当が俺だったのだ。そしてその女性パーティーというのが彼女達のことだ。

 

 「あの、もし宜しければ私達とパーティーを組んで欲しいんですけど……」

 

 「勿論良いですよ。宜しくお願いします」

 

 俺がパーティー加入を承諾すると、遠巻きに見ていた他の2人も嬉しそうに此方に寄ってきた。先程俺に話しかけてきたのが盾持ち片手剣のコユキ、後から来たのが、左からメリーサ、ロザリオで、それぞれ槍使い、両手用大剣使いと、其なりにバランスの取れたパーティーに成ったのではないだろうか。欲を言えば盾持ちがもう1人欲しい所ではあるが、そこまで問題では無いだろう。

 

 「これで丁度6人で、パーティー完成ですね!」

 

 キリュウさんも嬉しそうにそう言った。女性が多くて昂る気持ちは男として分からないでも無いが、余りはしゃぎすぎるなよ?

 

 これにより俺達のパーティーは完成となった。俺としてはもう少し様子を見て、今後のためにソロプレイヤーを囲い込みたい所だったがまあ良いだろう。先程から広場に集まったプレイヤー達は注意深く観察していたからβテスターの目星はある程度ついた。俺は広場の隅を見る。そこにはフードを深く被った女性プレイヤーと片手剣を携えた黒髪の少年がいた。雰囲気から察するに恐らくあの二人はβテスターだろうが、そろそろ場も落ち着き始めたので詮索はフロアボス攻略後にしよう。

 

 

 「ちょっと待ってんか、ナイトはん!」

 

 

 ディアベルさんが攻略会議の続きを話そうとした時、そんな声が聞こえた。そして、広場に集まったプレイヤー達の人垣が二つに割れた。現れたのは、小柄だががっちりした体型の片手剣使いだった。茶色味がかった髪は、地毛なのかどうかは判断しかねるが非常に奇抜で宛らサボテンの様に逆立てている。プレイヤー間に動揺が走る中、身につけたスケイルメイルを鳴らし、会議に水を差すようにプレイヤーたちの間を駆け降りて壇上まで来た。皆の注目が今度は、そのプレイヤーに集まった。

 

「―――わいは、《キバオウ》ってもんや。こん中に死んでいった500人にワビ入れなぁあかん奴が混ざっとるはずや」

 

 キバオウと名乗ったその男性プレイヤーは、広場に集まった他のプレイヤーたちを睨めつけながら言った。俺とお嬢はすぐさまその意味を悟って顔を見合わせる。パーティーメンバーのロザリオさんは何やら悪態を吐いていた。

 

 「詫び? 誰がだい?」

 

 ディアベルさんも恐らく気付いているだろう。確認の意を込めてそう言った様に感じる。

 

 「はっ、決まっとるやろ! 今までに死んでいった500人は、奴らが―――βテスターどもが、なんもかんも独り占めしたから死んでしもうたんや!違うか!?せやろが!!」

 

 キバオウは、憎々しげに吐き散らした。その告発に一同は、押し黙ってしまった。

 

 「―――こん中にもおるはずやで、βテスター上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらおう考えてる小ずるい奴が。そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムを今作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命を預けとうないわ!」

 

 続くキバオウさんの言葉は容易く受け入れがたい内容だった。余りにも思考が短絡的すぎではないだろうか。また、本人がどの様な正義感を掲げてあの壇上に立ったかは理解は出来るが、その発言がどれだけのリスクを伴うかというのをいまいち理解していない様に思える。俺はお嬢に目配せすると、お嬢は何も言わずに頷いた。それを見て俺はその場から立ち上がる。

 

 「ケイジュさん、行っちゃダメです……」

 

 コユキさんの心配そうな発言を、微笑みかけながら手で制する。俺が一歩ずつ壇上に近付いていくと、その他のプレイヤー達も心配そうに俺を見つめていた。そんな彼等にも、大丈夫だと、手で制した。キバオウさんは、恐らく一般プレイヤーの中に広がるβテスターに対する蟠りの体現者だ。ならば俺はβテスターとしてその意見に対立する。ここで俺がしっかりと事を運ぶことが出来れば、上手く行けばβテスターと一般プレイヤー間に存在する問題を一挙に解決出来るかもしれない。

 

 キバオウさん、悪いけど貴方の事を利用させて頂きます。

 

 「自分何もんや」

 

 目の前まで来た俺に対して、キバオウさんは訝しげに睨み付けながらそう言った。どうやら彼は俺の事を知らないらしい。尚更好都合だ。

 

 「自分の名前はケイジュと申します。βテスターです」

 

 開場にどよめきが走った。壇上の上に立つディアベルさんも心なしか頭を抱えている様だ。端から見れば態々波風立てる発言をしなくても良いだろうという心境だろうが、行動を見る限りキバオウさんは良くも悪くも人の上に立てる人間だ。ここで彼の極論が罷り通ってしまっては今後の攻略に影響が出てしまう事を確りと理解して頂かなければならない。

 

 「ほぉう、愁傷な心掛けやないか。せやったら、今すぐ溜め込んだコルやアイテムぶちまけて俺らに頭下げんかい」

 

 俺とキバオウさんは頭ひとつ身長差があり彼が俺を見上げている状態になっているが、俺の物腰柔らかな言い回しからだろうか、不遜な態度を貫いたまま俺に先程の要求をしてきた。

 

 「断ります」

 

 それに対抗する様にキッパリとそう言った。するとどうだろうか、今まで俄に騒がしかった広場が水をうったかの様に静かになった。皆を背にしている為様子を見ることは叶わないが、広場に居るプレイヤー達はきっとこれからの展開を固唾を飲んで見守っている事だろう。それを確認することが出来ない俺は必然キバオウさんの表情を見る事になるのだが、当初呆気にとられていたそれは、徐々に怒りで顔を赤らめていく。

