ダンジョンの外に夢を見るのは間違っているだろうか 作:星見 優月
「知らない」
そう答えた私に2人は説明した…土地の名前であり冒険者が冒険を求めてやってくる世界の中心であると。
「なんでオラリオに冒険を求めるの?」
「ここ、ダンジョンがあるからかな」
フィンは答えた。そして少女は初めて知った…自身が産まれてから過ごしていたこの空間がダンジョンと呼ばれていることを…
「私はこれからどうなるんですか?」
私はこのままの毎日を過ごしたくなかった…自分の知るこの空間の外に出てみたかった。
「君次第かな」
「外の世界を見てみたいです。連れて行って貰えますか?」
私には戦闘能力はない…断られればいつも通りの毎日に逆戻りになる。
「いいよ。多分僕が駄目って言ってもエルフの団員達が連れて行くだろうしね」
「エルフ…?」
私は長い間男達に捕まり、ほとんど勉強出来なかったため言葉しか知らない。そのためエルフと聞いてもなんの事か分からなかった。
「エルフというのは…」
リヴェリアが説明したことを短くまとめると魔法の扱いに長けた種族で私はその中で王族であるハイエルフらしい。同じようにリヴェリアもハイエルフらしいが敬われるのがうっとおしいらしく、敬われた時は軽くあしらっているらしい。また、仲間意識が高くハイエルフの為なら余程無理なことでなければ手伝ってくれるだろう…そう教えてくれた。
「最後に…君をあんな目に合わせた奴らの目的を教えて貰えないか」
「多分…子供を売るため…既に2人…」
リヴェリアは気まずそうにしているがフィンはなにやら考えているようだ。
「君は神がいない…神の恩恵(ファルナ)もない…ロキが許せば僕らのファミリアに入るかい?そうすれば身を守る力が手に入る」
フィンの提案は私にとっていいものだった。仮にダンジョンから出ても私には身元を保証してくれる人はいないため生活できないだろう…しかしロキ・ファミリアに身元保証人になってもらえれば生活は出来る。そしてファルナと呼ばれる神の恩恵…これを受けることで自衛能力を手に入れることが出来る。フィンからこのような説明を受け、私はその提案を受け入れた。
出発までは時間があるため、念の為護衛をつけてもらうことになった。その護衛はエルフの少女達がすることになった。私は外の世界を知らないため話をしても長く続かないと思っていたが少女達はたくさん話しかけ、話題を振ってくれるためだんだんと外の世界に行くという不安は無くなった。私は彼女達からすると敬うべき者なのだろう…しかし私にはその実感がない為どう反応すればいいのか分からない。
「勝手に盛り上がってしまってごめんなさい。皆少し落ち着きましょう」
困っている私を見かねたのか1人の少女が周りを宥めてくれた。
「ありがとう…」
その時私は不安を払ってくれた彼女達、助けてくれたリヴェリアとフィンの為に力になりたいと思った。
「私に何か出来ることはありませんか?」
「そうですね…今はまだ出発する様子はありませんが移動はそれなりに長いものになりますからゆっくり身体を休めてください」
聞いた話によるとこの空間にいる私以外の人は皆恩恵によって身体能力が強化されているため、長時間の移動でもそこまで疲れないらしい。移動はモンスターから私を守るために先発隊が安全を確保し、その後を進むことになるとのこと。移動する時に私を護衛するのはリヴェリアとこの少女達。これは私のガレスに対する反応から男性恐怖症の可能性を考えたフィンの提案らしい。幹部であるリヴェリアが私の護衛につくのは私がハイエルフだからだろうか…それとも安心できるようにか…私には分からない。しかし安全は保証されている。私はダンジョンから出る時を楽しみに思いながら出発に向けて身体を休めるために再び寝ることにした。