 

 「なんや、お前……理由ゆうてみい!」

 

 気の弱い者が見れば思わず後退りしてしまうと思う程に、彼は憤怒に顔を歪める。しかしその程度の事で怯んでしまっては、ウチの業界(武術家)はやっていけない。

 

 「その理由を言う前に、キバオウさん。貴方はこのアインクラッドを攻略する為には何が必用だとお考えでしょうか?」

 

 自らの怒気に怯まない目の前の男に僅かながら困惑したのだろうか、怒りを納める事は無かったがキバオウさんは逡巡して俺の質問に答えた。

 

 「そんなもん……強力なアイテムや強いプレイヤー…………チッ」

 

 キバオウさんはそこまで言って、自らのミスに気づいた様で、ばつの悪そうな顔をしながら舌打ちをした。

 

 「もうお気付きでしょう。潤沢な資金や強力なアイテムは勿論重要ですが、それを充分に扱える人が居なければ話になりません。現状それはβテスターが適任であって、そんな彼等からアイテムやコルを奪う行為は間違いなく攻略を遅らせる原因になります」

 

 俺のその発言に、キバオウさんは続く言葉を無くしたかの様に暫し押し黙る。

 

 「……せやけどな、許せんやろうが!βテスターが面倒見んかった所為で死んでいった500人にどう落とし前をつける気や!それにっ、そんな奴らを放っておく訳にもいかんやろ、信用ならんやろうが!」

 

 尚もキバオウさんは吼えた。形勢が悪いにも関わらず、まだ持論に拘る姿勢をみせていた。

 

 「自分は亡くなった500人が、βテスターの落ち度だとは到底思えません。それにβテスターは犯罪者ではありません。信用するしないは兎も角、まさか背中から刺す様な真似はしないでしょう」

 

 「……せやかて、何もせんと放っておいたら、……気ぃ良くして裏切るかも知れないやないか!」

 

 最早βテスターに対して私怨でも有るのではないかと疑ってしまう程、キバオウさんは自身の考えを曲げようとしない。恐らく引くに引けなくなってしまっている事は目に見えて明らかだったが、彼の頑ななその発言に、クレバーに話を進めようと思っていた俺の中で何かが切れた。

 

 

 「キバオウさん……あんたはもう黙れ」

 

 「っつ!」

 

 「信用だとか裏切るだとか言っているが、一番プレイヤーを信用してないのはあんたじゃないか!はっきり言ってな、あんたの強請にも似た提案はプレイヤー同士の信用や信頼を著しく損なう事だって何故分からない!」

 

 突如として豹変した俺の態度に、キバオウさんは呆然と俺を見ながら立ち尽くしていた。対する俺も、軽率に怒りを顕にしてしまった事に後悔を覚え、俯きながら立ち尽くす。それを見かねたディアベルさんが、俺の代わりに言葉の続きを紡いでくれた。

 

 「キバオウさん、ケイジュ君は誰よりも早く、率先して初心者プレイヤーの育成に務めていました」

 

 ディアベルさんのその発言を聞いたキバオウさんは、信じられないと言った様に驚愕した表情でディアベルさんを見た。

 

 「……何でディアベルはんがそんなこと知ってるんや……」

 

 対するディアベルさんも、僅かに気まずそうに真相を話す。

 

 「それは、俺も初心者プレイヤーの育成に参加していた、彼と同じβテスターだからです」

 

 

 

 

 

 

 

 「は、はは……。ほんまかいな……」

 

 とうとうキバオウさんはその場に崩れる様に座り込み、胡座をかきながら俯いてしまった。今の今まで絶対悪だと決めつけていたβテスターが自分の知らない所で初心者プレイヤーの助けになり、一般プレイヤーの代表としてβテスターに正義の鉄槌を振り落とそうと思っていた自分自身が、一般プレイヤーの助けすらしていなかった処か、攻略の脚を引っ張りかけていたという事実に心から打ちひしがれてしまっていた。

 

 ああ、俺は失敗してしまった……。

 

 失敗してしまったが、何とか目的だけは果たしてしまわなければ。

 

 俺は座り込み俯くキバオウさんの前に、膝をついて座り込み話始めた。

 

 「キバオウさん、自分は亡くなった500人を救えなかった事を大変遺憾に思っています。βテスターである俺がしっかりしていない所為で助けられなかった命です。貴方の言っている事も、強ち間違いでは無いのかもしれません。ですがどうか、βテスターを責めないで欲しい」

 

 俺の発言を聞いて、キバオウさんは僅かに顔を上げた。先を促しているかの様だった。

 

 「亡くなった500人は、恐らくその大半がβテスターです。それはデスゲーム宣告直後に、安全策を取らずにはじまりの街の広場から飛び出していったプレイヤーが主に亡くなっていると考えられます。つまり……」

 

 「βテスターか……」

 

 キバオウさんは俺の発言に合わせる様にそう呟いた。結局の所、キバオウさんが晒し上げしなくても勝手な行動をした者達はその報いを受けていたのだ……。

 

 キバオウさんは徐に立ち上がると、俺の肩を叩いた。

 

 「あんさんも人が悪いで……そんな大それた事しとったんなら、先にゆうてもらわんと……」

 

 そう言って彼は、もと来た道をとぼとぼと歩いていった。表れた時と同様、人垣は割れ、そこを俯きながら歩いて行く。それを見送るプレイヤー達は心なしか彼に憐憫の情を向けていた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてて辛くなってきた

キバオウさんごめんなさい
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